2019年は本当に“鬼滅の年“だったのか?検索・投稿・閲覧タグで見るpixivのトレンド

2019年もいろいろな作品がpixivに投稿され、検索され、閲覧されました。
今年はどんな作品が人気だったのでしょうか。検索、投稿、閲覧されたタグについて、pixivでデータを用いてトレンドやユーザー分析を行っている社員、吉田、山口の2名に聞きました。
あわせて海外のトレンドも聞いているので、ワールドワイドに2019年のトレンドを総ざらいしましょう!
男女ユーザー別ランキング
── 2019年、1番検索されたタグの作品名はなんでしょうか? 女性ユーザー、男性ユーザー別に教えてください。
吉田:まず女性ユーザーのランキングはこちらです。
吉田:上位2作品は小説を対象に検索したユーザーが多かったですね。というのも、多くの作品は小説よりもイラストの投稿数が多く、イラストと小説の投稿数の割合は5:1か4:1くらい。対して『ユーリ!!! on ICE』は小説とイラストの割合がほぼ半々、『名探偵コナン』に至っては、小説はなんとイラスト投稿数の2.6倍になります。
── 2.6倍! すごいですね。この人気は、2018年の映画『ゼロの執行人』の頃から始まって今も続いている、という感じでしょうか。
山口:たしかにその頃の勢いはすごかったです。けれど、それ以降もずっと3位以内に入っている印象です。『ユーリ!!! on ICE』もアニメ放送からずっと上位をキープしています。
── 2作品とも根強い人気を誇ってるんですね。
吉田:だから爆発的とはいえ今年の中旬からの盛り上がった『鬼滅の刃』が、この牙城に食い込んできたのはすごいことだと思います。
── では男性ユーザーはどんな作品を検索しているのでしょうか。
吉田:男性はゲームが独占していますね。
男性ユーザーによる検索ランキング
1位:Fate/GrandOrder
2位:アズールレーン
3位:艦これ
【pixivisionの記事】

吉田:『Fate/GrandOrder』はゲームが始まった2015年からずっと人気ですね。ご覧の通り男性ユーザーによる検索数が多いですが、実は女性も多く検索しています。男女ともに人気の作品はめずらしいんですよ。キャラクターの幅広さが男女ともに受けてるのかもしれないですね。
山口:『艦これ』はデイリーでとっている検索ワードランキングにはあまり入ってこないんです。デイリーのランキングは、キャラが追加された作品とか、新シリーズが発表された作品とか、季節要因が強いものが入りやすいので。でも、1年単位で集計すると3位。根強いファンがいて安定した人気を得ている証拠ですね。
── 検索のデイリーランキングは、見ていると男女差があるなと感じます。
山口:確かに性別による傾向の違いは感じます。女性の方が、ランキングの変動が少ないですね。対して、男性はよく変動します。最近だと、『五等分の花嫁』の本誌連載が盛り上がっているためか『週刊少年マガジン』の発売日の翌日は必ず『五等分の花嫁』がランクインしていますね。
吉田:それに男性はキャラ名が検索ランキングに入ることが多いですが、女性は少ないです。やはり女性はキャラ同士の関係性を示すタグで検索することが多いので、キャラ名はランキングに入らないということなのかもしれないですね。

── では、続いては2019年に一番投稿されたタグの作品名を教えてください。
吉田:女性ユーザーによるランキングはこちらです。
女性ユーザーによる投稿作品ランキング
1位:鬼滅の刃
2位:Fate/GrandOrder
3位:刀剣乱舞
吉田:今年は本当に『鬼滅の刃』の年でした。男女ともに投稿されていてpixivの投稿数のグラフに影響を与えるほどの数です。多い日は、1日で約1,250件もの『鬼滅の刃』の作品が投稿されました。pixivのデイリー投稿数が約20,000件なので、その6%が『鬼滅の刃』。数えきれないほどの作品やコンテンツが溢れている中で、いち作品のファンアートで6%を占めるというのは驚異的です。
── やはりアニメ放送開始から投稿数が増えたのでしょうか。
吉田:そこがおもしろくて。放送中もじわじわ増えていたんですが、とにかく跳ねあがったのはアニメ放送終了直後からですね。アニメ放送中に投稿数のピークを迎える作品が多い中、これは独特な動きだと思います。

