フェチ談義 vol.3 サラリーマンの「生々しさ」を追求したい、イラストレーター・ma2

取材・文/近藤世菜 編集/佐久間仁美
ああ、もう、尊すぎて鼻血出そう……!
多くの女子が魅力的な男性キャラクターに感じるこの気持ち。どうしようもなく萌えてしまうポイントが誰しもひとつやふたつはあるのではないでしょうか。
そんな自分のフェティシズムについて、女子の萌えを熟知したイラストレーターさんに語ってもらうのがこの「フェチ談義」です。
第3弾となる今回は、シブい中年男性やスーツ姿のサラリーマンのイラストを得意とするma2さんにお話を伺いました!
目覚めたのはなんと小学生のころ! ma2さんは筋金入りの「リーマン」フェチ

はい! 私はすばり「リーマンフェチ」なので。スーツ姿のサラリーマンを描くのが大好きなんです。
── おお、言い切りましたね! 「リーマン」の魅力にハマったきっかけは何かあったんですか?

たぶん父親の影響だと思います。サラリーマンだったんですが、毎日きちんと仕立てたスーツを着ていて。朝の身支度を間近で見ているうちに、スーツ姿のサラリーマンが、大人の男性の象徴になったんじゃないかと。
▲ ma2さんのpixivには魅力的な「リーマン」イラストが多数掲載されています。スーツ姿、いいですね……!
── 大人の男性に魅力を感じるわけですね。もしかして、学校の先生を好きになったことがあったり……?

うーん、学校の先生はちょっと違ったんですよね。実は、大人の男性に惹かれるようになった原体験にはひとつ思い当たることがあるんです。小学生のころ、住んでいた町に海外のスポーツ団体の男の子たちが滞在したことがあって。お別れするとき、同行していた中年のコーチにさよならのハグをしたんですが、そのすっぽり包まれる感じに「あっ……!(目覚め)」ってなった記憶があります。
── それは、なかなかない体験ですね。ma2さんが思う大人の男性・「リーマン」の魅力ってどんなところにあるんでしょうか?

人に合わせて、いろいろな顔を見せてくれるところですね。上司に見せる顔、同僚に見せる顔、取引先に見せる顔、家族に見せる顔……と切り替わる表情を遠くから眺めているのが好きなんです。
── ちょっと離れたところから見ていたいわけですね。

以前働いていた職場では、離れた席から気になる人のことを観察して「たまらんな!」と思っていました(笑)。もちろん、自分に対して向けてくれる表情があれば、それもまたグッときますけどね。
── ちなみに「リーマン」のなかでもとくに好きなジャンル(?)ってあるんですか?

一番好きなのは「The サラリーマン」という感じの、地味なスーツ、シンプルなワイシャツにネクタイという出で立ちですね。変化形だと、ワイシャツとネクタイの上に作業着を羽織っている、土木系の「リーマン」も好きです。
▲ ma2さんが描いた「作業着×リーマン」のイラスト。こんな人が職場にいたら、こっそり観察しちゃいそう。
── そういえば、ツイッターのアイコンも土木系のリーマンですよね!(インタビュー当時)

作業着って「そこで生きて働いている」って感じが伝わってくるんですよ。それで中はワイシャツとネクタイだと「とってつけた感」もプラスされてたまらないですね。
── なるほど……! ちなみに、ワイシャツやネクタイの色や柄にも思い入れはありますか?

シャツは白無地、ネクタイは無地かシンプルなストライプがいいです! シャレていて今風なスーツ姿も嫌いではないんですが、やっぱり自分が好きで描きたいと思うのは「The サラリーマン」という感じの出で立ちなんですよね。
── 「リーマン」を描くとき、参考にしている資料や写真などはありますか?

メンズ雑誌やフリーの素材写真を参考にすることもあります。でも、生きたシワや姿勢は生身の人間には勝てません。だから一番参考になるのは、公園や街中、電車の中で見かける一般的なサラリーマンの方たちですね。こっそりディテールを観察して、心のシャッターを切り続けています(笑)。
枯れた中年が醸し出す”生々しさ”にクラッとくる
── ma2さんの「リーマン」フェチの詳細が明らかになってきましたが、ほかに何かそそられる要素はありますか?

