1枚絵としての魅力と、設定を通じた深みを両立する。イラストレーターろるあの「物語」へのこだわりとは?

インタビュー/原田イチボ
イラストレーターろるあさんの初個展「渇」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2022年7月27日(水)まで開催中です。オリジナルイラストを中心に、過去担当した版権イラストや、同展のために描き下ろされた9点の新規作品も展示しています。

絵そのものをアップデートしていくようなクリエイターに惹かれる
── イラストレーターとしてのキャリアは何年目でしょうか?

2019年頃からイラストの仕事をいただくようになりました。当時はゲーム会社に所属して絵を描いていましたが、個人で案件も受けており、徐々にそちらの比重が高くなってきたので独立しました。
2019年投稿のオリジナル作品
── 昔から絵を仕事にすることを意識していたのでしょうか?

── では、絵は独学ですか? どんなふうに練習してきたのでしょうか?

── 自分の描きたいもの優先であれば、「練習しなきゃ」とプレッシャーに感じすぎることはなさそうですね。

── 影響を受けたクリエイターを教えてください。

学生時代はしらびさん、ゆーげんさんたちの同人誌をコミケで買っていました。直近だと、6月に開催されたクリエイティブ集団・SSS by applibotの展示がとてもよかったです。アニメーターのはなぶしさんのオリジナル作品『ピギーワン』のゲーム化が決定したのにも注目していますし、こむぎこ2000さんが作るアニメーション映像も好きです。
イラストの領域に他の分野を組み合わせることで、絵そのものをアップデートしていくような気概を感じるクリエイターに惹かれる傾向があります。もちろん、れおえんさんなど、純粋にイラスト単体で好きな方もたくさんいます。── 過去に尊敬するクリエイターとして、新海誠監督を挙げていましたね。大学の卒業制作は、架空のアニメーション映画の予告編だったとも聞きました。

新海監督は、会社員をしながらほぼひとりで『ほしのこえ』を完成させました。恐ろしい話ですよね。良い意味で異常なバイタリティがないとできないことで、その部分も含めてリスペクトしています。2002年に『ほしのこえ』が作れるなら、今の時代に同じことができないわけがない。僕は負けず嫌いなので、負けたくないと(笑)。
キャラのバックグラウンドなどを决めた上で、演出に反映する
── 卒業制作でアニメを作るのはなかなか大変だと思うのですが、アニメーション表現に思い入れがあるのでしょうか?

── ろるあさんの描くイラストにも裏ストーリーのようなものが存在するのでしょうか?

── たとえば室内のイラストを描くとしたら、「こういうインテリアが描きたい!」とビジュアル優先で描き始めるイラストレーターか、「住人はこういう性格でこういうライフスタイルで、それなら部屋にこういうものがあるはずだ」と設定やストーリー優先で描き始めるイラストレーターに分かれるように感じます。ろるあさんはどちらのタイプですか?

それで言うと、私は後者ですね。いったん頭で考えてからじゃないと作業に移れないタイプです。手を動かすうちに「こういうモチーフっていいかもな」とか言語にしきれない感覚が混ざってくることはありますが。
ただ、イラストのバックグラウンドをいろいろ考える一方で、「単に設定を説明するだけの絵はつまらない」とも感じています。ストーリーを伝えると同時に、イラスト単体としておもしろいものでないといけない。そのバランスは意識しています。── ご自身の作品を例にして、もう少し詳しく教えていただいてもいいでしょうか。

この『新しい私』という作品は、ワコムオンラインセミナーでのライブドローイングで制作したものです。先方から提示された「光と影」というテーマに沿って、ひとりの人間の二面性を表現することを思いつきました。
この女の子は素の自分が嫌いで、装って周囲と接するうちに「自分のはずなのに自分じゃない」という違和感を抱くようになってしまいました。他人に見せているキレイな姿と、ドロッとした内面。光と影の表現によって、その二面性を演出しました。── なるほど。キャラクターのバックグラウンドなどを决めた上で、それを演出に反映して、イラストとしてのおもしろさにつなげていくんですね。

「安定したもの」を絵の中に盛り込む
── ろるあさんのイラストはどれも動きを感じさせるというか、パッと見たときの気持ちよさがありますよね。特にバストアップの構図は、下手をすると証明写真のように味気なくなりかねない難しさがありますが……。

