好奇心を創作に還元する。イラストレーター海島千本 インタビュー
構成/原田イチボ@HEW
イラストレーターでマンガ家の海島千本さんの初個展「Rooms」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2022年5月5日(木・祝)まで開催中。4月14日(木)に新刊『Rooms 海島千本イラスト+コミック集』(PIE International 刊)が発売されるのを記念して、同画集のイラストを中心に約80点を展示。会期後半には一部入れ替えを行い、合計で110点以上の作品を展示します。

豊かな背景描写と柔らかな色使いに定評のある海島さん。外国の街並み、猫、メイド、植物、海の生き物、インテリアといった多彩なモチーフは、どのように身に着けたものなのでしょうか?
健やかに創作を続けるために、取り入れる情報を絞る
── 本日はインタビューをお受けくださり、ありがとうございます。

あまり話すのは得意ではないのですが、よろしくお願いします。
基本家でゴロゴロしている海島の一意見なので、あまり真に受けすぎずに聞いていただけると嬉しいです。3日後には違う事言ってそうだし……。
── 海島さんは他のクリエイターさんの情報を見たり、調べたりすることは控えているんですか?

マンガを描いているとき、お話作りや脚本の本などを見すぎて何が正解かわからなくなってしまった時期がありました。今はネットでどこまでも情報収集ができてしまうので。
「自分は何がやりたいのか?」を一度ゆっくり考えた上で、そのために必要なことを絞って取り入れるのがいいと思います。
あとパソコンや本や映画をじーっと見すぎると目が疲れるので目は大事にしましょう。
── どんなものを創作の参考にするのがいいでしょうか?

アニメーター、イラストレーター、マンガ家。3つの分野を経験
── 海島さんは、アニメーター、イラストレーター、マンガ家を経験していますよね。小さな頃から絵を描くことがお好きだったんでしょうか?

そうですね。子どもの頃のお絵かき帳を見ると、なぜかカタツムリばかり描いていました。虹を渡るカタツムリとか(笑)。
── 早い段階で、絵の仕事をすることを意識していたんでしょうか?

人格的にあまりに怠惰な上、人前に出たり喋ったりするのが極めて不得意なので、なんとかヒキコモリつつ生きなければと昔から感じていました。常に昼まで寝てる。
── 海島さんはマンガやイラストでも「動き」に焦点を当てた描写をよくされますよね。これはアニメーターを経験したからでしょうか? それとも昔から動きというものに興味関心があったのでしょうか?

そこは明確に分けて語るのが難しいですね。動きを描くのは好きですが、最初から「イラストレーターになろう」や「マンガ家になろう」と考えて絵を描いてきた人とは少し違うのかもしれません。
── 3つの道を全部経験したからこそ、それぞれで学んだことが相互作用している感覚はありますか?

自覚はしていませんが、そういった部分はある気がします。
あんまり関係ないですが、ネームを描いたときでキャラクターと背景を色分け、影つけして提出したら、編集さんに「初めて見ました」と驚かれました。アニメーターの癖。
練習方法は今も昔も「デッサンとクロッキー」
── 海島さんは早いうちから絵を仕事にすることを視野に入れていたとのことですが、どのように絵の練習をしてきましたか?

── 今はどのように絵の練習をしていますか?

今は主にクロッキーですね。長時間のデッサンはやらなくなりましたが、スケッチはたまに……。ただ練習というか、クロッキーは「とりあえずやるか」という気持ちというか……。飲みたいときにコーヒーを淹れるような感覚に近いですね。わざわざ「やるぞ!」と意気込むわけではなく、やりたい時に自然とやっているけど、別にコーヒーを飲まない日もあるみたいな……。そういう感覚でクロッキーは続けています。娯楽……?
── 絵を描いていると、「なんか違うな」というところから抜け出せずに迷走することがあると思います。スランプになったときはどうしますか?

「作風」にこだわらず、自由にいろいろ描いてみる
── 現在の作業環境を教えてください。

── 海島さんは、いろいろな塗り方を披露していますよね。それも「気分を変えたくて」ということでしょうか?

