最優秀賞は過去イチの激戦⁉ pixiv高校生イラコン2024結果発表&作品講評
テキスト・構成/ナカニシキュウ
ピクシブが主催する高校生向けイラストコンテスト「pixiv高校生イラコン2024」が2024年の夏に開催され、厳正な審査を経て受賞作が決定しました。
第7回にあたる今年のテーマは「熱(ねつ)/ Heat」。国内外の高校生たちが腕を振るった1,254点もの力作が寄せられました。
クリエイター審査員を務めたのは、はるおさん(審査員長)、げみさん、こむぎこ2000さん、さいとう なおきさん、NAKAKI PANTZさんの人気クリエイター5名。

審査会では、応募作1つひとつをプロの目線で吟味。技術的な評価だけではなく、そこに込められた作者の思いも丁寧に読み解いていきます。選考は長時間に及び、とくに最優秀賞の選定には過去に例がないほど時間を要しました。複数の候補作が並び立ち、「それぞれ異なる魅力があって絞るのがもったいない」「どんな観点を重視するのがこの賞にふさわしいのか」と議論が交わされ、やっと最優秀作品が決定。その後は、クリエイター審査員賞、入賞作品と決まっていきました。
激論の末に選ばれた各賞の受賞作品と、審査員による講評は以下の通りです。選考を振り返っての審査員の感想をまとめた「審査を終えて」にも創作のヒントが詰まっていますので、ぜひご覧ください。
最優秀賞
全応募作のうち、最も優れたイラストであると認定された作品です。作者には賞金20万円が贈られます。
審査員による講評
さいとう なおき(以下、さいとう):まず、テーマが「熱」なのに緑多めなのがいいなと。色使いが独特で印象に残りました。しかも、この人はたぶんあえて外した描き方をしたわけじゃないと思うんですよね。
NAKAKI PANTZ(以下、NAKAKI):応募作の中には「赤やオレンジなどの暖色を絶対に使わないぞ」という意志を感じるものもありましたけど、その中で作為的じゃなさそうな緑の使い方は目を引きます。
げみ:熱帯の森の中の、汗ばむ感じがすごく伝わってきました。しかも、生き物のディテールをちゃんと調べたうえで描いていますよね。サボろうと思えばサボれるところなんですけど、そこをサボらずにしっかり描き込んでいる。職業イラストレーター目線で見たときに、そこが素晴らしいなと。
はるお:拡大して見ると、アリなどの筆致にまで徹底的にこだわって描かれているのがわかります。作者さん自身の描き込みへの執着、熱量という意味での「熱」も伝わってくる作品ですね。この男の子が手を伸ばした先はなんなんだろう?と気になります。
さいとう:タイトルが「不可逆進行」だから、たぶん未来へ向かってるんじゃないですかね。この絵を見て、僕は「この人は令和を生きているんだな」と感じたんです。というのも、恐怖の象徴としてトラが描かれているんですけど、目が隠れていて“得体の知れない恐怖”のような表現になっていますよね。一寸先も見えない危険なジャングルを藪漕ぎで進む少年の姿に、SNS社会を生き抜く現役高校生の実感がこもっているように感じました。
こむぎこ2000(以下、こむぎこ):モチーフの選定や配置もうまいです。ちゃんと魅力的なモチーフを選べていますし、それをシンボリックに配置できている。
NAKAKI:植物、動物、昆虫、人物と、これだけ要素が多いにもかかわらずケンカしていないのはすごいですよね。色選びも含めたバランスの取り方に魅力を感じます。足し算のしかたが秀逸。部屋に飾りたくなる絵です。
さいとう:あとは、いい意味でシュッとしていないところが逆に新しいなと。今は全体的な技術レベルが上がっていて、達者な絵を描く人も増えています。そんな中、この人は、手探りで「ああでもない、こうでもない」と模索をしながら塗り重ねている雰囲気があります。それも絵の内容とすごく合っているように感じました。
げみ:フィルタを効果的に使った仕上げなど、技術的な方法に意識が行きすぎかなと感じるイラストもある中で、ストレートに“塗る”という行為だけでこれだけの絵を描いてもらえるのは気持ちがいいですね。
クリエイター審査員賞
