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キツネさん メイキング&インタビュー 幻想的な世界を「Adobe Photoshop CC」で描く

インタビュー・文:小川 陽平
まるで異世界に迷い込んだような不思議な感覚を見るものに与える、幻想的だけれど精緻なイラストを描くキツネさん。その独特の色合いとタッチに魅了された人も多いのではないでしょうか。
現在は多くの雑誌や小説にイラストを寄稿されながら、ご自身でイラストや映像作品を制作・発表されています。
今回はキツネさんがイラストを描く際に愛用している「Adobe Photoshop CC」の活用法をご紹介! さらに、創作の原点と今、こらからの目標についてもお伺いしました!
ラフ
まずは大ラフをモノクロで描きます。
使っているブラシセットは、「FREE PHOTOSHOP/GIMP BRUSHES!+Explanation by JonasDeRo」というフリーのカスタムブラシセットです。この中にある「Hexagon」という六角形ブラシを使って、モノクロで下描きを描きます。

▲モノクロで描いた大ラフ。
最初に描いた下描きはキャラクターも背景の城もかなり大きくて画面に圧迫感があり、配置も単純で動きの少ない構図になってしまったのでボツに。
画面を少し傾け視点を引き、空間を感じさせる構図に変更しました。
下描きの上に新たなレイヤーを作成し、大まかに色を乗せていきます。この時のレイヤースタイルは「乗算」を使用します。
ある程度色を乗せたら新たなレイヤーを一番上に作成し、今度は「オーバーレイ」で発光している部分(城や星、右下のランプ周辺など)を描き、絵全体の明るさの分布を決めます。


▲ラフが完成した状態。
これで全体のイメージが固まりました。
彩色
全体のイメージが固まったら彩色に入ります。私の場合は塗り重ねてイメージを定着させていくスタイルなので、ペン入れ的な作業は行いません。間違いやイメージの違いなどがあったら、気にせずイメージに近づくようにどんどん上から塗り重ねていきます。
全体の明るさを調整
ラフの段階で明るさのイメージが決まったので、レイヤーを統合し描き込みをしていきます。

▲キャラクターを中心に、少し描き込みを進めたところ、全体の明るさが少し足りなく感じたため、「イメージ」→「色調補正」→「明るさ・コントラスト」で全体の明るさを調整。

▲全体の明るさと同時に、光源の光も少し手を入れています。
ある程度描き進めたら、またレイヤーを結合。さらに全体の明るさとコントラストを調整します。
構図のバランス調整、遠景の描き込み
見上げるイメージを強くするために城の位置を少し上に調整したあと、お城、空、遠景に手を入れていきます。

お城はガラス細工やシャボン玉のようなイメージにしたかったのでグラデーションを入れて形を整えていきます。
空はお城のイメージに合うよう全体に手を入れます。一番明るい奥から少しずつ雲を描き、手前に来るにつれて雲のサイズを大きくし、色をオレンジ→ピンク→紫→青のグラデーションで変化させます。
さらに地平線付近から適当な起伏をつけて、山のような遠景を描いたあと、距離の変化を感じさせるために画面左下あたりに上下の起伏を大きくつけ、森林のシルエットのようなイメージで奥との違いを描きます。
キャラクターの描き込み
遠景がだいぶ固まってきたので、手前のキャラクター回りに手を入れていきます。曖昧だった光源をランプにし、キャラクターの描き込みを増やします。

▲「編集」→「変形」→「自由な形に」でキャラクターのバランスもここで調整し、遠近感を修正しました。

仕上げ
ぼんやりとしていた部分も固まり、ようやく8割程度の完成度となりました。ここから描き込みと効果を加えて絵の密度を上げていく、いわゆる仕上げの作業となります。
パーツの追加や細部の描き込み
絵的な面白さが足りないと感じたので、カメラと三脚を追加しました。さらに新たなレイヤーで空の星を増やしていきます。


星のレイヤーに「フィルター」→「ぼかし」→「ぼかし(ガウス)」を使用してぼかしを入れ、レイヤースタイルを「覆い焼き(リニア)加算」に設定。お城の部分も同様に処理し、発光させます。
最後にクラフト紙風のテクスチャーをレイヤースタイル「ソフトライト」で合成します。
画面全体の最終調整
さらに色調整を行い全体の色合いを決めて、イラスト全体にエッジの強調をかけ印象を整えます。

「イメージ」→「色調補正」→「トーンカーブ」を開き、からトーンカーブのウィンドウを開き、RGBそれぞれのトーンカーブを調整します。発光している部分のR(赤)を強く、夜空のB(青)も同様に明るくするために上方へ調整。逆に調整の影響でキャラクターの肌色が濁らないよう、G(緑色)は少し下げています。
ここで「Adobe Photoshop CC」ならではの機能を活用します。
「ぼかしギャラリー」から「フィールドぼかし」を選択し、キャラクターやその周りと城ははっきりと、遠景や夜空の一部にはぼかしをかけて調整。最後に「フィルター」→「シャープ」→「スマートシャープ」でイラスト全体にエッジの強調をかけ印象を整えます。


完成!

最後の最後で完成度をぐっと飛躍的に高める機能がたくさんあるのも「Adobe Photoshop CC」の利点ですね。
おつかれさまでした。
アドビのサイトでは、さらに詳しいチュートリアルを掲載しています。
続いては、キツネさんにインタビュー! どのような経験を経て、幻想的なイラストを描かれるようになったのかなど、その秘密に迫るべくお話を伺いしました。