街へ出よ、テクスチャ素材を探そう。壁の質感でかばんを作るアーティストと街歩きしてきた
やっと見つけた「ありがちじゃない壁」

そして、街歩きを続けるなかで「ありがちじゃない!」と一同大興奮した壁がこちら。
メッキ、サビ、板にすだれなど、いろいろな素材が一気に楽しめるという……!
なんだか、ホテルのビュッフェ感があります。
メッキ、サビ、板にすだれなど、いろいろな素材が一気に楽しめるという……!
なんだか、ホテルのビュッフェ感があります。

壁の質感を確かめるカガリさん。

「恐らく、メッキの上に自分たちで塗装したからはがれてるんでしょう。そもそものサイディング(※2)の貼り方もおかしいように見えるなあ。水切り(※3)も付いてない! だからこんなに面白いことになってるのか……。この質感はちょっと珍しいですよ」

「うん、よくわからないけど『なんかスゴイやつ』ってことはわかった」
※2 サイディング:外装材のこと
※3 水切り:雨水が壁面に汚れを作ったり、室内に侵入したりすることがないように設ける溝のこと
※3 水切り:雨水が壁面に汚れを作ったり、室内に侵入したりすることがないように設ける溝のこと
まずこちらは、カガリさんが撮った壁写真。

こちらが私が撮った壁写真です。

同じ壁でも撮る人が違うとこれだけ印象が変わります。
他の無機物とのバランスが楽しいカガリさんの写真と、「テクスチャとして使いやすいか」を重視して撮った私の写真。
他の無機物とのバランスが楽しいカガリさんの写真と、「テクスチャとして使いやすいか」を重視して撮った私の写真。

壁写真を撮るワークショップで面白かったのも、「同じ壁でもみんな見るところが違う」という点だったそうです。
人間はひとりひとり違うんだという当たり前のことを壁写真は教えてくれるということか……。
人間はひとりひとり違うんだという当たり前のことを壁写真は教えてくれるということか……。
カガリさんのマイブームは「グラフィカルな壁」
そのときどきで壁にもマイブームがあるというカガリさん。最近のマイブームはもっぱら「グラフィカルな壁」だそう。それは一体どういう壁かというと……。

こんな感じ。ガムテープのはがし跡がたしかにグラフィカルかも……。

布ガムテープが経年変化で貼りついてそのまま壁の一部になる。それがカラフルな模様となります。

これらはすべてカガリさんが撮影した「壁写真」です。
カガリさんの言葉を借りると「街は水物」だとか。そのときどきで姿かたちを変え、ひとつとして同じ瞬間はない。そして、そこが面白い……。
うーむ、奥が深いぞ壁……! なんという奥深いものに私は足を突っ込んでしまったのか……。
カガリさんの言葉を借りると「街は水物」だとか。そのときどきで姿かたちを変え、ひとつとして同じ瞬間はない。そして、そこが面白い……。
うーむ、奥が深いぞ壁……! なんという奥深いものに私は足を突っ込んでしまったのか……。
ほかにも、街で見かけた面白いものたち
そして街には、壁だけではなく、注目してみるとたくさんの面白いものがあふれていました。

トレーに置かれたコケ。ご自由にお取りください的な? 謎すぎる……。

以前どんな形で建物が立っていたか容易に想像できるペンキの跡。そしてそれが無くなったことで模様がくっきり現れた……って、なんか宝探し感あります。

独特な装飾がかわいい事務所っぽい建物。こういった装飾は元カフェー(※4)や遊郭建築に多く見られます。
ここの人たちは毎日花見だね。いいなぁ。
※4 カフェー:明治から昭和にかけて存在した風俗営業の一種
ここの人たちは毎日花見だね。いいなぁ。
※4 カフェー:明治から昭和にかけて存在した風俗営業の一種

道路が白っぽくなっている製麺所前。雀が肥えている……小麦だ!

「あっう!」


「カガリさん! 私こういう猫除けのペットボトルグッとくるんですけどどうですか?」

「うーん僕はこういうのはちょっと……」

「本当に効果があるかわからないオカルト的なアイテムをいまだに集めてる、しかもこんなに……っていう事実、個人的には文化遺産にしたいぐらいなんだけどな……」

「そうですか」
人それぞれツボは違うらしい。
そしてそんな「自分だけが好きなモチーフ」を見つけることも街歩きの醍醐味です。
そしてそんな「自分だけが好きなモチーフ」を見つけることも街歩きの醍醐味です。

「壁写真」を撮りながら歩いているとあっという間に時間が過ぎていきます。
それこそ旅先の気分だから、歩いているだけで楽しいんですよね。
それこそ旅先の気分だから、歩いているだけで楽しいんですよね。

素敵な壁を見つけたら立ち止まって。

また歩き出して。

また立ち止まって……のエンドレス。壁採集においては、触覚も大切な感覚です。

3時間近く歩いて浅草橋から蔵前を通り、浅草寺に到着しました。

カガリさん、どうもありがとうございました(風が強い)。「壁写真」の楽しさを実感できました。自分ばかり楽しんでしまっているのではないかと心配しましたが、カガリさんも「粒ぞろいの壁が撮れました」とおっしゃっていたのでよかったです。