過去最多1,310作品から選ばれたのは…⁉️ pixiv高校生イラコン2023結果発表&作品講評
テキスト・構成/ナカニシキュウ
ピクシブが主催する高校生向けイラストコンテスト「pixiv高校生イラコン2023」が7月から8月にかけて開催され、厳正な審査を経て受賞作が決定しました。
第6回にあたる今年のテーマは「結(むすぶ)/ connect」。過去最大となる1,310点の応募作が寄せられ、審査会は大いに難航しました。
審査員を務めたのは、シルバーさん(審査員長)、さいとう なおきさん、荻poteさん、はなぶしさん、藤ちょこさんの人気クリエイター5名。

いずれ劣らぬ力作ぞろいで審査には例年以上の長時間を要しましたが、濃密な議論が最後まで熱量高く繰り広げられました。受賞作品と審査員による講評を発表いたします。
※各講評は、審査会および授賞式でのコメントをまとめたものとなります。
最優秀賞
全応募作のうち、最も優れたイラストとして選ばれた作品に贈られる賞です。作者には賞金20万円が贈られます。1,310作品の頂点に立ったのは……。
審査員による講評
さいとう:「結ぶ/connect」というテーマの表現として、手をつないでいるだけではなく、いろんなところが結ばれているイラストだなと。たとえば人物と屏風の絵を同じ色合いで描くことで、まるで人物が絵の一部のようにも見えるという意味でのつながりも感じられます。また、屏風に描かれた花はアサガオだと思うんですけども、画面に朝日が差していることによって“朝の顔”を表現しているようにも読み取れる……これは僕の深読みかもしれないけど(笑)。“屏風に描かれた絵を絵に描く”というメタ的な面白さも含めて、おしゃれなイラストだなと思いました。
はなぶし:審査会では、ほぼ満場一致で最優秀賞に決まったイラストです。要素がよくまとまっていて雑味がない。「心地いい」というのは本当にその通りだなと。誰もが納得できる最優秀賞なんじゃないでしょうか。
藤ちょこ:単純に画力がめちゃくちゃ高いですし、非の打ちどころがないなと感じました。この方はサラッと描かれていますが、つながれた手を描くのって相当難しいんですよ。私はこんなにうまく描ける気がしない(笑)。日本画的な美しさもあって、右の余白を美しく見せる計算された構図も見どころです。
シルバー:この方は人生2周目なんだろうなと(笑)。1周目の高校生には、なかなかこのクオリティは出せないですよ。屏風の表現ひとつ取っても上から下にかけて色の違いがすごくあったり、四隅でも色の違いがあったり、いろんなところに気を遣えていて本当に非の打ちどころのない作品になっていると思います。すでに完成度が高い分、この先どんな成長をしていくのか、見てみたいと思わせる作品ですね。
クリエイター審査員賞
現役クリエイターである審査員がそれぞれ独自の視点で選んだ作品です。作者にはAmazonギフトカード3万円分が贈られます。
さいとう なおき賞
さいとう:パッと見た瞬間に“空がこぼれ落ちてきた”みたいな錯覚に陥る、大胆な画作りに驚かされました。「不思議、見たことない」って理屈抜きにワクワクした1枚です。教室の風景をモチーフに、青春時代特有の爽やかさと陰鬱さの両面が見事に描き表されています。空の色や雲の色がとても深くて、いつまでも見ていたいと思わせる気持ちのいいイラストですね。
シルバー:タイトルも秀逸です。「それはちぎれたわけじゃない、あとは君次第」って、胸が熱くなりますね。映画化してほしい(笑)。
藤ちょこ:コピーライターの才能も感じますね。
さいとう:女の子と男の子の間にちぎれている赤い糸が描かれていて、一見すると失恋を表現しているように見えるんですが、タイトルで「それはちぎれたわけじゃない」と言っているのが深いなと。「あとは君次第」なんだよ、という上から目線な感じ……ちょっとカチンとくるような(笑)。そんなところにも成長途中の男女の瑞々しさが感じられて、面白いイラストだなと思いました。
荻pote賞