現役クリエイターである審査員がそれぞれ独自の視点で選んだ作品です。作者にはAmazonギフトカード3万円分が贈られます。
げみ賞
げみ:構図の切り取り方に意志を感じます。物語を絵で表現する際、そのテーマに沿ったモチーフを画面の中に描き説明するのが一般的ですが、この作品は一番気になる部分を画面の外に配置する構図になっています。それによって、見る側の妄想が画面の外へ広がっていく。その描き方、表現のしかたがとても魅力的に感じました。
さいとう:この2人が手をつないでいるのかどうかが、ちょうど見えないんですよね。「手、つないでんの? どうなの?」って、高校生に心をかき乱されている自分がいる(笑)。男の子が視線を外していますが、それも照れているからなのかどうかはわからない。記号的な表現を排除して、シチュエーションだけで見せるうまさがあります。
NAKAKI:いい意味で派手さがないんですよね。派手なシチュエーションやキャラクターに頼らず、素朴なモチーフを素朴に描いてこれだけ魅力的に見せられるというのはすごい強みだと思います。文字通り「言葉なんかいらない」作品です(笑)。
こむぎこ2000賞
こむぎこ:僕はアニメーションを描く人間なんですけど、アニメーションの世界では画面を覚えてもらうことがとても大事なんです。いかにシンボリックな、強烈に記憶に残る画面を作れるか。その視点で見たときに、この「プラカードを持った女の子が凜とした様子で歩いている」というモチーフはとても象徴的です。誰もが高校野球の中継などで見たことのある、記憶に残っている画だと思うんですよね。そこを拾ってきて絵のアイデアに使っているところが、すごくいい目を持っているなと感じさせます。また、その女の子に先導されて列をなしているのが高校球児ではなく、さまざまな夏の風物詩だというアイデアもすごく面白いなと思いました。
さいとう なおき賞
さいとう:昨年最優秀賞を獲っている方ですけど、そのことには選んでから気がつきました(笑)。色数を抑えた白黒の表現になっていますが、白黒だから珍しくて目についたというわけでもなく、根本的に画作りがすごくうまいんです。色を使わずとも見事に熱さを表現できていますし、こういう左右対称に近い構図って退屈な絵になりやすいんですけど、この作品は全然そうなっていない。見ていて絵が描きたくなる絵だなと思いました。
げみ:今回の応募作品にはキャンバスに向かってカラフルな絵を描くようなモチーフの絵がけっこう多かったんですけど、この作品は敢えて墨絵というところがユニークですね。
NAKAKI PANTZ賞
NAKAKI:「絵って自由でいいんだ」と改めて思わせてくれるような、フリーダムな熱を感じました。人物を中心に数々の小物が生き生きと描き込まれていていて、パワーのある画作りができています。室内を俯瞰で捉えた構図になっていますが、私自身が常々「お部屋を上手に描けるようになりたいな」と思っていることもあり、その意味で感情移入できた部分もあります。画面の至るところに作者の方の「がんばって描いたよー!」という素直な思いがあふれていて、描き手の人物像を想像したくなる絵です。ほかにもいくつか「NAKAKI賞をあげるならこの絵かな」という候補はあったんですけど、その中でも一番惹かれました。
はるお賞
はるお:最初にざっと全作品に目を通したときから、私の中で一番の受賞作候補だった作品です。私自身が高校生の頃に絵を描いていたときの感情が呼び起こされる、すごくエモーショナルなイラストだなと。他人への憧れや嫉妬が入り交じった複雑な感情がみずみずしく描かれていて、泣きながら絵を描いていた当時のことを思い出しました。
こむぎこ:切実な感情が描けていて、共感性の高い作品だなと思います。
NAKAKI:とくにクリエイターはみんな共感できる感情ですよね。
はるお:細かく見ると技術的に粗い部分もあるんですが、それが必ずしもマイナスに働いていないのもこの作品の魅力です。技術を超えて、全体の雰囲気やインパクトの伝え方がすごくうまいなと思いました。
企業賞
