悩めるオタク界隈に捧ぐ「もちぎBAR」第3夜:怯える腐男子

文/もちぎ
おっす。あたいもちぎ。ゲイよ。
pixivコミックさんでゲイ風俗に在籍してた時の漫画《ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。》を連載中、8月9日にはコミックス発売予定よ。なんかえらいことになってる元プロのオトコ。数多(あまた)のすけべをしてきた人間よ。
今回、腐男子の方から届いた
可愛いキャラは受け攻め関係なく好きになります。でもそれも論争になるし、腐向けの界隈は争いが多くて怖いです。
ペンネーム・山田交(男性・25歳)
っていう切実なお便りを一緒に考えていけたらなって思うわ。
まず、あたい、ゲイビデオもBL(商業作品)も嗜むハイブリット&ニューカマーゲイなんだけど、あまり界隈の作家さんや創作者さん、そしてそれを取り巻く関係ってあんまり詳しくなくて、それに専門的な決まりや用語にも明るく無いのよね。
今回の質問を契機に色々勉強させてもらったわ。
確かに、いろいろとBL文化の界隈ってゲイ業界と重なる部分も多く、市民権を獲得してきた先人の方々の変遷や、暗い時代を生き抜いてきた世代が使ってきた自虐や自嘲的な呼称など、そもそもの集団としての歴史がとても深い。あたいも少し見聞きしただけではまったく追いつけないものだと理解できたわ。マジで興味深い。ゲイビデオ業界並みに、BL業界にも興味ビンビンになってきたわ。
◼️ 大切に守りたい存在のために作った「見えない住み分け」なだけ。
そういった流れから、うっすらと界隈の中にも境界ができて住み分けというか、キッチリした不可侵領域ができて、それをまだ知らない方がついつい入っちゃって争いになったり、意見の衝突になっちゃたりするのかなって思う。それはある意味、厳格なルールの明記がされていない、当事者達の良心や教育によってうっすらとはびこった暗黙の了解的な業界だからと思うのよ。
ゲイ業界でも、はっきりとは言わないけど「この店には適した年齢・髪型・体型がある」ってみんな分かってるわ。だから知らない人がその透明な線引きを踏み抜くこともあるの。例えばデブ専(ぽっちゃり好きのこと)の店に細いゲイの子が入り込んで、場違いな疎外感を味わったりね。
業界には不可侵な住み分けがあり、それを知らずに侵入して、尊重もなく荒らそうとするならばそれは紛糾の対象になり得る。そういう意識を持っていれば、大抵の業界の争いが「何かを守ろうとしている正当な権利の主張である」ということに気付けるわ。
たしかに腐男子だと、BL業界では少数派で、少し疎外感を感じたりして、論争が怖く見えるかもだけど、それだけ守るものが多い分野なんだとリスペクトして楽しみましょ。
なんならゲイビ畑で休憩していくのもオススメよ。ていうかおいで。あたいと鑑賞会しましょ。
逃げないで!!!!!待ちなさい!!!!!!(あなたを追いかけながら西方に駆けていくお茶目なあたい)

- もちぎ
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18歳で不本意なゲイバレをきっかけに母親と決別し、上京。東京・新宿二丁目でゲイ風俗デビューを果たし、その後もゲイバー、ゲイビデオ…さまざまなゲイ業界を練り歩いてきた。
自身の経験をもとにエッセイ・コミックを発表し、人気を博している。Twitterフォロワー数40万人以上。2019年8月9日に初の著書『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』を刊行。
■ 書籍情報
『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。 』