「10年社会人経験を積んだイラストレーター」だからこそ分かる「イラスト技術以前に大切な事」redjuice × 米山舞インタビュー
取材/編集:rukaku
写真:上坂美由希
今でこそイラストレーターとして第一線で活躍を続けているredjuiceさん、米山舞さんですが、お二人ともイラストレーターとして専業になる前、「10年近く会社勤めをしていた」という共通の経歴を持っています。
近年は10代で鮮烈なデビューを飾る学生イラストレーターも多いなか、社会人として10年間様々な経験を積んだ上である意味「遅咲き」のクリエイターとしてデビューしたお二人に、「イラスト技術以前に大切なこと」を聞きました。

- redjuice
イラストレーター/デザイナー
高知県土佐清水市出身のイラストレーター・デザイナー。ソングライターryoを中心とするクリエイターユニット「supercell」のメンバーとして手がけた『ワールド・イズ・マイン』のイメージイラストが楽曲のヒットと併せて話題を呼んだ他、TVアニメーション『ギルティクラウン』のキャラクター原案を担当。以後、2015年公開映画『Project Itoh』全作品(『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』)のキャラクター原案、小説/TVアニメ「BEATLESS」のキャラクター・コンセプトデザイン等、様々な分野で活躍している。
そのイラストが持つ独特の雰囲気と既存の枠にとらわれない表現が、国内外を問わず高い評価を得ている。

- 米山舞
長野県出身。
イラストレーターとして活躍する傍ら、アニメーターとしてもCMやMVなどで印象的な作品を発表している。また、精力的に個展を行う中で最新技術を探し出し、デジタルイラストレーションの可能性を常に模索している。アニメーション会社を経たのち2018年からイラストレーターとして装画・広告なども手掛け、2019年には初個展となる「SHE」、2021年には個展「EGO」を開催。アクリルにUV印刷を施したレイヤー作品を多く発表し注目を集めた。イギリス・ロンドンのサーチギャラリーで開催された展覧会「START ART FAIR2021」に出展した作品『00:00:00:00』は16枚の作品から構成される集合作で、アニメーター出身のイラストレーターとしての来歴を象徴するような作品になっている。
「ニュージェネレーション来たな」と思った
── お二人は、今回の対談以前にも、イベントで何度か会われたことがあると伺いました。まずはお互いの印象から教えてください。
米山舞:私がredjuiceさんを知ったのは2007、8年位だったんですけど、初めてお会いしたのは2018年に開催されたイベント「pixiv ONE」です。そこでワンドロを望月けいさんとやらせていただいたんですけど、イベント後の交流会でpixivの方にredjuiceさんを紹介いただきました。最初に「redjuiceさんが配布してたブラシ、テクスチャー使ってました!」っていう話をしたのが印象的です。
redjuice:言ってましたね(笑)。
米山舞:redjuiceさんのブログでテクニックや実用的なこととかを結構書いてくださってたんですよ。そこでプラグインとかブラシとかも配られてて。こういうノウハウを開示していただく方ってたまにいたんですけど、こんな実用的にやってくださる方はそうそういなかったので、印象的でした。

redjuice:なんでやってたかっていうと、SAIにしてもCLIP STUDIO PAINTにしても、一応デフォルトでプリセットは入ってるんですけど、いつも「何かこれ違うな」っていう感じだったんですよね。最近だと初期設定から使えるのも入っていたり、今でもユーザーさんが作ったブラシなどが、素材で大量に公開されています。思えば、そういった動きの“はしり”のようなものだったのかもしれません。
米山舞:私は明確にそう認識してます。
redjuice:ブラシの話で補足すると、鉛筆系ってやっぱアナログだと鉛筆の感覚があるじゃないですか。自分は元々、紙の上に線画を描いていたんですけど、デジタルで線画を描く時の「ツルっ」とか「ヌルっ」っていう感覚がどうしても苦手で、どうにかしてアナログの描き味にならないかっていう動機でPhotoshopとかCLIP STUDIO PAINTとかで作ってみたのが、自作ブラシだったんですね。
米山舞:面白い、線画を元々紙でやっていたと。それで、デジタルでも紙の描き味を再現するためにブラシを作ったということですね。
redjuice:当初はライトボックスも持ってなかったので、ガラスのテーブルの下から蛍光灯を当てて、紙に線画を描いていました。
米山舞:そんなことしてたんですか(笑)。
redjuice:そうそう。「ワールドイズマイン」の最初の絵とか、まさにその手法で作ってるんですよ。
米山舞:鉛筆線画を描いて、取り込んで?
redjuice:はい、スキャンして。
米山舞:もしかしてこれはレアな話では?(笑)。
── redjuiceさんとして米山さんの最初の印象は?
redjuice:米山さんは元々アニメーターとしての活躍が目覚ましくて。その中でもイラストレーター的な表現が凄くできる人として「新しい世代のイラストレーター来たな」っていう感じがありました。
米山舞:嬉しい。ありがとうございます。

