pixivノベル大賞~2020Spring~の受賞作が決定!深沢美潮先生による講評

5部門合計で709作品の応募があったpixivノベル大賞~2020Spring~。
そのなかの「ホラー部門」「ミステリー部門」の選考を担当されたのは、なんと作家の深沢美潮先生!
深沢先生より受賞作と一次選考通過作品に対して講評を頂きましたので、受賞された方に限らず、これから作家を目指す方も、ぜひ読んでみてください。
【ホラー部門】pixivノベル賞
【ホラー部門】審査員特別賞
最後まで飽きさせず読ませる力のある作品だと思いました。
キャラも立っていましたし、覚えやすく、物語への導入はスムーズだったと思います。
ただ、設定として、特殊な鬼ごっこのほうをなぜしたのか、そんなに危険な鬼の面なら、なぜ子供たちが簡単に手に入れることができたのかの説得力がもうひとつない気がします。皆川がわざわざ三島に鬼のことを告げにきたのは、鬼(村田)を誘導し、狩りを楽しむためだったとして、そこをもっとわからせてほしいですね。
たとえばですが……
特殊な鬼ごっこをさせるため、鬼の面が子供たちを誘導。
その後、子供を喰らったことなどを大人や子供達の記憶から抹殺(あくまでも面が)
鬼の記憶を取り戻した村田が鬼となり、次々に同級生を食べていく。その誘導をしたのは皆川。皆川こそ、鬼の面に魂を奪われ、鬼の化身となっていた。
最後、村田は角を折られ、本来の自分に戻り、そのこと(皆川のこと)を三島に伝えようとするが、その前に皆川がとどめをさす。
女というのはすごい!と感心する三島だったが、話していくうち、皆川が鬼だったことに思い当たる。
最後、皆川が鬼の本性を現し二人に襲いかかる。
この後は好みですが、亜矢が毅然として振り返り、「もうね、鬼の弱点はわかってるのよ!」と再び反撃!というシーンで終わってもいいかなと思いました。
【ホラー部門】一次選考通過
【ホラー部門】一次選考通過
なんだかとてもやりきれない読後感の物語でした。
頭から囓られた爺ちゃんが不憫でなりません。せっかくこの忌まわしき風習を断ち切ろう、新たな犠牲者を出してはならないと立ち上がったというのに。みんな抵抗することなく受け入れてしまう。
おんちさまが怖いというより、その恩恵……生きながらえるということから逃れられなくなった人間の怖さという結末でしょうか……? だとすれば普通です。
そして、爺ちゃん、涼真くんがかわいそうすぎます。爺ちゃん、いい味出してたのに残念。
ストーリーとしての破綻もないし、文章力もあると思うのですが、最後まで一気に読ませる力、主人公に対する共感、魅力に欠ける部分が気になりました。
ただ、日本の、どこか地方の、独特の湿っぽく……うすら寒いような雰囲気はとてもよく出ていました。
【ミステリー部門】pixivノベル賞
文句なし、一番です。
中身もとても読み応えがあり、楽しめましたし、なんといっても、最後の読後感が素晴らしかったです。
わたしも同じくらいの時代の町人を主人公にした小説を書いたのでわかりますが、本当によく調べてらっしゃるし、何より江戸文化や江戸の暮らしを愛しているんだなぁというのがわかりました。
へたをすると死と隣り合わせのカツカツの生活を、持ち前の明るさや強さで生き生きと暮らしている彼らへのリスペクトも感じました。
非常に内容も濃く、このまま本になるクオリティだと思います。ライトノベルっぽいイラストより、中間小説として世に出したほうがいいのでは?とも思いました。
ひとつだけ、私が気になった点は、徳次郎という名前です。(これはちょっと余計なお世話かもしれませんが……)
山吉という名前はとてもいいと思います。
でも、眉目秀麗、知的な安楽椅子探偵役として、徳次郎という名前はそぐわないのでは?
大店の番頭さんみたいなイメージの名前に思えました。
気になったのはそこだけで、後は何も文句ありません。
続きが読みたいですね!!
