特に理由のない前髪が片目を襲う!「片目隠れ」/カレー沢薫のpixivタグ検隊

文/カレー沢薫
■意外と多い「ファッション片目隠れ」
「メカクレ」は今回テーマになっている「片目隠れ」と「両目隠れ」に分かれる。
髪の毛などで片目が隠れているのが「片目隠れ」、両目隠れているのが「両目隠れ」である。
「片目隠れ」キャラで有名どころは「鬼太郎」「ブラック・ジャック」「サンジ」あたりだろうか。
しかし私は言われるまでブラックジャック先生に「メカクレキャラ」という印象がなかった。
他にもピクシブ百科事典には片目隠れキャラ一覧が載っているが「そういえばあいつ片目隠れだ」と、初めて気づくキャラも多い。
何故なら「片目隠れ」には、意味がある片目隠れと、ない片目隠れがいるのである。
例えば鬼太郎の場合、片目隠れなのは「片目がないから」という理由がある。
他にも「オッドアイ」など、とにかく片目に何か秘密があって隠しているキャラが、意味のある片目隠れだ。
こちらの片目隠れは「片目隠れキャラ」として記憶されやすい。
中二病患者が、包帯や眼帯で片目を隠したがるのも「片目が邪気眼に目覚めているから」という設定だからである。
かたやブラックジャック先生の場合「特に理由のない前髪が右目を襲う」なのである。
ブラックジャック先生の右目は普通にあるし「邪気眼に目覚めている」という設定も知る限りでは見たことがない。
そもそも手術中には思いっきり出している。「片目を隠してないとメスがあらぬところを刺す」という次元大介式でもない。
つまり「ファッション」としか言いようがない。
実は「特に理由はない(語られない)」という「ファッション片目隠れ」の方が片目隠れ界には多いのだ。
よって我々にとって、もはや「片目隠れ」は「髪型の一つ」でしかないため「片目が隠れているのが最大の特徴」「むしろ隠れている片目が本体」というキャラでない限り「片目隠れキャラ」として認識すらしていない場合もあるのだ。
小生の好きな『刀剣乱舞』にも片目隠れが少なくとも6人はいるのだが、パッと思いつくのはオッドアイの「にっかり青江」ぐらいである。
そのぐらい、二次元においてイケメンや美少女の片目を特に理由のない前髪が襲うのは日常茶飯事なのだ。
それに、二次元の髪には「目を覆われると前が見えなくなる」という当たり前の概念が存在しない。
どれだけ目が完全に隠れていても、彼らは普通に生活できるのである。
髪の毛がピンクや緑なことより、この「毛が透過している」ことの方が、二次元と三次元の大きな違いな気がする。
一見地味な「片目隠れ」という属性だが、これも「二次元だからできること」の一つである。
■絵描きにうれしい「片目隠れ」キャラ
ちなみに、個人的には推しが「片目隠れキャラ」なのは「ラッキー」だと思っている。
ただラッキーなのは「絵を描く人」限定だ。
「目を二つ描かなくていいから楽で良い」という意味ではない。
むしろ「推しの目を描くのが面倒くさい」という絵描きがこの世に存在するのだろうか。
逆に「目だけ描きたい」ぐらいである。
では、楽しみである目が一つしか描けなくてアンラッキーではと思うかもしれないが、人の顔を描くとき、両目をバランス良く描くのはかなり難しいのだ。
初心者はまずつまずく。私はつまずき続けて30年の大ベテランだし、今日もつまずいたばかりだ。
髪型やファッションなら「アシンメトリー」という考えがあるが、推しの両目がアシンメッているのを見るのは、かなり忍びない。
その点「片目隠れ」の場合、少なくとも「左右の目のバランスがおかしい」ということは起らないし、起こりようがない。
よって、両目描けないのは残念だが、片目キャラの方が「上手く描けた」気になれるのだ。
絵描きにとって「推しが上手く描けない」というのは辛いことである。
ホラー漫画『富江』みたいに「こんなの推しじゃない!」とキャンバスを破り捨てることもしばしばだ。
その点、バーソロミューは常に推しの片目しか描かずに済むので羨ましいが、おそらくそんな理由でメカクレが好きというわけではないと思う。