AI×レイヤーテクニック最強説! 絵心ない女子がたった2時間でプロ級(!?)の着色を再現するまで

取材・文/近藤世菜
pixivでさまざまな作品に触れていると「自分もこんな絵を描きたい……!」という欲望がふつふつと湧き上がってきませんか? pixivのヘビーユーザーながら、自分では思うように絵が描けずもどかしい思いをしていた筆者。しかし「絵心ない女子が、たった3日で萌えイラストを描けるようになるまで」という記事で、萌えイラストを描くことに成功しました!
ただ、このとき感じたのが「絵を描くのはもちろんだけど、色を塗るのってさらに難しくない……?」というさらなる課題。絵を描く技術が少しずつ上達しても、色を塗ったとたんに「素人感」が溢れてしまうような気がしました。しかし、そんな色塗り初心者にとっておきの朗報が! 実はpixivが提供しているお絵描きアプリ「pixiv Sketch」でPaintsChainer(※1)の「自動着色機能」が利用できるようになったんです。
※1 株式会社Preferred Networksが提供する、人工知能を使って線画に自動着色を施すサービス。

使い方はとっても簡単。Web版「pixiv Sketch」で線画を描くか、紙に書いた線画を取り込んで、「自動着色」ボタンを押すだけ。線を自動で認識して、適切な着色をしてくれるんです。

▲ 左が着色前の下絵。「自動着色」ボタンを押すだけで、右のように着色されます!

▲ 細かい色指定はこんな感じで行います。
さらに着色パターンは、水彩風とアニメ風の2種類から選ぶことができるんです。

▲ 左がアニメ風、右が水彩画風風の着色パターン。
そして、ここからハイライトや陰を足していけば、もっと魅力的なイラストになるはず。そこで 美しい彩色にうっとりする美少女イラストが得意なイラストレーター・きのこむしさんに、着色の仕上げ方法を伝授してもらうことに。レイヤーの使い方から初心者でも簡単に雰囲気のある着色ができるコツまで、じっくり教えていただきました!
1. 仕上げのための下準備

ふんわりした印象にしたいので、水彩風の彩色を選択しました。このイラストを「pixiv Sketch」に取り込んで仕上げをしていきましょう!
まず、自動着色機能でうまく着色がされていない部分に、色を足していきます。

▲ リボンや襟の着色もれしてしまった部分に色を足しました!
これで下準備はOK。ここからは、きのこむしさんにコツやテクニックを教えてもらいながら仕上げをしていきます!
2. 「乗算レイヤー」で陰をつける
はじめに全体的に陰をつけていく作業から。ここで使うのは「乗算レイヤー」です。

顔周りで陰を入れる部分は「髪の根本」や「後れ毛の周り」、「首元」など。濃淡の色を使い分けて立体感を出していきます。

▲ きのこむしさん作。陰と頬の赤みが入って一気に雰囲気が変わりました!

3. 「スクリーンレイヤー」でハイライトをつける


▲ きのこむしさん作。髪のハイライトの馴染み具合はもはや神業……!
「pixiv Sketch」では、レイヤー自体の透明度も調節できるので、うまく馴染むように調整することができます。

ハイライトが入ることで、絵全体に奥行きが感じられるようになりました。
近藤作:「スクリーンレイヤー」でハイライトをつける
はじめは広めに入れて、消しゴムで調整!
4. 「覆い焼きレイヤー」でギラッとさせる
ハイライトにぴったりなレイヤーの種類はもうひとつあります。それが「覆い焼きレイヤー」です。


▲ きのこむしさん作。明るさが増して立体感のあるイラストに!
さらに強いハイライトが入ることで、立体感が一気に増しました。

近藤作:「覆い焼きレイヤー」でギラッとさせる
覆い焼きレイヤーを入れると一気にあかぬけた印象に変わりました。
5. 「オーバーレイレイヤー」で色調整
次に使うのが「オーバーレイレイヤー」。細かい部分の色調整をしていきます。


▲ きのこむしさん作。髪の部分の青みがとても自然です。
色調整をしたことで、絵全体に表情がついたように感じます。
近藤作:「オーバーレイレイヤー」で色調整
色調整は色みを入れる場所を決めるのがなかなか難しく薄くなってしまいました……! が、うっすーら髪に青みを入れています。
6. 瞳の仕上げ「乗算レイヤー」

瞳の仕上げは一番力が入るところです。どんどんレイヤーを作って細かく調整していくといいと思います。こだわるときは瞳だけで20枚くらいのレイヤーを使うこともあるんです!

