「伝わるように」描くことが大事。マンガ家・桜日梯子先生に聞くプロの作品づくり
投稿プラットフォーム「pixiv」×BL業界No.1レーベル「ビーボーイ」でお届けするBLマンガ&小説コンテスト「ビーボーイ創作BL大賞」。
現在開催中の第3回には、マンガ部門の特別審査員として漫画家の桜日梯子先生がご参加されます。BLマンガの金字塔『抱かれたい男1位に脅されています。』の作者である桜日先生に、プロとして心がけていることをお聞きしました。

- 桜日梯子先生 Hashigo Sakurabi
-
マンガ家。代表作『抱かれたい男1位に脅されています。』(リブレ通称:だかいち)は累計450万部を突破、アニメ化・映画化・舞台化を果たしたBL業界の金字塔的作品。2022年で作家デビュー10周年、2023年には「だかいち」も10周年を迎える。現在「MAGAZINE BE×BOY」にて「だかいち」連載中。
自分の作品を振り返って
── これまでご執筆の作品で、特に大変だった作品・話数はありますか? または「これは自分でもお気に入り」という作品・話数があれば理由とあわせて教えてください。
桜日:スペイン編(※『抱かれたい男1位に脅されています。』6巻収録)は、いかにキャラクターがスペインという場所に立っていて、その土地で特別な体験をするかを読者の皆様に感じてもらえるかを大事にしたので、前準備を一番したと思います。そして、この前準備がどれだけ物語を描く引き出しになるかを描いていて体感した回でした。
それ以降、キャラが今生きている「場所」をできるだけリアルに描きたいと思うようになりました。可能であればいろんな場所に取材にいきたいです。

桜日:あとは「血の婚礼」の舞台(※同作8巻収録)です。読者の皆様に漫画を読みながら、観劇をしているような感覚になってもらえたらと、今やれることをやりきった気がします。

