幻のラフを独占公開!「逆転裁判」キャラデザ・布施拓郎さんインタビュー

「異議あり!」の台詞でおなじみの法廷バトルゲーム「逆転裁判」のシリーズ15周年を記念し、4月6日(木)より東京・中野のギャラリー「pixiv Zingaro」にて「逆転裁判画廊」が開催中です。会場入口では、キャラクターデザイナー・布施拓郎氏描き下ろしのギャラリー限定イラストの巨大看板や、15周年を振り返る歴代の「逆転裁判」のイラストをはじめ、雑誌・イベント用に描き下ろされた貴重なイラストなどを展示しています。
今回は、布施拓郎氏に独占インタビューを実施!デザインしたキャラクターや、描き下ろしイラストに込められた想いをたっぷり語っていただきました。また、この記事でしか見られない幻のラフも登場しますのでお楽しみに!いきなり絵を描き始めない。布施さん流キャラデザ術
──最初に布施さん自身について伺います。まず、どのようにしてキャラクターデザインのお仕事を始めたのでしょうか。

小さいころからゲームと絵を描くことが好きだったので、学生の頃は漠然とそんな仕事ができたらいいなぁと考えていました。卒業後、初めは小さいゲーム会社に就職したのですが、なかなか思うような仕事ができなくて。当時はSNSがないので、絵を描く人は個人サイトでイラストを見てもらうような時代だったのですが、サイトを見た方に「ゲームをいっしょに作らないか」と運良く声をかけてもらったんです。しかも、昔好きだったアーケードゲームの続編だったので、迷わずついて行きました。今思えばかなり怖い話ですが(笑)。そこでいくつかゲームを作った後、フリーで仕事をしたり、友人と会社を起業したり、いろいろ経験してからカプコンへ転職して今にいたる感じです。

まずはその作品の世界観やテーマを把握するところから始めます。続編であればなおさらですが、その作品のどんなところが人気なのか、一度プレイヤーと同じ目線になってみることが大事だと思います。デザインをするときは、いきなり絵は描きません。まずシナリオで決まっているキャラクターの設定に紐づいた要素を探します。できるだけデザインの幅を広げるために、ここにけっこう時間をかけます。その後、見つけた要素と設定を組み立てるためにラフ画を描き始めます。もしうまくいかないときは、また要素を探す作業に戻ります。納得できるまでこれを何度も繰り返すのですが、設定と要素すべての関係がピタッとはまる瞬間がくるんです。そのときがデザイン作業で一番気持ちいいんですよ。その後は荒かった部分を整理して完成させる感じですね。
──なるほど、実際に絵を起こす前のステップを大切にされているんですね。お仕事の際に、必須のアイテムがあれば教えてください。

甘いものを毎日仕事机に用意しています。デザイン作業など頭を使う仕事が多いので、とにかく糖分が欲しくなるというか。あとはイラストを描くときに音楽をよく聴きます。ただ、デザイン作業のとき、ボーカル入りの曲は考える邪魔になっちゃうので、残念ながら聴けないんです。
──これから挑戦してみたいお仕事はありますか?

キャラクターデザインであればどんなジャンルでもやってみたいです。今までもやったことはあるんですが、格闘ゲームは単純に好きなのでまたやりたいですね。
あと、格闘ゲームとは真逆なんですが、乙女ゲームのキャラクターデザインもいつかやってみたいです。昔から『エースをねらえ!』や『ベルサイユのばら』『はいからさんが通る』などの少女マンガの世界観が好きだからだと思います。機会があればアニメ作品などもいつかはやってみたいですね。
「逆転裁判」のキャラクターデザインへ
──まさかの乙女ゲームに挑戦してみたいとは、とても意外でした……!
続いて、「逆転裁判」シリーズについて伺います。本作のキャラクターデザインを担当された経緯を教えてください。


▲ 法廷が崩壊しているイベントカット 『逆転裁判5』より
──「逆転裁判」のイラストを描く際に特に意識している点はありますか?

──『逆転裁判6』では年齢や世界観が異なるキャラクターがたくさん登場しました。布施さんの幅広いキャラクター表現は、何を元に生み出されていますか?