【ミステリー部門】一次選考通過
最後まで読み、見事に裏切られ(いい意味で)、好感のもてた作品。
八尋が吸血鬼ではないと、紗夜のことを見抜くのはよかったし、紗夜もいい感じで共感もできた。(吸血鬼だったという落ちなのかと落胆していたので)
ドラキュラ、性犯罪など、海外ドラマにありがちの題材ですが、キャラクターの魅力で新しさを感じます。
しかし、あまりに内容が足りず、もったいないです。まるでこれでは物語の序章のように感じました。
制裁を与えるのは、少女たちを金目当てに誘拐した連中だけではなく、その買い手なのでは?
紗夜の友達を助け出す、その過程で、犠牲になった少女のことに触れるシーン。ただ憶測だけでサラッと書いていますが、ここはもっと踏み込んで書くべきだったと思います。
その少女の視点に移すとか、日記を見つけるとか……。
処女を喪失したのに、それを親にも言えない少女。その日以来生理が来ず、一人、悩み恐れ、絶望する過程など。
そこをしっかり書けば、犯人(少女の買い手)の怖さ、犯人に対する憎悪も深まります。
そして、そこで犯人を推理する糸口を発見するとか。
犯人も、ただの変態のお金持ちというようなありふれた、かつ安易な設定ではなく、思いもよらない存在だったりすれば、さらに物語が深くなったでしょう。たとえば……近い存在の同級生だったり、尊敬していた先生だったり……。彼らがそういう行動を取った理由など。
推理していく過程でそのことを知った恐怖……など。
さらに、紗夜の幼少から今までの話にももっと踏みこんだほうがよかったです。
【ミステリー部門】一次選考通過
これはホラー作品だとして読めばもう少し上の評価ですが、ミステリーとして読むと、ちょっと物足りなすぎますね。結局、薬での幻覚でした、ちゃんちゃん! では推理というより、夢落ちと同じです。犯罪ネットワークといっても、ただ薬の製造に絡んでいたというだけでは弱いです。
しかも、結局はまんざら幻覚ではなく、実際にその巨大な虫は存在していたという落ち? も、「えー?」って首をかしげました。
それから、登場人物を全て名前なしにした理由はなんなんでしょうか? その理由がどうであれ、ちゃんと名前を付けたほうが、より怖さは出たと思います。それだけリアルに感じられるからです。
虫たちの描写はとても良かったと思うだけに、惜しい作品です。
名前をちゃんと付け登場人物に共感できるようにし、もっとリアルに、ホラー作品として書き上げたものが読んでみたいですね。
【ミステリー部門】一次選考通過
まず、この分量の多さに驚きましたが、読んでも読んでもハマれませんでした。
事件としては、無差別連続サイコキラー?と思わせる派手なものなのですが、その特性を活かすことができず、延々と退屈な調査が続くことがもったいなかったです。
怖さやハッとするシーン、疑問、謎解きのカタルシスのようなものが足りない。
もっとシェイプし、グイグイと読み進められるような構成にすれば今の半分以下でいけると思いました。緊迫するべきシーンなのに、無駄な会話が挟まっていたり、急に「ここで補足させてもらおう」等という急な視点の切り替え、説明口調などが、どうもいただけなかった。
視点があちこちに移動することも、物語に没頭できない原因かもしれません。
主人公ルナの……寂しげだけれど、能力があるというキャラクターは好感が持てました。ただし、真犯人に関しては、美化し過ぎかっこつけ過ぎの結末に、違和感しか感じませんでした。
「フォーチュン・クエスト」RPGシナリオコンテスト開催中!

「pixivノベル大賞〜2020Spring〜」ホラー部門・ミステリー部門の特別審査員を務めていただいた深沢先生の代表作、今年連載30周年を迎え完結したファンタジー小説の金字塔「フォーチュン・クエスト」RPGシナリオコンテストを開催中! フォーチュン・クエストRPGのルールブックを用いて自由に創作したシナリオを募集しています。
最優秀賞受賞作品のシナリオは、深沢美潮先生、はせがわみやび先生に実際にプレイしていただきます。
「フォーチュンクエスト」1巻とリプレイ&ルールブックもpixivノベルにて期間限定で公開中!