20年先も「カワイイ」を描き続けたい──上倉エクさんインタビュー

インタビュー・文:小川 陽平
撮影・編集:関口敬文
この企画では、2020年に日本の主役となる20代、20組のプロジェクトリーダーにフォーカスを当て、これからさまざまなプロジェクトが展開します。俳優、アスリート、ミュージシャン、声優、漫画家などなど、さまざまなジャンルの若い才能が集められ、イラストレーターとして上倉エクさんが選ばれました。
ポップな色使い、豊かな表情、細かなところまで考えられた衣装と映えるポーズ──そのすべてで「カワイイ」を表現する上倉エクさんは、『リトルウィッチアカデミア でたらめ魔女と妖精の国』(橘もも/文 TRIGGER/吉成曜/原作 角川つばさ文庫)、『うちら特権☆転校トラベラーズ!!』(こぐれ京/作 角川つばさ文庫)といった書籍へのイラスト提供だけでなく、初音ミクや人気アニメのキャラクターグッズのデザインもこなすイラストレーターさんです。pixivコミックでは『PPPのピクシブたん』も連載していたので、読んだことがある方は多いのではないでしょうか。

コミックス1巻の表紙イラスト。
そんな上倉エクさんに描いていただいた、キシリトールガムのデザインの一部はこちら。

このパッケージの元となったイラストはこちらです。

このデザインは「バーチャル的なリアリティが発達した近い未来、夢見がちな少女が自分だけの世界をつくりだして遊んでいる」といった内容になっているそうです。上のパッケージ見本では、右下の女の子の顔部分が使用されていますがパッケージデザインは多数用意されているとのこと。どの部分が切り取られているのかは、店頭に並んだパッケージで確認してみてくださいね♪
さてここからは、つねにカワイイを追求する上倉エクさんの原点を探るべくスペシャルインタビューを敢行しました。さっそく創作の秘密に迫るインタビューをご覧ください!

描いた漫画を読んでもらうために、友だちをキャラクター化して登場させました。
──上倉さんがイラストを描き始めたのはいつぐらいからですか?

──そのころは1枚絵と漫画、どちらも描かれていたのですか?

──読んでもらって反応をもらうのがうれしかった?

だから友だちをキャラクター化して漫画に登場させたんです。みんなの趣味や好きなものとか、そういう要素をたくさん漫画に詰め込んで描いてみたら、みんな読んでくれました。
趣味からなにかが変わるとき
──上倉さんのデビューのきっかけは漫画の新人賞に入賞されたからとのことですが、趣味の漫画から一歩踏み出そうと思った理由として、なにかきっかけがあったのでしょうか?

そこで、出版社の漫画賞に応募しよう! と。私は6月が誕生日なのですが、4月に投稿を決めて5月に応募をしました。学校が終わってから漫画を描いて、1ヵ月で40ページを仕上げたんです。
クオリティは今見るともう恥ずかしくて仕方がないレベルなんですが、当時は「やってやったぞ!」という達成感でいっぱいでした。

──そして見事に入賞されましたが、なにか気持ちのうえで大きな変化はありましたか?

そして一緒に漫画を何作か作っていく中で『画力』という壁にぶち当たりました。画力がないことが原因で、高い賞に届かないことがたくさんあったんです。お話作りだけじゃなく「もっと絵の勉強をしなきゃ」という気持ちの変化が出てきました。
──絵の勉強とは?

技術的な部分については、実際にやって覚えるしかないので、あのプレッシャーの中で描かせてもらったのは、とてもよい経験になったと思っています……。
挫折と目標
──10代で漫画家としてデビューされた上倉さんですが、20代の今はイラストレーターとしてのお仕事がメインですよね。なにか大きな心境の変化があったのですか?

高校生で初めて投稿をして、小さな賞に引っかかったあの時のうれしさをまた味わいたい、だから漫画を描くんだ! という気持ちが自分が意識しないところにあったんです。
だから高い賞を獲るという目標を達成したら、その先にある連載についてはなんとしてでも始めなきゃ……とはならなくて。もちろんデビューしたからには連載を取らなきゃ、読み切りでもいいから載せてもらわなければと考えましたが、必死さが足りなかったんです。
当時の担当編集さんからも、必死さが感じられないとよく言われました。そのときは「そんなことない」と反発もしたんですが、自分の本音に気付いた今では、本当にその通りだったと思っています。
──それに気付くきっかけのようなできごとがあったのですか?

そのとき、私が漫画を描くモチベーションは、あのころの「高い賞を獲って喜びたい」という気持ちから来ていたのだと、今までずっと隠れていた本音にやっと気付いたのです。

──これからチャレンジしたいイラストのテーマとかはありますか?


上倉エクさんと夢ノ内さんがキャラクターデザインを手がける、ゆめかわいいシリーズ「Al&El」の特設サイト。
──上倉さんの描かれるイラストに登場するキャラクターは、どれも個性豊かで魅力的です。キャラクター作りのコツ、気をつけている点は?

ある意味、イラストもキャラクターデザインの延長線上としてとらえているのかもしれませんね。
──これから10年後、20年後、どのような作家になりたいですか?

そうすると、どうしてもお断りしなければならない場合があるんですね。それでも「イラストを頼みたい」と思って頂けるようなイラストを描くことができるのか。見てくれる方が喜んでくれるイラストを描くことができるのか。量で応えられないぶん、質で応えなきゃいけないと思うので、クオリティを高めていく努力をしなきゃといつも感じています。だから、一番の目標は「20年後も仕事がある人」でしょうか。

──最後に、イラストレーター、クリエイターを目指している人たちにアドバイスをお願いします。

創作や版権問わず、イベントに出展することや、イラスト大賞のような出版社主催の大きな賞にも積極的に応募してみてほしいです。出版社が主催ということは、仕事を回してくださる方々に直接、それも確実にイラストを見てもらえるということですから! ご自身のイラストを、できるだけたくさんの人の目に触れる機会をぜひ作ってみてください!