【徒然チルドレン】若林稔弥先生インタビュー【講談社まんがスカウトFes特集#3】

毎年恒例、講談社とpixivの漫画の祭典「講談社まんがスカウトFes」の第4回が今年も2月1日より開催中! その開催を記念して、講談社で連載中の漫画家さん × pixivによるインタビューを全4回にわたってお届けします♪
第3回のゲストは、週刊少年マガジンにて『徒然チルドレン』を連載中の若林稔弥先生です! ご自身のサイト&pixivにアップした作品が大人気となり、週刊連載するに至った若林先生。
3年以上にわたるWeb掲載の経験で培われた、「Webから人気を掴む」ためのノウハウをお話しくださいました!
第3回のゲストは、週刊少年マガジンにて『徒然チルドレン』を連載中の若林稔弥先生です! ご自身のサイト&pixivにアップした作品が大人気となり、週刊連載するに至った若林先生。
3年以上にわたるWeb掲載の経験で培われた、「Webから人気を掴む」ためのノウハウをお話しくださいました!
pixivのおかげで、オリジナルで勝負できた
――Webから雑誌連載になるまでの経緯を教えてください。
2012年9月に、他誌で連載していた別の作品の第1巻が発売されまして、1週間経った時点の売り上げの様子を見て「これは思ったより売れてないぞ! このままではまずい!」となったんです。
そこで、何か宣伝になることをしなければと思い、自分のサイトに4コマ漫画を掲載しはじめまして。「4コマを読んで面白いと感じた人が単行本の方にも興味をもってくれたらいいなー」と。
そのWeb掲載作が、今の『徒然』の元になったんです。
そこで、何か宣伝になることをしなければと思い、自分のサイトに4コマ漫画を掲載しはじめまして。「4コマを読んで面白いと感じた人が単行本の方にも興味をもってくれたらいいなー」と。
そのWeb掲載作が、今の『徒然』の元になったんです。
――最初の反響はいかがでしたか?
最初は自分のサイトだけで漫画を公開していたんですが、全然アクセスが集まらず、またもや「このままではまずい!」となりました(笑)。なので開始から4、5日経ったところで、当時人がどんどん集まって人気だったpixivにも同時に投稿するようにしたんです。するとまず10人くらいが見てくれて、「やったー」っていう感じで少しずつスタートしていきましたね。
その後、ページが貯まったところで同人誌として出してみたらそこそこ売れて、「この漫画、意外とイケるんじゃないか……!?」と思いまして。
元々宣伝したかった方の漫画は宣伝の甲斐なく終了してしまったので、こっちの4コマの方でどうやったら稼げるかをだんだん考えるようになりました(笑)。
その後、ページが貯まったところで同人誌として出してみたらそこそこ売れて、「この漫画、意外とイケるんじゃないか……!?」と思いまして。
元々宣伝したかった方の漫画は宣伝の甲斐なく終了してしまったので、こっちの4コマの方でどうやったら稼げるかをだんだん考えるようになりました(笑)。
――思わぬ形でつながっていったんですね。pixivでの人気も変化していきましたか?
はい。少しずつランキングにも入りはじめて、「あれ、やっぱりこの漫画、結構イケるんじゃ…!?」という感じでした。そして2013年8月。ついにデイリーランキング1位を取り、いくつかの出版社から書籍化の話をいただくまでになったんです!
それから、別マガ・週マガと雑誌での連載を続けて今に至るわけですが、自分でもすごく驚いてますね。ああいうスタートだったことを考えたら、「超出世してんなー!」って。
それから、別マガ・週マガと雑誌での連載を続けて今に至るわけですが、自分でもすごく驚いてますね。ああいうスタートだったことを考えたら、「超出世してんなー!」って。
――pixivが大きなきっかけの1つだったということで、まさにこれからスカウトFesに投稿しようと考えている皆さんには、とても夢のあるお話ですね!
pixivさんって本当に素晴らしいんですよ! というのもあの当時って、まだWeb上の素人のオリジナル作品はあんまり注目されてない空気があったんです。「宣伝したいのなら、二次創作のイラストを上げた方がアクセスは伸びるのに」っていう。
ところが今は、Webでもオリジナルを描くのが一般的になったし、書籍化につながる作品の数もずっと増えました。それは、pixivが素人のオリジナル作品を積極的にフィーチャーしてきたから、ということの功績が大きいと思います。
……本当に良い時代になったなあ。
ところが今は、Webでもオリジナルを描くのが一般的になったし、書籍化につながる作品の数もずっと増えました。それは、pixivが素人のオリジナル作品を積極的にフィーチャーしてきたから、ということの功績が大きいと思います。
……本当に良い時代になったなあ。
Web漫画に大切な4つの鉄則
――Web版『徒然チルドレン』を創作するうえで、Webならではの工夫などはあったのでしょうか?
