誰にも負けない"うさぎ愛"が創作の原動力。井口病院さんインタビュー

文:近藤世菜
この世で一番かわいいうんちはうさぎのうんちだ!……と、まっすぐな瞳で語るのは、pixivコミック上で更新されているコミック誌『Hugピクシブ』にて、『うさぎは正義』という作品を連載している井口病院(いくちびょういん)さん。自宅でぽぽたむさま(※)という名前のうさぎを飼っている井口病院さんは、そのかわいさに骨抜きにされてしまっているそうです。
そして今回、新創刊されたコミックレーベル「リラクトコミックス」より『うさぎは正義』のコミックスが発売されることに。それを記念して、井口病院さんにお話を伺ってきました。単行本作業で多忙を極めていたという井口病院さんを癒やすべく、インタビューは都内のうさぎカフェにて敢行。実際にうさぎと触れ合いながら、うさぎの魅力について語っていただきました。
※ "ぽぽたむさま"は愛称。本名は"たんぽぽちゃん"。
家ではうさぎが女王様。井口病院さんのうさぎ愛


うさぎのイラストや漫画を描き始めたのはここ2、3年ですが、飼いはじめたのは8年前くらいです。昔は猫派だったはずなんですけど、気付いたらうさぎのかわいさに落ちていました。

── 井口病院さんが思ううさぎの魅力的ってどんなところですか?

とにかく、どこからどう見てもかわいいじゃないですか。それからツンデレでわがままなところも魅力的ですね。どんなに振り回されても、それがむしろうれしいというか……。
── 井口病院さんが飼われているぽぽたむさまも、やっぱりわがままですか?



うさぎって、しつけが難しいと言われていて。というのも、あまり多くのことが覚えられないみたいなんです。だから、うまくしつけられなかったらそれは人間の責任。もう下僕になるしかないです。ぽぽたむさまの場合は、私がトイレのしつけを失敗してしまったので、私の部屋すべてが自分の領地だと思ってます。

うんちとうさぎは切り離せないです。うさぎは食糞もしますしね。でも、うさぎが好きな人の中に、うさぎのうんちが嫌いなんて人はいないんじゃないですかね。私なんか、この世のうんちの中でうさぎのうんちが1番かわいいと思ってます。

▲ 井口病院『うさぎは正義』より

正直、一方的な愛なんですけどね。向こうは、エサをくれるから「まあこいつはいてもいいか」ってくらいの感覚な気がします。旅行で2日くらい家を空けると存在を忘れられて「誰だお前?」って感じですし……。

▲ りんごが目に入ったとたん群がるうさぎたち。エサへの執着のすさまじさを目の当たりにしました……!

ただ、父や大人の男性が近づくと「ぶーぶー」鳴いて拒絶するのに、私に対してはそういう行動はしないので、嫌われてはいないんだなと。もう、それだけでうれしいです。

正直、すべてにおいてゆずれない部分ばかりなんですが、私はとにかく忠実に描くように気をつけています。動物キャラって擬人化されたり、デフォルメされたりして表現されることが多いと思うんですが、うさぎはそのままで最強にかわいいので、リアルに描かないとむしろもったいないです。


たまに、うさぎのキャラに肉球がついていることがあるんですけど、本物のうさぎの足に肉球はなくてふかふかしてるんです。私はそのふかふかした部分が大好きだから、そのかわいさをそのまま伝えたいというか。
── たしかに井口病院さんの描かれるうさぎはかなりリアルですよね。

忠実に再現できるように、実際にぽぽたむさまを観察しながら描いています。もちろんデフォルメしたうさぎのキャラもかわいいですし、ストーリーの流れとしてデフォルメした方がおもしろい場面もあるんですが、やっぱり元があまりにもかわいいので、できるだけそのまま描きたいんです。
── リアルに描こうとするがゆえに、表現が難しくなる部分はないんですか?

うさぎってすごく無表情なので、表情の差を表現するのはすごく難しいです。だから、額にシワを描いたり、ちょっと口角を上げたりすることで変化をつけています。
絵一本でやっているからこそ「負けたくない」って気持ちが強い


── たしかに、目以外はあまり特徴ないですしね(笑) ほかに影響を受けた作品や好きなキャラクターはいますか?