荻pote:パッと見で配色や構図が美しくて、ズームして見ても服や人物の描写が緻密。妥協なく描き込まれているところが好感度の高いポイントですね。ほぼ一目惚れだったんですけど、あとから作者名を確認したら、実は去年僕が講評をさせてもらった方だったという……そういう意味での「つながり(connect)」も感じた作品です(笑)。もちろんそこに忖度は一切ないですけど、この1年でめちゃくちゃうまくなっていて感動しました。我ながら怪物を生んでしまったなと(笑)。もちろん本人の努力が100%なんですけど。
シルバー:それ、講評の価値がすごく上がる話ですね(笑)。この作品は、肌色の表現がすごくきれいだなと思いました。
荻pote:そうなんですよ。子供の手とか、すごく上手で。
藤ちょこ:ホントだ、ぷにぷにしてる。
荻pote:宗教的な世界観や神秘的な空気感、アール・ヌーヴォーや仏画のような構図にも見えますよね。そういう意味では自分の表現を深めていくアーティスト気質も感じられるし、その一方で企業さんの欲しがるイラストを発注通りに描ける方でもあるんじゃないかなと。もしその道を目指されるのであれば、売れっ子になれると思います。
シルバー賞
シルバー:とにかくカッコいい。一見すると「結ぶ/connect」というテーマ性は読み取りづらいんですけども、食物連鎖や輪廻転生のような意味合いが含まれている作品だと思います。プランクトンとかを大きな生き物が食べて、みたいな……そういった生命の営みが海底で行われているというのが、深みが感じられていい。
藤ちょこ:どういう物語が背景にあるのか、想像させられる絵ですよね。てるてる坊主のようなものを作っているキャラがいるんですけど、奥に大量のてるてる坊主が掛かっていて、ものすごく長い時間の流れも感じられる。
シルバー:画作りが完全にプロですね。この構成を描ける人はなかなかいないですし、僕には描けないなと(笑)。モチーフの配置もそうですし、手前と奥の色の置き方、四隅の色のバランスにもすごく気を遣えている。四隅に同じ色を使っちゃうと退屈な画作りになりやすいんですけど、この方は同じ黒でもいろんなトーンを巧みに使い分けています。白や青も同じようにトーンが深いおかげで、重厚感や奥行き、スケール感のある作品に仕上がっていますね。
はなぶし賞
はなぶし:一目で「好き!」ってなっちゃったんですよね。2人が本当に仲良さそうで……それって、“キャラクター”ではなく“人間”を描けているということなんです。「笑顔とはこういう顔」みたいに記号化されていない。絵ってそういうふうに記号化することによって落とし込んでいく表現なんですけど、この絵にはそれ以上のものが描かれている感じがして、グッと来るものがありますね。小手先の技術ではなく、「俺はこれをやるんだ!」と死力を尽くしている感じがして好感が持てます。
さいとう:借り物ではなく、自分の引き出しからちゃんと出してる感がありますよね。
藤ちょこ:背景の雰囲気がめっちゃいいですよね。夕日のオレンジ色が右側の電源プラグに当たっているところとか、よく観察してるなって。あと、拡大して見るとうしろの新聞の字とかまで丁寧に描かれていて、すごい気合を感じます。
荻pote:この方は普段もっとキャッチーなモチーフも描いてらっしゃるみたいですけど、よりによって今回の作品が特別シブいというか。コンテストにそれを持ってくるのがすごいです。
シルバー:地味なモチーフをすごく丁寧に描かれると、グッと来ますよね。今回は本当に描きたいものを素直に描いている感じがします。
はなぶし:正直、技術的に未熟な部分はあります。肩のところとかデッサン的には甘かったりするんですけど、それを差し引いても、空気感や温度感、匂い、そういったものが濃く出ている作品だなと。この方にしか出せない独特の雰囲気があって、それが魅力になってますね。
藤ちょこ賞
藤ちょこ:人物の顔を一切見せないという、思い切りのいい構図にシビれました。仮にこの花嫁さんの表情が見えていたら、逆に締まらない絵になっていたかもしれません。その切り取り方がすごくおしゃれでいいなと思いましたし、拡大して見ると本当に細かいところまで気を遣って描けているんですよね。お母さんの指輪とか、着物を留めているクリップとか、すごい執念を感じる描き込み具合で。
