ジャンルを荒らすヤベー奴が現れた!対処よりも「村の火を絶やすな」/カレー沢薫の創作相談

文/カレー沢 薫
毒マロを送る人がいて、過疎ジャンルに新規が入らない
現在私がいるジャンルは原作の作品が既に終了している斜陽ジャンルです。
ですので、新しい人がなかなか入ってこないうえ、他のジャンルへの移動する方も多いです。
そんな中でもときどきハマって新しい書き手さんが来てくれることもあるのですが、そんな人たちに毒マロを送る人(複数かもしれない)がいるんです。
文章からおそらく同じ人だと思われるのですが、要約すると自身の解釈が一番正しく、それ以外の解釈違いの創作者は排除したいという思考回路の持ち主で、執拗に毒マロを送り続けます。
送られた新しい書き手さんは毒マロに嫌気が差して去ってしまうという最悪の状況です。
そして私といえばジャンルの中ではそこそこ長くいる方なのですが、最初に壁打ちアカウントと決めてしまったためジャンル内に知り合いがほとんどおらず、そのような場面を見てしまっても輪に入ることができないという情けない状況です。
実際その毒マロを喰らってしまった新しい人達に励ましのマシュマロを送ることが精一杯なのですが、私はこれでいいのでしょうか。
毒マロの送り主がジャンルを去ってくれないと本当の平穏は訪れないと感じています。
こんな中でもジャンルを楽しく盛り上げることはできるのでしょうか。本当に絶望しています。助けて下さい。
所詮この世は諸行無常「平家にあらずばジャンルにあらず」と言われたのも今は昔、気がつけば「これからは源氏っしょ、アニメ化決まったし」と権力も人も移り変わり、時は令和、「今期推せる奴が一つもねえ」と選挙ポスターの前で立ちつくす時代がやってまいりました。
エンタメ業界は特に移り変わりが早く、次々と新しいフロンティアが現れるため、どんなに栄えた都市でも原作終了など大きな供給がなくなると、人々は新しい豊かな土地へと移り住み、瞬く間に石炭の時代が終わった後の炭鉱町みたいになってしまいます。
しかし、一度それなりに栄えた町というのは、寂れはしても人口がゼロになるということは稀で、一見ダムの底に沈んだように見える町でも、水を全部抜いたら屍人が何人か残っていて救い(供給)を待ち続けているものです。
そういうひなびた町にも良いところはあり、まず大都市にくらべればのどかです。
大都市ほど犯罪件数が多いように、ジャンルも人口が多いほど、炎上や学級会が多く、直接関係なくても連日自ジャンルで諍いが起きていたら気が滅入ってきます。
創作においても、人気のジャンルを題材にするだけで、閲覧数もブクマ数も跳ね上がり、感想をもらえる機会も増えるので描きがいはあるのですが、見ている人や「いつも楽しみにしています」という声が増えるぶん、早く描かなければ、待っている人が喜ぶものを描かなければ、というプレッシャーを感じるようになる場合もあります。
その点、過疎ジャンルの場合「果たしてこれは誰か見ているのか?」という不安は常につきまといますが、見る側のことはあまり考えず、自分の好きなときに好きなものを描くというマイペースな楽しみ方ができます。
つまり、大手ジャンルは賑やかで楽しいけれど、治安が悪く疲れやすいというデメリットがあり、過疎ジャンルは供給がないというデメリットはありますが、残った創作村民が細々と描く伝統工芸みたいな作品を全村民が心待ちにしているというような状態なので、落ち着いて長く活動できるというメリットがあります。
過疎地はヤベー奴ひとりでも絶滅する
しかし「のどかな農村に生まれ落ちた怪物、それが惨劇のはじまりだった」という雑なホラー映画の如く、確率の壁を越えて、過疎地に悪い意味での逸材が生まれてしまうこともあります。
大都市の場合、ヤベー奴が生まれやすいぶん、逆にヤベー奴慣れしており、何せ人口が多いためヤベー奴乱舞で一夜にして100人消えたとしても、全体人数からすると誤差の範囲だったりします。
つまり、大都市であればひとりのヤベー奴のせいで滅ぶということはほとんどないのですが、過疎地にヤベー奴がひとり現れると本当に絶滅エンドまであります。
あなたの村は今まさにその状態で、他の村民たちがヤベー奴に食い殺されていくのを納屋に隠れてなすすべなく見つめながらも「何とかしたい」と思っている状態かと思います。
しかしあなたは、元々そういうことに巻き込まれたくなくて、壁打ちアカウントに徹し、他の村民と社交しない道を選んだのではないでしょうか。
同志との社交というのはファン活動の楽しみの一つですが、それが元でトラブルが起こり疲れを感じてしまい、原作とは全く関係ないいざこざでジャンルを離れる羽目になりかねません。
それを避けるため、たとえ他の村民たちがアンソロを作ろうと盛り上がっているのを指をくわえて見ることになっても、ソロ活動を貫くというスタイルはある意味正しいのです。
マシュマロ設置も同様であり、設置することで直接リプなんかできないというシャイニング勢からも感想や応援をもらいやすくはなりますが、匿名という特性上、リアルジャックニコルソンが狙うとしたらまずそこになりがちです。
よって絶対ニコルソンされたくないと思ったら「置かない」のが得策です。
逆に言えば、あなたはマシュマロを置かず他者と社交しないことで、今回「自衛に成功した」と言えます。
災害には近づかず絶滅を避ける
また、自分の解釈こそが唯一と信じ他者を攻撃する人というのは、もはや災害寄りのモンスターです。台風に理屈は通じませんし、むしろ近づいただけでダメージを受ける可能性が大です。
最近はネットでの誹謗中傷への対策も増えてきており「俺は相手がハリケーンでも頭突きで倒す」という気概で、相手の情報開示や訴訟ということもできなくはないですが、それを当事者でないあなたがするというわけにもいかないと思います。
運良く災害に巻き込まれずに済んだのですから、今のまま災害自体には近づかず、影ながら被害に遭った人を励ますなどの救助活動を続けるのが得策と思われます。
自分が難を逃れたからといって、交流はなくとも同村の人間がやられていくのを見ているだけは心が痛むし、何とかしないと本当に村が滅んでしまうという危惧があるのもわかります。
しかし、ここは逆に考えましょう。
「あなたが何かした方が、村が滅ぶ」と。
もしかしたらあなたが「村の最後の生き残り」になる可能性もあるからです。
日頃の備えが功を奏して未曾有の災害に巻き込まれずに済んだあなたが「やっぱ田んぼの様子が気になる」と外に出て、巻き込まれて死んだら「全滅」の恐れがあります。
そうなったらもはや過疎ではなく廃村です。
ヤベー奴は何せヤベーので動きが読めませんが、それこそ台風のように待てば他所へ移動するということもあります。
台風が過ぎ去った後、1人でも生き残っていれば村はまた復興できます。
よって、あなたがすべきことはこの件を何とかすることではなく、これ以上この件に心を痛め、ジャンルにいるのが嫌になってしまわないようにすることです。
村の危機を傍観しているのではなく、深く関わらないことで「村の火が絶えないように守っている」と考えましょう。

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