二次元のかわいさと、三次元のセクシーさを融合させる。イラストレーター千種みのりの「かわいい女の子」の描き方
イラストレーターでマンガ家の千種みのりさんの個展「ちぐさ学園1年3組」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2023年9月20日(水)まで開催中です。会場は文化祭をイメージした装飾で彩られ、『志乃と恋』シリーズやライトノベルの挿絵などが展示されます。

今春に専門学校を卒業し、専業クリエイターとしての活動をスタートした千種さん。かわいらしくセクシーな女性キャラクターを描くための秘訣とは? こだわりが詰まったイラストの裏側を聞きました。

- 千種みのり(ちぐさ みのり)
東京都在住のイラストレーター(ごく稀に漫画家)。
書籍イラスト、キャラクターデザイン、漫画などで活動中。
イラストと漫画の違いで試行錯誤
── 本日はよろしくお願いします。2021年にも「pixivision」で“現役学生マンガ家”としてインタビューさせていただきました。現在はもう専門学校を卒業されたんでしょうか?

── 前回のインタビューから今回までのあいだに、マンガ家としてのデビュー作『ココロ色づく恋がしたい』が完結しました。連載を振り返っていかがですか?

── マンガ連載を経験したことによる学びはありましたか?

スケジュール管理については、すごく勉強になりました。はじめは〆切ギリギリの作業になって編集さんにご迷惑をおかけしてしまうこともありましたが、今はコツコツ前倒しで進めるように意識しています。機械オンチなのでアナログのスケジュール帳を使って管理しています。
── 千種さんはもともとX(旧Twitter)でイラストを発表しており、そこからマンガ家としてデビューしました。イラストとマンガの違いで苦労した部分はありますか?

モノクロならではの見せ方に関しては今でも難しく感じています。イラストでラフや線画を描くときと同じ感覚でマンガを描くと、どうしても画面がスカスカになってしまうんですよね。モノクロでもメリハリを効かせるために、ベタの塗り方などを試行錯誤しています。そうやってマンガでつかんだモノクロの感覚が、ライトノベルの挿絵などのお仕事に生きているのを感じます。
好みの関係性そのものな『志乃と恋』
── 現在は『志乃と恋』や『好都合セミフレンド』など、いわゆる「百合」作品を描かれています。『ココロ色づく恋がしたい』は男女の恋愛ものでしたが、百合ジャンルに挑戦しようと思ったきっかけは何でしょうか?

もともと百合が好きというのは当然ありますし、女の子を描くのが好きだから女の子の数が増えたほうが楽しいという理由もあります(笑)。グッズ販売など自分で気軽に展開できるキャラをまたイチから作ろうと考えて、志乃ちゃんと恋ちゃんが生まれました。『好都合セミフレンド』は、志乃ちゃんと恋ちゃんのパラレルワールドのようなイメージの作品です。
── 男女カップルでも女性同士カップルでも、ラブコメがお好きなんでしょうか?

読むのはなんでも好きですが、自分で描くのはラブコメが楽しいですね。中学生くらいまでは少女マンガをずっと読んできたので、関係性萌えがあります。
── 特にどんな関係性にグッときますか?

── 女子高生のキャラを描く上で、情報収集などはしていますか?

あえて体はリアルに描き込みすぎない
── 昔から、かわいくて少しセクシーな女の子キャラを描くのがお好きなんでしょうか?

── 千種先生の描く女の子は、良い意味で生々しさがありますよね。むちむちしたスタイルだったり、胸元にほくろがあったり……。

そういうふうに言っていただけるのは、すごくうれしいです! 二次元的なかわいさはありつつ、セクシーな女の子キャラを描きたいと思っています。
── 二次元的なかわいさと、三次元的な生々しさの両立というのが、千種先生の描く女の子たちの魅力の秘訣のように感じます。統一感を出すのが難しそうな手法ですが、何かコツはありますか?

顔と体で肌の色を合わせた上で、あえて体はリアルに描き込みすぎないようにしています。つい陰影などを描き込みたくなってしまうんですが、アニメ調の顔に合わせることを考えると、そこはグッと抑えたほうがいいんだと思います。「これ!」という決まったやり方があるというよりは、全体のバランスを見て、描きながら調整していく感じですね。
── 高校受験のために静物デッサンをひたすら練習した時期があったそうですね。前回のインタビューで、「美少女キャラを描いているとき、陰や光のつけ方に静物デッサンの経験が生きているのを感じる」と話していました。

── 女の子キャラで特にこだわって描いているパーツはどこでしょうか?

「こういうのが描きたい」から設定を肉付けする
── 現在の作業環境を教えてください。

専門学校時代と変わらず、iPadとクリスタです。
── 週に一度のペースで、志乃ちゃんと恋ちゃんのイラストをX(旧Twitter)で公開していますね。

お仕事のイラストも抱えていますが、だからといって一度休むとサボり癖がついてしまいそうなので、なんとか頑張ってアップしています。
── 描くスピードは速いほうですか? 1枚あたりの制作時間は大体どれくらいでしょうか?

