「ROM専だが創作者と交流したい」ネットもリアルも仲良くなるケースは同じ/カレー沢薫の創作相談

ROM専だが創作者と交流したい
私は逆に、相手を好きであればあるほど近寄れなくなってしまうタイプです。
私はソシャゲ「 Fate/Grand Order(FGO)」のキャラクター土方歳三(敬称略)に現在進行形でキュルっており、彼に何かあるたびにTwitterやコラムが「文字なのに早口なのがわかる」状態になってしまいます。
その異音があまりにもうるさかったのか、土方さんの中の人の目に留まり、自著の帯を書いていただいたり、果てはボイス入りの動画まで上げていただくという幸運に恵まれました。
しかし、幸運すぎたせいか受け取った瞬間ラピュタから転落して見ることができず、担当から「返事がないから帯文こっちで選びました」と言われて、ギャグマンガ割れしたグラサン姿で「もう少し待ってください」と土下座したり、動画も結局「1回」しか見れていません。
後にも先にも担当に心から謝ったのはあれ一度、動画も通しで見れたのは「0回」数分の動画を「30回」ぐらいの休憩を挟んでやっと最後まで見れました。
傍から見れば、推しに光栄を授かった幸運なる者ではなく、定期的に電流を流される拷問を受けている人だったでしょう。
そんな与えられた僥倖すら受け取れない私からすれば「一ファンの身分だが書き手とお近づきになって仲良くなりたい」と思うその心意気やよしです。
マナー違反ではないが、線引きをしていれば厳しい
しかし、率直に言ってこれは厳しい戦いです。
仲良くなりたい方がどのぐらいのポジションなのかは存じ上げませんが「ただの読者が人気の書き手と交流しようとするのはマナー違反」というわけではなりません。
確かにそういう風潮はなきにしもあらずなのですが、それは「あなたみたいな一般庶民が瑠璃色玉手箱先輩とお近づきになろうなんて身の程を知りなさい!」と騒ぐお嬢様学園百合に出てくるモブが「こんなの暗黙の了解よ、そんなこともご存じないのかしら?」と勝手に決めたルールであり、法律として決めらているわけではありません。
確かにアイドルなどであれば一ファンと仲良くなるのは慎むべきかもしれませんが、あくまで趣味の世界でそこまで線引きをするのは逆に界隈を窮屈してしまうと思います。
ただし、仲良くなりたい創作者自身が「リプやDM、メールに返信は致しません」と明らかに線引きをしているようなら、残念ですがあきらめましょう。
創作者は、創作を快適に長くやるために交流をあまりしないようにしている場合が多いので、そこを超えようとすると、最悪相手の創作活動を害する結果になってしまいます。
乙女ゲーとかであれば、ラインをお構いなしに超えてくるヒロインに「おもしれー女」となるのですが、現実だと「日本語が読めない人がきた!」となるだけで、そこから仲良くなれる可能性はありません。
褒めだけでは交流にならない
ある程度交流を求める創作者だったとしても、現状では厳しいです。
なぜなら「交流」というのは、双方でコミュニケーションを取り合う行為なので「お互いのことをある程度知っていて、さらに興味を持っている」状態でないと、楽しい交流にならないのです。
あなたは創作者に対しお伝えしたいこと聞きたいことなどがたくさんあるのだと思いますが、創作者側はあなたに関する情報がないので、言いたいことも聞きたいこともないのです。
つまり、現時点であなたと創作者との交流は、あなたの賛美に、創作者がひたすら「ありがとうございます」と返すしかなく、交流にならないのです。
よって、交流したいなら創作者にもあなたのパーソナリティを知ってもらい興味を持ってもらう必要があるのですが「感想と見せかけた自分語り」ほどご法度はありません。
もしあなたが創作をしているなら「あなたはどんなのを書いているんですか?」という返しができ、そこからラリーを続けられるかもしれませんが、それが封じられているというのは相当厳しいのです。
よほど褒められ慣れしている人なら「取り巻きとして採用」もワンチャンあるのですが、なかなかそのような財閥令嬢創作者はいません。
むしろ過剰な褒めに対しては「恐縮」を感じてしまう人も少なくありません。
「神絵師」とか「神字書き」などと簡単に言いますが、神と言われた側が「っカー! 俺が神だって気づかれちゃったか!」と思うかというと「いや人です」とマジレス、かつ神と呼ばれることを重荷に感じている人もかなりいると思われます。
あなたとの交流は創作者にとって「一方的な褒めに恐縮し続けるだけの居心地の悪いもの」になってしまう可能性が高く、創作者にとってそれをわざわざやるメリットがないのです。