redjuice:米山さんと一緒に望月けいさんもこの間のゲームの謝恩会でお会いして。当時からお二人共強者のオーラを纏っていたので、「ニュージェネレーション来たな!」と思って。
米山舞:私が勝手に思ってるだけですが同期のシナジーみたいなのがあるかもしれないですね。私と望月けいさん、LAMさんとか、ちょっと同期感があるんですよ。私は年が全然上なんですけど、自分は始めるのが遅かったので。
redjuice:始めるのが遅かったというのは?
米山舞:2018年までトリガーでアニメーターと作画監督をやってて。ちょうど10年くらいアニメをやってたんですよ。
redjuice:それで10年のキャリアがすでにあったんですね。
米山舞:イラストをちゃんと始めたのは20代後半に入ってからなので、結構遅めでした。
redjuice:アニメーターとイラストレーターを両立されてる方は割といると思うんですけど、アニメの方が主軸という方が多い中で、米山さんは今イラスト主体ですよね。
米山舞:そうですね。
redjuice:鮮やかな転身だなって凄く思います。
pixivの“ランキングバトル”を戦う中で、ガッツリ上達した
── 次に、お二人が社会人からイラストレーターに転身するきっかけとなった転機について伺いたいと思います。
redjuice:学生時代は機械工学を学んで、最初の会社では冷凍機や空調の設計とかをやっていました。CADとかもやってたんですけど、24歳ぐらいに、前の機械屋の仕事を辞めて、上京しました。ちょっとクリエイター志望の、いわゆる“ワナビー”だったんです。その時はまだ絵描きのスキルが無くて、3Dクリエイターになりたくて、デジタルハリウッドでSoftimageの講座を受講しました。
米山舞:面白い経歴ですね。
redjuice:ただ、専門学校時代は結局、技術をものにできなかったんですね。一応1分くらいのアニメーションとか、ロボットとかをモデリングして作れるようにはなったんですけど、それでゲーム会社に就職しようと思っても、なかなか決め手にならず、ここでちょっとどころではない挫折を味わいました。

米山舞:今だったら、3Dアーティストってそれこそ重宝されそうですけど。
redjuice:そもそもアートの基礎知識、スキルがなかったんですよ。キャラクターを全然描けなくて、3Dのアニメーションを作るためのキャラクターデザインをやった時に、「俺、全然人描けねえな」と絶望して。その時は絶望したままだったんです。「このままだと駄目だから、もっと頑張るぞ!」じゃなくて、クリエイターとしての精神がそのまま消え去っていきました。
米山舞:なるほど。
redjuice:そこからまた別の仕事をしながら、お絵かき掲示板とかにイラストをコツコツ上げている内に、ちょっとずつ芽吹いていった感じですね。ちなみに、pixivを始めたときにはもう30歳になってたんですけど、24歳から30歳はほんと、自分にとっては暗黒時代でした。
米山舞:修行時代。
redjuice:修行というか、もう、何者でもない時期だったんですよね。そんななかでpixivが登場して、「このランキングでテッペン取るぞ」っていう熱意がどんどん沸き上がってきました。
米山舞:あの時期って、みんなpixivのランキング(※)に執心してましたよね。
── それまでは、権威あるランキングはあまり無かったのですか?
米山舞:そうですね。pixiv初期のランキングはすごく「オリジナル純度」が高いところが画期的で。もうバチバチのクリエイターバトルですよ。
── 当時のバチバチのランキングバトルに身を投じていく感じが、切磋琢磨というか、実力の向上、モチベ形成的な観点で言ってもプラスに働いたということですね。
redjuice:今でこそ昔話だけど、あの頃の当事者は実際、めちゃくちゃ必死でしたよね。

米山舞:そうですよね。やっぱりredjuiceさん的には、pixivのランキングバトルを戦うなかでガッツリ上達したみたいな感覚があったんですか?
redjuice:はい。pixivのランキングには独特の中毒性があって、めちゃくちゃスリリングでした。まずポイント集計開始となる0時に投稿して、その後24時間の集計がすごい気になるし、結果が出るのがさらに翌日の12時なので、毎日気が気でない。
米山舞:分かる。私もネタ系の別アカウントでしたが、自分の投稿したイラストを一生クリックしまくって、お気に入りの数が増えていくのをずっと見たりとかしてました。
── その時代にはイラストのハウツーを投稿している方もいらっしゃいましたよね。
米山舞:ありましたね、メイキングとかTipsとか。ああいうのが文化的に、皆の画力向上には繋がっていましたよね、多分。
redjuice:メイキングはメイキングで、すごいポイントを取れるんですよ。なぜかランキング上位にいるみたいな。