── 同じバストアップの構図のイラストでも、手や髪などでバリエーションをつけていますよね。

「手を顔にあてる」「髪をかきあげる」などパターンはありますが、その中で少しずつズラすようにしています。
ただ個人的に、同じ構図やモチーフで描いていても不思議と飽きさせない作家が一番強いと思うんですよ。絵そのものが強いということなので。そういう作家さんは、同じ要素を惰性で描き続けているのではなく、「これが良いんだ」と信じた上で、毎回チャレンジを続けている。だからいつも新鮮なんだと思います。── 漠然とした質問になってしまいますが、「見ていて気持ちいい」感のあるイラストを描くためにはどうすればいいと思いますか?

── 見る側に「なんか変だな」という引っ掛かりを感じさせないで済むということですね。たしかに、ろるあさんも手や髪などが印象的な作品が多いですよね。

── 現在はどのように絵の練習をしていますか?

なかなか練習らしい練習の時間を作れていないのが課題ですが、自分にとってチャレンジとなる要素を仕事のイラストでも入れるようにしています。最近だと、手塚治虫作品を題材にしたプロジェクト「Shin Arts×手塚治虫キャラクターズ〜Acrylic arts by Illustrations〜」で制作した『リボンの騎士』のイラストですね。
少し前に千葉市緑区にあるホキ美術館というところに行ったんですが、ここは写実絵画を専門とした珍しい美術館で、すごく刺激を受けました。写真のようなリアルさとは異なりつつも、「実物がそこにある」と思わせるアプローチが自分にもできないかと、いろいろ模索しながら描きました。あとはデフォルメが効いた原作のタッチから自分なりの解釈で肉付けしていく作業も新鮮でした。
部分ごとに研究して、自分のイラストに落とし込む
── 現在の作風がつかめてきたのはいつ頃でしたか? pixivで公開している過去の作品は、今の退廃的なテイストとは雰囲気が結構違いますよね。

今の描き方が定まったのは2020年頃です。それまでも仕事の依頼はあったのですが、「このまま続けていたら、いつか仕事が来なくなるかもしれない」と思うようになり、絵の描き方を根本から変えました。
以前は「どうせ細部にこだわったところで伝わらないだろう」という甘えがあったんですが、トーンカーブを使っていた場面でイチから色を選ぶようにするなど、より丁寧に絵と向き合うようになりました。あとは影を落とす描き方から光を当てる描き方にも変えました。

── 描き方が変化したのにともない、働き方も調整したんですね。「自分の絵の何かがダメだけど、具体的にどこをどう改善していいかわからない」と悩んでいる人は多そうですが、ろるあさんご自身はどのように問題解決していきましたか?

── CDジャケットやMVイラスト、ライトノベルのイラストなど、さまざまな案件をこなされていますが、媒体ごとの描き分けなどは意識していますか?

── そこまで考えてくれたら、作家さんや編集者も嬉しいでしょうね! ラフや着彩など、作業で時間をかけるのはどこでしょうか?

会場全体を「異質な空間」に仕上げた初個展
── 初個展『渇(かわき)』の見どころを教えてください。


── 『渇』というタイトルはどのように決まったんでしょうか?

── 「渇愛」「渇望」などの言葉が思い浮かびますね。メインビジュアルについてもお話いただけますか?

── 初個展が実現し、イラストレーターとして今後の目標は何でしょうか?

7/27(水)まで! ろるあ初個展「渇」開催中!
pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、ろるあさんの初個展「渇」が2022年7月27日(水)まで開催中です。
展示のための描き下ろし9点を含む約60点のイラストを展示します。イラストとの調和を重視して、床や壁の色も変えるなど、ろるあさんのイラストをじっくり楽しめる空間となっています。ぜひギャラリーに足を運んでみてください。
開催期間:2022年7月8日(金)~7月27日(水)
定休日:なし
入場無料
所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
営業時間:12:00~19:00
※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※新型コロナウイルスへの対策について
ろるあ個展「渇」について、現時点では7月27日(水)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染状況などにより、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。
一部グッズはWEB販売も!
BOOTHにて個展販売グッズの一部をご購入いただけます。ろるあさんのスタイリッシュな絵が活きた素敵なグッズをぜひご覧ください。