【細胞擬人化】「はたらく細胞」清水茜先生インタビュー【第4回講談社まんがスカウトFes特集記事 #4】
毎年恒例、講談社とpixivの漫画の祭典「講談社まんがスカウトFes」の第4回が今年も2月1日より開催中! その開催を記念して、講談社で連載中の漫画家さん×pixivによるインタビューを全4回にわたってお届けします♪

最終回となる第4回のゲストは、月刊少年シリウスにて『はたらく細胞』を連載中の清水茜先生です! スカウトFes「7つの題材」の1つでもある「擬人化」がモチーフの作品を描くうえで、清水先生が意識していることをお聞きしました。
キャラクターを解き明かせ
――細胞を擬人化する発想はどこから生まれたのでしょうか?
当時高校生だった妹が、生物の授業で習った免疫細胞たちのことを「擬人化して覚えたい」と言っていたのを元にキャラクターを作りました。それをベースにして読み切りを描いてみたのがきっかけです。
――妹さんとのやりとりが、ここまで壮大な話になったんですね…! 特殊なストーリーですので、設定など企画の段階で考えなければならないことも多かったのでは?
企画段階で大変だったことは、主人公である「白血球(好中球)」のキャラ付けです。
先述の読み切りでは、好中球はある種の使い捨てキャラとして扱っていまして……。何かコンプレックスがあってそれを乗り越えるために戦うとか、必殺技を出してクライマックスに大活躍といったような、いわゆる「主人公」では決してありませんでした。
なのに、読んでいただいた方や担当さんに「こいつはカッコイイ」と言われて、ちょっと混乱してしまいました。私は、そこまでメインになるキャラクターだとは思っていなかったのですね。当時は、テンプレートから外れるものは良くないと思っていまして。
そこから「白血球の何がカッコイイのか?」「どうやったらコイツが主人公になれるのか?」という謎を解き明かすのが一番大変でした。
先述の読み切りでは、好中球はある種の使い捨てキャラとして扱っていまして……。何かコンプレックスがあってそれを乗り越えるために戦うとか、必殺技を出してクライマックスに大活躍といったような、いわゆる「主人公」では決してありませんでした。
なのに、読んでいただいた方や担当さんに「こいつはカッコイイ」と言われて、ちょっと混乱してしまいました。私は、そこまでメインになるキャラクターだとは思っていなかったのですね。当時は、テンプレートから外れるものは良くないと思っていまして。
そこから「白血球の何がカッコイイのか?」「どうやったらコイツが主人公になれるのか?」という謎を解き明かすのが一番大変でした。
――なるほど、設定のこと以上に、キャラクター面で苦労されたんですね。細胞キャラの性格付けはどのようにされているのでしょうか?
最初に、キャラクターの大まかなイメージ(真面目だとか腹黒だとか)から発想して決めていきます。
「マクロファージは何でもこなす細胞だから、人当たりがよくて、でも殺傷能力は高くて…」とか、「NK細胞は単独で行動する殺し屋だから、一匹狼で負けず嫌いで…」とか。
その後、性格にはそれぞれ欠点がありますので、真面目なら真面目、腹黒なら腹黒で、その欠点をカバーしてくれる性格(冷静だとか優しいだとか)をいくつか追加して、性格に柔軟性を持たせるようにしています。
そうすると、だんだん本当に実在している人間と同じような感じになってくる気がしています。
「マクロファージは何でもこなす細胞だから、人当たりがよくて、でも殺傷能力は高くて…」とか、「NK細胞は単独で行動する殺し屋だから、一匹狼で負けず嫌いで…」とか。
その後、性格にはそれぞれ欠点がありますので、真面目なら真面目、腹黒なら腹黒で、その欠点をカバーしてくれる性格(冷静だとか優しいだとか)をいくつか追加して、性格に柔軟性を持たせるようにしています。
そうすると、だんだん本当に実在している人間と同じような感じになってくる気がしています。

「はたらく細胞」に登場するマクロファージ。物腰は柔らかいが、すごく強い。
作品世界の暮らしと営み
――キャラクターのみならず、背景や小道具の精緻さにも、とても驚かされます。デザインはどのように決めているのですか?