米山舞:メイキングとかTipsの助けもあって、もう、本当に良い絵が毎日投稿されまくってましたね。毎日がコンテスト、みたいな。
redjuice:しかも全国コンテストですから、全国大会。
米山舞:なので、あのランキングの10位以内に入るって相当すごいことで、それがイラストレーターの“格”にもなったので、みんな頑張っていました。しかもpixivのランキングは、女の子のイラストだけじゃなくて、風景画とか、ちょっとアートっぽいのもあるんですよ。だからこのランキングってめちゃくちゃ「オリジナル純度」が高いんです。

pixiv10周年記念書籍「pixiv archive 2007-2017」より
左上から、2008年1月のマンスリーランキング/2008年5月のマンスリーランキング/2008年6月のマンスリーランキング/2009年4月のマンスリーランキング
「専業イラストレーター」になる覚悟と苦悩
── 2007年にpixivがサービス開始して、ランキングバトルの中でメキメキと実力を伸ばしたというredjuiceさんですが、仕事を辞めてプロとして活動開始されたのはいつですか?
redjuice:最初は仕事をしながら商業のイラストも描いてる状態だったんですけど、専業にシフトしたのは、2009年3月にビクターからリリースされた、livetuneのリミックスアルバム「Re:MIKUS」のジャケットイラストでした。
redjuice:ちなみに「ワールドイズマイン」を描いた2008年、supercellの集まりでryoさんに「プロにならないんですか?」って聞かれたんですね。その時の僕の答えが、「いや全然なる気ないから。絶対今より収入下がるし」でした。
米山舞:そういう構えだったんですね(笑)。
redjuice:やっぱり生活のことを考えると、絶対お金の問題が出てくるじゃないですか。今でこそ、稼げる時は稼げるんですけど、やっぱり当時の社会人時代の給料と比べて、並ぶ事はあっても上回ることって、未だにないですね。

米山舞:こんなに活躍されているなか慎重だ。そこはもうイケイケゴーゴーじゃなかったんですね。
redjuice:全く。一生アマチュアで行くつもりでした。専業になるには覚悟が必要でしたね。でもその後、色々なものに巻き込まれていくうちに、「これちょっと自分、周りに絵描きとして求められてるな」っていう実感がだんだんと湧いてきた。「それまで何者でもなかった自分が、やっと何者かになれた」っていう自覚ができて、それがプロ転向の決め手でした。
── 米山さんは、2018年まで作画監督をやられながら、イラストレーターとしても並行で活動されてましたよね。
米山舞:はい、並行でやってました。もう2013年ぐらいから。作画監督といっても当時それだけでは全然稼げなくて。こっそりソーシャルゲームとか、雑誌の版権イラストを描いてたんですよ。それでちょっと日銭を稼ぐみたいな……。
redjuice:雑誌の版権も割は良くないですよね。
米山舞:そうですね。でも当時からするとご褒美でした。こういうことをやりつつ、2016年に、当時トリガーに出入りしていたコヤマシゲトさんからやってみないか? と声をかけていただいて、「レーシングミク2016」のメインビジュアルを担当させていただきました。個人名が出るプロらしい仕事といえばそれが初めてですかね。

「レーシングミク2016」メインビジュアル
© 米山舞
© GOODSMILE RACING
© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net directed by コヤマシゲト── redjuiceさんも「レーシングミク2010」で初代レーシングミクのイラストを担当されているので、ここでも共通点がありますね。

「レーシングミク2010」メインビジュアル
Art by redjuice / © GOODSMILE RACING / © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
米山舞:レーシングミクの後、色々仕事が来るようになったんですけど……それはそれで難しくて。ゲームの立ち絵ってあるじゃないですか。ノベルゲーム形式でセリフの横に表示されるようなタイプの。「作画監督経験もあり他の人の絵柄に似せられるし、イラストも描けるから、この人の絵柄で立ち絵を量産してほしい」みたいなお仕事を本当に沢山頂いたんです。それはそれで光栄なことなんですが、この認識のままではまずいなと思って。それから、オリジナリティを出せる同人誌を出し始めました。それから、同人誌を見た方が、ちゃんと私の絵柄と作風で仕事を頂けるようになりました。
redjuice:なるほど。
米山舞:例えばredjuiceさんだと、「redjuiceさんだったらこういう絵を描いてくれるだろうな」っていう雰囲気が醸成されていて、その上で仕事が来るって感じだと思うんですけど、私にはその蓄積がなかったので「これは作らないといけないな」と感じまして。なので、同人誌を出して「こういう絵を描きますよ」って世に示し始めたのが、2018年からなんです。
redjuice:初同人誌が2018年……pixiv時代の話と比べると割と最近ですね。
米山舞:同人誌を見てくれた方から実際にお仕事をいただけるのは大体1年後とかじゃないですか。だから、クライアントが「自分の絵」を頼んでくれるようになるまでに、私の場合結構時間がかかりましたね。
米山舞の「動」とredjuiceの「静」
── 今では世の中に、自らの作家性を知らしめているお二人ですが、世の中は、自分の絵のどういう所を評価してくれたと考えていますか?
米山舞:私の場合言えるのは、「アニメーションの絵」という文脈に乗っかっているところだと思います。やっぱり、みんなが見慣れてる絵作り、線があって、塗りがあって、光源があって。私は撮影技術とかも使うので、やっぱり「アニメーションの絵」の信頼度、みたいなところで受け入れられてるっていう自覚はすごくあります。