いろいろなことを考えてましたね。Webで人気を取る漫画を描くために、僕が特に意識していた点は4つ、「見やすい」「読みやすい」「分かりやすい」「感想を持ちやすい」です。
まず「見やすく」するために、Webだからといって作画に手は抜かず、なるべくキレイに仕上げました。当時の素人のWeb漫画ってラフに描いたもの、悪く言えば落描きっぽいものが多かったんです。僕の場合、元々商業作品の宣伝として載せはじめたので「ちゃんと買うに値するものを作る人なんだな」って感じてほしかった。
まず「見やすく」するために、Webだからといって作画に手は抜かず、なるべくキレイに仕上げました。当時の素人のWeb漫画ってラフに描いたもの、悪く言えば落描きっぽいものが多かったんです。僕の場合、元々商業作品の宣伝として載せはじめたので「ちゃんと買うに値するものを作る人なんだな」って感じてほしかった。
――なるほど。丁寧に描くことで、気持ちも伝わるということですね。
そして「読みやすく」するために文字数はなるべく減らし、長ったらしい説明が要らない内容にしました。説明はたった一言、「好きな女の子に呼び出された! 以上」っていう漫画が好きなんですよね。「説明はもう終わったから、さあ後は楽しんで!」みたいな。
――説明が少なければ、「分かりやすさ」にもつながりますよね。
そうなんです。特にWebって、紙のページ以上に文字や情報の多さが重たく感じられてしまうので、そうならないようかなり意識しています。
例えばですが、最初『徒然』は、どのキャラクターにも名前がなく、一度しか登場させないつもりで描いていたんですよね。
例えばですが、最初『徒然』は、どのキャラクターにも名前がなく、一度しか登場させないつもりで描いていたんですよね。
――えっ!? 確かに読み返してみると、第1話「告白」には女の子の名前が出てきていません…。
「分かりやすさ」を突きつめた結果、キャラクターを覚えなくてもどこからでも読めるように、毎回登場人物が替わる漫画にする予定でした。
その予定だったんだけど……。それぞれのキャラに人気が出てきたおかげで、使い捨てするわけにはいかなくなりまして(笑)。急きょ路線を変更して、各キャラをもっと掘り下げていく展開になりました。
その予定だったんだけど……。それぞれのキャラに人気が出てきたおかげで、使い捨てするわけにはいかなくなりまして(笑)。急きょ路線を変更して、各キャラをもっと掘り下げていく展開になりました。
――ファンの「後押し」がキャラを動かしたということかもしれませんね! 最後の「感想が持ちやすい」というのは?
例えば1枚のイラストがあったとして、「可愛い」「かっこいい」とかの感想が持てるものは、評価がつきやすいんです。逆に、すごく上手なんだけどなんと言っていいか分からないイラストには、見た人が感想を付けられないんですよね。
普段のpixivなどにも、30ページくらいの続きもの漫画を1ページごと分割してアップしている人がいます。それだと、ストーリーの説明やつなぎにしかならない単体ページが出て来てしまいます。これは評価されにくいです。
僕が4コマ形式で描きはじめた理由はそこなんです。4コマ1本の中には必ず1回オチがあるので、はっきりと感想が持てる。4コマってすごく感想が持ちやすいんです。 評価が増えれば自然と人の目につきやすくなり、人気も上がっていく、と。
普段のpixivなどにも、30ページくらいの続きもの漫画を1ページごと分割してアップしている人がいます。それだと、ストーリーの説明やつなぎにしかならない単体ページが出て来てしまいます。これは評価されにくいです。
僕が4コマ形式で描きはじめた理由はそこなんです。4コマ1本の中には必ず1回オチがあるので、はっきりと感想が持てる。4コマってすごく感想が持ちやすいんです。 評価が増えれば自然と人の目につきやすくなり、人気も上がっていく、と。
――そこまで計算されていたとは…。そういうファンの方の評価が、pixivなら直接若林さんに届くわけですよね。やはり雑誌連載での反響とは違いますか?
pixivのコメント欄に感想もらえるのって、最初すごく嬉しかったんです。毎日何かしらのリアクションが来る喜び…。一方、当時はファンレターなんて年に2、3通来るだけでしたし。
でも……。1〜2年過ぎた頃から、心を掻き乱されるようにもなりました…。
でも……。1〜2年過ぎた頃から、心を掻き乱されるようにもなりました…。
――えっ。ファンの反響に、ですか?