「既婚者の証」ですね。街中で見かけた好みのサラリーマンの方が結婚指輪をしていると”生々しさ”を感じます。この人は、帰ったら奥さんとイチャイチャするのかなって想像しちゃうんですよ。それから、まくったワイシャツからのぞく腕とか、足を組んだときにちらっと見えるくるぶしのあたりは”絶対領域”なので萌えざるを得ません。
▲ 薬指に光る「既婚者の証」がたしかに色っぽいかも……。シャツからのぞく腕もセクシー。
── “生々しさ”、”絶対領域”と、パワーワードが続々飛び出しましたね。これまで見た目や雰囲気のフェティシズムを中心に聞いてきましたが、内面に関してはどうですか?

「既婚者の証」があるにも関わらず、ほかの女性に手をだしてしまうような中年が好きです……! 最近はタブー視されることが多いですが、欲望を拭いきれていないところに魅力を感じてしまうんですよ。枯れてる中年なのに、心の奥底にはまだ欲望がくすぶっているというか。いつまでも女性をちゃんと女性として見ているところに色気を感じて。その”生々しさ”に触れたいんです。まあ、勝手に妄想しているだけなんですけどね(笑)。
── 最近なにかと話題の「不倫」ってやつですね!

その人が持っている魅力は、もしかしたら奥さんや恋人がいることで成立しているのかもしれないと思うと「不可侵な存在」という感じがしてたまらないんです。手が届きそうで届かないのがいい。たまに届いちゃうと問題ですが、フィクションの世界ならそれもありかなと。
▲ 既婚者である証は、持っている小物にも宿る……。深い。

▲ 「あ、こっち見た……」っていうドキドキの一瞬。相手はイラストなのに、目が合って照れてしまうという、次元を超えたときめきを感じます。
── たしかにma2さんの描かれる「リーマン」を見ていると、つい照れてしまうような”生々しさ”を感じます……!

「そこにいてほしい」と思える「リーマン」を描きたいんですよ。たとえば職場に好きな人や恋人がいると「こっち見てくれないかな」って思うじゃないですか。そんなときにふと目が合った一瞬のエロさを切り取るというか。イラストを見た人が、その表情や仕草を自分に対して向けてほしいと感じてくれたらいいなと思いながら描いています。
「The サラリーマン」の魅力を発信することが自分の役目
── ご自身が大人になるにつれて、フェティシズムは変化してきましたか?

小学生のころからずっと、中年男性に惹かれてしまうところは変わっていません! でも少しずつ、よりディープな部分に魅力を感じるようになってきたような気がします。脂肪がうっすら乗ってくるお腹や腰周りも良いなと思うようになったのはひとつの変化ですね。精神的にはもちろん肉体的にも、男性には女性を包み込んでほしいと考えているので、ほどよく肉のついた中年っぽい体系が私としては”おいしい”んです。

それから、実は最近プロレスにハマっていて。以前は筋肉質な体系って好きじゃなかったんですけど、徐々に筋肉のよさもわかるようになってきました。
── プロレスにハマったきっかけは何だったんですか?

たまたま見ていたプロレス番組で内藤哲也選手の特集をしていて。内藤選手は新日本プロレスに所属しているんですが、実力はあるものの頭ひとつ抜きん出ず、観客からもなぜかブーイングを浴びてしまうという状況にあったそうです。自分の主張も会社に通らない、しだいに今の居場所にすら違和感を覚える……そんな中、メキシコに渡り現地のユニットに加入し「ルール無用のヒール(悪役)」になって凱旋したわけです。そこでやっと自分らしさを出せるようになった、というストーリーを知った後に試合を見たら、もうすっかり好きになってしまいました。
▲ ma2さんが最近ハマっているというプロレスにまつわるイラスト。こちらがお気に入りの内藤哲也選手です!
── 今後は「リーマン」だけでなく、「プロレスラー」のイラストも少しずつ増えていくかもしれませんね。最後に、ma2さんの今後の展望を教えてください!


私にとってはリアルな世界にいるサラリーマンの方たちが宝です。今はひと口に「リーマン」と言っても、スーツの着こなし方が多様化している時代ですが、やっぱり象徴的な「The サラリーマン」の姿もなくなってほしくないので、その魅力を発信していくのが自分の役割なんじゃないかなと思っています。
── ありがとうございました!
溢れ出る「リーマン」愛に思わず感服!
「リーマン」への愛を存分に語ってくれたma2さん。目覚めたのは小学生のころということで、長年観察し続けたからこその造詣の深さに感服してしまいました。これからも「The サラリーマン」の魅力をどんどん啓蒙していってもらいたいです。
ほかには一体どんなフェティシズムがあるのか、目が離せませんね!
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