「美しさ」と「醜さ」の両極端を極めたい──。ホラー漫画家・伊藤潤二先生×"顔面漫画"のいくらさん
▲ 『富江・画家』©️伊藤潤二/朝日新聞出版
文:近藤世菜 写真:前田彩夏
怪奇やホラーといった"怖いもの"には、なぜかどうしようもなく人を惹きつける魅力がある気がします。
だからこそ、楳図かずお先生や日野日出志先生、諸星大二郎先生といった数多くの大物ホラー漫画家が誕生してきたのではないでしょうか。
そしてそのなかでも、独特な世界観を武器にホラー漫画界のトップを走り続けるのが『富江』や『うずまき』といった作品で知られる伊藤潤二先生。その卓越した画力、驚くほど型破りなアイデア、どんどんのめり込んでしまうストーリー展開……。どれをとっても、誰もが「唯一無二」と認める存在です。
ゾワッとするホラー漫画を読むにはぴったりの残暑のこの時期に、なんと伊藤先生にインタビューをさせていただけることになりました。
さらに今回は、Twitter上で伊藤先生の作品を再現した"顔面漫画"を公開しているいくらさん(@mamakiteru)をお招きして、インタビューに加わっていただくことに。
伊藤先生の大ファンでもあるいくらさんと、伊藤先生の作品の魅力や、独特な世界観のつくり方、さらには先生の子供時代のエピソードにまで迫ってきました!
だからこそ、楳図かずお先生や日野日出志先生、諸星大二郎先生といった数多くの大物ホラー漫画家が誕生してきたのではないでしょうか。
そしてそのなかでも、独特な世界観を武器にホラー漫画界のトップを走り続けるのが『富江』や『うずまき』といった作品で知られる伊藤潤二先生。その卓越した画力、驚くほど型破りなアイデア、どんどんのめり込んでしまうストーリー展開……。どれをとっても、誰もが「唯一無二」と認める存在です。
ゾワッとするホラー漫画を読むにはぴったりの残暑のこの時期に、なんと伊藤先生にインタビューをさせていただけることになりました。
さらに今回は、Twitter上で伊藤先生の作品を再現した"顔面漫画"を公開しているいくらさん(@mamakiteru)をお招きして、インタビューに加わっていただくことに。
伊藤先生の大ファンでもあるいくらさんと、伊藤先生の作品の魅力や、独特な世界観のつくり方、さらには先生の子供時代のエピソードにまで迫ってきました!
伊藤潤二作品の"顔面漫画"、最終目標はまさかのあのキャラクター
── 今日はどうぞよろしくお願いいたします! お2人は初対面とのことですが、Twitter上では、伊藤先生がいくらさんの作品をリツイートされていて、交流がありますよね。先生は、初めていくらさんの"顔面漫画"を見たとき、どう思われたんですか?
素直にびっくりしましたね。再現度もとても高かったですし。
そう言っていただけて光栄です! 先生をびっくりさせたくて、再現させていただいたので。
── いくらさんが"顔面漫画"を始められたきっかけは何だったんですか?
始めたのは、伊藤先生が描かれた『多身の舞』という油絵を拝見して、衝撃を受けたことがきっかけです。本当に恐縮なんですが、描かれている女性が少し自分と似ているんじゃないかと感じて……。
▲ 『多身の舞』©️伊藤潤二
── 伊藤先生は油絵もお描きになるんですね! 油絵と漫画の絵はやはり別物ですか?
そうですね。漫画は輪郭をしっかり描くので、色をのせるよりは線で印影をつけたくて。逆に色をのせて描くときは輪郭ははっきりさせない方が好きです。
私、先生の印影のある絵を再現するときはアイラインで顔に線を描き込んでいます。
楳図かずお先生の絵もそうですが、印影はホラー漫画には欠かせない要素かもしれませんね。絵に深みが出ますから。
── たしかに。特に顔の印影はホラー漫画特有かもしれません。そんな顔の印影も見事に表現されているいくらさんですが、再現するのが難しかった作品はありますか?
先生の作品が素晴らしいので、きちんと再現できるか毎回不安なのですが……。私、視力がよくてコンタクトレンズをしたことがないので、カラーコンタクトレンズが怖くて入れられなくて。だから、瞳が小さいキャラクターの目元は撮った写真を加工して再現しています。
▲ 『溶解教室』©️伊藤潤二/秋田書店
普通の目だと怖くならないんですよ。心霊写真なんかでも、目が写っていると怖いじゃないですか。だから目の表現は大切ですね。
── なるほど。たしかに目の印象って強いかもしれません。撮影のとき、工夫している点などありますか?
カメラアングルが難しくないですか?
そうなんですよ! それから、漫画だとできるけどリアルだと難しい……ってことが多くて。富江が体操座りしているシーンを再現しているんですが、私だと脚の長さが足りなくて、台を使って膝の位置を上に持ち上げてるんです。
実はメイキングをたまに見せていただくんですが、完成したものを見ただけでは想像できないようなご苦労があるようで。そのアイデアがいつもすごいなと思っています。
── ちなみに再現するのが一番難しかったシーンは何だったんですか?
『遺書』の幽霊が血みどろで浮いているシーンは苦労しました。椅子に立って撮ったんですが、元のシーンはきちんと足が伸びているからつま先立ちをして。何度も椅子から転げ落ちたんです(笑)
▲ 『遺書』©️伊藤潤二/朝日新聞出版
僕はてっきり寝転がって撮っているのかと思っていました!
あとから椅子だけ消しているんですよ。ただ、写真の加工はすべてスマホでやっていて、あまり技術も高くないので、基本的にはアナログでやっています。「画家」の富江の頭が2つ並んでいるシーンも自分の顔の横にウィッグを画鋲で貼り付けて撮りました。
▲ 『富江・画家』©️伊藤潤二/朝日新聞出版
── すごく手間がかかってる……! 今後、挑戦してみたい作品やシーンはありますか?
『ファッションモデル』の淵さんに挑戦してみたいです! ただ、まだいまの私では再現できないと思うので、もっと勉強してからですね!
いくらさんの淵さん、楽しみにしています。