イラストレーターからマンガに挑戦。WEBTOONなら好きな一枚絵が描けた。『先輩はおとこのこ』ぽむ先生インタビュー
インタビュー/ナカニシキュウ
第5回アニメ化してほしいマンガランキングにて1位を受賞し、ついにアニメ化が決定した人気マンガ『先輩はおとこのこ』。LINEマンガにて縦スクロールのフルカラー形式(WEBTOON)で連載され、本編は完結していますが、単行本の刊行が続いています。さらに先日、本編の前日譚を描く『先輩はおとこのこ 出会い編』が12月21日(木)に連載開始されることが発表されました。
物語は、セーラー服を着用し女子生徒の格好をしている”男の娘”花岡まこと、まことに好意を寄せる後輩・咲、まことの幼馴染・竜二の3人を中心に、彼らが織りなす人間模様を描き出します。
作者であるぽむ先生は、企業所属のイラストレーターで、業務としてマンガを描き始めたそうです。挑戦のきっかけや、経験のないストーリー作りに向き合った方法、そして、イラストレーターがWEBTOONに参入する意外なメリットをお話いただきました。

- ぽむ
- 兵庫県出身のマンガ家・イラストレーター。2019年12月にLINEマンガで『先輩はおとこのこ』の連載を始め、2021年12月に本編が完結。同作のアニメ化が進行しており、2023年12月21日(木)からは『先輩はおとこのこ 出会い編』が連載再開される。その他の作品に『ノアは方舟』などがある。
心配性だからマンガを描き始めた
── ぽむ先生は企業所属のイラストレーターで、業務の一環としてマンガを描かれているんですよね。
── 会社員でありながらその危機感を持てるというのがすごいですね。
── なるほど。でもマンガを描く作業って、決まった業務時間の中だけで収まるものなんですか?
── ほかのマンガ家さんがそれを聞いたら心底うらやましがりそうです。
── そこはしょうがないですよね。
── ちなみに、これは答えられたらでいいんですけど……著作権などの権利関係はどうなっているんですか?
── ということは、単行本やグッズなどで発生する著作権使用料はぽむ先生個人ではなく、すべて会社に支払われるということですよね。
── 本当に完全なるサラリーマンですね。そういう待遇で働いているマンガ家さんは聞いたことがないです。
── たしかに……! 「企業所属」と聞くと、なんとなく自由が利かなさそうな印象も受けますけど、むしろ余計なことを考えずに創作だけに専念できる環境が整っているんですね。
映画とマンガの冒頭1巻をたくさん浴びてストーリー作りを学んだ
── マンガを描いていて、イラストレーター出身でよかったと思う瞬間はありますか?
── たしかにタテ読み、いわゆるWEBTOONの世界では、サムネイルはかなり重要ですもんね。
── 逆に、苦労したポイントは?
『先輩はおとこのこ』第1話より
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── たしかに、そこは絵を描くスキルとはまた別の能力が必要ですもんね。マネジメント力というか。
── ぽむ先生は以前にもインタビューで「『先輩はおとこのこ』の最初の頃は絵を描くことにしか興味がなくて、ストーリーを全然作れなかった」というようなことをおっしゃっていました。その状態からどうやって物語を作っていったんですか?
── 理屈で学ぶというよりは、ひたすらケーススタディを繰り返していったわけですね。
── では、たとえばですけど連載を進める中で最初の頃の話と整合性を取るのに苦労することなどはありました?
『ノアは方舟』第4話より
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── 具体的にどういう工夫で「なんとかなった」のか、お聞きしてもいいですか?
── なるほど。やっぱり引き出しを増やすことがとにかく大事なんですね。
イラストレーターにはWEBTOONが向いている
── pixivなどで絵を描いている読者の中にも、マンガに挑戦してみたいと思っている人がいるかもしれません。そういう方に何かアドバイスできることはありますか?