各協賛企業が選定した注目作品です。作者にはそれぞれ各企業より創作関連グッズなどが贈られます。各企業からのコメントを紹介します。
CLIP STUDIO PAINT賞
テーマの「熱」と創作活動を絡めた中でも、吹きガラスをモチーフにしたこの作品は一層目を惹きました。目線を誘導するポイントをしっかりと作りながら、熱が持つ光と闇のコントラストを色数を抑えつつ描ききっており、熱を持ちながらもとても見やすく、伝わりやすい作品になっていると思います。細部も丁寧に描き込まれ、飽きることなく眺められました。この様な熱が込められた作品がこれからも作られていくと思うと、今からとても楽しみです。
コピック賞
上から見た構図を描いた作品が珍しく、制作物が飛び出してくるような描写に惹かれました。シンプルな線ながら全体的に雰囲気があり、テーマをイメージ通りの形に表現する力を感じます。人物の表情は見えませんが、それが逆に見る側の想像を促しており、制作に追われているのか、筆が乗って夢中で描いているのか、どんな言葉が交わされているのかなど思わず考えてしまいました。ご自身の経験を元にされているのかわかりませんが、みんなで大型の制作に取り組むというのもpixiv高校生イラコンだからこそ出てくるモチーフでもあるなと思いました。デジタルがメインだとは思いますが、コピックなどアナログ画材にも触れながらどんどん表現の幅を広げていっていただけたらと思います。
KADOKAWA キトラ賞
はっとするようなオレンジと赤の炎に目が行く大胆な構図です。人物の表情や、暗めの色使い、「心火」というタイトルから、少し不穏な想像が広がります。一見するとクールに見えるキャラクターが、内側に抱えている爆発しそうな感情が伝わってきて、見る人を引き込む力がある作品だと感じました。
ワコム賞
絵が好き!という熱い情熱を感じられる作品でした。それをキャンバス側から見るという視点も面白かったです。絵から伸びる手は、その情熱に感化されて絵が具現化した姿にも見えましたし、彼女が創作の中から成長を掴む布石にも感じ、色々と考えを巡らせられました。このイラストの少女のように、これからも熱を持って作品を描き続けてほしいです!
ポカリスエット賞
遠くのビルが揺れる様子、日差しを吸収する肌の色合いなどからうだるような気温まで感じられそうです。豊かな感性と創造力が感じられる素敵な作品でした。今後のご活躍も応援しております。
カロリーメイト賞
力強い真剣なまなざしから、人物の強い気持ちや絵を描くことに没頭する姿が一目で伝わり、
内に秘められた熱意が表情や空気にも伝播している表現がとても素敵でした。今後のご活躍も応援しております。
マルマン賞
暑さでくらくらしてゆがんで見えるほどの熱が、冷たさですーっと引いていく爽快感という複雑なテーマを、巧みに表現されていてとても心に残りました。ダイナミックさのある構図や、熱と冷たさを同時に表現する色づかいや配色、女の子の繊細な表情、洗濯機や籠といった質感に合わせて描き込み方を変えている点など、じっくり見るほど技術が感じ取れる作品です。さまざまな画材を駆使し、個性ある唯一無二のこの作風に辿りつくまでの積み重ねも感じ取れました。これからの作品がとても楽しみです。
CHUNITHM賞
ネクストクリエイター賞
今回新たに設けられた、企業からの正式な案件発注を前提とした賞です。発注する企業の定める基準に達する作品がなかった場合は該当者なしとなるほか、別の賞とは選定基準が異なるため重複での受賞となる可能性もあります。各企業からのコメントを紹介します。
ネクストクリエイター賞 supported by YouTube甲子園
運営一同満場一致でYouTube甲子園のイメージ通りの作品だと思い選ばせていただきました。応募してくる作品を毎回ワクワク楽しみにしている気持ちとこの子が何を描こうとしているのかワクワクさせてくれる気持ちが心躍りました。また、高校生と教室をモチーフにした作品で小物や背景も丁寧に描かれており、多彩で明るい色使いが印象的でした。ぜひ!YouTube甲子園をイメージした作品を見てみたいです!
