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迫力あるキャラクターを描くには?漫画家・霜月かいり先生インタビュー
デジタルはとにかく色が綺麗なのが一番でした
──この辺で漫画を描く時の環境についても教えて下さい。『BRAVE 10』連載中に、登場キャラの由利鎌之介のスクリーントーンが廃盤になってしまってピンチ、という話を書いていましたよね。
そうなんですよ。もう在庫がなくて、「トーンの柄をパソコンに取り込んじゃえば?」と言われるんですけど、そうすると線が変わっちゃうんで、今もピンチです(笑)。さりげなく変えるかもしれない(笑)。
──ちょっと変わったトーンを使うと廃盤という罠が待ってるんですね(笑)。その頃は画材は何を使っていましたか?
ゼブラのGペンに開明墨汁。筆ペンでベタ。用紙サイズはB4。色はトリアマーカーと色鉛筆で塗ってました。最初に色鉛筆で濃淡をつけて、そのうえからマーカーで塗ってます。トリアさんの発色が一番良かったのでそれを使って。
はみ出したり塗るのが結構大変なんですが、未だに好きで。トリアは日本から撤退してしまったんですけど、インクを大量に買いだめしててまだ持ってます。
はみ出したり塗るのが結構大変なんですが、未だに好きで。トリアは日本から撤退してしまったんですけど、インクを大量に買いだめしててまだ持ってます。

▲霜月先生愛用の画材たち。様々な種類のペンで原稿が描かれていく。
──デジタル環境はいつから導入したんでしょう?
一応、『MADNESS』(2004年7月に単行本化)の頃から、アメコミのベタ塗りみたいに黒い影を落としてビビッドな色を出す、という作業をデジタルでやってみたり、『戦国BASARA』(2006年1月に単行本化)の表紙をデジタルで描いたりもしてたんですが、本格的にやりはじめたのは最近ですね。フルデジタルにしたい気持ちもあるんですが、下絵で炭や木炭を使ったりしてるので、まだ併用です。あとは紙の厚さの描いた感、仕事した感が好きです。
──デジタルでやってみようと思った経緯は?
周囲が始めてたのと、パソコンがあればなんでもできると思ってたのが大きいんですが、何よりも肌色が綺麗に塗れることが大きいです。アナログだと混色の方法で色が変わっちゃうんですけど、デジタルだと肌色が一発で綺麗に出せる。あとアナログ原稿は取り込み方によって印刷時に色味が変わっちゃうじゃないですか。デジタルだとそれがない。とにかく色が綺麗なのが一番でした。

▲霜月先生の仕事場より。
ペンタブレットは「アナログと一緒じゃん!」って思うと思います

▲取材時に用意した液晶タブレット「Cintiq Companion2」でイラストを描かれる霜月先生。
──ペンタブレットは何を使ってますか?
最初は板型ペンタブレットの「FAVO」を買ってみて、次に「Intuos4」。液晶ペンタブレットは使ってみてよかったら大きいのを買おうと、試しに「Cintiq 12WX」を買ってみて、今は「Cintiq 21UX」を使ってます。
──すぐに慣れましたか?
はい。ただ、あまり基本の設定をいじらない方なので、ペンもカスタマイズせず、ショートカットも一切使ってないです。戻るときは普通に「戻る」ボタン、消しゴムもペンの後ろのを使って。
描きづらいとか違和感は何もなかったです。やっぱり線を拡大して見ると、アナログを取り込むよりデジタルから落としたほうが線が綺麗なんですよね。
描きづらいとか違和感は何もなかったです。やっぱり線を拡大して見ると、アナログを取り込むよりデジタルから落としたほうが線が綺麗なんですよね。
──色はどう決めてますか?
試行錯誤しながらカラーリングしてるので、同じものを二度描けないんです。前の絵を見なおしても、どう塗ったかがわからない。それくらいルーティンが決まってないんですよね。いま私のTwitterのアイコンになってる半蔵もどう塗ったかわからない(笑)。

▲『BRAVE 10』のキャラクター、服部半蔵のイラスト。
──それはあえて覚えないようにしてるんですか?
いえ、たぶん夢中すぎて。
「こうしたい」「このほうが艶っぽい」と色調整を何回もかけて、ニュアンスや直感で決めちゃってるので、あとから見てもどうやって塗ったかまったく思い出せないんです。だから同じ絵を描くっていうのができない。その時その時にしかできないことをやってしまう。
さっき初めて、ペンのサイドスイッチにスポイトツールを割り当てて使う方法をワコムの方に教えてもらいました。みなさんこうやって色を登録なさってたんですね……(笑)。
「こうしたい」「このほうが艶っぽい」と色調整を何回もかけて、ニュアンスや直感で決めちゃってるので、あとから見てもどうやって塗ったかまったく思い出せないんです。だから同じ絵を描くっていうのができない。その時その時にしかできないことをやってしまう。
さっき初めて、ペンのサイドスイッチにスポイトツールを割り当てて使う方法をワコムの方に教えてもらいました。みなさんこうやって色を登録なさってたんですね……(笑)。

▲今回のインタビューのために描き下ろしていただいたイラスト。