32年目に現れた恋人!? 究極の初心者LOVE『アラサーだけど、初恋です。』 #ゆるふわマンガレビュー

文/ひらりさ
彼氏や彼女が欲しいけれど、なかなか行動できない。好きな人はいるけれど、いつも気持ちを伝えずに終わってしまう……。そして気付けば、長年恋人がいないまま。そんな経験のある方も多いのではないでしょうか。
「一歩踏み出すことができれば、きっと変われるはずなのに」とわかってはいても、誰かに思いを伝えるには、勇気が必要です。
そんな読者の背中を押す、恋のときめきをめいっぱい詰め込んだ作品が『アラサーだけど、初恋です。』。作者の310(サトー)さんがSNSで公開したマンガが話題になり、5月22日に第1巻が発売されました。

今まで一度も恋人ができたことのない山本さん(28歳・女性)。好きな人がいたことはあるけれど、付き合うとなると勇気がでなかったという彼女が、同僚の紹介で、彼女の先輩だという井上さん(32歳・男性)と会ってみることに。

年上で落ち着いた井上さんと話してみて、好意をもつ山本さんですが……この人のことが好き、と思いつつも、余裕ある受け答えを返してくる彼の様子に「彼氏いない歴=年齢の自分とはつりあっていないんじゃないか?」と悩みます。
けれど、心配ご無用。実は、井上さんも「彼女いない歴=年齢」の恋愛初心者なのでした!

「この人だ」という人と32年間出会えなかった井上さんは、紹介された山本さんを一目見て「これが初恋だ」と確信。初めての恋にドギマギしながらも、すぐに山本さんへ思いを伝え、晴れて付き合うことに!
大人しい山本さんをリードしたいがために、ちょっとキザな発言も頑張る井上さんですが、本当はちっとも余裕がありません。必死で平静を装いつつも、心の中では大暴走!
はじめての恋愛活動の過程で「この行動、やってよかった!?」「引かれてない!?」とテンパる山本さんのかわいさに対して、ことあるごとに「もだもだ」してしまうのです。

そう、この「もだもだ」も作品の大きな魅力。
手が触れては「かわいい!」待ち合わせをしては「ほんと……天使」と、愛のことばをつむぎつづける井上さんの悶えっぷりは、まさに32年分の「好き」を凝縮したかのような濃度。「推しキャラがかわいいよ~〜〜!!」と日々じたばたしているオタクこそ、きっと共感できるはず。これだけ誰かのことを思い切り好きになれるなら、32年間待ったかいがあったね……と肩を叩きたくなります。


「恋ができない自分はおかしいのだろうか?」と感じた経験があるなら胸が締め付けられるだろう、井上さんのモノローグも見どころ。「この人しかいない!」という人を待ち続けることが悪いことであるはずはありませんが、周りと違う自分に焦ったり、悩んだりすることはありますよね。
2人の恋が、そんな長年の焦りや葛藤の上に生まれたものなんだと思うと、なんだか感慨深いです。恋愛経験が少ないことは、年齢を重ねるほど、コンプレックスになりやすいもの。それでも、ふたりのようにピュアな恋ができるなら、それもいいかな……?と思えるかもしれません。
少しずつ、ゆっくり進んでいくふたりの恋愛模様に、恋がしたくなる一冊です!