VTuberでメシは食えるのか!?織田信姫に聞くマネタイズ術
「バーチャルYouTuber(VTuber)」が大きな話題を集めてはや1年。今もなお日々、新しいVTuberが誕生し、現在その数は7,000人を突破したとも言われています。
もはや見慣れた存在になりつつあるVTuberですが、ひとつの動画制作にかかる金銭的、技術的なコストは通常のYouTuberより高いとも聞こえてきます。ライバルも増え続ける中、VTuberたちはどうやって生きているのか? 「バーチャルで、生きていく」ためのリアルなサバイバル術を、現役のVTuber本人に聞いてみたい!
そこで今回お話をうかがったのは、群雄割拠の現代に颯爽と現れた戦国系VTuber・織田信姫さん。天下統一という野望を掲げ、YouTubeやTwitterで注目を集め続ける彼女を通じて、その活動の実態に迫ります。


- 織田信姫
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2018年4月より活動を開始以来、第六天魔王もかくやというTwitterでの破天荒な言動やYouTubeでのクソ動画の連発で、またたく間にVTuber界の風雲児となる。2019年4月現在、YouTubeのチャンネル登録者数は17万人を突破。UserLocalのファン数ランキングではVTuber全体の22位となっており、トップ層をうかがう位置につけている。
編集は大変だけど新規ファン獲得はやっぱり動画!
── はじめまして。本日はよろしくお願いします。

おはいくさ~! 織田信姫で~す!

── 当たり前ですが、いつも動画で見ているのと同じで感動しています! 早速ですが、信姫さんはどうしてVTuberになったんでしょうか?

なんか気づいたらこっちでバーチャル化してしまっていたんですが、じゃあ現代でも天下統一を目指さなきゃって。そこで兵力をかき集めるにはYouTubeが一番便利だろうって流れですね。
── とてもカジュアルに天下統一というお話が出てきて、さすがという感じがします。信姫さんは普段どのようにYouTubeの動画を作成されているんでしょう?

基本的に企画、撮影、編集は全部自分でやってます。たまに制作を手伝ってくれる人もいますが、自分でやった方が良いコンテンツができあがるので。まず何か面白い企画を思いついたら、すぐにメモに書き込んで、実際に撮影して、編集してってのは通常のYouTuberとなんら変わらないと思います。
── バーチャルだと撮影だけでも結構大変そうですが、企画から全部ひとりというのは、かなりなものですね……。時間はどのくらいかかるんでしょう?

企画は5分で思いつくものもあれば、1日中かかったりするものもあります。でも基本的にはパッと思いつきでできあがったものが多いです。撮影は1企画あたり数十分から1時間程度で、編集は平均10時間くらいかけます。納得いくものができあがるのなら、お手伝いは欲しいですけど、なかなか難しいですね。
── 編集にそんなに時間がかかるんですね……。だからなのかと思いますが、VTuberさんのなかには事前に編集した動画はほとんど作らず、生放送のライブ配信と、そのアーカイブ動画がメインという方も多くなっています。

あたしはライブ配信については、日常だらだら配信の良さもありますけど、どちらかと言えば、何かの記念のときだけ盛大にやりたいと考えていて。そうするとものすごい事前準備が必要になるので、基本的にはやってないです。
単純に生放送より動画制作をするのが好きというか、映画のようにきっちりと編集されたひとつの作品としてYouTubeに投下するのが好きというのもあります。あと、ライブ配信に比べると、動画は新規の視聴者獲得がより多く見込めるんです。
── 確かに、初めて信姫さんを知る人は、短く編集された動画のほうが見やすいですよね。すでに家臣になっていたら長時間のライブ配信アーカイブでも見ますけど。

あたしの目的は、分子を取りに行くのではなく分母を取りに行くこと、つまりコミュニティを濃くすることではなく、より多くの家臣を抱えることなので、認知度を拡大させやすい動画の方がそれに適しているとも思っています。
他人がやってないことをするべし!
── 信姫さんのYouTubeチャンネルは登録者数が現在17万を超えています。これだけの家臣を集めるために、普段から気をつけていることはありますか?
── パロディネタと言えば、信姫さんはTwitterのアイコンを頻繁に変えたり、あの手この手でファンを楽しませているように見えます。

VTuberとTwitterの親和性は高く、あたしにとっても現在の日本で最も使えるSNSであると考えています。とにかく面白いツイートをしてユーザーを楽しませて、家臣たちとの親密度を上げるよう心がけています。
DMはあまり来ませんが、メンションや返信は1日で数百件は軽く来ます。さすがに全部にレスを返している時間はないので、面白い返しができるものだけ返します。たまに返ってくるくらいが家臣たちも一番うれしいのではと思います。
収入源は広告収益や投げ銭だけじゃない!?
── それでは今回の本題である「VTuberでメシは食えるのか?」についてお聞きしたいのですが、ズバリVTuberとして生計を立てていくことは可能なのでしょうか?

ぶっちゃけ余裕で食えます。自分だけで運営している個人なのか、企業でたくさんの人が関わっているのか、運営コストの大きさによって数値目標は変わってくると思いますが。
── 信姫さんご自身も食えている?

現時点の話で言うならば、食えてます。また、今のところ数字が落ちたことはないので、活動を続ければ続けるだけ右肩上がりしていくはずです。現状の規模感は年間で数千万円程度ですが、今年中に1億を目指したいです。あたしより上の人は、たぶんそれ以上稼いでる人もいると思います。

── 信姫さんの現在の主な収益源は?

