この春こそひとり飲みデビュー! 『ワカコ酒』作者・新久千映先生に相談してきた

取材・文/近藤世菜
女子だって、ひとりで飲みたい夜がある!
一昔前はあまり一般的ではなかった女性のひとり飲みですが、女子のシングルライフを明るく楽しく描いた漫画やテレビドラマの影響もあって、アラサー女子を中心にひとり飲みの機運が高まってきている気がします。
とはいえ「ひとり飲み、してみたいけど勇気が出ない……」という女子はいまだに多いよう。pixivision編集部のアベシもそのひとりです。なんでも「そもそも、どんなお店に入ればいいの?」「お酒とかおつまみの種類、ぜんぜん知らないんだけど大丈夫?」「ひとりで何をして過ごせばいいものなの?」など、わからないことだらけだとか。
そこで、わからないことは経験者に聞いてみよう!ということで、女子がひとりでお酒と料理を楽しむ様子を描いた大人気漫画『ワカコ酒』の作者、新久千映先生にお話を伺うことに。

▲ 新久千映『ワカコ酒』
ご自身も大好きだというひとり飲みの体験談や、多くの居酒屋で取材をしてきた経験をもとに、ひとり飲みデビューを目指す女子のリアルな質問に答えていただきました!
新久千映先生は無類のお酒好き! 自宅には専用の棚も
── 『ワカコ酒』を筆頭に、ひとり飲みを取り上げた作品を多く発表されている新久先生は、ご自身もひとり飲みをよくされるんですよね。

はい! お酒が好きなので、ひとりで飲むのも誰かと一緒に飲むのも好きなんです。『ワカコ酒』を描きはじめたのも、担当の編集者さんと飲んでたときに「お酒好きなんだし、作品に取り上げてみたら?」って話が出たのがきっかけで。そのころは、女子のひとり飲みをテーマにした漫画ってあまりなかったので、描いてみたらおもしろいんじゃないかなと思ったんです。『ワカコ酒』のおかげで、取材のためにひとり飲みをする機会も増えました。
── 新久先生はふだんどんなところでひとり飲みをされているんですか?

最近は、ちょっと狭めの一見入りづらいお店に行くことが多いです。そういうお店って、実はすごく懐が深くて、誰でもあたたかく受け入れてくれるんですよ。それと、自宅で飲む機会もけっこうあります! 去年、引っ越しをしたときにお酒専用の棚を買って。ワインに焼酎、ウイスキー、日本酒、紹興酒……と大抵の種類のお酒は揃ってます。

▲ 新久先生のご自宅にある棚の写真。お酒やグラスがぎっしり並んでいます!
── そうなんですね! そんな新久先生がひとり飲みデビューをしたときって、どんなきっかけがあったんですか?

はじめてひとり飲みをしたのはたしか25、6歳のころ。東京に住んでいたときでした。飲み会の帰りに、なんとなく飲み足りないなと思って。それまでひとりで飲み屋さんに入った経験はなかったんですが、お酒を飲んでいたせいもあって気が大きくなっていたんでしょうね(笑) 初めてのひとり飲みにはちょっと難易度が高そうなレトロなお店に入ったんです。でも、そのお店の居心地がすごくよくて! それからひとり飲みにハマっていきましたね。デビューのときに成功するとひとり飲みのハードルは一気に下がるのかもしれません。
ひとり飲みの疑問や不安を新久先生に相談!
1. お店の選び方

最初は「自分の家の近所」か「繁華街」かっていう2択でいい気がします。近所だとふらっと立ち寄りやすいですし。毎日目の前を通っていて、入ったことはないけどなんとなく気になるっていうお店に入ってみるとか。一方で繁華街は周囲が賑やかなぶん、人にまぎれることができます。ひとり飲みにハードルを感じている人は、賑やかなところでちょっとずつ慣らしていくといいかもしれませんね。
── なるほど……! 実際にお店に入るときなんとなく一歩が踏み出せない気がするんですが、ひとり飲みに向いてるお店どうかって入る前にわかるものなんですか?

