【検証】「こんなグッズが欲しい!」とイラスト化したものは商品化されないって、本当?

インタビュー/直江あき 撮影/カズヤ
創作界隈では、ファンが「こんなグッズが欲しい!」とSNSなどでイラストとともに発表したアイデアは公式でグッズ化されなくなってしまう、という噂があります。
果たしてそれは本当なのでしょうか。
そもそもグッズ化はどうやって決まるの? いま人気のグッズって何?
アニメやゲームのグッズを数多く企画・開発しているブランド「SuperGroupies(スーパーグルーピーズ)」を展開する株式会社アニウェアの伊藤さんに、グッズにまつわる疑問、質問を聞いちゃいました!

■噂の検証
── 「こういうグッズが欲しい」というイラストがSNSなどにアップされてしまうと、その案はもうグッズ化されないのでしょうか?
イラストと「まったく同じもの」は難しいですね。SNS等で公開されているグッズのデザインを、企業がそのまま商品化するのは避ける場合が多いです。そのデザインを描いた人に著作権がありますので、企業がその人に無断でそれを商品化してしまうと、デザインの盗用になるおそれがあります。それぞれの会社の判断になりますが、うちは避けますね。
けれど、気にせずにイラストをアップしてほしいです。

「こんなグッズが欲しい!」と盛り上がっているのを見るのは、コンテンツを作っている企業様も、うれしいと思います。
それに、お客様が「こういうグッズが欲しい」と考えたアイデアは、現実的には作れないものが多いんです。特に靴などは構造的に不可能だったり、コストがかかりすぎてお客様が購入できる価格にもしづらいですしね。だから、ファンの皆さんと企業のデザインが被るということがそもそもあまりないと思います。
いずれにせよ、やるやらないの現実的な判断をするのはグッズ会社ですので、お客様にはそんな心配をせずに楽しんで頂きたいです。
── では、イラストをアップしてもグッズ化に悪い影響はないのですね。
■ファンの声が反映される
── 商品化の希望があるときは、二次創作以外に、どんな方法がありますか?
── それが実現した事はありますか。
全然あります。ただ、その意見だけで決めることはありません。というのも、実際にお声を頂いて商品化する物は、社内でもすでに作ろうという案が出ていることが多いんです。私たちも情報を常にキャッチしているので、そのようなご要望をいただく時点で、そんなに人気があるなら商品を作ろうという段階になっていることがよくあるんです。
実現できるかどうかは検討する必要がありますが、弊社の窓口に「こういう商品を作って欲しい」と送ってくださる場合には、すごく詳細な要望でもイラストを送ってくださっても全く問題ありません。
── SNSなどのファンの声を反映した例はありますか?
ありますね。たいへん参考にさせていただいてます。
たとえばカバンの大きさです。以前、小さいサイズのカバンを出したら、SNSでの反応が悪くて……。『魔法少女まどか☆マギカ』のカバンを発売した際に、大きいサイズと小さいサイズを用意したんです。まどかと杏子ちゃんとさやかちゃんが大きいサイズで 、ほむらちゃんとマミさんを小さいサイズにしました。そうしたら、「なんでほむらとマミさんだけ小さいんだ、A4サイズが入らないから困る」という感想が多くて。「みんなそんなにA4を入れたいんだ」と知りました。
うちの商品は日常使いをされる方が多いので、学校や会社といった荷物が多い場面で使用するのかと。大きい書類やパソコンが入らないと使いにくい。同人誌が入る大きさが最適なのかもしれませんね(笑)。実際に、大きいカバンの方がよく売れています。
pixivでも「かばんのなかみは」という企画がよく投稿されていますよね。それを見ていると創作界隈のお客様は荷物が多い印象で、それらがちゃんと入るサイズにしようと企画に反映することもあります。

鹿目まどかモデル・佐倉杏子モデル・美樹さやかモデル
(販売終了)