いわゆる「企業案件」がメインです、ただし、みなさんが想像されるものとは違うと思います。ゲームや商品を紹介する動画の提供だけが企業案件だと思われがちなんですが、企業案件としてイベントに招待していただいて出演する事もあるので、実際には家臣たちに見えないところで、いろいろ動いていたりします。
YouTuberやVTuberの収益源って、動画の再生数に対するアドセンス広告収益だったり、ライブ配信のスーパーチャットでの投げ銭がメインだと勘違いされがちですが、チャンネル登録者数が多い上位層になればなるほど、その比率は低くなって、ほとんどが別の収益だと思います。
── あまり詳しくは言えないと思いますが、YouTubeで見えている部分以外の広告出演料だったりのギャランティーが大きいということでしょうか。企業案件について、オファーはいつごろから来るようになりましたか?

実は活動開始3日目の時点で打診はすでに来ていたと思います。今まで累計で80件以上は来ているかなと。ですが、あまりこれを言うといやらしいので、表の世界では案件ないない芸人をやっていた方が気分が良いです。
案件の具体的な金額は言えませんが、VTuberは通常のYouTuberの単価よりもむしろ高いです。理由は、VTuberを見ているユーザーの消費金額が通常のYouTuberを見ているユーザーに比べて何倍も高いからです。もちろん企業によって適正は変わりますが。

企業案件は、とにかく凝ります。クライアント様の満足度を高めつつ、かといって家臣たちもおろそかにすることなく、すべての人が満足のいく結果を残すことを意識します。編集時間は20時間を超えることが多いです。

また、クライアント様が何を求めるか?によって動画内容を変えます。販売がしたいなら販売訴求力の高い企画にして、認知度を上げたいのであれば面白く横に広がるタイプの企画を練ります。
── 企業からのオファーは常日頃あるものなのでしょうか?

pixivFANBOXは家臣たちに対するお礼をする場所

pixivさんにはFANBOXでお世話になっており、家臣たちから多くの支援をもらっています。BOOTHでのグッズ販売も2月から始めたのですが、こちらも売上がよく、家臣たちも喜んでくれるので今後もやっていきたいと思っています。
── 現在FANBOXを始めるVTuberの方はどんどん増えているのですが、信姫さんはFANBOX全体でもトップクラスの支援を集めています。

ある程度コンテンツを充実させる必要はあると思いますが、FANBOXで数十万円程度の支援をいただくことは、VTuberにとっては比較的簡単なのではないかという体感です。たとえば動画を制作して同じ金額を稼ぐということを考えれば、ということですね。
元々は家臣たちとのコミュニケーションのために、何かYouTubeやTwitter以外の手段がないかと考えたところからでした。双方向性があって、かつサービスとして収益を上げられて、継続性の高い別の出口をと模索した結果、FANBOXにたどり着きました。
── FANBOXでは日記のような内容のものからボイスデータ、自撮り画像の配布など、さまざまなことを実践されています。運用のポイントなどはありますか?

とにかくニーズを調査して価値提供をすること、特典を充実させて、支援をもらった分だけコンテンツやサービスを増やして、満足度を高めることを意識しています。
ただ、あまりにコストがかかりすぎる特典は継続性をそこねるので、なるべくちょっとした労力でどうにかなる、費用対効果が高いものを提供していくことを考えています。ボイスなどはかなりウケが良くて、家臣たちにも喜ばれますね。
あたしの場合、1万円の永久名誉家臣プランに入ると、毎月、名前を吹き込んだお礼ボイス +言ってほしいセリフのボイスを個別にプレゼントしています。毎月1回、みんなで一緒にゲームをプレイしたり、交流の場も設けています。そうしたプレミアムな価値を提供しやすいのはFANBOXならではですね。

── FANBOXと、YouTubeやTwitterの使い分けは?

あたしにとってFANBOXは、特に熱量の高い家臣たちに対するお礼をする場所です。家臣たちは応援したいけれど、応援する場所が少なくて、場所に飢えています。YouTubeにもスーパーチャットはありますが、お返しができないので実質お布施状態になります。
またFANBOXには、純粋に応援をしたい、熱量のある1%の人間しか入らないので、Twitterに比べると、かなりコミュニティが健全です。FANBOXは戦う場所ではなく、お互いにお礼をしあえるあったかい空間ってことですね。
VTuberとして歴史に爪痕を残すために
── 天下統一を掲げて活動されていますが、今後の戦略についてお聞かせください。

ひとまず、織田軍を100万人まで成長させます。しかし、これは時間の問題なので、通過点であり最終目標ではありません。最終目標はとにかく、自分一人が存在したことで、VTuber業界全体の需要が大きくなり、後発が活動しやすい環境を整え、歴史に爪痕を残すことです。
そのために「負けない戦略」を考えています。言葉の通りですが、無理に争わないこと、利がない行動をしないことです。常に利を意識して行動する。例えば一時的に損失を被る内容だとしても、最終的に利があるなら全力でスコップ持って掘ります。
── 今年は、信姫さんのストーカーとして名を挙げ、どんどん勢力を拡大している男の娘VTuber・犬山たまきさん(佃煮のりお先生)との年収対決も気になります。

正確には「年商」対決です(※)。年収を大きくしようとすると税金が高くなってしまうので。犬山たまきも頑張っているようですが、さすがにあたしも負けられません。
※「年商」は事業全体の年間の売上、「年収」は年商から「経費」を引いた残りのこと。経費についてはこちらの記事も参考に。

※PDCAはPlan、Do、Check、Actionの頭文字をつなげた略称で、計画・実行・評価・改善のサイクルをくりかえしていくことを指す。


あたしの家臣たちへは……いつも応援してくれてありがとーっ! これからも応援よろしくね! そして、まだ織田軍へ入ってない人へ。アンタまだ織田軍に入ってないの? さっさと入りなさい!