「完全なものより未完成のものが求められる」FANBOXクリエイター座談会ハイライト

pixivFANBOXをはじめてみたい方や、使い方に悩まれている方に向けて、クリエイターの生の声をお届けする「FANBOXクリエイター座談会」が、2021年5月28日、YouTubeでライブ配信されました。
これからFANBOXを始めようとご検討されている漫画家の田中圭一さん、すでにFANBOXでもご活躍されているイラストレーターのさいとうなおきさん、そしてFANBOXを中心に活動されている、はまけん。さんをゲストに、濃いお話が2時間近く展開されました。
今回は、座談会のハイライトをまとめてギュッと圧縮してお届けします。
あらためて、FANBOXとは?
pixivFANBOXは、支援者からの継続的な支援でクリエイターを支えるファンコミュニティです。言い換えれば、月額制のファンクラブ、あるいは有料ブログのようなものを簡単に運用できるサービスということもできます。
イラスト、マンガ、音声データ、動画など、さまざまなファイル形式に対応しており、支援プランの金額はクリエイターが自由に設定可能(最大10,000円)。手数料は10%のみで、誰でもすぐに開設できる、といった特徴があります。
オススメのプラン設定と投稿の頻度
FANBOXのクリエイターさんから最もよく聞かれることは、①プランの金額をいくらにしたらよいのか、②投稿の頻度はどのくらいがよいのか、という2点です。
①については、500円がオススメです。なぜなら、FANBOXでクリエイターを支援している人が1人に対して支援している平均が約500円だからです。迷ったらとりあえず500円プランを作って、FANBOXに慣れてきたら、もっと高いプランを考えましょう。
②については週1回くらいがオススメです。FANBOX全体の平均は月に約3回なのですが、多くの支援を受けている人は、月に4~5回のペースを保って安定的に投稿されていることが多いです。
1回の投稿のクオリティも、投稿の頻度も、もちろん高いに越したことはありません。しかし、それが支援者数の増加につながるかというと、必ずしもそうではありません。無理をして投稿できなくなることが一番の機会損失になりますので、無理なく続けられるペースをつかむことがとても大事です。
「気軽さ」がFANBOXの魅力

最初のきっかけは、一般開放される前(※)にお声がけいただいて。

今は誰でもすぐ始められるようになっていますが、その頃は、われわれからお声がけをしたクリエイターさんだけに限定して、実験的な運用をしていましたね。

機能も今とは違うところがあったり。そこで正直、やり方を失敗したなと思っていて、更新も全然してなかったんです。でも、一般開放後も支援してくれている方々がいて、その支援を無駄にしたくなくて考えていたら、たまたまいい方向が見つかったという感じです。気持ちの部分の変化もありそうですが。

僕は一般開放のときに周囲の絵描きさんが一斉に始めていたので、その流れに乗って。作家業は不安定なので、少しでも安定させられたらなと。最初は支援者が全然いなかったんですが、だんだん増えてきまして。


やはりFANBOXの宣伝をしっかりするようにして、その上でFANBOX限定のものがありますよ、というふうにしたのが大きかったように思います。

われわれからすると、このクリエイターはフォロワー数がこれだけあるのだから、もうちょっと宣伝するだけで支援者はもっと増えるのに……ということは結構ありますね。

やっぱりお金をもらうので、いやらしく見えないかなって思うところはありますよね。そこがクリアになれば(支援を)お願いしますと言いやすくなる。

この3年くらいの間に、クリエイター側も、支援する側も、お互いに理解が進んできている感じもあります。

支援する側が気軽に入ったり辞めたりできるのがFANBOXの良いところだと思うんですよね。YouTubeでスーパーチャット(≒投げ銭)をする感覚で。

クリエイターさんは、お金に見合ったものを出さないと、みたいに重く考えすぎることが多いんです。毎回FANBOX限定で、新しいものを出さなければいけないわけじゃない。(支援する側と同様に)気軽に楽しみながら活動してもらうのが一番だと思っています。
未完成なものこそ価値がある

お金をもらっているのが精神的なプレッシャーになるというのは、すごくよくわかるんですよね。

以前は勘違いしていて、商品として完全なものを出さなきゃいけないと思っていたんです。でも逆で、支援する人って、不完全な、完成までの過程を見せてくれって人のほうが多いんですよね。そこを応援したいんだと。

アイドルですと、ステージ以外の日常とか、レッスンしているところを見せるとか、そういうのが価値になると思うんですが、私みたいなマンガ家の場合って、何に相当するんですかね?