▲ きのこむしさん作。瞳が自然なグラデーション!
はじめに「乗算レイヤー」を使って瞳全体を暗みのある色合いに。瞳全体に色を乗せたら、透明度を上げた消しゴムを使って下半分を消します。すると、簡単にふわっと自然なグラデーションを付けることができるんです。
近藤作:瞳の仕上げ「乗算レイヤー」
まずは瞳全体を暗くして、消しゴムで下半分を消す。これで自然なグラデーションに。
7. 瞳の仕上げ「スクリーンレイヤー」
次に「スクリーンレイヤー」で瞳のハイライトを入れていきます。ぼかした白を使って、瞳のなかの光を表現。
瞳にハイライトが入ると生命が吹き込まれたようにキャラクターの顔がいきいきとしてきます。
近藤作:瞳の仕上げ「スクリーンレイヤー」
瞳にハイライトが入ると表情がイキイキしてきました!
8. 「通常レイヤー」で髪と頬と瞳につやめきをプラス
ここで女の子ならではの「うるおい」や「つやめき」をよりプラスするために、通常レイヤーでハイライトを入れていきます。

ぼかさない白を使って髪や頬、瞳にハイライトを入れます。これで可愛らしさが一気に増しますよ。

▲ きのこむしさん作。髪のハイライトのナチュラルさがすごすぎ……!
このハイライトの有無の差は一目瞭然! 少しの工夫ですが女の子の可愛らしい魅力が一気に高まって見えますね。
近藤作:「通常レイヤー」で髪と頬と瞳につやめきをプラス
きのこむしさんのお手本を見ながら入れてみました!
9. 「スクリーンレイヤー」で最後の仕上げ


▲ きのこむしさん作。ふんわりと儚げな美少女になりました……!
ハイライトで線の存在感を消すことでイラスト全体のふんわり感がアップ。この仕上げをすることで完成度がかなり高まりました。
近藤作:「スクリーンレイヤー」で最後の仕上げ
イラストの仕上げが完成!
そして! ハイライトや陰による仕上げが完了したイラストがこちら!

こちらはきのこむしさん作。ふんわりとした雰囲気の美少女イラストになっています。印影もハイライトもとても自然で、さすがプロといった仕上がり。

こちらは近藤作。きのこむしさんのイラストと比べるとまだまだ見劣りしますが、はじめてフィルターを使ったとは思えないくらいの出来栄え……! 線画や自動着色後のものと比較すると、その差は歴然です。
しかも、着色から仕上げにかかった時間はたった2時間あまり。自動着色ときのこむしさん直伝のレイヤーテクニックのおかげで、あっという間に魅力的なイラストを仕上げることができました!


自動着色機能を使って、絵心ない女子も魅力的なイラストが描けた!

こうやって見比べると、着色によってさらに洗練されたイラストに仕上がった気がします! プロみたい、とまではいきませんが絵心がないのが嘘のような仕上がりに大満足。今回はじめてフィルターを使い分けた着色に挑戦して、絵を描くのがさらに楽しくなりました。
「pixiv Sketch」の自動着色機能は現在Web版のみの提供ですが、今後アプリ版の実装していく予定です。筆者のように絵心に自信がない人も、絵を描くのは好きだけど色塗りが苦手という人も、ぜひ活用してください!
近藤作:「乗算レイヤー」で陰をつける
陰が入ってぐっと引き締まりました。