悩める女オタク界隈に捧ぐ「もちぎBAR」第2夜:夢女子と腐女子

文/もちぎ
どうも。あたい、もちぎ。
物心ついたときから男が好きで、わりと自己肯定感とクセの強いオカマよ。
あたいはゲイ業界(ゲイ風俗やゲイバー)で、オトコたちのリアルな色恋や恋情のあれこれをたくさん眺めてきたわ。
そしてその経験談をTwitterで発信したりしてるうちに、pixivコミックさんで連載させてもらったり、さらにありがたいことに今回こうしてコラムも書かせていただくことになったってワケなの。
とっても光栄な話だわ。
そんなあたいに今回届いたお便りは……
私は、腐女子(男性キャラクター同士の恋愛を好む人)で、夢女子(キャラクターを恋愛対象とする人)とどうしても分かり合えません。今ではpixivで作品を投稿するのも遭遇するのも辛く、友達ですらTwitterをミュートして疎遠になってしまいます。腐女子と夢女子の問題、どう対処すればいいですか?
ペンネーム・RTを表示しないでも無理だった(女性・30歳)
というものよ。
そうねぇ……。
お互い同じ作品を鑑賞しててもまったく別の楽しみ方をしていて、それが時に衝突を生み出したり意見の発信を阻害する原因になり得る、という話ね。そういう悩みや壁があること教えてくれてありがとうね。
まず言えることが、これは「対立すること」が問題であって、そういった楽しみ方する人たちが存在すること自体は問題じゃないってこと。(楽しんでる内容の見せ方や隠し方は場合によっては問題になるけどね)
そしてなにより両方の方々は、視点が違えど「同じ作品やキャラクターを愛している」という根っこの部分は変わらないってことよ。
さて。今回、お便りを頂いて改めて考えると、こういうのって色んな業界や分野でも起こり得る(というか実際起きてる)話なのよね。
ほら、わかりやすいところで言えば宗教とかでも、神の解釈や自分たちの立場が異なって争う原因にもなることってあるし。あとはいろんな芸能の世界でもよく聞くわよね。ファンに派閥があるとかなんとか。
だから、いろんな歴史や業界を参照にして見ると、この対立構造やファン達の争いも「それだけ作品に対して熱意や譲れない考えがある」っていうステキな想いの裏返しなんだって分かるわ。腐女子夢女子問題も今までの人類の道と同じ──原動力は『愛』よ。ステキなコトよね。プシュ(いい事を言ったからビール缶を開けるあたい)
そういうことだから、仮に夢女子(あるいは腐女子)と分かり合えないからってモヤモヤしちゃダメ。愛の種類は人の数だけ違うってだけなのよ。いくら同じ作品が好きでもね。
もっとも、そういう意識は同じ界隈同士でも必要だと思うわ。例えば腐女子界隈の内部でもよ。BLと一口で言ってもぜんぜん好みが違って、見てるジャンルやシチュ、萌えどころが違うようにね。(ちなみにあたいはおじさんものが好き。ボーイズじゃないじゃんってよく言われる)
◼️必要なのは距離感と尊重だけ。あなたの森にあなたの愛するダーリンがいる。
さてと。こう考えると、とにかく何事にも必要なのが「住み分け」であったり、「他者の尊重」にあるんだと思う。
それさえ踏まえれば、我慢して本意ではない発信をしたり、あるいは意見を持つことさえ諦める、って必要はないの。ただ発信する場所の配慮や、投稿とかのやり方にはいくらか考えてやる必要はあるってだけ。
それでも、どんなに配慮しても発信する以上、必ず自分と相入れない人はいるし、それが時に偶然的に目に入る《ネットの機能性上避けられない仕様》もある。
わざわざそういった人を探して晒しあげたり攻撃したりしない距離感、そういったものだけみんなで持てればいいかなと思うわ。
他人の楽しみ方が目に入って好きなキャラが自分の解釈と違っても、「ああ、あの人の世界線ではこうなのね」「あの人の神の解釈はそうなのか……」くらい遠い目線で見て、それから自分の住む森に帰るといいのよ……そこにあなたが愛するダーリンが待ってるからさ。
そう思ってあたいはいつもゲイビデオ観て、ゲイ友と語り合ってる。
大抵、男優のバックグラウンドの解釈が違くて争点となるけど、お互いの解釈パワーで色んな視点が知れてとても楽しいわ。先輩にはそんなゲイビデオの見方アホやろって言われるけど。
なんの話って感じよね。
とにかく愛による熱意や感情はどんなものでも悪くない。それを何らかのカタチとして他人が見られる場所で発信するなら手順と意識と節度を持ってやればいいし、それを守ってもなにか言ってくる人がいたら「自分の森にお帰り……」と促してあげるのがベターよ……。
じゃ、あたいはゲイビの森に帰るわね。。。
(スキップして西方に去る)

- もちぎ
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18歳で不本意なゲイバレをきっかけに母親と決別し、上京。東京・新宿二丁目でゲイ風俗デビューを果たし、その後もゲイバー、ゲイビデオ…さまざまなゲイ業界を練り歩いてきた。
自身の経験をもとにエッセイ・コミックを発表し、人気を博している。Twitterフォロワー数40万人以上。2019年8月9日に初の著書『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』を刊行。
■ 書籍情報
『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。 』