そうですね。その時々の「これ、やってみよう」という気持ちに沿って、自然に変わっています。あまり「これが自分の描き方だ!」みたいに定める気持ちはないんですよね。良いのか悪いのかわかりませんけど…。
10年後、20年後は今と全然違う描き方をしているかもしれないし、どれが良かったかはすごく未来になってみないとわかりません。だから、あまりこだわりすぎずに自由に描くのがいいのかなと思っています。

── その人の作風がどんなものかは見る側が決める、と。

「こういうインテリアがあったらかわいい」を詰め込んだシリーズ
── 今回の個展は、『Rooms』シリーズを中心にした内容です。このシリーズのアイデアは、どのように生まれたのでしょうか?

── キャラクターの設定を考えてからインテリアを決めているわけではなく、「こういうインテリアがあったらかわいい」のようなビジュアル優先で描いているのでしょうか?

そうですね。だから、「こういうのがあったら、かわいいよね。こういうのもいいよね」とけっこう行き当たりばったりな進め方ではあります(笑)。
── では、描いているうちに新たなアイデアがまた浮かんで、小物を増やすようなことも?

ラフが決まるまではそんなかんじでふにゃふにゃです。ラフを描いたら、線画を描いてあとは塗りだけ。ラフが決まれば完成形まで変更はほとんどありません。
── これだけ多彩な部屋を生み出せるということは、海島さんは普段からインテリアに興味があるのでしょうか?

── いいなぁ……、自分は築古のふすまの部屋に住んでいるので……。

── パッとアイデアが出てくるあたり、本当にインテリアがお好きなことが伝わります。

旅行やダイビング、もともとの趣味が創作に繋がる
── 外国の街並み、猫、メイド、植物、海の生き物、インテリアなど、海島さんは絵のモチーフにしているものが多いですよね。

「Date with a CAT in Dubrovnik」は、くらげバンチHPや、単行本『プリズムの咲く庭』(新潮社)にて読むことができる。
── 好きなものがたくさんありますね。

そのほうが人生楽しいですからね!
── 海島先生の作品は鮮やかな色合いも印象的ですが、どのように色選びをしていますか? 『Rooms』シリーズは小物まで細かく描き込まれていますが、すっきりとまとまった印象を受けます。

── なるほど。自分は「植物=グリーン」のように「これはこの色で塗らなきゃダメだ」と固く考えてしまった結果、どんどん使う色の数が増えてゴチャゴチャしてしまっていた気がします。

「この世界のサボテンは青いんだな」と大らかに塗っていけばいいと思います(笑)!
── 個展の見どころを教えてください。

これは私よりも、実際にレイアウトなどを考えてくださっているpixiv WAEN GALLERYの担当者さんから答えていただくほうがいいかもしれません。



ありがたいです! 先ほど言った通り、私が描いたあとは、作品は見る人によって自由に感想を持っていただければと思います。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
── 最後に、クリエイターとして今後の展望を教えてください。

また何か本が出せたらうれしいですね。
── 刊行されたばかりの作品集『Rooms 海島千本イラスト+コミック集』(PIE International 刊)をぜひチェックしてみてください!
個展「Rooms」は東京・表参道にてゴールデンウィーク期間の5/5(木)まで開催中です。気軽にお立ち寄りください。
海島千本画集『Rooms 海島千本イラスト+コミック集』発売中!
海島千本初個展「Rooms」開催中!
pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、海島千本さんの初個展「Rooms」が開催中です。
個性豊かな部屋とそこに住む女の子を描いた人気シリーズ「Rooms」を中心に、約80点のイラストを展示。4/25(月)には作品の一部を入れ替えますので、会期前半と後半で二度楽しめます。海島さんのイラストに合わせた特注の壁紙や、ドライフラワーを使った装飾など、会場にもこだわっています。個展会場で画集を購入いただいた方にはサイン本が当たるチャンスがあったり、展示物の先着購入ができたりと、盛りだくさんの内容です。詳しくはHPをご覧ください。
開催期間:4月8日(金)~5月5日(木)
※4/25(月)から展示作品の一部を入れ替え
定休日:なし
入場無料
所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
営業時間:12:00~19:00
※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※新型コロナウイルスへの対策について
海島千本個展「Rooms」について、現時点では5月5日(木)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染状況により、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。