── 絵を見た人が「アニメーションの絵だ」と思う上で、一番大きな要素は何でしょうか?
米山舞:構図と動感、線と塗り、あとはやっぱりライトですね。カメラで撮ったみたいな。
redjuice:カメラワークですよね、やっぱり。すごい意識されてるなって。アニメーターさん独特の動きの使い方というか、「動きの中の1コマ」を撮ってるっていう感じがすごくあって。壮大なダイナミクスがあるんですよね、イラストに。
── redjuiceさんはいかがですか?
redjuice:初音ミクのイラストとか、他のインディーズのCDにジャケットを描いた時なんかもそうなんですけど、音楽を聴いた時に自分の中から浮かんでくるイメージをとても大事にしていて。実際に紙に書き出すとかはしないんですけど、1回頭の中でMVを作るんですね。MVに出てくるキャラクター、背景とかを思い浮かべながら、それらを配置していく。曲がない時は、何か別の曲を聴きながら、良いシチュエーションを勝手に想像しながら描いています。やっぱ音楽と絵って、自分の中では初期の頃からすごく一体化しているというか、親和性が高いんです。

── redjuiceさん、この前livetuneさんの曲をずっと聴いてるって仰ってましたよね。iTunesの再生数がすごい事になってるみたいな。
redjuice:めちゃくちゃ聴いてますよ。1曲あたり最も再生数が多かった曲がもう2000回くらいで。作業用プレイリストがいくつかあったんですけど、多いのは1000周くらいしていて、その中のトップがlivetuneでした。この事を(livetuneのコンポーザーの)kzさん本人に言ったら「キモい」って言われました(笑)。

米山舞:面白い(笑)。
redjuice:僕、音楽がないときって、結構「無」なんですけど、音楽を聴く事によって、自分の中で世界が広がってきて、構図だったり、エモーショナルな部分がすごく湧き起こされるんです。そういう情感、気持ちの部分で表現していくっていうのは、普段からとても大事にしています。
米山舞:一発で入り込めますよね、redjuiceさんの絵って。
── redjuiceさんのイラストは「悠久」というか、非常に長い時間の流れみたいなものを感じます。
redjuice:確かに、「一瞬」じゃないですよね。やっぱシーンで描いてるかなっていう気はする。でも、動きではなく止め絵としての構図を重要視しているから、そういう意味では「静」なんですよね。米山さんの「動」に対して、「静」の世界で戦ってる。そして僕は、「技術的なことをどれだけ詰め込めるか」っていうところも結構大切にしてます。
米山舞:それも凄く伝わってきます。
redjuice:3Dとかは常にそうなんですけど、日々技術革新がすごい業界なので。昔のソフト使ってると、どんどん“化石化”していくんですよね。昔だと何倍も手がかかっていたことが、今だと凄く簡単にできたりするんで、そういう技術の更新をしながら、表現の中にも生かしていきたいと思っています。
米山舞:案件もそうですけど、redjuiceさんはコンテンツにすごい寄り添われてるなっていうイメージもあります。
redjuice:まず「求められること」っていうのは、ある程度ある訳ですね。「redjuiceならこういうことをやってくれるはずだ」っていう期待があるんです。それを100で返すんじゃなくて、むしろある意味ちょっと裏切りつつも、理想としては120点ぐらいの、「相手の予想を上回る何か」を届けたいっていう気持ちでやってはいますね。ちょっと、良いこと言いすぎたかな(笑)。
米山舞:編集さん、ここ、太文字にしてください(笑)。
「掛け合わせ」の美学
── こういう観客の視点、言わば「三人称視点」が常に念頭にありつつ、でも自分のやりたいこと、オリジナリティを探求していく「一人称視点」も必要で、そういう自分のオリジナリティを見つけるためにどのような努力をしてきましたか?
redjuice:そうですね、技術オタクなんですよ、僕は。とにかく色んなことを調べるし、勉強をします。ギークですね。最近も、別に使いもしないキーボードを買っちゃって。
米山舞:デバイスめっちゃ紹介されてますよね。
redjuice:米山さん、何かないですか? そういうデバイス系のお話。
米山舞:実はデバイスはそんなにギークではないんですけど、ソフトはめっちゃ好きで。結構3Dも触るので、HoudiniとかCinema 4Dとかいじってみたりソフトはオタクかも。でもデバイスは全然ですね、結局回り回って、キーボードになっちゃいます。
redjuice:僕も結局、キーボード。左手デバイスもいっぱい持ってるけど、ほとんど使わない。結局複雑なオペレーションをやりだすと、キーボードが必要になるので。使わないどころか、壊して改造してなんかめちゃくちゃにして。
米山舞:それは突き詰めてるなぁ(笑)。
redjuice:でも米山さんも3Dとか、色んなソフトの探求をされているのはすごいですよ。
米山舞:私はギークではないかもしれないんですけど、「表現厨」ではあるんですよ。新しい掛け合わせをずっと探している。「描く」以外の面白さを結構信じていて。そういう意味では私も、なんていうか、「研究好きのオタク」かも。光学や印刷もそうですけど。
redjuice:個展で展示されていた積層印刷とかすごい攻めてますけど、印刷技術がお好きなんですか?
米山舞:そうですね。ルーツを辿るとグリーティングカードとか好きです。小さい頃にお母さんが、クリスマスの時とかに、音が鳴るやつとか光るカードとか、あと中華のお年玉袋とかを良くくれたんですよ。あちらのお年玉袋ってめっちゃ派手で。