すでに女性ひとりで飲んでいる人がいるとすごく入りやすいですよね。あと、ひとり飲みにはカウンターがメインの狭めのお店の方がいいかもしれません。広いお店で周りに大人数のお客さんがいると、注文で置いていかれがちなので。でも基本的には自分が素直に行きたいと思ったお店を選べばいいと思います。どうしても躊躇してしまうという人は、誰かと一緒に飲みに行って気に入ったお店があったら「今度はひとりで来てもいいですか?」って聞いてみるのもありですよ。
── たしかに、あらかじめ聞いておけば安心ですね! ちなみに、新久先生はどんなふうに新しいお店を開拓しているんですか?

2. お酒やおつまみの頼み方
── 次に「お酒やおつまみの頼み方」について教えてください! ひとり飲みならではの注意点はなにかありますか?

おつまみはひとりだと食べられる量が限られてくるので、頼みすぎには注意した方がいいかもしれませんね。様子を見つつ一品ずつ頼むのがいいと思います。あとは、ワカコみたいに食べたいおつまみに合わせてお酒を選ぶのか、逆に飲みたいお酒に合わせておつまみを選ぶのか、好みや気分に合わせて変えてみるといいんじゃないでしょうか。
── 実は、おつまみとお酒の合わせ方ってよくわからなくて……。それがひとり飲みをためらうひとつの原因でもあるんですけど……。

私もぜんぜん詳しいわけじゃないですよ! 和食だから日本酒とか、洋食だからワインとか、それくらいの区別です。それに最近、和食に合うワインとか洋食に合う日本酒とか、すごく多様化してきてるから、ルールに縛られないで自分の感覚でいいと思いますよ。どうしても迷ってしまうときは、お店の人におすすめを聞いてお任せするのもありですね。
── なるほど! ちなみに新久先生には定番の頼み方や組み合わせはあるんですか?

やっぱり、1杯目はビールですね! そのあと日本酒とお刺身を合わせてゆっくり楽しむ流れが多いかもしれません。それとかにみそが好きなので、メニューのなかにあるとつい頼んでしまいます。

▲ 新久千映『ワカコ酒』
── ひとり飲み初心者なら「とりあえずこれを頼むといいかも!」というお酒はありますか?

日本酒が好きな人は、ぬる燗を頼むといいと思います。ちびちび飲めるのでひとりで飲んでいても間が持ちます。冷めてもおいしく飲めますしね。
まとめ
・お酒とおつまみの合わせ方は自分の感覚でいい
・迷ったときはお店の人に任せるのが確実かも
・最初はビール、日本酒はぬる燗が新久先生流!
3. 飲んでいる間の過ごし方
── それから「ひとりでどうやって過ごせいいのか」ってけっこう気になります。新久先生はひとり飲みをするときどんなふうに過ごしているんですか?

友だちと他愛のないメールをしていることが多いです。でも、お酒を飲むこと自体を楽しんでいるのでとくにこれをするっていうことはないかも……。あ、逆に絶対にやらないと決めているのが、ネームを考えたり本を読んだりっていう頭を使うこと。あと、酔っ払ってきたらお店の人や隣の人と話すこともあります。
── そうなんですね! どんなことを話すんですか?

それこそ、おすすめの飲み屋さんの話とか! 普段の生活ではなかなか接点のない方たちと出会って交流できるのがとても楽しいです。
まとめ
・過ごし方にルールはない! 単純にひとり飲みを楽しもう
・迷惑にならない程度に、お店の人や周囲の人に話しかけるのもいいかも
4. ひとり飲みの注意ポイント
── 最後に、ひとり飲みの先輩としてなにか注意した方がいいポイントがあれば教えていただきたいです!

ひとり飲みってすごく楽しいんですよ。だからつい飲み過ぎちゃうのでそれは注意した方がいいかも。とくにひとり飲み初心者だと、自分の許容量ってわからないと思うので……。私もつい飲み過ぎちゃうことありますけど(笑)
── 新久先生もお酒で失敗することあるんですか?

