【小説6選】ふるさとを離れた女子高生の百合、他

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ピクシブ文芸には、文章テクニックの記事や小説家ライター講座など、作家を目指す人を応援するコンテンツ以外にも、pixivに投稿された優秀作品を紹介する「ピックアップ」のコーナーも掲載されています。
そのピックアップでとりあげた作品を2週に1度、pixivisionでもご紹介していきます。
どれも素晴らしい作品ばかりなので、ぜひご一読ください。
女子高の寮で出会った1年生の千里と麗。ゴールデンウイークに帰省しなかった2人は、誰もいない寮で初めて言葉を交わし、お互いに故郷にコンプレックスを抱えていることが分かります。それに向き合おうとする麗に影響を受け、千里も逃げるように出てきた大阪の街に思いをめぐらせることに……。
2人の会話が優しさにあふれていて、心に染みるものばかり。千里の名前にまつわるエピソードはよく考えられていると思いました。2人をつなぐ“空色の和菓子”が効果的に使われていて、物語全体をさわやかに彩っています。
夢をテーマにしたファンタジー短編です。
仕事のストレスで悪夢を見るようになった主人公の男性は、夢の中に現れた大きな裂け目から伸びてきた手に捕まえられ、夢の中へ。その手の正体は“夢の調合師”を名乗る青年。「君のストレスが邪魔して素敵な夢が作れない」と嘆く青年に促され、男性は少しずつ解放されていきます。
夢の調合師しかり、大量の濁った色の風船がひしめく部屋=自分のストレスの状態、などユニークな設定がメルヘンチックな世界観に自然と引き込んでくれます。風船を一つずつ割っていく様子が気持ちよさそうで、読後感も爽快です。
青年・余市が、訪れた土地にまつわる数奇な物語をたどるファンタジー短編。ある秋の日、余市は立ち寄った山の廃れた村落で、愛らしい少女・ふみに出会います。村人たちから孫や娘のように大切にされているふみですが、彼女の家に泊まることになった余市は、かつて村落で起こった悲しい出来事を知って……。
風景や人の心情などの描写が繊細かつ穏やかで、とても読みやすかったです。余市がいろんな土地をめぐるシリーズを読んでみたいと思いましたし、ミステリアスな余市のバックボーンにも興味がわきました。
余命幾ばくもない母と、彼女が最期の一ケ月を一緒に過ごす相手として選んだ女子高時代からの親友・コイちゃん。高校を卒業した娘の紫(ゆかり)は、父に頼まれて2人の日々を見守ることになります。母とコイちゃんが互いにすべてを受け入れ、恋しく思い合う様子があたたかく、そして穏やかに描かれていて、じんわりと切なく心に染みます。
また、娘という近くにいる第三者の視点から描くことで、2人の関係は独特ではあるけれど、とても尊いものだということを効果的に伝えていると感じました。
自転車で足をつかずに登り切れたら願いが叶うと言われている、高校へと続く急な坂道。主人公の桜は、親友であり、好きな人でもある春花と両想いになることを願って何度も挑戦しています。冒頭に描かれている桜が自転車で坂を駆け上る様子や、坂の途中で交わされる桜と春花の会話が自然かつ丁寧で、情景が目に浮かぶようにリアル。卒業間近という刹那的な時間を背景に、もう一人の親友・爽子や春花との友情をカメラにおさめていく桜。そこに桜の切ない恋心が絡む描写が非常に巧みです。鮮やかで美しいと感じました。
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