米山舞:強い香りがついてて、エンボスとか箔押しも豪華だし綺麗ですごい、そういうしつらえが好きなんですかね。だから小さい頃とかイラストをわざわざセロハンテープでラミネートして自作の封筒に入れて人にあげたりとかしていて(笑)。
結局、「意図を込めて工夫したもの」が好きだから、同人誌とかグッズとかも、私の中では自分の嬉しいものを突き詰めると印刷技術が好きになっていくと言いますか。デジタルイラストってある意味画面の中で完結しちゃうものだから、自分は「三次元の好きなもの」と「自分の絵」を良い感じに掛け合わせて、何か生み出してみたいっていう思いが常にあります。そこにまた新しいジャンルができたらいいなって。
── 最近だと、米山さんは動画、アニメーションとかにも力を入れてますよね。Eveさんの「YOKU」のMV、「Reincaranimation」等が印象的です。
redjuice:最近MV市場は発展がすごいですよね。
米山舞:もうインディーアニメが爆発的に流行っている。あれはツールの進化、例えばCLIP STUDIO PAINTで簡単にアニメを作れるようになったとか、あとは自分で発信できるSNSとセットで、もうドカッと来ましたよね。
── 一時期Xでも、「#indie_anime」のハッシュタグが爆発的に流行りましたよね。
redjuice:本当にもう、無数にいらっしゃいますよね、動画クリエイターさん。全然知らないところから、どんどんすごい人が出てくる。
米山舞:本当に。「敷居の低さ」っていうのはやっぱ、クリエイトにおいて手助けになるんじゃないですかね。手軽に作りたいものを作ることができて、発信できるのは、いい時代だなと思います。
redjuice:Blenderなんてタダですからね(笑)。
米山舞:redjuiceさんもそうですが、「別の軸を持ってくる」こと、3Dもそうですし、技術とかもそうですけど、そういう所で「一辺倒にならない人」に、自分もすごく影響を受けてるんですよ。印刷が好きなのは、そういう所にも関係しているんじゃないかなと思います。
「クリエイティブ」と「ビジネス」、2つのバランス
── イラストレーターとして生きていく上で、クリエイティブ、つまり「自分が本当に描きたいもの」と、ビジネス、「お金のために描くもの」という二つの側面がどうしても出てきますが、その調和、折り合いの付け方、共存のさせ方についてはどう向き合っていますか?
redjuice:人によって全然スタンスが違いますよね。「アーティストタイプ」と「ビジネスタイプ」というか。もちろん皆さん両立はされてるなかで、そのバランスを取っているんですけど、自分はどっちかというと「アーティストタイプ」です。
ギーク的な、オタク的な技術方面で、お金にならないような手間のかかる事を沢山しちゃうんですよね。だから、あまりビジネスとのバランスが上手く取れていません。
ただ、それだと老後生活するお金もなくなっちゃうんで、今のうちにちゃんとビジネスも考えつつ絵を描いていかなきゃいけないなって思っています。

── マネタイズは専業にするうえでは重要だと感じます。
redjuice:そうですね。これは一概には言えないんですけど、面白い仕事と稼げる仕事ってイコールではないんですよ。でも、ビジネス、お金になる仕事ばかりやってると、自分がどんどん死んでいく。心も死んでいくし、病んでくる。だから、バランスですね。
── 米山さんは、クリエイティブとビジネスの調和についてどう向き合っていますか?
米山舞:私は、マネタイズというか、仕事の嗅ぎ分けがあまり上手くなくて。
redjuice:そうなんだ(笑)。
米山舞:「これチャンスだ!」みたいなのも結構平気で逃したりしちゃってます。「あれって受けた方が良かったんですかね?」って後で聞いたら、「なんであの時受けなかったんですか!」みたいなことを言われたりとか、良くあるんですよ。だから、そこら辺があまり上手くないのもあって、オリジナルというか、クリエイティブの方を重点的にやってる感じです。
クリエイティブのマネタイズについては、個展では必ず事前に収支のバランスを考えています。自分で収支表を作って計算して。売るものとかも、「手を出したいもの・買ってもいいもの」とかを考えるのが好きなんですよね。
redjuice:めちゃくちゃビジネス(笑)。
米山舞:結構アニメーター時代の経験も活きていると思います。要は「全部を80%ぐらいで出せる」とか、「バランスを取る」みたいなのは、展覧会の企画とかで特に役立ってるスキルですね。

