もし、推してる俳優に認知されちゃったら!?「麻実くんはガチ恋じゃない!」#ゆるふわマンガレビュー

文/ひらりさ
ガチ恋……それは、恋は恋でも、ステージ上のアイドルや若手俳優に本気で恋してしまうという感情。握手会やお渡し会といった「接触」イベントが増えている昨今、俳優側から「認知」されてガチ恋がエスカレートしてしまい、手が届かない存在が、もしも実はあなたのことが気になっているとしたら……!?
推しを持ったことがあるオタクなら一度は胸によぎったことのあるだろうさまざまな妄想や「あるある」を、若手の舞台俳優の追っかけをしている男子大学生・皆川麻実と、彼が愛をそそいでいる俳優・高良涼、双方の視点を通じて描くのが、ひととせはるひさんの「麻実くんはガチ恋じゃない!」です。

男の麻実が、各種女性向け舞台で活躍していた高良にハマったきっかけは、姉から押し付けられた一枚のチケット。急遽余ったという8,800円のチケットを手にして劇場に向かった麻実は、舞台のいちばん後ろで喉がかれそうなほどの大声をはりあげている高良の「熱」に打たれ、オタクへの道を転がり落ちることになります。

出演舞台のチケットは複数枚を購入し、ブロマイドは何十枚も買うようなガチオタに変貌するも、あくまで「ひっそり応援したい」というスタンスの麻実でしたが、実は憧れの高良も彼の存在に気づき、気にかけていて……。

二次元を愛するオタク、アイドルを応援するオタク、そして若手俳優を追いかけるオタクまで、オタクの幅もジャンルも広がり、そうしたオタクを取り上げる「オタクもの」のマンガも増えてきていますよね。なかでも「麻実くん」がおもしろいのは、オタクの言動のなかでも「ガチ恋」にフォーカスしているところです。
目立たずひそかに応援しようと思っているのに、ついついブロマイドを集めてしまったり、舞台上の高良に微笑まれてテンションが爆上がりしてしまい、寝る前に何度も反芻したり、SNSに載ったオフショットのかっこよさに(萌えのあまり)「死ぬかも知れない」と発してしまったり……。自分ではおとなしいつもりでどんどんおかしく(?)なっていく様子が、男子大学生・麻実くんの喜怒哀楽を通じて、しっかりと切り取られており「ウッ、あるある……!」と思わず胸をおさえたくなります。

そのうえ「麻実くん」に萌えるのは、麻実くんが推している当人である高良も、ファンである麻実の言動に一喜一憂して狼狽してしまうところ。

実際の芸能人が「これをやってしまったら大変では!?」と思ってしまうかもしれませんが、そこはフィクションなので大いに楽しめるのもポイントのひとつです。麻実くんと高良のすれ違いモジモジぶりを通じて、自分の推しとの恋愛を疑似体験してみたり、いつかやってくる遭遇のためにシミュレーションしてみたりと、楽しみ方は無限大。あなたもぜひ、ふたりの恋路(?)を見守ってみてはいかがでしょうか?