暁美ほむらモデル・巴マミモデル
(販売終了)
── グッズに希望を反映してほしいと思ったら、発信していったほうがいいんですね。
── 他にファンからの反応で気づきなどはありましたか?
黒いものが売れますね。日常生活で使いやすいからだと思います。
しかしここでひとつ課題があって。キャラクターにはそれぞれイメージカラーがありますよね。でもたとえば、そのキャラのイメージカラーが青だからと青いグッズを作ると、日常で使いづらいので買われにくいんです。だからといって、実用的な黒のグッズにすると、他のキャラの色になってしまい、やはり買われない。
ですので、カバンや財布は表面を黒にして、裏地の色をキャラクターごとに変えるといった工夫をしています。そうすれば推しの色を気兼ねなく身につけることができます。
『カードキャプターさくら』のさくらちゃんのイメージカラーはピンクのイメージが強いですが、ピンクだと買いづらいお客様もいるのではということで、黒いバトルコスチュームをモチーフにしたカバンや靴グッズを出したこともあります。他にも、原色をパステルカラーに変えて、使いやすい色にしたりしています。
ただそのキャラクターにめちゃめちゃ人気があると、アパレル的には人気のない色のはずの紫が妙に売れることもあります。
── その紫の人とは……?
■グッズ化の流れ
── 通常はどのようにグッズ化が決まっていくんですか?
我が社のようなグッズ会社はライセンシーと呼ばれており、版権元様から許諾を得て商品を作っています。
まずは多くの人に商品を買っていただける作品を検討します。社内のスタッフ自身もオタクだったり、その作品のファンだったりするので、その辺の感覚は非常に優れています。
また、最近では『キングダムハーツIII』のように「今度こういう新作が出るから商品を作って欲しい」と版権元様からご依頼を頂くこともあります。
でも、どちらかといえば弊社の方から「このアニメのグッズを商品化したい」と版権元様に営業をかけることの方が多いですね。
── 原作漫画とアニメの両方がある場合、どちらに営業をにかけに行くんですか。
基本的にはアニメの方に持って行くことが多いです。漫画の場合はアニメ化すると原作の商品化許諾は停止されアニメ版ライセンスに一本化されることが多いと言われているんですね。アニメは「製作委員会方式」といって、複数の企業がお金を出し合って作られているケースがほとんどです。そしてこの商品化に伴い我々ライセンシーが版権元様にお支払する版権料というのは、 製作委員会に入ります。原作が版権の窓口を開いて多くの商品を作ってしまうと、アニメの製作委員会に版権料が還元されなくなってしまいます。なのでアニメの放送が終わったあとしばらく経つまでは、商品化の権利はアニメ側が持っている場合が多いですね。
アニメの放送から十数年が経っていて、アニメの方の権利が閉じている場合は、原作の方に話を持って行きます。先日『神風怪盗ジャンヌ』の商品を作った時はまだ東映アニメーション様のライセンスの窓口が開いていたので、 そこにお話を持って行って実現しました。
作品によって様々ですね。ここ数年はアプリゲームが人気で、『A3!(エースリー)』などは発表された瞬間に、商品化の声をかけました。その辺は日頃のリサーチで感覚を養っています。
スタッフたちが日々アニメのイベントに行ったり、家でもpixivのイラストを見たりしているので。 「最近、pixivでこの作品のキャラの絵が多いから」という話は社内でもよくしますね。pixivでキャラの二次創作が増えれば、今このキャラが流行ってるんだなというのがよくわかります。
── 何のジャンルがいちばん二次創作が多いと感じますか?

