【小説6選】母の通夜に訪れた、かつて母と暮らした女性たちへの手紙 他

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ピクシブ文芸には、文章テクニックの記事や小説家ライター講座など、作家を目指す人を応援するコンテンツ以外にも、pixivに投稿された優秀作品を掲載する「ピックアップ」のコーナーもあります。
そのピックアップでとりあげた作品を2週に1度、pixivisionでもご紹介。
どれも素晴らしい作品ばかりなので、ぜひご一読ください。
紛争地から和風異世界・出雲国に女性として転生した自衛隊員・アラキの奮闘記。
地方豪族の令嬢“蜜柑”として、帝の嫁の座をかけて過酷な花嫁修業に勤しむ鳳凰院に転入してきたアラキは、戸惑いながらも、気まぐれな不良“綿虫”や鬼族の血を引く気弱な姫“猫”という同室の仲間と厳しくも楽しい学院ライフを送っていきます。そんな中、帝が反乱軍に急襲され……。
軽妙な文体と、生き生きと個性豊かに描かれているキャラクターがマッチ。ストーリーや設定もひねりが効いており、痛快な異世界転生エンターテインメントに仕上がっています。
ガンで死去した母から生前、7通の封筒を渡された30代の息子。ピアニスト1、ピアニスト2、美容師、神学部…それらはピアノ調律師だった母とかつて一緒に暮らしたことがある女性へ宛てたものでした。母は、通夜に誰が来るか、息子と“賭け”をします。通夜当日、最初に現れたのは……。
よく練られた設定で、通夜会場というワンシチュエーションが、つつましくも厳かでドラマチック。母が用意していたという映画のテーマソングを集めたBGMも効果的。“母を愛していた”という共通項で結ばれた息子と恋人たちによる回想がじんわりと心に染みてきます。
駆け出し芸人の伊藤春子が、先輩から屈辱的なことを言われたのを機に、相方・日比野まつりとの原点に思いをめぐらせる青春物語。
顔も存在も地味で理屈っぽい春子と、美人で明るく、感覚派の関西人・まつりという好対照な設定が効いています。心地よいポップさをはらんだ春子の一人語りには、お笑い業界の軽妙さがよく表われていると感じました。
現在と過去の絡ませ方や伏線の回収の仕方など構成も秀逸。2人のバックボーンもしっかり描かれており、“透明少女”というコンビ名にグッときます。爽快かつ、あたたかい読後感の短編です。
結婚願望はないものの、煩く言ってくる両親を黙らせようと婚活していた主人公・秋凪が、婚活パーティーで出会った真緒から「私(女性)と付き合っていることにすればいい」と驚きの提案をされることから始まる物語。
秋凪の両親にあいさつにいくために互いの情報を“試験勉強”のように学びながら親しくなる様子は微笑ましく、また、あいさつに来た2人への両親の対応にはしみじみとさせられました。丁寧な心情描写と、同性を好きになるのはごく自然なことだ、と感じられる無理のない展開に好感が持てました。