ミライショウセツ大賞 書籍化第1弾『LOST ~風のうたがきこえる~』 池部九郎さんインタビュー

2014年7月末から開催されているネット発クリエイター発掘・応援計画「ミライショウセツ大賞」からついに優秀賞作品が登場!
刊行第1弾となる『LOST ~風のうたがきこえる~』の作者池部九郎さんに、発売を記念して刊行作品の見どころや、pixivとの関わりをお聞きしました。
-まずは自己紹介と経歴のご説明をお願いします。
はじめまして。池部九郎と申します。PNの由来は、東京の池袋在住だからです。
はい、オヤジギャグですw そして本人も、結構なオヤジですorz
経歴は……書くと情けなくなって、泣いちゃいそうなので許してください(T_T)
-深い経歴をお持ちのようですね。
ではpixivを知った、投稿されるようになったきっかけを教えてください。
他サイトで知り合ったnaosukeさんに、マイピク限定公開の機能を使って、書いた小説を読んでもらって感想を聞いたのが、利用の始まりです。
「LOST」でも、同じ様に読んでもらっていたのですが、本当に真剣に感想や意見を送ってくれて……
で、naosukeさんに絵を描いてもらって、一般公開してみようと思ったのですね。


-マイピクと一緒に作品を作っていくというのは、pixivならではですね。
それでは初めてpixivに投稿されたときの反響はいかがでしたか?
「LOST」の投稿前に、テストで「サディスティック・ルージュ」を上げてみまして……一晩で150回も閲覧があって驚いたのですが、その後は全然でしたw
多分、タイトルを見て開けてはみたものの、エロはないし、ロボット出てきちゃうしで、その後は見向きもされなかったんじゃないかとw
それに「~ルージュ」は、4年も前に初めて書いた小説で、今読むと……(-_-;)
-絵も小説も、昔の作品を振り返るといろいろ思うところがありますよね。
pixivで活動する中で印象的な出来事があれば教えてください。
作品に対する怒りのコメントをしてくれた人や、
僕の作品に初めてブックマークをしてくれた
色々な人たちに出会えたことです。
-pixivに投稿されている作品で、ユーザーに特に見て欲しい作品とその理由があればお伺いしたいです。
〇 一般のユーザー様には、「LOST」の33~35を。
書籍化に伴い、下巻は別エンディングバージョンとなりますので、このオリジナルバージョンが読めるのはpixivさんだけ! というわけで、どちらもよろしくお願いいたします。
〇 クリエーターを目指す方々には、「勝つための作劇法」を是非。
こちらは、僕の長年の経験から導き出された方法論です。表題には作劇とありますが、音楽やイラスト、全てのジャンルに適用できると思います。『LOST』はこの考え方に沿って、企画されました。ですから、何かしらお役にたてるのではないかと……。
-それでは今回刊行される、「LOST ~風のうたがきこえる~」の概要についてご説明ください。
一言でいうなら、叶わなかった夢と恋の物語です。
上京してミュージシャンになる事を夢見た奈緒。しかし奈緒は夢を叶える事なく、事故で他界してしまう。
幼馴染でバンド仲間だった慶太郎は失意に暮れるが……ある日、慶太郎のもとへ一本の電話が。相手は死んだはずの奈緒だった。奈緒は自分が死んだことを知らず、東京で音楽活動をしていると思い込んでいた。
「奈緒の歌を皆に聴いてもらいたい」 その一心で慶太郎はPCで曲を完成させ、ニコ動に投稿するが、その結果……。
やがて慶太郎の思いは周囲を巻き込み、皆が奈緒の夢を実現させるために立ち上がる。
そして、一度は夢を諦めた者たちも、奈緒と慶太郎の情熱に触れて、もう一度自分の夢と向き合う決心をする。
というストーリーです。

-こちらの作品を書くようになったきっかけは何だったのでしょうか?
「~ルージュ」がオタク色の強い(しかも高年齢向けのw)設定だったので、次は一般の10代に向けた作品を書こうと思いまして……でもこれが難しかった!
企画がまとまるまでに2か月かかりました。
-作品の制作手順についてお聞かせください。
作品によって違いますが、「LOST」に関しては以下の通りです。
① 企画を考え、あらすじを決定する。
② 企画意図は全て忘れ、あらすじに沿って、出たとこ勝負で書く(こうしないとキャラが動いてくれない。だから箱書きもなしで、書き終わってから起承転結を確認するだけです)。
③ マイピク限定で上げて、読んでもらう。
④ マイピクが面白いというまで、何回でも書き直す(実際、第一章は5回、最終回は2回書き直しています。)。
⑤ 一般公開。
-今回の単行本発売が決定したときの感想をおきかせください。
ぶっちゃけ、最初にメールを見たときは、アカウントを乗っ取った詐欺だとw
-担当編集者がついたことにより何か変化はありましたか?
それが、担当のGさんには、僕のシャレにならない数のポカの尻拭いをして頂いている状態で……只々申し訳ない限りです。
-まもなく発売されますが、上巻のセールスポイントについてお聞かせください。
前半部分で最も気を遣っていたのは、キャラクターの魅力でした。
上巻では増補改訂に伴い、割りと書き込みが薄かった、北沢・digの描写が増えています。
特に北沢は、より可愛くなっていると思うので、そちらも確認いただけると嬉しいです!


-最後にpixivをご覧になっている皆さんにメッセージをお願いします。
naosukeさんとの絡みで訪れたpixivですが、いろいろな方と出会い交流するうちに、今ではここがホームの様な気がしています。
皆さんにも、そういう出会いがありますように(^o^)/
そしてそして、次回作の投稿は夏頃になりますので、その時にはまた、よろしくお願いいたします!
■ミライショウセツ大賞 選考担当 ファミ通文庫編集部 編集長代理 川崎拓也 書評
タイトルが示すとおり「失って」から始まる物語。
主人公の慶太郎が幼馴染の奈緒を失い、そして再生していくというストレートな物語だが、それゆえに奇をてらわず最後まで真正面から書ききった著者に拍手を贈りたい。
また、慶太郎を取り巻き支える登場人物たちもそれぞれが何かを「失い」、そして慶太郎や奈緒とつながりを持つことによって、その何かを取り戻していくという構成も見事。
かつて「失くした」ものを心に仕舞ってしまった世代には、間違いなく危険物指定できる作品である。素晴らしかった!