「海外のオタク活動」ってどんな感じ!? フィリピンのコスプレイヤー女子に聞いてみた!

深大寺イベント撮影/UNA 取材・編集/佐久間仁美
「海外のオタク活動って、どんな風なんだろう?」
ふと、そんな疑問を持ったことはありませんか? 海外のファンが、どんなきっかけでコンテンツに興味を持つのか、どんな風に楽しんでいるのか、コミケみたいなイベントはあるのか──考えてみると、意外と知らないことが多いかもしれません。
そんな気になる「海外のオタク活動」に迫った本企画。日本のアニメや漫画が好きすぎて日本に移住した「グローバル・オタク女子」である、フィリピン出身のコスプレイヤーLunaruさんが、日本のコスプレイヤー兼編集者・sakumaと共に、お寺の撮影イベントを体験してきました!
イベントとインタビューを通じて、東南アジアのオタク事情と、海外のファンから見た日本の面白さをたっぷりお届けします!
お寺でコスプレ写真が撮れる日本は珍しい!?
今回お邪魔したのは、コスプレ専用SNSアプリ「コスらぼっ! 2.5次元研究所★」を運営する、アイハーツ株式会社が8月末に主催した、調布市・深大寺でのコスプレイベントです。調布市観光協会のバックアップのもと、由緒あるお寺で撮影できるとあって、Lunaruさんのテンションは最高潮に!

▲ 国宝・白鳳仏を所蔵する深大寺。イベントは朝6:30開始というハードな状況にも関わらず「Oh,My GOD!(信じられない!)」という歓喜の声が響きます。
Lunaruさんは、来日4年目のコスプレイヤー。年1回、日本で開催されるコスプレ大会・世界コスプレサミットの組織メンバーに選抜された後、フィリピン代表として大会に参加しました。現在は、フィリピン初のコスプレイベント『FANTASY QUEST』の主催者としても活躍しています。


▲ イベント『FANTASY QUEST』での写真。会場は亜熱帯の緑に囲まれたファンタジックな空間そのもの。フィリピンの新聞でも紹介されました。
そんな彼女が今回1番驚いたのは、お寺などの宗教施設でコスプレ写真を撮れること。日本以外だと、かなり難しいことなんだとか。
Lunaru:中国、カンボジアは特に撮影に厳しいです。 カンボジアで『PSYCHO-PASS サイコパス』のロケ撮影をしたかったんですが、作中に登場する武器・ドミネーターが模造銃という扱いになり、撮影がNGでした。
──たしかに銃と言われれば銃ですもんね……! 日本でも屋外で撮影する際には許可が必要で、特に神社などは許可を撮るのが大変ですよね。
Lunaru:そうですね。今回のような面白いイベントが、日本にはたくさんあって嬉しいです! 素敵な写真が撮れました。


▲ 深大寺の周りは緑がとても豊か。和のロケーションに包まれた撮影をたっぷり堪能していました。
東南アジアにもコミケのようなイベントが多数ある
──日本にはコスプレ専用のスタジオを含め、撮影する場所がたくさんありますが、海外のレイヤーさんはどこで写真を撮るんですか?
Lunaru:コミケに似たイベントで写真を撮る人が多いです。
──なるほど。コミケのようなイベントが東南アジアにもあるんですね。
Lunaru:シンガポールのC3AFA(※元アニメ・フェスティバル・アジア)や、タイのOishi CosplayやCOMIC Partyなどは、規模も大きく面白いですよ。企業ブースでパフォーマンスを見たり買い物をしたりして楽しむお祭りですね。また、規模は小さいですが漫画の同人イベントもいくつもありますよ!
※ 東南アジア最大のJポップカルチャーイベント。今年はタイ、インドネシア、シンガポールなどの東南アジア以外にも、香港や日本でも開催される。

▲ タイのイベントOishi Cosplayの会場にて。
Lunaru:しかもASEAN(東南アジア諸国連合)内はビザなしで移動できるので、東南アジア内はいろんなイベントに行きやすいんです。 もちろん、日本のコミケも、行けるだけ行きます!
──超アクティブです!

フィリピンでのオタ活のヒントは「日本人街」にあり?
──Lunaruさんが、日本のコンテンツにハマったきっかけは何ですか?
Lunaru:8歳くらいの頃、『新世紀エヴァンゲリオン』『カードキャプターさくら』をテレビで見たことですね。当時はタガログ語(フィリピンの言語)の吹替版で放映されていました。
今まで見たことのない映像に、とにかくびっくりして感動しました。 当時はインターネットがなかったので、日本に関する本を買って情報を集めました。『るろうに剣心』を読んだら、侍の本を買う、みたいな。
──学び方がストイック!
Lunaru:あとは首都・マニラにある日本人街に行って、たくさんの漫画やアニメを見まくりました。日本人街には、欲しいものがなんでもありましたね。当時から人気だった『週刊少年ジャンプ』や、少女漫画なんかも、たくさん!
──特に、どんな作品が人気でしたか?
Lunaru:やっぱり『ドラゴンボール』や『美少女戦士セーラームーン』などですね。漫画をレンタルできるスポットもありました。日本の料理を食べたのも、日本人街が初めてで、日本の文化にもっと興味が湧きましたね。日本語を勉強したいと思ったのもその頃です。

▲ マニラ首都圏にあるマカティ市の日本人街。写真提供: Q.Sandel
Lunaru:その後、大学卒業前に、タイのフィリピン大使館でインターンシップをしていた時に、漫画家の友達にComic partyという同人誌やコスプレをするイベントに連れて行ってもらいました。そこでコスプレを初めて見て。
──世界コスプレサミットのフィリピン代表になるほど熱中したんですね。
Lunaru:そうです!