僕の場合は、Discordというソフトを使って、支援者のみなさんだけが入れるコミュニティにして、たまに相談をしていますね。「このYouTubeのサムネイルとこのサムネイルどっちがいい?」とか。
サムネがずらりと並んださいとうなおきさんのYouTubeチャンネル。

そういうとき、声が大きい人がいたり、アンチみたいな人がいたりはしないんですか?

課金のハードルがありますね。わざわざお金を払ってまで嫌がらせをしに来ようというのは、あんまりないんですよね。

VTuberさんも、支援者をDiscordのサーバに招待するという特典はよくやっていますね。マンガやイラストの連作などで「このあとの展開はどっちが良いか?」みたいなことも。オリジナルキャラクターのイラストを投稿して、名前の候補をコメントで募集したり。

僕もやってますね。FANBOXだけに先行でマンガのプロットを出したりするんですが、漢字が間違ってますよとか、オチがわかりにくいですとか、教えてもらえますね(笑)。

編集者さんみたいですね(笑)。

再アップしたら「前より良くなった」とか(笑)。そうやってTwitterやpixivに投稿したら、やはり反応も良いんですよね。

すごくいい関係性ですよね。

支援者にとっては、完成する前に見ることができて、しかも制作に参加できるというのが、ほかにかえがたい特典になっているんですよね。
支援者に甘えたっていい

僕のファンが僕に求めているものって、ギャグとか、パロディとか、下ネタとかだと思うんです。でも、FANBOXではぜんぜん違うことをやりたいと思っていて。はたして、それで満足してもらえるだろうかと。

それこそ相談してしまえばいいのではと思いました。

なるほど。あと、普段求められていることと、違うものを混ぜるのも大丈夫なんでしょうか。

好きなことに好きなように挑戦することを優先して、それで支援してもらえたら儲けもの、みたいな考え方のほうが、モチベーションも維持できて、長期的には良い結果につながりやすいと思います。

僕も同じで、支援してくださっているみなさんに甘えてしまっていいと思うんですよね。

甘えるっていい言葉ですね。「はまけん。は俺が育てた」って言える権利をあげます、みたいな。

同人誌を出すときに、通常の販売とは別に、FANBOXで支援してくれた方にだけBOOTHで特別なオマケつきの同人誌セットが買えます、ということをやってみたこともあります。

たまに1年とかの継続支援の特典として何かを無料であげます、ということをされているクリエイターさんがいらっしゃるんですが、やってみると個別に発送とかいろいろ大変なんですよね。
BOOTHのシークレット公開の機能を利用すれば、FANBOXの支援者にしか見えない商品ページというのも簡単にできますし、グッズも倉庫から発送してもらえる。なんならリアルグッズじゃなく、電子書籍とか、デジタルなファイルでもいいんですよね。

ファンなら有料でも、特別なものはほしいですからね。

支援者の3分の1くらいの方が購入されて、そもそも支援者の数も増えて、翌月の継続率もよく、満足感の高い施策だったのかなと思っています。
支援は次のチャレンジにつながる

先日サイン会をやったんですが、そのときにFANBOXの支援者さんが何人も来てくださって。Discordでもお話したことがあったので「あー!◯◯さんですか!」ということが。そのくらい密なコミュニケーションがとれるのは良いことだなと思いましたね。


あとYouTubeを始めたとき、今でこそマネタイズできていますけど、当時は何もお金にならないことをやるわけで。FANBOXで支援をしていただいていたことで、チャレンジしやすかったというのはありますね。

お金以外でも、ちゃんと読者がいて待ってくれているというのはモチベーションになりますね。特に僕は商業活動をしていなくて締切がないので、FANBOXを更新するためにはマンガを描かなきゃとなりますし。

やっぱり支援者が編集者さんみたいな役割になっていますね(笑)。実際さきほどのお話とは逆に、あえて週1でこれを投稿しますと支援者に約束をして自分を追い込む、みたいな使い方をされている方もいらっしゃるんですよね。
座談会の続きはYouTubeで!
FANBOXクリエイター座談会のライブ配信では、このほかにも、さいとうなおきさんがどのようにSNSの使い分けているのか、はまけん。さんがFANBOXを3年運用するなかで経験した試行錯誤などなど、興味深いお話がたくさん聞けました。
また、ゲストのみなさんには、当日コメントなどで寄せられたご質問にも、たっぷりご回答いただいています。もっと深いお話をたくさん聞いてみたい方は、ライブ配信の本編アーカイブがありますので、そちらをぜひご覧ください!