そんなにファンタジックな背景や小道具が出てくるわけでもありませんので、写真を参考に描写することがほとんどです。
細胞たちは全員が仕事人なので、実際の職業の制服を見たり、よく似た仕事を探してそれに必要な道具を調べたりしています。
ただ、それでも帽子や服の構造が良くわからないまま描いたりしてしまうので、後から「もっとちゃんと調べて描けばよかったな」と思うことも多いです。
細胞たちは全員が仕事人なので、実際の職業の制服を見たり、よく似た仕事を探してそれに必要な道具を調べたりしています。
ただ、それでも帽子や服の構造が良くわからないまま描いたりしてしまうので、後から「もっとちゃんと調べて描けばよかったな」と思うことも多いです。
――いえ、 非常に細かく描きこまれていると思います! 器官によって洋風の建物だったり工場のようだったり、舞台の描き分けもすごく面白いです。
「細胞たちの暮らしと営み」のような物を考えた時に、「この施設が味気ない場所だったら、細胞たちは退屈だろうな」とか、「こんな真っ白けの何も飾ってない建物で働いてたんじゃ、つまんなくてやってらんないだろうな」とか考えながら、ちょっとでも楽しそうな職場になるようにやっています。
例えば赤色骨髄は、血球たちの故郷であり、母校のようなものであるわけなので、ノスタルジーなど一切感じさせないような近未来的な建物では彼らが感傷に浸ることもできない、ちょっと合わないなと思い、洋風の古いレンガ造りの建物にしました。
他にも、胃や肺などの大きな施設(器官)も、実際の企業のように見学コーナーや飲食コーナー、標語などを設け、住民である細胞たちの興味関心を刺激し、彼らが退屈そうに見えないようにしています。
そういう事をやっていると次第に「細胞たちってご飯食べるの?」とか「細胞って夜寝るの?」とか、リアリティを考えていくときりがなくなってきますが、漫画の面白さ優先で、一応自分の中にだけ答えを用意しつつ、楽しければいいや、と思ってやらせていただいています。
例えば赤色骨髄は、血球たちの故郷であり、母校のようなものであるわけなので、ノスタルジーなど一切感じさせないような近未来的な建物では彼らが感傷に浸ることもできない、ちょっと合わないなと思い、洋風の古いレンガ造りの建物にしました。
他にも、胃や肺などの大きな施設(器官)も、実際の企業のように見学コーナーや飲食コーナー、標語などを設け、住民である細胞たちの興味関心を刺激し、彼らが退屈そうに見えないようにしています。
そういう事をやっていると次第に「細胞たちってご飯食べるの?」とか「細胞って夜寝るの?」とか、リアリティを考えていくときりがなくなってきますが、漫画の面白さ優先で、一応自分の中にだけ答えを用意しつつ、楽しければいいや、と思ってやらせていただいています。
――まさに生き生きとした世界が創造されていると思います!
血球の生まれ故郷・赤色骨髄。
肺はまるで巨大企業のよう。
印象的なワンシーンを
――『はたらく細胞』には、「人体の中で日々活動する細胞」という元ネタがあります。それにまつわる資料集めやネタ集めは、どのようにされていますか。
はじめのうちは自分で本を買ったり、ネットを見て書いてあることをノートにまとめ、解説イラストを付けて数枚のプロットにまとめるということをしていたのですが、流石に医療知識は膨大すぎるので、今では担当さんや医療監修の方のお力をお借りしています。
――なるほど……そもそも人体に関する事実を1本のストーリーに仕上げること、それ自体がとても大変なのではないかと思います。ドラマ的な盛り上がりはどのように作られているのでしょうか?
ドラマが映えるように、という点では、働いている細胞さん達の日常を大切にするということを心がけています。
普段の彼らが、何を考え、何を望んでいるのか、どう思われているのかという、ページ数の関係で直接的には描写されないような部分を、どうにか情報として組み込むことが出来たらいいなと思っています。
例えば、表情や姿勢や、慌てたり焦ったりなどの「ちょっとした反応」に、普段の彼らが何を考えて生きているのかという素の部分が出てしまうと思っているので、面倒くさがらずに描いていければ、リアリティがでてドラマが一層面白くなってくれるのではないかと。
「元ネタ」をドラマチックに見せるためのアイデアは、ほとんど担当さんとの打ち合わせの中で出てくる感じです。
担当さんの言葉をお借りしますと、「読み終えた後に、どんなお話だったかなと思い返した時、印象に残るワンシーンがあってほしい」とのことでした。
普段の彼らが、何を考え、何を望んでいるのか、どう思われているのかという、ページ数の関係で直接的には描写されないような部分を、どうにか情報として組み込むことが出来たらいいなと思っています。
例えば、表情や姿勢や、慌てたり焦ったりなどの「ちょっとした反応」に、普段の彼らが何を考えて生きているのかという素の部分が出てしまうと思っているので、面倒くさがらずに描いていければ、リアリティがでてドラマが一層面白くなってくれるのではないかと。
「元ネタ」をドラマチックに見せるためのアイデアは、ほとんど担当さんとの打ち合わせの中で出てくる感じです。
担当さんの言葉をお借りしますと、「読み終えた後に、どんなお話だったかなと思い返した時、印象に残るワンシーンがあってほしい」とのことでした。
がんになってしまった細胞が心情を吐露するシーン。
――最後に、「擬人化」を題材にスカウトFesへの応募を考えていらっしゃる方へ、アドバイスをお願いします。
最初の方の好中球の話に戻ってしまいますが、擬人化してみたキャラクターが自分の好みや時世の流行りに合わないように思えても、捻じ曲げようとせずそのままにしてあげたほうがいいのかもしれないな、と思いました。
擬人化してみた作者本人は気づかなくても、彼らがもともと持っていた特性・素質が大きな魅力となって、作品世界を引っ張っていってくれるということがあるかもしれないからです。
私もまだまだ勉強中ですが、そのためにはやはり、「よく調べて描く」のが一番大切なんだと思います。素敵な擬人化漫画が生まれるのをとても楽しみにしています。頑張ってください。
擬人化してみた作者本人は気づかなくても、彼らがもともと持っていた特性・素質が大きな魅力となって、作品世界を引っ張っていってくれるということがあるかもしれないからです。
私もまだまだ勉強中ですが、そのためにはやはり、「よく調べて描く」のが一番大切なんだと思います。素敵な擬人化漫画が生まれるのをとても楽しみにしています。頑張ってください。
――清水先生、ありがとうございました! 皆さんの「擬人化」タグでのご応募をお待ちしております!