山口:アニメは終わったけど、本誌連載は続いているからというのもあるかも。「好みのキャラ」や「新たな関係性」など、創作の原動力が継続的に提供される環境なら、アニメ放送が終わってもファンの数は減少しません。
それに、鬼、和服、刀と、海外ユーザーが好む作風だったことも大きいかと思います。海外の人気クリエイターさんが描き、その方の作品を見て『鬼滅の刃』を知り自分でも描きたくなった……というユーザーさんも多いんじゃないでしょうか。
── なるほど、ファンがファンをつくる素敵な循環ですね。
吉田:男性のランキングはこちらです。
男性ユーザーによる投稿作品ランキング
1位:東方
2位:艦これ
3位:Fate/GrandOrder
── 『東方』は今年で25周年となりますが、ずっと投稿されてるんですね。
吉田:描きたくなる要素が多い作品なんだと思います。マンガやアニメ発の作品に比べ世界観や舞台設定への解釈の自由度が高いけれど、魅力的だったり歴史的背景を持っていたりするキャラクターはちゃんといるので、妄想しやすいというか。
山口:それに描くことでよい体験が得られる集団になっているんだと思います。だから多くのクリエイターが長期的に作品を描き続けている。検索ランキングには入らずとも投稿ランキングに入ってくるのは、こういう理由があるかもしれませんね。
── 最後は「閲覧数」のランキングをうかがいたいと思いますが、そもそも「閲覧数」とは何を表す数字なんでしょうか。
吉田:その作品に興味を持ってる人がどれほどいるかっていうことです。ガッツリ見たい人も、ちょっと気になるなって人も「閲覧」の数に含まれるので、規模感を表す数字だと考えていただけたらいいと思います。
最初にあげた「検索数」は「探してでも見たい」なので「深さ」を表す数字、対して「閲覧数」は「広さ」を表す数字といえますかね。
── なるほど。では、閲覧が多かったタグの作品ランキングをお願いします。2019年のトレンドということなので純粋な閲覧数よりも、去年よりどれだけ閲覧数が伸びたかでランキングを出してください。
吉田:女性、男性はこちらです。
女性ユーザーによる閲覧作品ランキング
1位:鬼滅の刃
2位:第五人格
3位:ヒプノシスマイク
吉田:『第五人格』は今年の3月に投稿数が増加し、それに合わせて閲覧数も増えました。他の作品に比べ、投稿層と閲覧層が若いことが特徴です。『ヒプノシスマイク』は、オオサカ・ディビジョンの加入が発表された9月にグンと閲覧数が伸びましたね。
男性ユーザーによる閲覧作品ランキング
1位:ポケモン
2位:鬼滅の刃
3位:ドールズフロントライン
吉田:『ドールズフロントライン』は中国発のゲームで、中国では『少女前線』と呼ばれています。日本版は2018年8月にリリースされているので、じわじわ人気がひろがってランキング入りしたのかもしれないですね。
山口:このデータは11月末で切って集計しているので、11月15日発売の最新作『ポケットモンスター ソード・シールド』の影響は少ししかないはずなんですが、すごいですね。12月入ってからのデイリーの検索ランキングは『ポケモン』が上位を占めているので、これから作品も閲覧もどんどん増えていきそうです。
【pixivisionの記事】


海外ユーザー間でのトレンドは?

── 続いて、海外のトレンドもお聞きしたいと思います。pixivは現在、日本語、英語、簡体字、繁体字、韓国語の計5言語に対応していますよね。
吉田:現在、pixivのログインユーザーは月間700万人くらいで、そのうち240万人から250万人が他言語圏です。だからアクセスしている人の3割ちょいが海外のユーザーということになりますね。
ログインしていないユーザーはこの4〜5倍いるので、正確にはもっと多いですが。
── 言語別の割合は?
吉田:英語圏が120万人弱くらい。その次が簡体字で100万人くらい。続いて韓国語、繁体字という感じです。
── 英語圏の人が多いんですね。
吉田:英語はアメリカだけじゃなく、タイやインドネシアなど東南アジアのユーザーもいるので数は多いですね。英語が母国語じゃなくても、日本語よりは馴染みがあるからだと思います。
── タグの英訳を進めていると聞きました。
吉田:2018年までのpixivは日本語タグで投稿して日本語タグで検索するしかなかったので、今は主要なタグの英訳を進めています。
たとえば、『進撃の巨人』は英語圏で『Attack on Titan(AOT)』と呼ばれています。海外のユーザーが『Attack on Titan(AOT)』と入力すると『進撃の巨人』のルビが入った状態でサジェストに出るようになりました。