※ワコム賞との同時受賞です。
ネクストクリエイター賞 supported by INCOLORE
あえてド直球なタイトルに含まれた熱と、それを伝えようとする意志のようなものを瞳の表現や髪のゆらぎの表現に感じました。INCOROREでは、消費者に対して訴えかける何か、商材に採用した時に見る側がお金を払ってでも欲してしまうような熱量。そういうものを重要視して選考させていただきました。
優秀賞
上位入賞は逃したものの、審査員の目を引いた作品に贈られる賞です。選考で話題にあがった作品については審査員のコメントも紹介します。
NAKAKI:率直にユニークな絵だなあと(笑)。すごく独特な魅力があります。タイトルも含め、情報量がかなり多いですよね。
こむぎこ:どうしても1枚の絵で物語を描きたかったんだろうなと。僕も高校生のときにこういう絵をよく描いていたので、気持ちはよくわかります。将来的にマンガやアニメを描く人になれる才能も感じますね。
さいとう:足の開き方でキャラクターを描き分けているんですよね。
げみ:映像作品のワンシーンみたいな感じですね。はす向かいの座席にカメラを置いているイメージ。
さいとう:たしかに、イラストというよりは映像の感覚なのかもしれないですね。ただ、実生活ではここにカメラは置けないので、イラストだからこそでもありますね。
はるお:そのままカードイラストとかにできそうなクオリティだなと思いました。ドラゴンってそこまで描く人の多いジャンルじゃないから、単純に目に留まりやすい。描きたいもので勝負しているのがすごくいいなと。
げみ:細かいところまでしっかり丁寧に描かれていますね。小さく描かれる小物であっても想像で済ませずに、ちゃんと調べて描いているのが伝わります。
さいとう:オーソドックスに熱い。テーマに直球で寄り添っていて、僕は好きですね。まさに高校球児を見ている気持ちになれるというか、描いた人自身も高校球児っぽい人なのかなあと。
NAKAKI:素直に熱くていいですよね。しかも、画力もちゃんと高い。
げみ:描かれているものの1つひとつに動きがあっていいなと思いました。腕や足元の土はもちろん、雲も「曇っていたのがこの一瞬でバーッと晴れたのかな?」という躍動感があります。
こむぎこ:キャンバスに向き合う絵が多い中で、「ねぶたなんだ?」という驚きがありました。たしかに立体のほうが絵として映えますし、モチーフ選びのセンスを感じます。
さいとう:単純に作風がすごく好きです。色数をたくさん使っているから、注目する場所によってまったく違う表情を見せてくれる。ずっと見ていられます。
NAKAKI:さくらももこ先生に通ずるようなエスニック感があってかわいい。自分ではこういう色使いはできないけど、好みですね。見ていて楽しい絵だなと思います。
NAKAKI:単純に、男の子の顔がめちゃくちゃ好みでした(笑)。何か切り抜きのようなものを燃やしているんですけど、「どういうことなのかな?」と想像したくなります。
げみ:左上に手紙があるんですよね。「好きだった」って書いてある。推し活の終焉みたいな感じなのかな?
さいとう:でも、周囲のグッズとかはべつに何も破壊されていないんですよね。これだけ燃やすって、何があったんだろう?
はるお:いろいろ考察の余地がある絵ですね。
NAKAKI:シンプルに絵がうまい。地面のタイルとか葉っぱの緑がすごくキレイに描けています。最初はショーケースか何かを見てるのかなと思ったんですけど、額装された絵から女の子が出てきているんですよね。
さいとう:めっちゃいい絵に出会って「ズキューン」ってことなんでしょうか?
NAKAKI:色と雰囲気がすごくよくて大好きです。本に熱中している様子が全体的に柔らかい緑色でまとめられていて、上のほうの赤い花などもいいアクセントになっている。すごく魅力的な絵だなと思いました。
こむぎこ:画面の作り方がうまいなと思いました。構図の取り方がよくて、この独特なモチーフを一番魅力的に映える描き方が出来てると思います。
さいとう:繊細に丁寧に描いているところもありつつ、ところどころラフに描き殴った感じが残ってるのもいいですね。
NAKAKI:最初に全作品をバーッと見たときに、一番印象に残った絵でした。世界観、空気感がめちゃくちゃ好きです。タイトルが「消えないで」だから、この子が生きてるのか死んでるのかもわからなくて……この2人の関係性を想像したくなる、柔らかくてキレイな絵だなと思います。
はるお:粗削りながら、やりたいことはものすごく伝わってきますね。
NAKAKI:高校生らしい、ポップでかわいい絵だなと思いました。私も高校生のときにこういう元気な絵を描きたかったなあと。ポジティブでユニークで、すごく魅力的です。
はるお:カッコいい! 遠景の描き方もすごくいいです。
審査を終えて
はるお:最優秀賞を決めるのに、かなり時間がかかりましたね。聞くところによると、ここまで難航したのは今回が初だったそうで。
