凸凹コンビのバイトLOVE!『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』#ゆるふわマンガレビュー
文/ひらりさ
先輩と後輩。それはマンガにおける、鉄板萌えテーマです。

ひときわ輝くあの先輩に近づきたくて部活を頑張ってみたり、厳しくて苦手な先輩が涙をこぼしているのを見て恋を自覚したり……。型にはまった上下関係があるからこそ、それぞれの二人の関係性がそこから外れていくのを見守り、悶える醍醐味があります。
といっても、実は先輩後輩だからといって、「先輩=年上」「後輩=年下」という構造になるとは限りません。そう、バイト先や会社では、年齢が逆転することもたくさんありますよね。自分より年下の人間にあれこれ教えられると、気まずいという人も多いのではないでしょうか。
『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』はまさにその「気まずい二人」を主人公にすえた作品。ホームセンターにバイトに入った平凡な大学生・良太郎と、彼の高校の後輩で黙々と(超有能に!)仕事をこなすバイトの「先輩」である、かをりとの関係を描くバイトラブコメです。

好きだからこそ頼りたくない! 年上後輩のジレンマ
「ローナンホームセンター」は、地元民の求めるあらゆる日用品・園芸品がそろう大店舗。そこで働くスタッフは、お客さんの「油吸い取るやつ、どこ?」のような曖昧な問い合わせにしっかりと回答したり、日々入荷する商品を適切に売り場に配置したり、見えないくらいの長さになったレジ列を粛々と処理していかねばなりません。

入ったばかりの良太郎は覚えることが山積みで、慌ただしい日々を過ごしています。当然、先輩スタッフにいろいろ教えてもらわないといけないのですが……一番モノを知っているのが高校の後輩である、かをり。
良太郎はかをりのことが実は結構好きなため、彼女にダメなところを見せたくなくて、いろいろ空回りしてしまいます。一方のかをりも、良太郎に対してまんざらではない様子。しかしだからこそ「後輩」である良太郎のことについちょっかいをかけてしまいます。

「かをりのほうが先輩だから」と敬語を使う良太郎に対して、かをりがタメ口を要求するうちにいつのまにか「品出しバトル」で勝敗をつけることになったり、年上としてのメンツを保とうとバイト帰りにかをりにコンビニでおごろうとした良太郎が「いや、でもなんかちゃらいかも?」と逡巡しているうちに、気づいたら、かをりのほうにおごられてしまい頭を抱えたり……。
お互いにお互いを意識しているところで先輩・後輩の関係が邪魔をして、素直じゃないやりとりが発生するわけですが……それがめちゃくちゃ萌える! のが『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』という作品なのです。
明日から頑張りたくなる「お仕事マンガ」
さらにおもしろいのが、随所に「ホームセンターならでは」の知識や会話が散りばめられていること。日々の効率的な品出しの方法や、ホームセンターの一大イベント・棚卸しの全容、そして「もしゾンビ映画の舞台がホームセンターになったら何を使って戦うか」まで、人生で知る必要はなくてもジワジワ来るホームセンター小ネタがふんだんに盛り込まれています。

ある種の「お仕事マンガ」としても楽しめる『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』。「先輩ちゃん」のクールなかわいさに触れつつ、「明日からもバイトor仕事がんばるか」と思える一作です。