好きをつきつめた。そうしたらデビューがやってきた。『夫の事情 妻の秘密』作者・青さんインタビュー
インタビュー・文:近藤世菜
代々続くスパイ一族に生まれた夫・ミシェルと、家政婦のように彼に仕えているものの、実は暗殺者の顔を持つ妻・ココのすれ違う恋模様を、臨場感たっぷりのアクションとともに描いた『夫の事情 妻の秘密』。映画顔負けの舞台設定やストーリー展開と、緻密な線で描かれる見目麗しいキャラクターたち、そのユニークな世界観につい引き込まれてしまいます。
現在pixivコミックで人気連載中、昨年12月にはコミックス第1巻が発売された本作。実は作者の青さんは、pixivの投稿をきっかけに漫画家デビューが決まったという逸話の持ち主なんです。諦めかけていたという漫画家の夢をpixivがきっかけで叶えた青さん。気になるデビュー秘話や現在の心境についてお話を伺ってきました。
デビューのきっかけはpixivに投稿した創作BL
── 本日はよろしくお願いいたします! 青さんは前作『僕と彼の進化論』で漫画家デビューを果たしていますよね。きっかけはpixivの投稿だったと伺ったんですが……。
はい、そうなんです。はじめは創作BL漫画としてpixivに投稿していたんですが、それを見たという編集者の方から連絡が来て。コミックスとして出版しないかと声をかけていただいたのがデビューのきっかけなんです。
いえ、まったく! ただ自分の好きなものを好きなように描いてきたんですよね。ここ1、2年はオリジナルを多く描いていますが、はじめは二次創作のBLがメインでした。
── 二次創作からオリジナルにシフトしたきっかけは何だったんですか?
二次創作だと自分が描きたいものが描けないなと思ったからです。やっぱり原作の設定がある以上、どこまでも自由には描けないじゃないですか。だから自分で作るしかないなって。そうすればキャラクターもストーリーも自由に動かせるので。
── なるほど……! ちなみに、作品が編集者の方の目にとまった理由について、ご自身ではどんなふうに考えていますか?
ぜんぜんわからないんですよ……! ただ、自分の趣味をたっぷり詰め込んで描いていたので、それをおもしろいと思ってもらえたのではないかと。
── 青さんに連絡をとった担当編集の箕島さんがいらっしゃるので聞いてみましょうか。箕島さんは青さんの作品のどこに魅力を感じたんですか?
独特な世界観です。舞台や設定はファンタジーなのに、人の心情の描き方は人間味がある。それとヨーロッパ風の背景や衣装がていねいに描き込まれていて「これは、いい!」と直感的に思いました。
── たしかに青さんの作品は、舞台設定がヨーロッパ風のものが多いですよね。なにかこだわりがあるんですか?
箕島さんが言ってくれたように、ファンタジーなものを描きたいんです。本当は寺社仏閣めぐりをするくらい日本的なものは大好きで。でも、自分の作品で日本を舞台にするとリアルになりすぎてしまう気がするんです。リアリズムは描きたくないんですよ。ファンタジーな要素を活かすために、舞台は海外風でキャラクターの名前は横文字にしています。
── 背景や衣装の作画には、なにか資料を使っていますか?
自分が海外に行ったときの写真を見ています。そんなに数多く行っているわけじゃないんですが、海外旅行は好きです。ヨーロッパは街並みがキレイでいいんですよ。そしてなにより、美術館を巡るのが楽しいですね。
── ヨーロッパの美術館で磨いた感性が作品に反映されているのかもしれませんね! ほかに漫画を描くときのこだわりはありますか?
とにかくハッピーエンドにしたい! 自分がバッドエンドの作品をあまり見たくないので……。気分が落ち込むじゃないですか。それと、絵は緻密な方が好きなので、うるさいくらい書き込むようにしています。これは、〆切が迫っていると難しい部分ではありますが……!
実感がわいていないんですよね。実はまだ専業の漫画家ではないので、二足のわらじを履くのがとにかく忙しくて。でも、私の作品のためにいろいろな人が動いてくれているんだなと思うと、本当にありがたいです。
男女の勘違いとすれ違いの連続が大好き
アクションものを描きたいというのが一番にあったんですよ。私自身、アクション映画が好きなので。そこに恋愛要素を絡めたいなと思ってこの世界観になりました。
アイデアは比較的途切れずに出てくるんですよ。ただ逆に忘れてしまうことが多くて。キャラクターの名前を間違えたり、話の辻褄が合わなくなったりすることがあるんです……! ただ、あえてそれを裏設定として追加することで話がよりおもしろくなることもあります。たぶん、次から次へと忘れていくから、新しいことを思いつきやすいんじゃないかと(笑)
── なるほど。それでは、キャラクターについてはどうですか。個性豊かな登場人物たちはどうやって作られているんでしょう?
── 最後に作品の見どころや今後の展開を教えてください。
好きをつきつめたら諦めかけていた夢が叶った
好きなものを自由に描いていたら、それが漫画家デビューにつながったという青さん。諦めかけていた夢を叶えることができたのは、誰かに評価されることを意識せず、ただ自分の「好き」をつきつめて描く純粋な姿勢があったからかもしれません。