はい……! やっぱり飲み過ぎちゃうことはたまにあります。その日の体調によっても許容量って変わってくるんですよね。それに直前までぜんぜん平気なのに、急に酔いがまわることもあるので。最近になって、やっと自分のペースがつかめてきたくらいです。とはいうものの、つい先日飲みすぎて、お店に名刺入れを落として帰ってしまうという失敗をやらかしました……! お店の方が連絡してくださったので、無事手もとに戻ってきたんですけどね。
まとめ
・飲み過ぎには注意! ほろ酔いくらいで切り上げよう
・自分の体質やその日の体調をきちんと考えつつ飲もう
『ワカコ酒』をきっかけにひとり飲みデビューしてくれたらうれしい

誰かと一緒に飲むときって、一番の目的はコミュニケーションですよね。お酒はツールというか。でもひとりだと、お酒やおつまみをメインに楽しむことができるんです。自分の好きなものを飲んだり食べたりできるし、きちんと味わえる。それが魅力だと思います!

▲ 新久千映『ワカコ酒』

実は『ワカコ酒』を読んでひとり飲みデビューしましたって言ってくれる方がけっこういて。それを聞くとすごくうれしいんですよ! だから、ひとり飲みデビューをしたいと思っている人は『ワカコ酒』をきっかけにして、そこからひとり飲みの世界を広げていってほしいなと思います。どうしても緊張するなら、私のひとり飲みデビューのときのように、一杯飲んでから出かければいいかもしれません!
新久千映先生のインタビューをもとにひとり飲みデビューを実行!
新久先生のお話を伺って、疑問点や不安が解消したところで、さっそくひとり飲みデビューを実行!
今回ひとり飲みデビューに挑戦するのはpixivision編集部のアベシです。
向かうお店はアベシが以前から気になっていたという「にほん酒や」というお店。その名のとおり日本酒と和食がメインです。

吉祥寺のメインストリートから少しはずれたところに店を構えていて、落ち着いた大人の雰囲気が漂っています。
まずはおうちで一杯飲んで行こう!
新久先生もひとり飲みデビューは飲み会の帰りだったというお話がありました。ひとり飲みはしたい、でもどうしても躊躇してしまう……!という人は一杯飲んでから出かけるのもあり。
アベシは、いまハマっているというお手製のサングリアを一杯飲んでからお店に向かうことにしました!


一杯目はビールで!
さっそくお店に向かったアベシ。オーナーの高谷さんがカウンター席に案内してくれました。

まずは最初のお酒を注文します。新久先生の定番にならって、一杯目はビールから! 瓶ビールならすぐに出してもらえるし、お通しと合わせて飲むのにぴったりかも。


1巡目:ビール×とりわさ


▲ シャモロックのとりわさ
クセはないのに味わいがあってやわらかいシャモロックのとり肉を使用。あらめにすったイツキ大根を添えて、かえしとオリーブオイルで味付けされたひと品です。

2巡目:日本酒×おつまみ盛り合わせ
おいしいおつまみにお酒もどんどんすすみます。ビールを飲み終わったところで、いよいよ日本酒にシフトすることに!

ということで、こちらを注文することに。合わせる日本酒はお店の方にお任せして選んでいただくことにしました。

▲ お一人様酒肴3品盛り合わせ
実はこの盛り合わせ、頼まれるタイミングやお客さんの好みによって毎回中身を変えているんだとか。アベシに運ばれてきたのは「アボカドの味噌漬け」と「牡蠣のうま煮」、そして「浦里」という大根おろしに梅肉を合わせたおつまみという3種類でした。

合わせて選んでいただいたお酒は「酔右衛門」という岩手の日本酒。偶然にも東北出身のアベシはテンションが上がっていました。飲み方は新久先生おすすめのぬる燗で。オーナーの高谷さんも女子のひとり飲みにはぬる燗が合っているかもしれないと話してくれました。


おいしいお酒とおつまみにほろ酔い気分になってきたところで、高谷さんとお話することもできました。
▲ オーナーの高谷さんとアベシ







ひとり飲みデビュー大成功!
今回のひとり飲みデビューは、新久先生やにほん酒やのみなさんのおかげで大成功をおさめました。アベシいわく「ゆっくりお酒や料理を楽しんだり、自分自身と向き合って考えをめぐらしたりする時間として、ひとり飲みを続けていきたい」とのこと。
新久先生の言葉にもあったように、誰かとのコミュニケーションのために飲むツールとしてのお酒もいいですが、自分のためだけにじっくり味わうお酒もまた格別のようです。
取材協力/にほん酒や
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-13 レディーバードビル 1F
まとめ
・ひとり飲みデビューには家の近所か繁華街のお店がおすすめ
・誰かのおすすめのお店に行ってみるのもあり