長く続けて人気が出てくると、褒めてもらうことに心が麻痺してくるんです……。けれど、たくさん褒めてもらえてる中に1つ2つ混ざっている「つまんない」というコメントは、すごく心にズシンと来る……。
嬉しさは麻痺する。でも、そういう辛さには麻痺しない!(笑)僕の心が汚れているのかな……。
嬉しさは麻痺する。でも、そういう辛さには麻痺しない!(笑)僕の心が汚れているのかな……。
――反響が届きすぎる、というのも大変なのですね…。
でも、わがままな話なんですが、逆に今度は、年に2,3通来るファンレターが今まで以上に嬉しく感じられるようになりました。
一度、女子高生から直筆の手紙が来まして、その中でいきなり僕への恋愛相談が始まったんです! 「クラスの男の子にこんなことを言われたんですが、あれは告白でしょうか?」と書いてあって、「いや、僕に言われても分からないよ!(笑)」と思いつつも、わざわざこんなアナログな手段で送ってくれたっていうのが嬉しくて嬉しくて…。
一度、女子高生から直筆の手紙が来まして、その中でいきなり僕への恋愛相談が始まったんです! 「クラスの男の子にこんなことを言われたんですが、あれは告白でしょうか?」と書いてあって、「いや、僕に言われても分からないよ!(笑)」と思いつつも、わざわざこんなアナログな手段で送ってくれたっていうのが嬉しくて嬉しくて…。
――すごい…。まるで作中に出てくる「恋愛マスター(香取先輩)」のような扱いです…! 反響にもいろいろな形があるのですね。
というわけで、皆さん! ぜひ僕にファンレターを送ってください!

▲「恋愛マスター」こと香取先輩。相談を受けて、この一言。
キャラクターは1人では立てない
――そのほか、キャラクターを作るうえで意識されていることはありますか?
基本、キャラを作るときはペアで考えていますね。まず1人、面白そうな子を思い浮かべたあと、もう1人、そいつの良さを引き出せる子を探します。「こいつじゃない、こいつでもない…」というふうに。
――相方をどんどん替えて探していくような感じですね。
はい。例えば香取の場合、最初に「少女漫画に出てくる男達のやってることって、つまりはこれだよなー。僕だったらこんな奴ら殴りたいなー」という思いがあって、「よし、香取を平気で殴れる女の子を出そう!」ってなったんです。そして松浦さんが生まれました。
でも、連載していくうちに「香取の言動に素直にキュンキュンしてる奴がいても面白いぞ」と思い、数子が生まれました。
でも、連載していくうちに「香取の言動に素直にキュンキュンしてる奴がいても面白いぞ」と思い、数子が生まれました。
――「殴りたい」から、キャラが生まれることもあるんですね(笑)。
もちろん、普通のシチュエーションから考えたりもしてます。
コンタクトレンズを落とす話(※第16話「コンタクト」)の場合は、相手の興味を引くために「落としちゃったー…♪」っていうのをやりたくて。まあ落とすとしたら女の子の方かな、でもそれをわざとらしく言う子は違うかな、気持ちに気づいてほしくてモジモジしてるみたいな感じかな、というふうに頭の中でシミュレーションしていきました。
じゃあ、相手となる男の子はどんなふうに気持ちに気づいてあげる奴が面白いんだろうか、と考えたとき、「全っ然、気づかない」というのが面白そうだ、と思いつき、描いてみたという感じですね。
コンタクトレンズを落とす話(※第16話「コンタクト」)の場合は、相手の興味を引くために「落としちゃったー…♪」っていうのをやりたくて。まあ落とすとしたら女の子の方かな、でもそれをわざとらしく言う子は違うかな、気持ちに気づいてほしくてモジモジしてるみたいな感じかな、というふうに頭の中でシミュレーションしていきました。
じゃあ、相手となる男の子はどんなふうに気持ちに気づいてあげる奴が面白いんだろうか、と考えたとき、「全っ然、気づかない」というのが面白そうだ、と思いつき、描いてみたという感じですね。

▲松浦さんと数子。対称的な2人。
スカウトFesではとにかく目立て!
