絵が「楽しい」だけではなくなった人へ。COMP×pixiv「#ずっと描き続けてきたぞ」企画の裏側を語る
構成・インタビュー/原田イチボ@HEW
突然ですが、なぜあなたは絵を描くのでしょうか?
絵を描いていると、楽しいことばかりではありません。なかなか上達せずつらい思いをすることだってあるし、SNSを開けばアマチュアでも圧倒的な画力を持った作家さんがたくさんいる……。「好きなことをしているはずなのに苦しい」、そんな感情にぶち当たった経験のある人も多いことでしょう。
完全バランス栄養食の企画・販売を行う株式会社COMPは、イラストコミュニケーションサービス「pixiv」を運営するピクシブ株式会社の協力のもと、イラストレーターへのスポンサー企画を実施しています。

同企画では、いくつかのテーマのもとにイラストレーターたちにイラスト制作を依頼しており、テーマのひとつに、昔と今の自分のイラストをコラボさせる「#ずっと描き続けてきたぞ」があります。企画を通して見えてきた、“絵を描き続ける”理由とは── ?
作家やイラスト制作シーンそのものにスポンサードする仕組み
── 本日はCOMP創業者の鈴木さん、ピクシブの吉川さんにお集まりいただきました。まずは今回の企画の意図についてお伺いできますか?
吉川:一言でいえば「作家さんやイラスト創作シーンそのものにスポンサードする仕組み」です。お仕事として収入が入る形でイラスト制作のお仕事を依頼し、スポンサーのロゴをつけてSNS上に公開いただき、画集を出版するというものですね。
pixivはこれまであくまで「場を提供する立場」に重きを置き、ピクシブ側から作家さんにお声がけしてイラストを描いていただく機会は多くありませんでした。今回の企画はメインストリームとはまた違った絵柄の作家さんたちにもどんどんpixivに入って楽しんでもらいたい、そのためにはレコメンデーション機能を強化するほかに、機能以外でも作家さんにチャンスがあることが必要だと考えました。
── 幅広い作家さんにチャンスがあるんですね

ピクシブ吉川さん
── 鈴木さんは、もともとイラスト文化に興味関心があるとか。
── 本当にマンガが好きな人のチョイスだ!
吉川:どんな作家さんに依頼するかという案をお伝えしたとき、リストの名前を見ただけで『これはすごい』と喜んでくださったんですよ。名前だけでわかる方なんだ!と。
鈴木:『DDLC』(ビジュアルノベル『ドキドキ文芸部!』の略称)のキャラデザを担当したSatchelさんに参加頂けたのには驚きました。僕、DDLCがメチャメチャ好きだったので……(笑)。
COMPは“誰かの夢中をサポートする”食品
── 完全バランス栄養食COMPとは、どんな食品なのでしょうか? 食品メーカーがイラストレーターをスポンサードするとは、なんだか意外な組み合わせに感じますが……。
鈴木:COMPはイラストレーターさんたちのための食事だとも思っているからです。それを説明するために、まず、食事の価値って何だろう、ということについてお話させて下さい。結論からいえば、僕たちは食事の価値は大きく分けて2種類あると思っています。
── 2種類?
鈴木:はい、"娯楽的価値"と"栄養的価値"の2種類です。もちろん、両方とも大切な価値ですよね。大切な人と過ごす食事会は心を豊かにしますし、美味しいご飯を食べると幸せになれます。一方、仕事や趣味に没頭したい状況での食事などは、何でも良いからパッと済ませたいと思うかもしれません。つまり、食事に求める価値のバランスは、その人が置かれている状況に応じて変化するんです。
吉川:鈴木さんって、実験に夢中になりすぎて倒れた経験があるんでしたっけ?
鈴木:はい(笑)。それでいうと、僕は完全に趣味仕事に没頭するタイプの人間でした。創業前は有機化学の研究者でして、それはもうハマってました。化学は面白いですよ。目に見えない分子を自分の思ったとおりに自在に組み立てていけるなんて、万能感ヤバくないですか!?(以後、延々と語る)
── 鈴木さんの勢いが急に増した……!
鈴木:当時は、帰れと言われないかぎり、ラボに引きこもって夜通し実験し続けました。少しの時間も惜しいので、ブロック状の栄養補助食品を山積みにして、それだけ食べているような生活でしたね。そのせいか、数ヵ月に1回とかよくわからない頻度でぶっ倒れていた(笑)。救急搬送されたこともありますし、普通なら30〜40代以降にしかならない病気に20代でかかっちゃったりとか……。医者から、もっとちゃんとしたものを食べて下さい、と言われました。