■グッズ化までの創意工夫
── グッズ化するにあたり、どのようなことを意識されてますか?
その作品のことを心の底から理解することです。
たとえば、こちらは『ジョーカー・ゲーム』という作品の時計です。謎解きの要素のある作品なので、その世界観を商品にも反映させました。 ある一定の秒数になると、文字盤の他の文字が隠れ、「JOKER GAME」という文字が浮かび上がるんです。企画した担当者が世界観を研究して作り込むんですね。当然アニメも全話見ますし、漫画も読みますし、場合によっては二次創作までチェックします。その作品を好きな人たちのことを本当に理解しなければいけません。付け焼き刃で作った商品はすぐ見抜かれてしまいます。
── 他にもファンの心をつかむための工夫はありますか?
その商品を持っているキャラクターのイラストをアニメ制作会社様に描き下ろして頂き、特典として付けたりもします。バッグ自体にはキャラクターの要素はそこまで詰め込んでいなくても、キャラと同じ物が持てるという特別感を出すことができます。
たとえば以前、BEAMS様とのコラボで『ハイキュー!!』のパーカーを作った際に、描き下ろしのイラストを付けました。そのときキャラが着ていたパーカー以外の服は、実際にBEAMS様の店舗で販売しているものを用いてコーディネートしてもらったんです。キャラがイラスト内で着ていた服は当然メンズ商品だったんですが、中には「一式ください」という女性のお客様もいたようで、すぐに売り切れたと聞きました。日常の服でも、コスプレ感覚で楽しまれているんですね。
■アニメグッズの購買層
── 今のところターゲット層の年齢はどれぐらいなんですか?
── 歳を取るとみんなオタクを卒業しちゃうんですかね……?
── グッズは海外でも販売しているんですか?
── 海外のお客様が欲しい商品は、日本国内の人が欲しいものとは違うんですか。
── 男性向けの商品と女性向けの商品で何か違う点はあります?
まず取り扱う作品が違いますね。『ガールズ&パンツァー』の商品でしたらターゲットは男性で、『アイドリッシュセブン』の商品であれば女性、というように扱うコンテンツが違います。
サイズ展開も違いますね。男性の方が大きいです。バッグを作る際も、レディースのサイズで作ってしまうと男性には小さいようです。
こちらの『サイコパス』のバッグは、男女ともに使っていただけるように、かなり大きめのサイズ感になっています。
── 男女で売り上げの違いなどはありますか?
売り上げとしては今のSuperGroupiesでは半々です。当初、男性はキャラクターのイラストが目立つところにある商品がいいのかと思い込んでいました。けれどもいざデザイン性重視の商品を販売してみたら、男性の方にも広く受け入れて頂いて驚きました。おかげさまでご好評を頂いています。
ただ、「こういうグッズが欲しい」というご意見やSNS上のイラスト等は、男性のものはあまり見ませんね。
画面の向こうの方なので、正確な性別はわかりませんが……。弊社のカスタマーサポートでも性別はうかがっていないのですが、「この作品のグッズを作って欲しいです」という意見もおそらく女性のお客様からが多いのではと思います。
実際の売り上げは男女半々なのに、不思議なことにエゴサをしても女性しか引っかからないんですよね。男性はグッズの情報を見ても、SNSでシェアしたりしないんです。だから、女性向けの作品や商品しかエゴサによる情報が得られないんですよね。
男性向けの商品に関しては、誰もtwitterでつぶやかないので、このデザインで正解なのかわからないのが正直なところです。情報は拾えなくても数は売れるという不思議な現象が起こっています。なのでぜひ男性の方にも発信して欲しいと思っています。
── 実際に商品化する際、ファンの声を版権元に伝えることもありますか?
いっぱいありますね。お客様から「この作品でも商品化して欲しい」というご意見を頂いている場合、そのことを版権元様にも伝えます。そうすると版権元様も喜んでくださるんですよね。ファンの声が説得力になって企画が実現したこともたくさんあります。
今はSNSでみんなが発信できるので、そういうふうに言ってくださると私たちも助かります。
SNSなどで「SuperGroupiesさん、こういうの作って欲しい」ということをどんどん発信して欲しいです。私たちは常にエゴサしているので。出来る限り、お客様の声にお応えしたいと思っています。