redjuice:めちゃくちゃ強い。
米山舞:企画とかプロジェクトが好きなんですかね。結局のところ、「喜ばれる」のが好きで、個展の時も、私は自分でレジをやらないと気が済まないんですよ。そのための企画ですね。
── 多分米山さんは、「自分が創りたいもの」が、「世間が欲しいもの」と良い感じに合致しているんですよね。
米山舞:自分で言っていておこがましいところはあるんですが、そこの感覚を若干頼りにしてる部分もあって。きっと年齢を重ねるとまた変化するとは思いますが、今のところはそんな感じです。
相手へのリスペクトとコミュニケーションの重要性
── クリエイティブとビジネスの調和は、自分の中で1回成功体験を作れたらここで終わり、というものではなくて、時代や市場を見極めながら、常にやり方をアップデートしていかなければならないものだと思います。精神的にも凄くランニングコストが掛かるこの調和を不断に続けていくために「これだけは守らなきゃいけない」といったルールはありますか?
米山舞:どの分野に対してもリスペクトを持つことにしています。あと感謝。クライアントさんもそうだし、お客さんもそうだし、印刷会社や企業さんもそうだし、関わる人全員の考えを尊重すると、結果が良くなることが多いです。だから、相手のことをあまりよく知らないで挑まないようにはしていて、事前に色々学んでから臨む──これがリスペクトですね。
redjuice:リスペクトは僕も大事にしています。先日完成させた「MIKU FES’24(春)~Happy 16th Birthday~」のキービジュアルなんかは、リスペクトの集合体です。最初依頼が来たときは「オリジナル衣装とか作ってもらっていいですよ」って話だったんですけど、16周年のミクのイベントという事で、やっぱり自分としても「最初のミクに触れたときの気持ち」を表現したいと思って、最初のミクの衣装で描きました。やっぱ感謝ですよね。

「MIKU FES’24(春)~Happy 16th Birthday~」キービジュアル
Art by redjuice ©REDBOX / © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
米山舞:なるほど。私思ったんですけど、ちょっとKEIさん味があるなと。
redjuice:色味とか、衣装の感覚なんかも、できるだけ原案のミクからずらさずに、オリジナルリスペクトで描きました。いやぁ、自分で言うのもアレだけど、この話エモいな(笑)。
米山舞:それはファンも喜ばれますよね。
redjuice:自分もファンなんですよ。一緒に楽しみたい。特にボカロなんかは、他のクリエイターさんとのコラボレーション、共同作業になるんで。ミュージシャン、動画クリエイター、お互いのリスペクトがないと成り立たないんですよね。

米山舞:私も、「好きにやってください」って言われたときほどよく調べたりします。「自分よりそのコンテンツが好きな人」って絶対にいるじゃないですか。だから、そういう人が「分かってるな、この絵描きさん」ってなるところとかは押さえようとしますね。
redjuice:米山さんも『FGO』(「Fate/Grand Order」)やられてたじゃないですか。あれ大変でしたよね。
米山舞:楽しかったです! ぜひまた挑戦したい(笑)。
redjuice:『FGO』のゲームはやられてたんでしたっけ?
米山舞:すごくやり込んでるわけではなかったんですよ。もちろん内容も知ってましたし、『Fate』シリーズも好きで観てたんですけど。やっぱり「お客さんがどういう風に喜ぶか。自分の好きをどのくらい詰められるか」を探るバランス感がとても難しくて。だからまた違うバランスで挑戦してみたいです。「果心居士」もすごく気に入ってます。

米山舞さんが担当した「Fate/Grand Order」のサーヴァント「果心居士」ビジュアル
© TYPE-MOON / FGO PROJECT
redjuice:『FGO』はやっぱ原作がすごい濃いし、ファンも濃いしっていうので、「生半可な気持ちで挑めないな」っていうのがあるんですよね。元々自分は『Fate』シリーズはそんなに詳しくなかったんですけど、仕事を依頼されて、納品まで1年くらい時間があったので、その間にアニメを観たり、ゲームをしたり、結構調べて、「『Fate』ってすごいコンテンツだな」と思いました。
あと『Fate』シリーズの英霊って歴史上の人物や神様を扱う作品なので、自分の担当したキャラクターはギリシャ神話のキャラクターだったんですけど、その原典の小説、イリアスとかホメロスの叙事詩とかも読んだりして。他にもTYPE-MOONワールド独自の不文律なんかもあって、その上でやんなきゃいけないなっていうのがありました。