── そんな人間が開発したCOMP、かなり説得力がありますね……。
鈴木:好きなことを優先させて食事は手軽に済ませるとなると、健康を害するリスクが出てきます。そのジレンマをなんとか解決できないかと開発したのが、COMPです。COMPとは、“誰かの夢中をサポートする”食品なんです。なので最初の話題に戻しますと、COMPはイラストレーターさんたちのための食事だとも思えたんですよね。
── これまでCOMPは、「フリースタイルフットボール沖縄オープン2019」や「車いすテニスグローバルチャレンジ」への協賛など、“何かに夢中になっている人”を支援する活動をいろいろ行なってきましたよね。その中で印象的だったことはありますか?
「おえかきたのしす」は真実なのか?
── 自分自身の過去と現在のイラストをコラボさせる「#ずっと描き続けてきたぞ」という企画テーマは、どのように生まれたのでしょうか? イラストを描く楽しさだけではなく、その裏にある苦労にもスポットライトを当てるようなお題なのが面白く感じました。
吉川:創作活動は必ずしも楽しいことばかりではないですよね。人によっては、ネット上での人気で一喜一憂したり、プロを目指す過程で疲弊したりすることもあります。なので創作活動は「おえかきたのしす」と言葉に出さないといけないくらい、つらい行為にもなり得ます。
── たしかに自分より上手い人が見えやすい環境は、つらい部分もありますね。
コロナ禍の中で、世界中の作家がつながった
── キャンペーンを通じて完成した作品を見て、どのような感想を抱きましたか?
鈴木:イラストを描かない僕でも「こんなにレベルアップするものなら、イラストを描き始めてみようかな」という気持ちにさえさせられました。もちろん成長の裏には血がにじむような努力があるはずですが、「これだけの変化もありうる」と明示されると、絵を描く人であれば一層勇気づけられるのではないでしょうか。INH_さんのイラストなんて、一見すると同一人物が描いたものだとは思えないほどですよね。

── 自分の今までの努力を問われるようなお題ですし、作家さんたちも自然と気合いが入りそうですよね。
── たしかに、バラエティ豊かな絵柄の作家さんが参加されていますね!



▲お題のひとつ「#ずっと描き続けてきたぞ」はさまざまなジャンルの作家さんの成長や変化を目の当たりにする
── COMP側から、インフルエンサーなどの「こんな作家さんに依頼したい」と条件はつけなかったのでしょうか?
鈴木:「いろんなカテゴリ、ジャンル、シーンから、作家さんを選びたい」とはピクシブさんから最初にご提案いただいて、COMPもそれに賛同する形でした。ただ、「日本だけではなく海外の方とも組みたい」という希望はお伝えしたかな。あとはもう、ピクシブさんが選んでくださった方なら安心だという信頼感を持っていましたから、いちファンとして楽しみにするような気持ちでお待ちしておりました……(笑)。
吉川:COMPさんのリクエストは、我々としても渡りに船でした。イラストの世界は日本だけじゃありませんからね。
鈴木:このタイミングで世界中の作家さんと組めて本当に良かったと感じています。新型コロナウイルスの感染が拡大して、地域単位の対立を煽るような話題もいろいろ出ている中で、ひとつのテーマを通じて世界全体の繋がりを改めて感じるキッカケを提供しうる企画を実現できたのは誇らしいことです。
人生をかけて続けてきた結晶としての絵
── 他に企画を通して嬉しかった出来事は何かありますか?
吉川:作家さんにオファーしたら、「実は自分はCOMPマニアなんです」と言われたこともありますし、あとから企画を知って、「COMPなら自分にもやらせてくれ」と連絡をくれた作家さんもいました。そういう出来事は毎回嬉しくなりますよね。そういえば、とある作家さんのマネージャーさんから「彼女は今まで『蒲焼きさん太郎』しか食べなかったのに、この機会にCOMPを飲むようになってツヤツヤになりました」と言われましたよ(笑)。
鈴木:昔の僕と似たようなタイプの方だったんですね!