── なるほど! あくまでイラストだけを描きたい人からすると一見遠回りにも思えるけど……。
── 「得」というのはいい表現ですね!
『先輩はおとこのこ』第3話より
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── たしかにそうですね。コマ割りのレイアウト作業もそうでしょうし、どうしても描きたい決めゴマがあったとしても、前後を調整して、見開きのタイミングを見計らわなければいけなかったり。
── 「描きたくない絵」って(笑)。
── 絵描きとしてのカタルシスは、WEBTOONのほうが得やすいということですよね。
── 『先輩はおとこのこ』はLINEマンガ連載時はWEBTOON形式でしたが、単行本では一般的なヨコ読みのマンガになっていますよね。
ぽむ:はい。ヨコ読みへの組み替え作業は、専門のスタッフさんに全部やってもらっています。
【同じシーンの比較】
上がタテ読みで、下がヨコ読み。
上:タテ読み第1話、下:単行本1巻13ページ。名乗った後の咲のコマは、タテ読みだと表情だけだが、ヨコ読みだと上半身が描き足されている。
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── その際、ぽむ先生からコマ割りに関して指示を出したりするんですか?
── 逆に、ヨコ読みに組み直す過程で「この部分の絵がちょっと足りないから描き足してください」と指示が来るケースもあると聞いています。
── そうなると、「自分の作品を勝手にいじられている」みたいな感覚はまったくなさそうですね。
既刊6巻で、今後も刊行が続きます。紙の本のほか、電子書籍でも読むことができます。単行本の詳細はこちら
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── ちなみにタテ読みとヨコ読みでは、同じ作品でも読者層が違ったりするんですか?
── たしかに、WEBTOONの読者は、ライトなマンガ好きという人も多いのかもしれませんね。
『ぱいのこ』新作ではまことの中学時代を描く
── 『先輩はおとこのこ』のアニメ化についても少し聞いておきたいんですけど、先日2024年にフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送されることが発表されました。その他の情報はこれから順次公開になっていくんですよね。
TVアニメ「先輩はおとこのこ」ティザービジュアル ©pom・JOYNET/LINE Digital Frontier・「先輩はおとこのこ」製作委員会。アニメ公式サイトはこちら。
── ぽむ先生は原作者としてどの程度関わっているんでしょうか?
── アニメを制作される方々って、原作者と同じぐらい作品のことを考えていたりしますよね。
── めちゃくちゃいい話ですね……。ではアニメ制作の進行に関しては、何も心配することなく大船に乗った気持ちでいるんですね。
── では今後についてのお話も少し聞かせてください。『ノアは方舟』の連載が先日終了しましたが、今現在はどんな感じですか? ホッとひと息ついているところなのか、次の準備で忙しいのかで言うと。
── 『ぱいのこ』新作! 急にビッグニュースが出てきましたね。
── なるほど……なかなか重い話になりそうな予感がしますが。
── 楽しみにしています。ほかに何か、将来的にチャレンジしたいと思っていることはありますか? マンガやイラストに関係のないことでも。
『ノアは方舟』第11話より、「ペンギンではなくケープペンギン」と訂正された後のシーン。
ⓒpom/LINE Digital Frontier
── いいですね! そのためにも、“動物に詳しい作家”というイメージを持ってもらいたいですもんね。
12月21日(木)より『先輩はおとこのこ 出会い編』連載開始!

登場人物たちの過去に焦点をあてた新作マンガの制作が進行中!!
12月21日(水)より、LINEマンガにて公開予定です。ぜひお楽しみに。
『先輩はおとこのこ』はLINEマンガにて配信中!
”かわいいもの”が好きな花岡まことを中心に、自分の本当の気持ちや隠した弱さに向かい合う高校生たちの物語をぜひお楽しみください!
また、タテ読みではなく、ヨコ読みの形式で読みたい人には、紙の単行本や電子単行本もありますので、ぜひそちらもチェックしてください!
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