デザインで絵を殺せるか? 2人のクリエイターが対峙した、LAM初個展「目と雷」

文/pixivision編集部 撮影/カズヤ
現在、pixiv WAEN GALLERYで開催中のイラストレーターLAMさんによる初個展「目と雷」。開催を祝して、LAMさんとデザイナーのカトウさんにお話を伺いました。
個展に詰め込んだ「網膜に焼き付ける」作品たち
── 個展開催、おめでとうございます!

個展は悲願だったので、とてもうれしいです。実は、WAENギャラリーさんにはずいぶん前にお声がけいただいていたのですが、やるからには気合を入れた空間作りをしたいという思いがあったので、1年待っていただき準備しました。
── すごい! 展示されているイラストも素敵でした。

雷雷公社(※LAMさんとデザイナーのカトウさんが主宰するデザインチーム)のスタッフと、僕の自己紹介を兼ねた個展しようという話になって。だから展示イラストは比較的知名度の高いものや、僕の作品らしさが表れているものを選びました。それに、展示するならクオリティの高い良いものを見てほしかったので、必然的にワークスが多くなった感じですね。
── 今回の個展のテーマは「目と雷」ですね。

── すぐにひらめかれたんでしょうか。

── ストレートでインパクトがありますね。

漢字を使いたかったっていうのもありますね。イラストを見ていただくとわかると思うんですけど、電流を走らせたいとか、見た人に雷を浴びせたような衝撃を与えたいという意味で、稲妻のマークなど雷のモチーフが好きなんです。瞳も自分の作品作りの中でアイデンティティになってる部分なので、目、瞳、雷、稲妻、その辺りは使おうっていうのは決めてました。

── キービジュアルの女の子もかわいいです。

見た人に強烈な印象を残すのって「違和感」だと思うんですよね。なんなんだこの子は?と思えるイラストにしたかった。だから感電したかのようなぐにゃぐにゃとした瞳にしたし、まつ毛も極端に長くしました。表情も、怒っているのか笑っているのか、今から攻撃してくるのか、泣こうとしてるのかわからない表情にしました。
いっそ絵を殺しに行くデザイン
── 空間デザインはデザイナーのカトウさんが?


── 展示ラックのうしろの壁紙にも絵が描いてあり驚きました。




イラストの上に文字なんて乗らないほうがいいし、邪魔じゃんって。今回の個展も、最初は無機質で真っ白い、研究所みたいな空間をつくろうとしていたんです。
でも、カトウが「デザインに負けない絵を描いてくれ。そのかわり、デザインも攻め攻めでいく」と言ってくれて、今回のデザインになりました。具体的なものは全部カトウが考えてくれたんですよ。今はイラストで隠れちゃってるんですけど、壁紙めっちゃかっこいいんです。

── カラフルなネオン管を使った演出がとても印象的でした。

ネオンは僕がやりたかったので取り入れてもらいました。費用がとんでもなかったんですが(笑)、せっかくだし実費で追加予算を出して作りました。
── 色付きのライトでイラストを見せるって珍しいですよね。

イラストをそのまま見たい方には向いてない展示方法ですよね。でも、イラストをそのまま見るならネットでも十分ではあるんです。この場に来ないと見られない光や色の演出を見てほしかったんですよね。イラストを綺麗にそのまま見たい方はネットで見てくれって。

── 今回は午前中に撮影させていただきましたが、夜もすごく雰囲気があっていいでしょうね。

夜、最高です。本体の絵はちょっと色が変わっちゃいますが(笑)、それもライブ感ということで。
── この空間の着想ってどこから得たのでしょうか。




LAMは漢字が好きだよね。LAMの漢字系と僕のサイバー感を足すと、あれが生まれます。
── 光だけじゃなく、音楽にもこだわられたんですよね。

── こちらのフルバージョンは今後公開されるんですか?

はい! MVもフル版がちゃんとあるので、いずれ公開されるのでお楽しみください。
この音楽がガンガン流れていて、カトウがデザインした空間があって、僕の絵がドーンとあって、スタッフさんたちも雷雷公社でオリジナルのスタッフパーカー、スタッフコーチジャケットを着ていて……という本当にLAM一色の空間をつくりました。この空間に足を踏み入れた瞬間から、異次元に行くような感覚を味わってほしい。
── 展示されたバイクもすごいですよね!


── ほんとに動くんですね。

そうなんです。「我々はこの個展で始まって、ここからまた続いていく」ということを表現したかったので、走って搬入して走って出ていくっていうコンティニュー感が大事なんです。あのバイクを作ってくれたバイクショップ「テイスト」の河内山さんが、そうしたほうが絶対君たちには合うよって言ってくれて。

河内山さんはすごいビルダーの方なので、バイクを手がけていただき本当に光栄です。バイク業界的にもおもしろい試みだったみたいで、結構反響をいただきました。
このマシンを初めて見たときのインパクトがすごくて、バイクの後ろに飾ってある絵を3〜4時間くらいで一気に描いたんですよ。





だからバーサス。
雷雷公社の信頼関係
── 普段からLAMさんとカトウさんは一緒に創作活動をおこなっているんですよね。どのようなやりとりがあるのでしょうか。

僕がイラストを描いて渡したら、カトウがデザインして完成。
── やり取りみたいなものは?


── すごい信頼関係!


お互い相手のことは意識せずに描いたりデザインしたりしていますが、10何年付き合いがあるんで、なんだかんだ最終的には合うだろうなと結構好きにやってます。

合わなかったら、嫌って言えばいいだけなんで(笑)。今回の図録本にいたっては、できてから見ました。「入稿したよ」っていうので、確認したら「超かっこいいじゃん!」という。
僕は今回の図録本、今までのカトウのデザイン本の中ではトップクラスに好きなんですよね。


僕が個展用に描き下ろした「雷神」の絵もそうですけど、日本古典とかからインスピレーションを受けたので(書影に使われている)にぶい金色がすごくハマっていて。これは意図したの?


いま聞くくらい、お任せしてます。投げるとも言いますけどね(笑)。
でも、自分がコントロールをしなきゃいけないと思う場面って、自分がコントロールしないと良くなんないなってときじゃないですか。でも、大好きなプロのクリエイターがいいと思って上げてくれたものは、やっぱりいいんですよ。専門外である自分が言えることは何もないです。

それに、結局コンセプトがどうだとかあったとしても、見えてるものが全てじゃないですか。だから、僕らは絵が良ければいいんじゃないかって意識がありますね。