動物が出てくる絵本をよく読んでいました。とくに好きだったのは、池田あきこさんの猫のダヤンシリーズ。それから、ディズニーやピクサーの作品もよく観ます。『モンスターズインク』の悪役、ランドールが大好きなんです。あの色も目つきも悪役っていうところも、魅力的で。ネットに初めて投稿したのもランドールのイラストでした。

私、想像することが好きなので、日本の漫画やアニメのようにキレイすぎるキャラクターはあまり感情移入できないんですよ。"すき"が感じられないというか。だから、海外アニメのキャラクターが好きなんです。最近は『フィニアスとファーブ』とか『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』とかにハマっています。
── ネットに作品を投稿しようと思ったきっかけは何だったんですか?

高校のとき自分たちで漫画研究部を立ち上げたんですが、年に何回か部誌を作る以外は、ぼーっと漫画を読んでるだけで。それじゃもったいないから、今日はpixivに上げる絵を描こう、みたいに活動のひとつとして始めたのがきっかけです。

はじめのころは、ひとつでもブックマークがついたらそれだけでうれしかったです。今日は何人増えた!って日記に書いてたくらい(笑) 私、周りの人の評価はかなり気にする方なんですよ。たとえば10点満点中8点の評価だったら、この2点は何が足りなかったんだろうって考えます。
── 普通なら8点でも高得点だからうれしいで終わってしまいそうなのに……! 研究熱心なんですね。


いまはうさぎの作品が多いので、とにかく何を見てもうさぎに変換して見ています。たとえばレストランに行ったら、もし店員さんがうさぎだったらどんな感じだろう……って妄想をふくらませる感じです。

── 『うさぎは正義』では、うさぎが2匹の狼のボスとして君臨していますが、そのアイデアはどこから出てきたんですか?

明らかに強い存在が、うさぎのかわいさに振り回されるっていうギャップがおもしろいなと思って。

▲ 井口病院『うさぎは正義』より

本篇以外のエピソード、『新入社員はうさぎ』でも同じように、人間の先輩が後輩のうさぎに振り回されてます。人間なら絶対許せないようなことでも、うさぎだと「かわいいからいいか」って思っちゃうんでしょうね(笑)

▲ 井口病院『うさぎは正義』より

わたし、爬虫類とか虫とかも大好きなんですよ。だからほかの生物がメインの話も描いてみたいですね。実は、爬虫類を飼おうとしたことがあるんですが、虫を育ててエサにしなきゃいけないって言われて……。自分で育てた虫を食べさせるなんて無理だ!と思って断念しました。

でも、うさぎって虫に似てると思うんですよね。蛾とかそっくりですよ。もふもふしてるし。うさぎの目の無機質な感じは、動物というより虫に近い気がしますね。

▲ 蛾に似て……る?
── 虫がメインだと女性からはあまり好まれないような気もしますが……。

── 虫のBL、井口病院さんがパイオニアになりそうですね……! 最後に、今回発売されるコミックスの見どころやこだわりを教えてください

まずは表紙がめっちゃかわいいです。こんなにキュートな表紙なのに、中身がシュールっていうギャップを楽しんでいただければ! それから、描き下ろしがたくさんあるので、連載を読んでくださってる人も楽しめると思います。私のこだわりがつまった一冊なので、ぜひ手にとってみてください!
自分の"大好き"は作品を生み出す原動力になる

うさぎたちと戯れながら、とても幸せそうな井口病院さん。この溢れんばかりのうさぎ愛が、イラストのかわいさはもちろん作品全体の魅力を高めているのではないでしょうか。

▲ 井口病院さんは、持ち物もうさぎモチーフのものばかり! こんなところからもうさぎ愛がひしひしと伝わってきます。
「うさぎのことだけはゆずれない!」という強いこだわりが、多くの人から愛される作品を生み出す原動力となっているようです。
井口病院さん待望の初コミックス『うさぎは正義』が大好評発売中!

井口病院さんがpixivコミックにて連載している『うさぎは正義』のコミックスは、新創刊のコミックレーベル「リラクトコミックス」の創刊タイトルのひとつとして大好評発売中。誰もがメロメロになるかわいいイラストと、シュールなストーリーのギャップがクセになること間違いなし!
購入はこちらから!
取材協力/うさぎカフェおひさま
所在地:東京都世田谷区北沢2-18-5 2F
電話番号:03-3410-5299
営業時間:12:00〜20:00 ※ 不定休
