【1月の厳選小説】姉妹を追い詰める善意のレニングラード百合、他

阪本真矢が殺された。容疑者は、阪本家の息子、母親、父親の三人。最初はそれぞれ「自分がやった」と告白するが、次第に三人の証言が変わっていき、さらなる食い違いを生んで……？

犯人はいったい誰？　芥川龍之介「藪の中」をオマージュした作品です。

起き上がることすらままならなかった「わたし」に、彼は甘い言葉をかけてくれました。ある日「わたし」は父親が作った薬を飲んで元気に飛び回れるようになりましたが、その薬には重大な欠陥があったのです……。

繊細な言葉で紡がれる、ちょっとホラーな物語。

「夏なんか、二度と来ないでくれ」ミズキは夏になるたびに、金魚の姿をした妖を探している。それは、何度も転生を繰り返して彼に会いにくる、いわば秘密の恋人だった。夏が終わって二人に別れが訪れるとき、ミズキはとある決断を迫られることに……。

筆致から夏の湿度と熱が伝わってくる、幻想的な掌編です。

どうも様子のおかしかった親友が、半年前に姿を消してしまった。

何度も電話のベルを鳴らした挙句に早口で意味不明な言葉を並べ立てていた彼は、陽の光が差し込むのと同時に普段の理知的な姿を取り戻す。全く元どおりになったように思えたが、口調にどこかおかしなところが……。やがて、彼から引越しの旨を伝える手紙が届く。不審に思って封筒をくまなく調べると、そこにはとある場所を知らせるメッセージがあり、彼を探しに向かう。

ただ怖いだけではなく、幻想的かつSFチックな雰囲気のあるホラー小説です。

1942年2月。敵軍に包囲され孤立したソ連の都市・レニングラードは飢餓と極寒の地獄を迎える。周囲の人間が次々に息絶えていく中、少女アーリャと死にゆく姉を救ったのは、姉のかつての友人ヴラジレーナだった。

「百合」というフィールドにおいてのスケールの大きさが一級品。複雑に絡まりあう愛情と憎悪の先に、いったいどんな結末が待ち構えているのか……！必読です。