全く関係ないことからアプローチする
しかし、一読者が創作者と交流し、仲良くなる望みが全くないわけではなりません。
まずは今後も、一読者として返信を求めず、作品に対する感想や創作者に対する応援を続けていきましょう。
そしてあなたも自身のSNSを持つなどして「自分のプロフィールや情報を発信」していくのです。
交流はしたくなくても、いつも感想くれる人、応援してくれる人というのは創作者にとってありがたい存在なので「いつも感想をくれるこの人はどんな人なのだろう」と興味を持ち、こっそりSNSを見にいくぐらいのことはやる可能性があります。
少なくとも私はやりますし、「交流はないけど一方的に行動をチェックしてくる人」という逆にこっちがキモい存在になっている場合すらあります。
そこで「へー、この人は茨城出身でヌンチャクの達人なのか」と創作者にあなたの情報が渡りますし「スリングの長さはどのぐらいかな?」という興味にもつながり、話したことはなくても親近感を持った状態になるため、何かのきっかけで交流できる可能性が高まります。
また、あなたは「創作がらみの話で創作者と交流したい」と考えていると思いますが、逆に「全く関係ないこと」の方が仲良くなれたりもします。
私も正直個人的に交流している読者はいますが、その人たちと私の作品について話すことはありませんし、まして作品について今後の展開を教えるなんてことはありません。
むしろ私の作品について何か言い出したら「やめろ、ぶん殴るぞ」と言ってやめさせます。
じゃあ何をしていたかというと「桃鉄」です。
そして、私が推し作家だからと言ってプレイで忖度することはなく、平気で奴らは剛速球カードで俺のリニア周遊カードを叩き割ってくるのですが、だからこそ普通につきあえたともいえます。
やはり「創作者とファン」という関係だとよそよそしくならざるを得ないので、いっそ創作からは離れ、創作者の「ポケモソ初めました、当方ヴァイオレットゆえ、スカーレット保持者とやりとりしたい」等のつぶやきに名乗りをあげるなど、対等、むしろこっちが相手に何か与えられる側として近づいてみてはどうでしょうか。
創作者とて、創作ばっかりやってて感想しか求めてないわけではなく「政治についてガチで語り合える人がほしい」など別の需要も持っていると思うので、そこを供給しにいくのです。
ネットもリアルも仲良くなるケースは同じ
全てが遠回りで不確かすぎると思うかもしれませんが、リアルの人間関係でも「あの子と仲良くしてえ!」と突進して仲良くなるケースより「自然」とつるんでいたケースの方が大半でしょう。
ネットも同様であり、仲良くなりたいというロックオン形式で仲良くなれることもありますが、その方法だと引かれる場合も多く、「たまたま共通点と縁があって何となく自然に交流するようになり、気づけば顔と名前は知らないけれどお互いの性癖ばかりに詳しくなって早10年」というふうに流れで仲良くなった方が関係も良好かつ長続きするものです。
よって、相手が興味を持っているものに自分も持ってみるなど、縁が繋がりやすくなる共通点を増やすなどの努力はできますが、それをしたらあとは自然に任せるしかないと思います。
創作をやっている者同士なら共通の話題があるので仲良くなるきっかけはやってないよりあるのですが、それで確実に仲良くなれるわけではなく「気があったから仲良くなる」という基本は変わらないのです。
やるだけやって仲良くなれなかったのなら、創作をやってないから仲良くなれなかったのではなく「ただ御縁がなかった」のだと考えましょう。

いつも楽しく拝読しております。セーラーメリバのフレーズ等、先生の言い回しが大好きです。
創作者ではなくROMの立場から長文感想を送るオタクの相談です。悩みは「私もこの方とお話をしたい」。
私の今いるBL二次界隈は、リプ欄は相互とのやりとりの場、DMは相互のみ、マロは匿名ツールなので名乗るのは厳禁、pixivのメッセージは確認されず。長文には「返信不要」とつける風潮も根強く、300字を超えるので毎回返信を辞退。「返信が欲しい」「交流したい」という欲は、創作者の「感想が欲しい」欲より遥かにタブー視されており、創作者とROMの交流の入り口がどこにも見当たりません。CP作品拝見からの感想執筆時は楽しさMAXなのですが、送ったあとの無反応に虚しくなります。
どうすれば長文感想ROMでも語らいができるでしょうか。作品&創作者への好きというROMの気持ちは一方通行なのが二次創作界隈の文化なのでしょうか。