── デビュー後の初期作品について、「今の自分ならもっとこうする」と思うことや、過去のご自身にアドバイスがあれば教えてください。
桜日:初期の作品は初期の作品で学ぶことが多いです。むしろ今、初期の作品に「ああ、このパッションで押し切る感じ大事だな」と教えてもらうことの方が多いです。歴が長くなると良くも悪くも落ち着きを持ってきてしまうので。
過去の自分にいうことがあるとすれば「とにかく思いっきりやれ!!」です。
デビューして変わったこと――「伝える」という気遣い
── 商業デビュー前と後で、作品づくりに関する意識が変わったことはありますか?
桜日:「伝える」ということへの気配りです。
読んでもらう方々にちゃんと伝わるような気遣いと、また「ここの感じ方は読者のみなさんに任せよう」という信頼のバランスを考えるようになりました。
描かな過ぎても不親切だし、描きすぎていてもくどい。どこまで描いてどこまで描かないかは大事だと思います。
── デビュー後、担当編集者がいてよかった!と思うことはありますか?
桜日:先程答えさせていただいたようなことは、自分では気付けないことが多いです。そういう点でも客観的な目でアドバイスをいただける担当さんがいてくれるのは本当にありがたいです。
あとひとりで殻に閉じこもって悶々とする時間も漫画家としては大事ですが、「こういうのいいね」というアイデアをお喋りの中で共有してくれる担当さんがいるのは創作の上でとても救われています。
あと担当さんは世の中の流行りに詳しいので、疎い私はそこで色んなことを教えてもらっています。
── デビュー当時の担当編集との思い出深いエピソードがあれば教えてください。
桜日:とにかく担当さんと電話越しにする茶番劇が楽しいです。
もう口に出すのもバカバカしいくらいのくだらなさですが、時になかなかのクオリティの茶番劇になることがあって、ああ、十年もこれを続けられる相手がいるって幸せなことだな……としみじみ思っております。詳しくは語りませんが、子ダヌキの感動茶番劇は今でも忘れられません。
── 作家さんにとって編集部とはどんな存在ですか?
桜日:アトリエです。
私みたいな漫画を描きだすと他はどうでもよくなってしまうようなタイプの作家からすると、安心して創作に打ち込めるアトリエのような存在の編集部さんがいてくれるのは大変ありがたいです。
── では、読者とはどんな存在ですか?
桜日:漫画を通して作家とコミュニケーションをしてくださる大切な存在です。
私の漫画を読んで、泣いたり笑ったり怒ったり萌えたりしてくれる皆さんがいてくれるからこそ、もっと泣いたり笑ったり怒ったり萌えさせたりさせたいな!と思えます。これはもう、作家と読者さんの立派な対話じゃないかなって感じています。
「描きたいもの」と「バズりそうなもの」、どちらを目指しても大丈夫
── リブレのBLレーベル「ビーボーイ」でデビューしてよかったと思うことはありますか?
桜日:漫画はもちろん、その他の展開でも色んな経験をさせていただいています。
これからもビーボーイさんとたくさん色々な新しいことにチャレンジして、BLを好きな皆様にたくさん楽しいことをお届けしていければと期待しています。
── こんな作家は「ビーボーイ」が向いてる!というのはどんなタイプ?
桜日:どんな作風の作家さんでも向いてると思います。王道の良さから、新しい冒険まで受け入れてくださる出版社さんだと思います。
── プロの漫画家になりたい方は、「描きたいものを描く」のと「大勢にうける(バズる・売れる)ものを描く」こと、どちらをめざしたほうがいいでしょうか?
桜日:どちらか一方を目指す必要はないと思います。作品ごとに「今回はバズりそうなテーマにしてみよう!」「今回は描きたいものをとことん描いてみよう!」でいいと思います。人生で描く漫画は1本ではないし、連載でもそのつど色々やれますし。
描き手として大事なのは読者さんに「楽しんでもらいたい」漫画を「伝わるように」描くことだと思います。
── デビューをめざす上で、作品づくりの際に注意したほうがよいことはありますか?
桜日:見やすい画面、見やすいコマ割り、伝わるセリフやモノローグ……とにかく読み心地です。基本だと思いますが、これがシンプルに読者さんに気を配った大事なことだと思います。ネームを描いたあとに、いったん落ち着いてフラットな気持ちで見直して、修正を入れています。
── コンテスト「ビーボーイ創作BL大賞」への応募を検討している方に、エールをお願いします!
桜日:漫画を描くことは本当に大変です。でも「形にする面白さ」を忘れず、そして大切にして、皆様の中の萌えを生み出して欲しいです。
読者様達はいつでも皆様の「萌え」を楽しみにして下さっていると思います。私もその一人です。皆様の作品を心待ちにしております!!
創作好き必見のインタビューはFANBOXでも!
「ビーボーイ創作BL大賞」を運営する株式会社リブレの公式pixivFANBOXでは、創作が好きな方・プロをめざす方必見の情報をぞくぞく発信中!!
漫画部門の特別審査員の桜日梯子先生と、小説部門の特別審査員・三浦しをん先生のインタビューが今すぐ読めちゃいます!
<<桜日梯子先生 お絵描きの楽しさやインプットについて語った「創作の原点編」はこちら!>>
<<三浦しをん先生 デビューをめざす人は必読の「プロの作品づくり編」はこちら!>>
「プロをめざす人が注意するべきことは?」「作家にとって読者とは? 編集者とは?」
幅広く活躍するプロの小説家だからこそわかるアレコレについて、さらに深掘りした情報をお届けします!
第3回ビーボーイ創作BL大賞、応募受付中!
大賞受賞作品は今まで通り即デビュー確約はもちろんのこと、ボイスコミック化・小説コミカライズを企画進行! 自分のマンガが喋る!? 小説がマンガになる!? あなたの夢を叶えるチャンスです!