吉田:検索結果も、その関連タグが英訳と一緒に表示されるようになっています。この施策を実施してから英語圏の検索数が50%アップしました。

山口:翻訳されているのは作品名やキャラクター名だけではありません。pixivではおなじみの「なにこれかわいい」は「incredibly cute」と訳されています。いつも見ているタグがどう訳されてるのか調べるのも楽しいかもしれないですね。
── おもしろいですね。他に海外ユーザー向けの施策はありますか。
吉田:英語圏の新規ユーザーの獲得という意味で検索も対応しています。pixivって、Googleに日本語のサイトと認識されています。なので、英語版のURLには「/en/」を入れるなどサイトの中身を切り分ける構造上の施策と、切り分けた検索ページと作品ページ上に先ほどの英訳を載せ、Googleに英語のサイトだと認識してもらう施策を行なっています。
海外からの流入について、運営側は特に何もせず伸びてきました。ここをきちんと対応したことで、英語圏は200万人~250万人くらいに増加することを見込んでいます。
── 海外ユーザーは、日本ユーザーとpixivの使い方は違うのでしょうか?
吉田:当たり前なんですが、マンガとか小説とか、日本語でしか展開されていない作品の閲覧は少ないです。基本的に、イラストしか見ないですね。
あとは、作品に対してのアクションとかコメントとかは海外の人のほうが多いはずです。
山口:けれど、「使い方」は海外も日本も一緒だと思います。翻訳が進んでいるとはいえ、検索がまだ使いにくいところもあるので、レコメンドによる閲覧に偏ってはいると思いますが。
── 海外ユーザーが多く閲覧している作品は何でしょうか?
吉田:『Fate/GrandOrder』は英語、簡体字、繁体字で展開されているので、どの言語圏でも人気ですね。
── 韓国語圏では?
吉田:(FGOは)韓国語圏でも人気ですが、それよりも中国のゲーム『少女前線』のほうがよく閲覧されています。また、韓国語圏では『漫画』タグもよく閲覧されていいますね。おそらく、日本語のマンガではなく韓国語のマンガが多く投稿されているからだと思います。
── 海外発の人気作品はありますか?
山口:『アークナイツ』『アズールレーン』など海外発の作品は、やはり海外ユーザーに人気ですね。『アークナイツ』はメインのイラストレーターさんが、pixivに作品をたくさん投稿していることも人気の理由のひとつでしょう。
『アズールレーン』に関しては、かなり計画的にpixivでファンアートを盛り上げ作品を広めていくマーケティングをされていて、それが成功したんだと思います。
── 海外にとってpixivが日本へのプロモーションの場になってるんですね。逆に日本のクリエイターが海外にアプローチするにはどうしたらいいですか?
吉田:作品名かクリエイター名で検索される方が多いので、ご自身の名前に日本語名だけでなくローマ字も併記するといいと思います。海外ユーザーは日本語が読めない場合が多いですし、検索しようにも日本語の入力がそもそも難しいので。
山口:ファンアートならキャプションに作品名の英語表記を入れておくといいですね。それだけでも、海外ユーザーが辿りつく確率はぐんと上がります。
── ありがとうございます。では、最後にpixivの2020年の目標をお願いします。
吉田:引き続き、海外ユーザーを増やしていく施策は行なっていきます。
山口:レコメンド(おすすめ)も強化していきたいですね。
── 求めているものをドンピシャで表示できるようにするとか?
山口:そういったユーザー視点の強化ももちろんですが、クリエイター視点でも強化していきたいです。今まで見られていない作品でも、求めているユーザーに届かずに終わってしまっているケースがたくさんあると思うので、その橋渡しをしたいですね。
吉田:レコメンド強化は海外施策にもつながりますね。探すことが言語以外でもできるといいなってことで。
山口:海外ユーザー増えることで、今までスポットが当たっていなかった日本ユーザーの素晴らしい作品を再発見してくれるケースもあると思うんです。そういったケースを増やしていって、いろんなカルチャーの人たちが楽しめる環境をつくっていきたいです。
吉田:同様に、日本のユーザーにも海外の作品を楽しんでほしいですね。海外からも素晴らしい作品がたくさん生まれています。我々はそれらすべてをグローバルに楽しめる環境をつくっていきますので、2020年もぜひpixivをご利用ください。
女性ユーザーによる検索ランキング
1位 名探偵コナン
2位 ユーリ!!! on ICE
3位 鬼滅の刃