――お話を伺いますと、若林先生が「Webでの見せ方」から「キャラクター作り」まで、非常に工夫をこらしていらっしゃるのが伝わってきます。
最後に、若林先生からスカウトFesに投稿される方へのアドバイスをお願いします。
お題が決まっているということは、相手と競合しがちなわけですよね。なかなか難しいですね。もしも僕がスカウトFesに参加して全力で勝負するとしたら……。とにかく目立つことを考えます。
まず、連続で投稿しますね。
大体の人は1つ作品を投稿して、他人が見てくれるのを待っています。ただ、そう簡単に他人は自分の漫画を読んではくれません。なのでまず目立つために、たくさん投稿します。僕も漫画を公開しはじめた当初、1日1本のペースで更新しました。
たくさん投稿すると、そのタグの中で自分の作品がズラーっと並びます。これだけで1つ目立てます。同じキャラを使った連作でも、違うキャラでもいいから、とにかく自分が「このテーマの縛りでここまで描けるんだ」というのをアピールしますね。
まず、連続で投稿しますね。
大体の人は1つ作品を投稿して、他人が見てくれるのを待っています。ただ、そう簡単に他人は自分の漫画を読んではくれません。なのでまず目立つために、たくさん投稿します。僕も漫画を公開しはじめた当初、1日1本のペースで更新しました。
たくさん投稿すると、そのタグの中で自分の作品がズラーっと並びます。これだけで1つ目立てます。同じキャラを使った連作でも、違うキャラでもいいから、とにかく自分が「このテーマの縛りでここまで描けるんだ」というのをアピールしますね。
――となると、若林さん自身が実践していたように、ショートというスタイルが有利ですね。
編集の人が賞をくれるかどうかは置いといて、やはり短くてすぐ読める容量のものが、Web上では多くの人に読まれやすいです。
そして次に、色も付けたいですね。がっつり塗らなくてもいいんです。モノクロに少し赤が入っているだけでも目を引けます。サムネイル表示で見たときにモノクロだと弱いですから、表紙を1枚付けてそこだけカラーにする、というのでもいいでしょう。
さすがに1日1本以上は大変だ、という方でも、この一手間で全然見栄えが違います。線画がラフであっても、色が乗るだけで変わりますよ。
そして次に、色も付けたいですね。がっつり塗らなくてもいいんです。モノクロに少し赤が入っているだけでも目を引けます。サムネイル表示で見たときにモノクロだと弱いですから、表紙を1枚付けてそこだけカラーにする、というのでもいいでしょう。
さすがに1日1本以上は大変だ、という方でも、この一手間で全然見栄えが違います。線画がラフであっても、色が乗るだけで変わりますよ。
――なるほど! 先ほど話に出てきた「見やすさ」ともつながります。
実は僕自身も、当時『徒然』に色を付けることは考えていました。ただ、ゆくゆくは同人誌にしたいとも思っていたので、「せっかく同人誌を買ってくれた人に色を落としたバージョンを見せるのは悪いなあ」ということで最初からモノクロで描いたんですよね。
――そこまで考えてらっしゃったとは…。
とにかく、Webという場所での勝ち方は「目立たせる」に尽きます。仮にスカウトFesの賞に引っかからなくても、編集の人がその愚直な努力や、あわよくばセンスを見ていてくれていて、もしかしたら連絡をくれるかもしれないです。
また、一般の人にも覚えてもらえるから、pixiv内で読者が増えて、いろんなチャンスも増えます。
そしてシンプルに、たくさん描くことで自分の経験値が増えます!
また、一般の人にも覚えてもらえるから、pixiv内で読者が増えて、いろんなチャンスも増えます。
そしてシンプルに、たくさん描くことで自分の経験値が増えます!
――確かに、力がつくこと以上の必勝法はありませんね。
そうなんです。人って、こういう細かいことを「やってみよう」って気にはなっても結局やらないことが多いですよね。でも、ちょっとのことだからどんどんやった方がいいです。
プラスして、「見やすさ」「読みやすさ」「分かりやすさ」「感想の持ちやすさ」を意識できたらなおいいです。
あれだけ絵の上手い人がたくさんいるのを差し置いて、僕がpixivランキング1位を取れたのも、小さい工夫の積み重ねです。絵の上手い下手は問題じゃありません。大切なのは工夫と情熱です!
プラスして、「見やすさ」「読みやすさ」「分かりやすさ」「感想の持ちやすさ」を意識できたらなおいいです。
あれだけ絵の上手い人がたくさんいるのを差し置いて、僕がpixivランキング1位を取れたのも、小さい工夫の積み重ねです。絵の上手い下手は問題じゃありません。大切なのは工夫と情熱です!
――投稿を考えている方にとって、非常に励みになる言葉です。若林先生、ありがとうございました!
担当編集・冨士川氏にお姫様だっこされる若林先生

▲先生曰く「これぞ、pixivドリームを掴んだ者のみが得る栄光だ!」
4コマ漫画『告白』