▲2012年の世界コスプレサミットでの様子。Lunaruさんのチームは『ヘタリア』の衣装を作って参加しました。
Lunaru:その時日本に初めて来たんですが、とにかく楽しかったし、日本人のコスプレのレベルも高くて。 ここで暮らしたいと思いました。
──素敵なご経験をされたんですね。日本に住むと決めた時、周りの方に反対されませんでしたか?
Lunaru:……実は、親に内緒で日本に行く準備をこっそり進めました。ビザを取ったり、日本にある日本語学校を調べたり。両親に伝えたのは、出発の2週間前でした(笑)。
──それは、さぞかし驚かれたでしょうね……!
Lunaru:はい。引っ越しまで時間がなかったので、荷物はそのままです。BL(ボーイズラブ)の本がたくさん置いてある私の部屋は、今も鍵をかけてあります。
──オタバレ防止は、世界共通なんですね(笑)。
東南アジアでは、BLが意外と浸透している!?
──来日した時には、ほとんど日本語が話せなかったとお聞きしましたが、どうやって日本語を勉強したんですか?
Lunaru:日本語学校での授業と検定試験、あとはアニメや漫画で学びました。私は、その時ハマっていた『東京喰種 トーキョーグール』を漫画とアニメと見比べて、授業で習わない言葉や、今時の言葉づかいを知るのに使いました。
──確かに、教科書にない現代語ってたくさんありますよね。漫画の種類によっては、マニアックな単語も一緒に覚えそう!
Lunaru:はい、日本語を勉強するのに1番いいと思います! あと、海外ではBL(ボーイズラブ)の作品も浸透していますよ。
──えっ! なんでですか?
Lunaru:日本語がわからずに、アニメや漫画を見ている人がいるからだと思います。WEBやアニメで見かけたキャラクターを、ビジュアルで好きになって、二次創作を行う人もいますね。
──なるほど、言語の壁によってそんな副産物が生まれるとは……驚きです!
海外でプレイできないゲ─ムのイラストを、WEBで画像検索をして楽しむ人も多いとのこと。ぜひpixivを使って欲しいです……!
本当に好きで来た国だから、難しい日本語も漢字も頑張れた。
──日本に来てよかった、と思うことはありますか?
Lunaru:お寿司が安くて美味しいことですね! フィリピンの食事は1食100〜200円くらいなんですが、安いお寿司でも1皿500円もするんです。しかもマズイ(笑)。
──えー!! それで2食分は辛い……!
Lunaru:その点、日本は最高です! あとご飯だけじゃなく、今考えれば日本に来てから嫌な経験をしたことは一度もないですね。本当に好きで来た国だから、難しい日本語も漢字も頑張れた。頑張った分だけ、どんどん漫画もアニメもわかってもっと好きになれるのは最高です!
──いい話だ。
Lunaru:……いや、嫌なところは一つだけありますね。
──えっ、何ですか?
Lunaru:満員電車! これだけは本当にツラい!
──その気持ち、わかります……。
同じコンテンツが好きな仲間と、いろんな視点で話せる楽しさは最高!

──最後に、いろんな国を訪問し、様々なイベントを経験したLunaruさんに質問です。Lunaruさんと同じように、アニメや漫画などのコンテンツが好きなpixivユーザーに伝えたいメッセージはありますか?
Lunaru:インターネットの世界も楽しいです。でも日本の人には海外のイベントに、海外の人は日本のイベントに、もっと遊びに行って欲しいですね!
──お互いに行き来することで、いろんな刺激や発見がありますもんね。
Lunaru:はい! 同じアニメや漫画の話を(国や文化の背景によって)違う視点で喋りながら、一緒に盛り上がるのは最高の体験ですよ!
──ありがとうございました!
偶然見かけたアニメをきっかけに、好きな気持ちを原動力に日本に飛び込み、今もコンテンツを愛してやまないLunaruさん。異文化にも物怖じせず、どんなことにも興味津々で楽しんでいる様子が、とても素敵でした。
海外のイベントが気になった方は、一度遊びに行ってみてはいかがでしょうか。あなたが想像する以上に、素敵な出会いが待っているかもしれません。

▲ かき氷をこぼしてワイワイするのも、楽しい思い出に……いや、まずシミ抜きしないと。