遅いほうではないと思います。SNSにアップしているような趣味のイラストだと、あまり細部に時間をかけず自分が満足できた時点で完成としているので、1枚あたり6~8時間ですかね。ラフから線画で2~3時間、塗り分けに30分~1時間、塗りと仕上げで3~4時間でしょうか。
── 早いですね! 何か時短テクニックがあるのでしょうか?

機械オンチですし、あまりレイヤー分けはしていません。服と肌みたいにパーツがはっきり違うところはレイヤーも分けますが、逆に肌の部分はレイヤー1枚で全部こなします。だから差分を依頼されたときなど、お仕事でたまに困ることがあります(笑)。
── どの作業に時間がかかることが多いですか?

── 多彩なシチュエーションのイラストを発表しているので、アイデアがあふれて止まらないタイプの作家さんだと思っていました。

全然そんなことはありません……(笑)。すっと浮かぶこともありますが、「今回はどうしよう?」とわりといつも悩んでいます。何も思い浮かばないときは、いろんなイラストを見たり、Googleで画像検索をしたりして、なんとかアイデアが湧いてくるのを待ちます。
── SNSでイラストを発表されていると、反応が多いものとそうでないものとがあると思うのですが、そのあたりは気にされていますか?

反応が少ないイラストは、自分でも思い当たるものばかりなんですよね。なので、そこでの反省は次に生かすようにしています。でも露出が高ければウケるとも限らないし、反響の大きさに驚く場合だってありますし、どんなものが喜んでもらえるのかは難しいですよね。反響を分析しようとするあまり、データに寄りすぎた創作になってしまうのも違和感があるので、基本的には描きたいものを描いています。ファンの方々の温かいコメントがモチベーションですね。私のイラストを受けて、ファンの方が「この志乃ちゃんを見た恋ちゃんの反応はきっとこんな感じだと思う」と自分の妄想を寄せてくれることもあって楽しいです。
── 趣味のイラストでも背景までしっかり描き込んでいますよね。それは意識されている部分なんでしょうか?

シチュエーションのはっきりした絵が単純に好きなので、自分好みの絵となると、自然とキャラの全身と背景を描くことになります。今は練習らしい練習はしていませんが、強いて言えば、そういうふうに「趣味の絵だとしても納得いく状態まで描く」というのが練習になっているのかもしれません。
3度目の個展は「これまでの集大成」
── 個展「ちぐさ学園1年3組」についても教えてください。タイトルはどのように決まったんでしょうか?

── キービジュアルでは、志乃ちゃんと恋ちゃんが並んでいます。

最近ずっと描いているキャラですし、この2人のおかげでいただけたお仕事も多いので、キービジュアルは志乃ちゃんと恋ちゃんにしようと最初から決めていました。はじめは青空と窓を背景にしていましたが、もっとひと目で学校とわかるようにするために黒板に変更しました。文化祭のイメージでかわいいロゴを作っていただきました。デザイナーさんは天才です!

── 前回の個展は今年2月とハイペースで個展を開催していますが、今回の「ちぐさ学園1年3組」ならではの見どころはありますか?

今回は内装にこだわり、会場全体が学校っぽい雰囲気になる予定です。黒板を設置するので、キービジュアルを再現した黒板落書きをするつもりです。また、前回は『志乃と恋』にフォーカスした展覧会でしたが、今回はそれ以外の作品も展示していただき、枚数も倍くらいになります。私のこれまでの集大成のような内容になっているんじゃないでしょうか。





志乃と恋、それぞれのキャラクターをイメージした千種さんこだわりの香水
── 8月23日には、『志乃と恋』初の書籍がKADOKAWAから出版されましたね。

これまで発表してきたイラストを時系列順にフルカラーで収録しつつ、マンガを100ページ以上描き下ろしました。こちらもお手にとってみてください。
── 3度目の個展に書籍の発売と、盛りだくさんの夏ですね。イラストレーター兼マンガ家として、今後の目標を教えてください。

お話をいただいたものに関しては基本的になんでもやっていきたいですが、アニメのお仕事をするのが夢です。携わっているライトノベルや自分のマンガがアニメ化されるのもそうですし、オリジナルアニメのキャラデザを担当するのにも憧れています。子どもの頃からずっとアニメが好きで、今も毎クール10本くらい観ているので、いつかお仕事でアニメに関われたらうれしいですね。
9月20日(水)まで開催中!千種みのり個展「ちぐさ学園1年3組」
pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、千種みのりさんの個展「ちぐさ学園1年3組」が9月20日(水)まで開催中です。
『志乃と恋』のふたりが通う学校のイメージした、楽しい内装で皆さまをお迎えします。これまでに千種さんが手がけてきた装画やオリジナルイラスト、描き下ろしイラストなどが揃い、千種さんのこれまでの活動を総覧できる内容となっています。
開催期間:2023年9月1日(金)~9月20日(水)
定休日:なし
入場無料
所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
営業時間:12:00~19:00