"好き"って気持ちの熱量がすべて。アニメ業界を支える背景美術の仕事とは?
お花見でも桜は見ない! 常人には理解できない背景美術あるある
── 背景さんのエピソードを漫画化しようと思ったきっかけはなんだったんですか?

背景さんの話を聞いていて「なんか、おかしいぞ」と思ったのがきっかけですね。背景さんはもちろんですが、背景美術の仕事をしている人ってどこか変わってる気がします。
── 具体的にどんなところが変わってるんですか?

仕事が生活の100%を占めているというか、四六時中絵のことを考えてるんですよ。

たまに仕事が落ち着いているときがあっても、空いた時間にはほとんど絵を描いてますからね(笑)
── それはたしかに変わってるかも……。これはネタになりそう!って感じですか?

もともとエッセイ漫画を描いてみたいなとは思ってたんですよね。ただ、漫画家としての自分を描くと客観的に描けない気がして……。そんなときに身近にいいモデルを見つけたので、ちょっと描いてみようかなと。
── ということは、漫画に登場するエピソードは背景さんが体験された実話ということですね。

そうです! ほぼすべて本当にあったことですね。会社で、寝袋で寝たエピソードも実話……。

▲ 『おつかれ背景さん』第1話より

自分はアニメ業界については詳しくないので、すべて背景さんの話をもとにネタを作っています。
── 『おつかれ背景さん』には女性キャラクターが多く登場しますが、それも実在の方なんですか?

一応みんな、モデルにしている人はいます。実際、背景美術の現場って女性がすごく多いんですよ。しかもキレイな人ばっかり!
── それじゃあ、多忙とはいえ華やかな雰囲気なんですね! ちょっと気になったんですけど、実際にあった話をもとに起承転結をつけてまとめるのって難しくないんですか?

うーん、背景さんと話していると、たいてい何か"おかしなこと"を言い出すので、それを掘り下げてネタにしています。だから難しいってことはないですね。

なんか私、常識からハズレてることを言ってるらしいです……。
── (笑) たしかに、実物の雲を見て「あんな雲じゃリテイクだ」って思うエピソードなんて、普通の人じゃない感覚ですよね。

▲ 『おつかれ背景さん』第1話より

それから、街を歩いているとき、普通の人は絶対食いつかないようなものを写真に撮っていることもあります。錆びた鉄看板とか細い裏路地とか。
それって"背景美術あるある"みたいで、この間背景さんと一緒に背景美術の人ばかり集まるお花見に参加したら、誰も桜を見ずにずっと"苔むした壁"を見てるんですよ。
それって"背景美術あるある"みたいで、この間背景さんと一緒に背景美術の人ばかり集まるお花見に参加したら、誰も桜を見ずにずっと"苔むした壁"を見てるんですよ。

そういえば桜の写真、1枚もなかった……!
── それはもったいないというかなんというか……。ほかにも"背景美術あるある"ってありますか?

電車に乗って窓の景色を見てると「レイヤー5段か……。キツいな」って思うことがあります。
まず一番手前の電柱が流れて行って、次にその奥の家が何軒か。もっと奥の家は、流れていく速度が違うからレイヤー分けなきゃで、さらに一番奥には動かない山……ってなると、描き分けるのかなり大変なんですよ!
まず一番手前の電柱が流れて行って、次にその奥の家が何軒か。もっと奥の家は、流れていく速度が違うからレイヤー分けなきゃで、さらに一番奥には動かない山……ってなると、描き分けるのかなり大変なんですよ!

普通そんな見方しない(笑)
── しないですね(笑) 漫画家であるなつみんさんも、一般的には"変わってる"と言われるような気がするんですが、そんななつみんさんから見ても"変わってる"ってすごいですよね。

自分は、仕事はある程度割り切って、時間とクオリティのバランスを常に考えて仕事をしたいタイプなんですね。というか、ほとんどの人がそうだと思うんですが。
でも、背景さんはどこまでもつきつめてやるんですよ。本当に時間ギリギリまで。
たぶん絵を描くことが大好きなんでしょうけど、"好き"っていう力をずっと持ち続けられる人ってなかなかいないので、素直にすごいなって思います。
でも、背景さんはどこまでもつきつめてやるんですよ。本当に時間ギリギリまで。
たぶん絵を描くことが大好きなんでしょうけど、"好き"っていう力をずっと持ち続けられる人ってなかなかいないので、素直にすごいなって思います。

ありがとうございます(照) 仕事は大変ですが、大好きです!
── "好き"という力のすごさは漫画からも伝わってきます。そんな『おつかれ背景さん』の今後の見どころを教えて下さい!

今、公開されているエピソードは、アニメ業界や背景美術という仕事の紹介がメインですが、ここからぐっと人間味が増した話が増えていきます。背景さんの仕事がもっとキツくなったり、いろいろな壁にぶち当たったり……。自分で描いていて辛いエピソードもあるくらいです。
ただ、どんなに辛い状況にあっても、絵と心中するくらいの覚悟を持っている人たちがアニメってものを作ってるんだってことが、読者の方に少しでも伝わるとうれしいです。
ただ、どんなに辛い状況にあっても、絵と心中するくらいの覚悟を持っている人たちがアニメってものを作ってるんだってことが、読者の方に少しでも伝わるとうれしいです。
── ありがとうございました!
"好き"の力を持ち続ける大切さ
今回、ピクシブ本社で行われたインタビューの様子をなつみんさんが漫画にしてくださいました! 本編の『おつかれ背景さん』同様、背景美術あるある満載です。



背景さんのお話を伺って、背景美術をはじめとするアニメ業界の多忙さと大変さがひしひしと伝わってきました。それでも、仕事の話をするときは、終始笑顔でとても楽しそうな背景さん。
なつみんさんの言葉どおり"好き"という力の生み出す熱量はとても大きなもののようです。"好き"の力を持った人たちが手掛けるからこそ、アニメはおもしろいのかもしれません。
なつみんさんの言葉どおり"好き"という力の生み出す熱量はとても大きなもののようです。"好き"の力を持った人たちが手掛けるからこそ、アニメはおもしろいのかもしれません。
『おつかれ背景さん』はピクシブエッセイで連載中!

▲ 『おつかれ背景さん』コミックス第1巻
※ カバーデザインは変更になる場合があります
※ カバーデザインは変更になる場合があります
エッセイ漫画史上初、アニメ業界の縁の下の力持ち「背景美術」の仕事にスポットをあてた『おつかれ背景さん』はピクシブエッセイにて連載中です。
また、2016年9月には待望のコミックス第1巻が発売予定!
『おつかれ背景さん』連載ページはこちら
また、2016年9月には待望のコミックス第1巻が発売予定!
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