redjuiceさんが担当した「Fate/Grand Order」のサーヴァント「エウロペ」ビジュアル
© TYPE-MOON / FGO PROJECT
米山舞:本当に良く研究されますよね。それを加味しつつも斬新というか。
redjuice:『Fate』シリーズは表現上は何でもありですよね。ビジュアル的にはむしろ、「ここまでやっていいのか」みたいな。「酒吞童子」とか、「牛若丸」とか。
米山舞:わかります。だからやっぱりデザイン力というか、解釈力が大事ですよね。
大事にしてることで1個思い出したのは、たとえどう聞かれても、「自分が作品に込めた意図」とかは、全部説明できるようにはしてます。もちろん感覚で作ることもあるんですけど、「なんでここはこうなってるの?」って言われた時に、全部言えるようには心がけてます。
── 色であったり、構図であったり、描かれているものであったり?
米山舞:そうですね。「服のモチーフはここから取ってます」とかも含めて。
redjuice:昔、専門学校に臨時で呼ばれて、イラストの添削をやったことあるんですけど、やっぱり「良いイラスト」とそうでないイラストって、「何が好きか」の濃度が違うんですよね。
米山舞:そうなんですよ。表面的な技術じゃないんですよね。
redjuice:「この絵を描くにあたってどういう所を頑張りましたか」って聞いても、その深みで絵の良さって決まってくるし、全体的にそんなに上手くないんだけど、例えば楽器にすごいこだわりがある絵とかは光って見えました。自分もちょっとギターやってたんで、構造とか各部の機能とかが分かるんですけど。例えばこの机に描いてあるこのイラスト、pomodorosaさんのイラストですよね。彼はミュージシャンでもあるので、楽器に凄くこだわってるのがわかるんですけど、フレットの間隔がちゃんとキマッてるんですよね。後はフレットレスの表現とか、PUだとか、弦の太さとか。こういう、「自分の好きなものが反映されていること」が大事ですね。仮に好きじゃなくても、好きになる努力をする。こういう所で僕も頑張らなきゃなと。

米山舞:絵の説得力が断然変わりますよね。
── 「イラスト」以前の要素、例えば発注者さんと長く付き合っていくとか、メールのやり取りみたいなコミュ力、そしてモチベや精神力の部分、加えて他で働いた経験とか、実力が伴っているのを仮に前提とした時の、実力以前の要素についてはどう思われますか?
米山舞:メールの話をすると心が痛い(笑)。返信は遅い方なんですけど。でもよく「人柄が気さく・ソフトだ」って言っていただけます。
あと、私はもう何でも、下手に探るよりは、直に人に聞きに行った方が良いと思っていて、「これ合ってますか?」とか「これ見せてください!」とかは、もうどんどん自分で動くようにはしています。分からないままにしない。人と話すのがそもそも好きなので、努めて話すようにもしていて、これによって相互理解を深めようとしています。
redjuice:それだと、コロナの頃って結構キツかったんじゃないですか?
米山舞:キツかったですね。リモート打ち合わせって独特の雰囲気があって喋りづらいんですよ。1人喋ったらみんな黙るし、相槌も打てないし。目も見れないから。
redjuice:いつ喋って良いのか良く分からないですよね。
米山舞:言いたいことを言えなかったりしますけど、でも何とか行動で頑張ってるみたいな所はあるかもしれない(笑)。
redjuice:ここ数年、やっとコロナ明けの兆しが見えてきたけど、今の若い人なんかはもう5年、リアルのコミュニケーションが断絶された世界が当たり前になってるわけじゃないですか。
米山舞:最近は、SNSとかで人間関係を構築してる人も多いから、いつの間にか知らない所でコミュニティができていますよね。自分は結構お会いしてお話する飲み会とかが好きです。
── クリエイターの飲み会って結構大事なんですね。
米山舞:大勢の飲み会とかじゃなくて信頼できる人と会って話すのは好きですね。基本的には出不精ですが(笑)。「考えを整理する場があること」が大事かなと思っていて。私は幸い「SSS by applibot」っていうチームがあるから対話などできて助かっています。
米山舞さんが所属するクリエイティブチーム「SSS(トリプルエス)by applibot」
©SSS by applibot, Inc.
redjuice:あの環境羨ましすぎて。
米山舞:私からしたら、supercellさんも羨ましいですよ。でもそうですね。意識を擦り合わせたりするのは、個のイラストレーターでも、大事な要素な感じもします。
「本を読む」だけが「学び」ではない
── 最後に、米山さんとredjuiceさんの共通点である「“イラスト技術”以外の学びを積んでいる」点について。redjuiceさんは学生時代から機械工学、3D、CG、WEB、自然科学、物理学など、幅広い学問を体系的に修められています。そして米山さんはアニメーターとしての10年のキャリアがある。このような、単純に「“イラスト技術”以外の学びを積む」ことの重要性についてどうお考えですか?
redjuice:「学び」で絵に役に立たない事ってないんですよ。何を学んでもいい。例えば、数学でも物理学でも機械工学でも、それを学んだ経験っていうのは絶対に絵に活きていきます。なので、勉強する上で効率を意識しすぎて「取捨選択しなきゃいけない」「これはやっちゃいけない」とかはあまりないと思うんですよね。逆に自分の知識欲に対して貪欲に、素直になって、どんどん何でも見つけていって、その「好き」を信じていく方が良いと思います。無駄だと思っていたものが、クリエイターの個性にもなっていく。
米山舞:めっちゃいい話だ。
── 新しいものに手をつける時って、精神的コスト、精神的ハードルが高いイメージがありますが、redjuiceさんの場合、そういうのはあまり無かったですか?
redjuice:いや、それももちろんあります。面倒くさいことは面倒くさい。けど乗り越えなきゃいけない。デッサン練習とか、本当はやりたくないですよ(笑)。

