pixivで愛される最重要項目それは「キャラクター」!?『小池一夫のキャラクター新論』 〜レジェンド本を学ぶ〜

文/いしじまえいわ
「レジェンド本を学ぶ」は、イラスト、アニメ、漫画、映像などの分野のレジェンドクリエイターの著書から作品や表現について学ぶことで、もっと作品を愛し創作を楽しんでいただくための企画です。
今回は小池一夫さんの著書『小池一夫のキャラクター新論 ソーシャルメディアが動かすキャラクターの力』(2011年、以下『キャラクター新論』)をご紹介します。
小池一夫さんってどんな人?
本書の著者である小池一夫さんは、日本の漫画・劇画界をはじめ、エンターテインメント業界全体に大きな影響を与えた、スーパーレジェンドのひとり。
『子連れ狼』『マッド★ブル34』『オークション・ハウス』などの原作や、『マジンガーZ』「スーパー戦隊」シリーズの主題歌・挿入歌の作詞を手がけています。
最近ではTwitterでの影響力が強いことでも知られていて、フォロワー数はなんと40万人以上!
今回はそんなレジェンドクリエイターである小池さんの著書のなかから、要である「キャラクター新論」を紐解いていきます。pixivでランキング上位を目指す人にとってはヒントになることばかりなので、ぜひ創作に役立ててください!
キャラクターはエンターテイメントの核!
小池さんはクリエイティブに不可欠なものとして「キャラクター=ヒットの鍵」(p.17)「キャラクター=漫画、漫画=キャラクターだよ」(p.19)、さらには
今日では、「漫画はキャラクター」ではなく、「エンターテインメント=キャラクターである」
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.9
とはいえ、「ストーリー」「設定」「テーマ」「絵柄」などほかにもさまざまな要素がある以上「キャラクター」だけが特別重要だというのは極論な気がします。
でも小池さんはそんなことは百も承知のうえで「エンターテイメント=キャラクターだ!」と言い切っているのです。その理由について、小池さんは自信が「どうすればヒット作を創れるのか?」で悩んでいたとき、以下のように思い立ったからだと述べています。
ヒットしている作品を「キャラクター」で見てみると、確かに人気のある作品ほど、主人公や敵役のキャラクターに読者を惹きつける魅力がある。お話なんて、毎回同じようだったり、ほとんどお話がないような作品もある。「それでもいいんだ」ということに気づいたのです。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.20
独立した当時の私は、よく出来た「お話」を創ることにばかりに気を取られていたのですが、いくら短編作品を時間をかけて仕上げたとしても、それだけだと1回で終わってしまう。短いから原稿料も少ないし、単行本にもならないので、生活ができない。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.21
読者は、またそのキャラクターに会いたい。そのキャラクターといっしょにハラハラドキドキしたり、ときめきたいから、その漫画を手に取る。友達や恋人に会うように、キャラクターに会いたいんです。
(中略)恋人や友達とは別れたくない。いつまでも一緒にいたい。だからこそ、魅力的なキャラクターが登場する作品はいつまでも連載が続いていく。小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.20
一度好きになった人や友達について、目新しい人かどうかはまったく問題になりません。それと同様に、魅力的なキャラクターは何回見ても楽しく、また会いたい、グッズがほしいという気持ちになります。
数あるエンターテインメントの構成要素の中で、「キャラクター」だけがマンネリと無関係で、「そのキャラクターにずっといてほしい(=作品として続いてほしい)」と思わせる要素なのです。
もちろん小説でも「キャラクター」の魅力は大事なのですが、キャラ重視でなくても成立するものもあります。(中略)ヒットした小説でも、主人公の名前はなんだったかと聞かれると、ほとんどの人が覚えていない。でも、漫画はキャラクター名が出てくる。『巨人の星』は「星飛雄馬」で『あしたのジョー』は「矢吹丈」。それが、答えなんです。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.21
漫画やアニメ、ゲームなど「キャラクターコンテンツ」と呼ばれる作品は、キャラクターの名前がパッと思い浮かぶもの。
また実際に作品に触れたことはなくともキャラクターの名前だけは知っている、ということはよくあります。やはりキャラクターという要素の重要性はほかとは一線を画しています。
自分も描きたい!と思わせる、魅力的なキャラクターの創り方
それでは、魅力的なキャラクターを作るにはどうしたらいいのでしょう。 数ある要素の中から、「CGMで活きるキャラクター・テクニック」について紹介します。
1. キャラクターのテンプレートを用いる
小池さんいわく、まず「巫女」「メイド」「吸血鬼」などのいわゆるテンプレ設定を使うべきとのこと。
まるでキャラクターのパターンがかぶっていることが悪いように思うかも知れません。しかし、全くそんなことはないのです。むしろ、多くの人に愛されるキャラクターというのは、ある程度文化的に認知されている類型に添っている必要があるので、既存のパターンにあてはまって当たり前なのです。基本的に、キャラクターというのは、まず一目見て、外見の第一印象から、大体どういうキャラクターなのかが、理解できなければいけません。一瞬でだいたいのイメージを把握できないようなキャラは、多くの人に受け入れられないのです。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.147
2. キャラクターには「ワンポイント」をつける
ただ、小池さんはテンプレ設定だけでOKと言っているわけではありません。既存キャラクターや文化的な共通認識からテンプレを持ってくるだけでは、他のキャラクターと区別する個性がありません。
そこで「見た目や性格、持ち物などに個性としてのワンポイントをつけること」が必要であるのです。
ここで気を付けなければならないのは、つける個性は「オンリーワンポイント」でないといけないということ。他のキャラクターと差別化したいがためにゴテゴテといろいろな設定をつけると、かえって印象が薄くなってしまうからです。
「東方」の博麗霊夢だったら、巫女の衣装が、なぜか肩や腋が見えるデザインになっていること。漫才でいえば、思わず「なんでやねん」とつぶやいてしまうような、「突っ込みどころ」と言えるでしょう。(中略)そのキャラをそのキャラたらしめている部分、このキャラといえばこれ、と一番に出てくるのがこのワンポイントです。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.150、151
3. キャラクターの「ディティール」
見る者は、作品のディティールから、作者のキャラクターへの熱い想いを受け取り、そのこだわりや美学に「この作者はわかってるなあ!」と共感を覚えます。そのディティールへの情熱に、時には感動さえ覚えるのです。
小池一夫『小池一夫のキャラクター新論』(小池書院、2011年)p.151
イラストであれば背景の書き込みや小物のディティール、物語であれば納得のシチュエーションや驚きの伏線など、こだわりに満ちた作品には、誰しも感動を覚えますよね。
愛されるキャラクターを創ろう!
これまで「なんとなく」と考えていたキャラクターの要素を、小池さんのキャラクター論に沿ってより意識的に細かく作り込んでいくことで、深みがあり見た人に愛される、また見たい・また会いたいと思われるキャラクターに近づきます。
特に自分の作品やキャラクターを多くの人に見てもらいたいという方は、今回の内容をぜひ参考にしてみてください。