さいとう:たしかにこれまでは、最優秀賞に関してはけっこうあっさり満場一致で決まった記憶があります。スタイルが確立されている人や技術力の高い人、きちっと仕上がった作品が順当に選ばれている印象でしたけど、今回の審査では「なんかグッとくる」「なんか好き」のような、感情的な評価コメントが目立った気がしていて。それってこのコンテストに限らず、今の時代のトレンドだと思うんですよね。
NAKAKI:おっしゃる通り、技術的にすごく秀でているわけではないものにも、とてもいい絵がたくさんあって悩みました。
げみ:今回、審査員のお話をいただいたときからずっと「自分だったらどういう基準で選ぶかな」と考えていたんですが、やはりテーマをどう捉えるかという独自性と、それを表現する技術力の兼ね合いだろうと。ただ、「どうしてもこれを表現したいんだ!」という熱量が技術を超えてくる瞬間というのがあって、そこも汲み取れたらいいなと思っていました。
さいとう:世の中の空気感が熱量重視に変わってきていて、それが今回の審査にも反映されていた気がします。だからこそ意見が割れやすかったのかなと。「pixiv高校生イラコン」の最優秀賞らしい作品かどうかはいったん抜きにして、感情に訴える作品を選ぶという姿勢が今の時代っぽかったなと感じました。
はるお:つまり「pixiv高校生イラコン」のあり方、賞というもののあり方を議論させるくらいの力を持つ作品が集まったということですよね。そういうコンテストになってきているのは本当にすごいことだなと思います。
さいとう:素直に描きたいものを描いた作品に、みんな心を惹かれていましたよね。それはやはり、技術の発展によって“キレイにうまく描けている”ことの価値が絶対的なものではなくなってきているということなのかなと。今後そのムードが続いていくかどうかはわからないですけど、少なくとも今は“心のままに素直に描く”ということがすごく価値を持つ時代になっている気がしました。原点に帰れたような気がしますね。
げみ:仕事として絵を描いていると、言い方は悪いですけどコスパの悪い作業をどうしても避けがちになるんですよ。作品と対話する時間が短くなっていって、持っている技術でなんとかしようとしてしまう。納期がある以上、ある程度は仕方がないんですが、今回の審査では、それとは対極にあるコスパの悪い作業……ひとつの絵ととことん向き合って「ああでもない、こうでもない」と対話していく、その果てしない時間を楽しませてもらいました。「こういうのが絵を描く行為の本来の楽しさだよな」と思い出させてもらえたというか。高校生の皆さんには、これからもそういう対話の時間を大切にした作品作りを続けていってほしいなと思います。
こむぎこ:今回、皆さんの作品を見ていたら、自分が高校生だったときのことをすごく思い出したんです。高校生くらいの頃って、すごく好きな絵描きさんが1人いたら、その人の影響をダイレクトに受けがちですよね。僕自身もそうで、イラストレーターの焦茶さんに憧れていました。高校生のときにイラストコンテストに出した絵は、はっきり焦茶さんの影響を受けた作品でしたね。当時の僕にとっては焦茶さんの絵があまりにも正解すぎて、そこから一歩も抜け出せないくらいだった。それでもどうにかして一歩抜け出そうと模索したことが今につながっているので、すごく大事な経験だったなと思うんですね。
はるお:その模索がオリジナリティになっていくわけですもんね。
こむぎこ:今回の応募作にも、「この人はあの絵描きさんが好きなんだろうな」というのがわかりやすく出ているものも多かったです。憧れを持つことはとても大事なので、それはそれでずっと大切にしてもらいたいんですが、そこから一歩出ようとする気持ちも同時にずっと持ち続けてほしいなと思いますね。
はるお:私も今回高校生の皆さんの作品を審査させてもらったことで、フレッシュな気持ちに立ち戻ることができました。「自分もまだまだがんばらないとな」とやる気をもらえて、大変うれしかったです。
NAKAKI:同感です。一番自由に絵を描いていた頃の気持ちを忘れちゃいけないなって。高校生の子たちの自由な発想だったり、思いきった色使いや構図だったりを見て「こんな描き方があるんだ」と勉強になることもたくさんありました。とても刺激をもらえる、素敵な機会だったなと思っています。ありがとうございました!
最後に:pixiv高校生イラコン運営より
改めまして、今年もたくさんのご参加ありがとうございました!
pixiv高校生イラコンは、2025年も開催を予定しています。今回惜しくも受賞を逃した方や、来年から参加出来るという方、ぜひ奮ってご参加ください。pixiv高校生イラコンはイラストレーターを志す高校生を応援しています。来年の挑戦をお待ちしています!
pixiv高校生イラコン2024とは?
次世代のクリエイターが可能性を掴める場を創設すべく、高校生を対象に2018年より毎年開催されているイラストコンテスト。