米山舞:学ぶジャンルにもやっぱりそれぞれ才能、個性が出る気はしますよね。さっき「文献を沢山参考にしている」っていうredjuiceさんのお話がありましたけど、私は文字が苦手で。でも感性を培う感覚はあるから、そっちで学んでいる。学び方って本当にいろいろあると思うんですよ。学び方って一見、一種類しかない様に見えるけど、実はそうじゃない。本当にさっきredjuiceさんが仰っていた通り、糧にならないものなんてない。絵の場合、「これやるべき。」っていう「べき」が無いくらいなんですよ。
例えば、同じ画力の人がメキメキ上手くなって、同じぐらいの上手さになったとするじゃないですか。じゃあ何を個性にするか、何を強みにするかって言ったら、もう副次的なもの、その人が積んできた経験とか、学んできたものとかになるわけで。みんな絵だけを描いているわけじゃないから、絶対何かあるんですよ。何も学んでない人っていない。「自分には何もない」って言ってる人って、掘っていないだけとか、自分の欲求に従ってないだけとかな気がします。どんな人でも、絶対何か「謎の性癖」とかがあるはずなんですよね。割と変な趣味でも絵に使えたりとかしちゃいますから。
redjuice:ただ気をつけなきゃいけないのは、何やってもいいって言っても、無駄に時間を潰すっていうのはちょっと気をつけないといけない(笑)。
米山舞:私は結構「ムダ族」かも(笑)。
redjuice:自分、ゲームにひとつハマるとすごくやり込んじゃうんですよ。
米山舞:そうなんですか(笑)。
redjuice:昔オンラインゲームにむちゃくちゃハマって、まだ絵を仕事にしていない時期だったんですけど、本当にもう「寝る間も惜しんでやる」みたいな感じで。ちょっとやばいなと思って、それ以来オンゲーには手を出さないようにしてますね。
米山舞:オンゲーは本当に危険ですよね(笑)、分かります。
さっきの話の補足で、「副次的なものを身につけるにはどうしたらいいですか?」って質問を良くされるんですけど、確かに18歳ぐらいでそれを求めるのはその通りで、倍ぐらいの歳からしたら「あなたがこれから見るものがそうですよ」とは思うので色々な経験がその答えになって来ると思います。

── みんなすぐ効率を求めちゃうので。「これした方がいいですよ」ってなりがちですよね。
redjuice:そうそう、ハウツー本の話なんかもそうなんですよ。さっき言ったpixivのランキングに出てくるメイキングなんかもそうですけど、あれだけ見ても、要所は身に付くんだけど、なんて言うか、すごく狭い。メイキングの作者にしても、そのハウツーに行き着くまでに無数の蓄積をしているわけです。
だから、「それだけに頼らず本買え」って言いたいですね。本も、「何かおすすめありますか?」って良く聞かれるんだけど、「おすすめはない、全部読め」と思います。今は本屋に行かなくても、ネットで買えますよね。自分だったらAmazonで、とりあえず一つ欲しいジャンルの本があったら、3冊買うんですよ。その中から読み比べて選ぶとかじゃなくて、とりあえず頭の中に「この本のここら辺にはこういうことが書かれてたな」っていうインデックスを作っておいて、後で必要になった時用に、引き出しとしてストックしておくみたいな読み方をします。
── 方向性は間違えちゃいけない、でもその中で最短ルート、結果だけを求めようとするよりも、ある種回り道、余剰、悩んで右往左往する方が、最終的には身になるという事ですね。
redjuice:そういうことだと思いますね。
米山舞:今はAIとかもありますし、技術って結構補完できちゃう部分もあるので、技術的に満足が行ったあとって、もう感性とかコンセプト、ストーリー、ナラティブの話になってきちゃうんですよね。「その人が何を見て、どう解釈したか」だけが大事になってくるから。
── AIって、そういう意味で意図とかナラティブさがありませんよね。
米山舞:そうですね、redjuiceさんの絵はもう「ナラティブの集合体」だと思います。
── redjuiceさんも他のインタビューで、「AIイラストにはドラマが現れていない」っていう話をされていました。
米山舞:さっき、「MVを一度頭の中で作る」ってお話をしていたじゃないですか。それを実際に観てみたいですね。映像のお仕事もしてみてほしいですね。
redjuice:絵コンテとか描く能力はないんで……(笑)。
米山舞:絶対描けると思います。
redjuice:本当ですか(笑)。
redjuiceさんの個展「REDBOX」が開催!
新会社レッドボックスを設立して間もないredjuiceさん。その記念的な個展「REDBOX」が2024年3月22日から4月7日にかけて開催されます。会場は有楽町マルイ8F マルイノアニメ「SPACE7・8」。
作品へのリスペクトとエモーションを大切にし、広範な科学知識に裏打ちされたredjuiceさんの世界観が濃密に現れているであろう今回の個展。ぜひ足を運んでみてください!