BLは空気かつ水かつカンフル剤かつ清涼剤。小説家・三浦しをん先生の熱いBL愛
投稿プラットフォーム「pixiv」×BL業界No.1レーベル「ビーボーイ」でお届けするBLマンガ&小説コンテスト「ビーボーイ創作BL大賞」。
4/14(金)より開催される第3回には、小説部門の特別審査員として小説家の三浦しをん先生がご参加されます。大人気作家であり、熱烈なBLファンとしても知られる三浦先生に、知られざる「BL愛」をお伺いしました!

- 三浦しをん Miura Shion
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小説家。2006年『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)で直木賞を、2012年『舟を編む』(光文社)で本屋大賞を受賞。数多くの小説やエッセイを執筆する傍ら、熱烈なBLファンであることも有名。数々のBLマンガ・小説を読破し、自身のエッセイや各種対談にてBL人生を熱く語っている。
写真撮影:松蔭浩之
小説家の私生活 「創作活動との両立は、できてないです」!?
── デビュー前の創作活動や、小説を書き始めた頃のことを簡単に教えてください。
三浦:中学二年か三年のころ、村上春樹さんの『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』(新潮社)を読んで、「なんておもしろいんだ!」と興奮し、授業中に猛然と小説を書きました。まさに中二病。その小説もどきは、レポート用紙にびっちり十数枚の大作(?)として完結しましたが、そこで我に返って、だれにも見せずに自室の机の引き出しにしまいました。
小説や漫画を読むのはずっと好きでしたが、以降、デビュー作に取りかかるまでは、自分で小説を書いてみようと思うことはなかったです。
── デビューのきっかけを教えてください。
三浦:読書が好きだったので編集者になりたいと思い、就職活動でたくさんの出版社の採用試験を受けました。結局、どこも受からなかったのですが、そのうちの一社の面接担当だった編集さんが、入社試験の作文を読んで、「おもしろいから、小説を書いてみたら」と言ってくださいました。「おもしろいって言ってもらえた〜」と調子に乗って書いた小説が、デビュー作の『格闘する者に○』(新潮文庫)です。
── 1日のタイムスケジュールを簡単に教えてください。また、私生活と創作活動の両立のコツはありますか?
三浦:規則正しい生活をすると体調を崩す派なので、タイムスケジュールはないです。日によって、ほんとバラバラですね。深夜三時に寝て午前十一時ごろに起きるときもあれば、午前五時に起きて夕方五時ぐらいまで仕事してるときもあり、たとえば今日、何時に就寝するのか私自身もわかってません。すべて気の向くままです。
私生活と創作活動の両立は、できてないです。たいがい仕事が行き詰まってるので、気分転換に皿を洗ったり、育ててる植物のお世話をしたり、煮込み料理を作りつつじっと鍋を眺めたり、排水口の掃除をしたりします。そう考えると、仕事が行き詰まるおかげで、なんとか家事をこなせているのだとも言えるか……。ありがとう、行き詰まり! いや、ありがたくない。遊びたいよ。
── アウトプットだけでなく、インプットも大切。日々、どんなインプットをされていますか?
三浦:毎日、なにかしらの本や漫画や雑誌は読んでますね。その時間が多いせいで、仕事が行き詰まるのでは? という気もしますが、とにかく読むのが好きなので。
以前は映画もけっこう見ていたのですが、ここ十年ぐらい、映像を見ると、目と脳が疲れてしまって、めっきり……。加齢のせいでしょうか。あ、でも、『HiGH&LOW』シリーズは公開されたら即映画館に行きますし、DVDも繰り返し見てます。今日も、『ハイロー(と略す) THE WORST X』の十回目ぐらいのDVD鑑賞をしました。その時間を仕事にあてていれば、行き詰まらなかったのでは? と、やっぱり思わなくもないですが、やめられないですね。
そうだ、EXILE一族のいろんなグループや、BUCK-TICK、KinKi Kidsなど、好きなひとたちのコンサートに行くのは、私にとって一大イベントかつ、大事なインプットの時間です。コンサートを見てると、なんか思考が活性化する瞬間がありませんか? 遠征の場合、旅の醍醐味も味わえるし、遠方に住んでる友だちとひさしぶりに会ってしゃべったりもできて、コンサートってその前後も含めて、本当に楽しくていいものだなと思います。
幼い頃から「創作物のなかの仲のいい男性同士」が好きだった
── BL読者デビューはいつですか?