シルバー:着付けの過程にこんなクリップが存在するなんて、全然知らなかったです(笑)。着物が好きなんだろうなと感じますね。白無垢の素材感、質感の出し方もすごくうまい。
藤ちょこ:そうなんですよ。淡い色彩の中で、何色も重ねて使っていて。白無垢と黒留め袖っていう、大づかみに言えば白と黒だけのモチーフなので、普通に描くと単調になりがちなところなんですけど、細かく差し色を入れることによって複雑で美しい色合いになっているのも見どころのひとつだと思います。右側の黒い袖と左上の黒い髪の毛が対になっていて、明暗のバランスも絶妙に取れていますね。これだけ淡い色合いで、しかも顔というキャッチーな要素がないにもかかわらず、細かい工夫を丁寧に積み重ねることで目を引く1枚になっていると思います。
企業賞
CLIP STUDIO PAINT賞
精細な描き込みに魅かれて隅々まで目をやると、チェキの日付から見えてくる時系列、片方は鞄に繋がっているけどもう片方は繋がっていないマスコット、影の入り方…など、散らばるあらゆる要素に意味を見出していきたくなるような奥行きのある作品だと思います。
2人のこれまでにもこれからにも様々な想像ができ、それによって捉え方も変わる、心がうつろいがちな夏にもぴったりな作品だと感じました。
こういった想像ができるのも各要素がしっかり描かれているからこそで、高い技術でよくまとめられているかと思います。
コピック賞
KADOKAWA キトラ賞
ややファンタジックな描写の右の女の子に陽の光が差し込み、一方リアルに描かれている左の女の子は陰の中にいるという演出に、生への葛藤や苦悩を感じさせます。
実は手前に広い余白を取った縦方向の構図で、明るい先への一歩が踏み出せない、という気持ちがうかがえるのも練られた構成です。
あえて粗く塗られた背景も、「夏ってこう見えたよね」というノスタルジックな心象を思い起こさせます。
異質な存在である少女たちの繋がりを、白日夢のような不思議な舞台の中で描き出した構成力が素晴らしく、今後のさらなるご活動、ご活躍が楽しみです!
ワコム賞
ZOZOTOWN賞
この作品の"臨場感"と、描かれている人物の"表情"に心を打たれました。
また、"俺達の歌を世界中に響かせる"というキャプションは、この1枚の作品の前後のストーリーも彷彿とさせるので、見ている私たちを作品の中に引きずり込むようなパワーも感じました。
ポカリスエット賞
カロリーメイト賞
主人公の等身大の心情や生活が一枚に表現されていて、リアルな描写にメッセージ性を感じます。色の表現や物の描写が細かい部分まで丁寧に描かれており、部屋と人物の立体的な描き方が秀逸です。好きなものへ熱中する姿がワンシーンで切り取られ、一人で懸命に努力する姿に心動かされました。今後の活動も応援しております。
Nuverse賞
白、黒、黄色の使い分けがとても上手で、とてもインパクトのある一枚です。手に持ってるネックレスの形やあっちこっちにあるハートの形が鮮明に目に飛び込んできて、恋を感じられる素晴らしい作品です。
今後のご活躍を楽しみにしております。
マルマン賞
これからの希望や未来を示すような光の使い方に、この一ページから新しく始まる物語にワクワクしました。
青春を生きる高校生だからこそ描ける一枚で、とても眩しく、惹きつけられる絵だと感じました。
今後のご活躍を楽しみにしています。
CHUNITHM賞
POPな色使いで描き込まれたキャラクターが目を引きました。
宇宙を舞台に兎と縁を結ぶという世界観が、奥行きを生かしたダイナミックな構図と合わさって素敵な一枚に仕上がっています。これからのご活躍楽しみにしております!
pixiv高校生イラコン2023とは?
「pixiv高校生イラコン」は、次世代のクリエイターを発掘するべく2018年より毎年開催されているコンテスト。毎回ユニークなテーマが設定され、その“お題”に基づいて描かれた作品をプロのクリエイター陣がひとつひとつ吟味して審査を行います。