三浦:えっ、「BL」って言葉がない時代からだからなあ……。
ナチュラル・ボーン・オタクなもんで(「オタク」って言葉も一般的じゃなかった時代でしたが)、物心ついたころから、「創作物のなかの仲のいい男性同士」が好きだったんですよ。時代劇『必殺』シリーズの再放送とか食い入るように見てましたし、檀一雄の『花筐』とか福永武彦の『草の花』といった小説も、小学生のときに嗅ぎ当てて「こ、これは……!」と思ってました。むろん、アニメも特撮も幼児期から見まくってたし、「週刊少年ジャンプ」も近所のお兄さんが読み終えたものを毎週貸してもらってました。少女漫画の好みはもちろん、白泉社、秋田書店でした。
そんなこんなで平成になってすぐ、中学生のときに、薄々存在を察知してた同人誌と本格的に邂逅したんですよ。ほとんど同時に、雑誌「JUNE」(マガジン・マガジン)も読むようになったし、リブレさんでいうと月刊誌「MAGAZINE BE×BOY」の前身にあたる「b-BOY」は、旧青磁ビブロス時代の創刊期から読んでます。たしか最初は雑誌じゃなく、カバーつきのムックだったと思うのです。
そのあと何年かかけて、「BL」という呼び名が定着していったような……。
というわけで、物心ついてからと考えると、四十年ほどまえ。中学生からと考えると三十年以上まえに、めでたく読者デビューいたしました。以来、楽しくBL読者道に励んでおります。
── 三浦先生は今まで数々のBL作品を読まれてきた猛者ですが、特に印象に残っている作品とその理由を教えてください。
三浦:挙げてるあいだに人生が終わっちまう! パスで!
── 三浦先生が感じているBLの魅力とは、どんなところでしょうか?
三浦しをん作品の絶妙な関係性
── 三浦先生の作品で、男同士の絶妙な空気感に萌える!といえば『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)の多田と行天の付かず離れずの距離感、『月魚』(KADOKAWA)の瀬名垣と真志喜のじっとりと緊張を孕んだ関係性。それぞれどのようなところにこだわって書かれたのでしょうか?
三浦:萌えていただき、光栄です。
『月魚』ははるか昔すぎて、あまり覚えていないのですが、なるべく繊細な感じに研ぎ澄ました文章で書きたいなと思っていた気がします。前述のとおり、私は「JUNE」に載っていた小説が好きでして……。当時は「耽美系」といったように呼ばれていましたが、そういう耽美なムードを醸しだせたらいいなと願って書いた一作です。
お互いに好き同士なのに、いろんな事情があって素直には気持ちを伝えられない、というの、萌えますよね……。
三浦:『まほろ駅前』シリーズは、はみだし者のおっさん二人の話なので、書いてて楽しかったです。ぽんぽんとセリフのやりとりをさせつつも、その発言にいかに重層的な意味を持たせるか、二人の距離や関係性の変化を象徴させるか、といったところに気を配りました。
ちょっとずつ相手への理解が深まったと思った瞬間、互いのあいだにあるどうしようもない断絶を突きつけられ、でもまたちょっとずつ歩み寄っていく、というの、恋愛関係じゃなくても萌えますよね……。
── BLのLは「ラブ」、「恋愛」を中心に描いた作品群ですが、三浦先生がご自身の作品中で、「恋愛」を描く上でこだわっている点がありましたら教えてください。
三浦:読むのは好きですが、自分ではあまり恋愛を書いてな……げふん。
AさんがBさんを好きになる理由を書くのが面倒くさ……げふん、「好きになるのに理由はいらない」と思っているので、流れのなかでなんとなく、「あ、もしかしてAさんはBさんのこと好ましく思ってるのかな」と読者のかたに伝わるように書きたいと思っています。「恋愛とはこういうものだ」と規定するのではなく、「そのひとにとっての恋」を書けるといいなということも心がけています。
あと、「いきなり登場人物がおっぱじめるので困惑する」と一部で定評があるので(?)、いきなりおっぱじめないように慎みたいと思います。
── こんなBL書いてみたいな、もしくは読んでみたいな、というネタがありましたら、ぜひ教えていただけませんでしょうか?
三浦:常に貪欲にBLを求めてるので、作者のみなさまのお心の赴くままに書(描)いていただけるだけでありがたいです。
自分で書くとしたら? 先日、「こういう二人はどうだ!?」と、なんか思いついたことがあったんですけど、忘れてしまった……。いつか書くときが来ても、いきなりおっぱじめないように慎みたいと思います。
── ズバリ、三浦先生にとってBLとはどんな存在でしょうか?
── 三浦しをん先生の作品を読まれた方でも、こんなに熱いBL愛を秘めてらしたと知らない方も多かったのではないでしょうか。貴重なインタビューをありがとうございます!
そんなBL大ファンを公言する三浦先生に作品を読んでもらえる貴重なチャンス、BL小説を書かれる皆さまはくれぐれもお見逃しなく!
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