▲ ナユタ・サードマディ:クライン王国出身の国際検事。裁判に対して独自の考えを持つ。『逆転裁判6』より

▲ 亜内文武:クライン王国で幅を利かせる首席検事。『逆転裁判6』より
──今までご担当された「逆転裁判」シリーズの中で、1番印象に残っているキャラクターはどれですか?


▲ 番 轟三:熱血漢で正義感の溢れる刑事。『逆転裁判5』より

これまた難しい……。デザインしたキャラクターは当然それぞれに思い入れがあるんですが、産みの苦しみという意味で「希月 心音」と「夕神 迅」でしょうか。一人に絞れてないですけど(笑)。

▲ 希月 心音:喜怒哀楽が豊かで、負けず嫌いな新米弁護士。証人の「感情」を聴き取るチカラを持つ。『逆転裁判5』より

▲ 夕神 迅:囚人で現役の検事。通称「ユガミ検事」と呼ばれる。『逆転裁判5』より

私が「逆転裁判」で初めてデザインした弁護士と検事というのもありますし、まだ慣れていない頃なのもあってすごく苦労したので。子供はみんなかわいいけど、長男には特別な思い入れがある、みたいな感じです。
「逆転裁判画廊」2枚の描き下ろしイラストに込められた想いとは

──「逆転裁判画廊」のキービジュアルをご担当されたきっかけを教えてください。

『逆転裁判6』の仕事が終わった後、逆転裁判15周年記念用のイラストを描いていたんですよ。そのときはすでに次のチームに所属していたので「これでしばらくは逆転裁判のイラストも描き納めかな……」なんて考えていたんですが、ちょうど描き終わる頃にプロデューサーから「実は来年の4月に逆転裁判の画廊をやろうと思っているんだけど」と言われまして。そのときは「へ~、そんなのがあるんですか」と他人事のように聞いていたんですけど(笑)。なんとかスケジュールの調整がうまくいったので、今回イラストを担当することになりました。
──そうだったんですね! 看板イラストを描き下ろすにあたり、どんなポイントを意識されましたか?

看板イラストは、イベント会場入口の横にある大きな壁に使用することを始めから聞いていたので、そこでしか表現できないような内容にしようといろいろアイデアを考えました。
実は正装イラストもその中の一案だったのですが、画廊内にはシリーズ15年間のイラストが展示されるとお聞きしたので、それなら成歩堂がファンの方とともに弁護士として歩んできた道のりを描くことが一番合うだろうと思い、このアイデアに決めました。キャラクターたちの動きや位置関係、視線などからいろいろと感じていただけたらいいなと思います。

正装イラストの真宵ちゃんは袴の予定だった!? 幻のラフを大公開!

そもそも逆転裁判画廊用の描き下ろしイラストは1点の予定だったのですが、正装イラストのアイデアも個人的に気に入っていたので、「期間内になんとかするのでもう1点描かせてほしい」と無理を言ってお願いしました……実現できてよかった!(汗)
もともと看板イラスト用のアイデアだったので、実はこの正装イラストも初期のラフの時点では『逆転裁判5』以降の成歩堂なんでも事務所メンバーだったんです。結果的に看板イラストと正装イラスト2点を描くことになったので、この正装イラストは看板イラストと被らないよう他のキャラクターにすることになりました。「逆転裁判1・2・3」のキャラクターになったのは、プロデューサーから「今まで公式で描いたことのない糸鋸や冥、ゴドーを描いたらどうか」と提案をいただいたのがきっかけですね。
──そのような経緯で2枚を描き下ろすことになったのですね! 正装イラストには、どんな想いを込めて描かれましたか?

──なるほど。キャラクターの珍しい一面が見られるなんて、ファンにとってはたまらない演出ですね。正装イラストにて、綾里真宵はラフの段階で袴だったとか。どんな経緯で洋装となったのでしょうか?

pixivision独占公開!幻のラフはこちら

▲ 袴姿の真宵ちゃん。ゴドー検事も仮面を外しています。

ラフを描き終えた段階で軽く色を置いて、イラスト全体の雰囲気を確認したときに、洋間で洋装のみんなに囲まれた袴姿の真宵ちゃんが少し浮いて見えてしまって。どうしようか悩んだのですが、「いっそ今まで見たことのないような洋装を着せてみよう!」と思い、クラシカルなワンピースにしたんです。

▲ 逆転裁判画廊の開催が決定し、公開された正装イラストのサンプル。Twitterにて大きな反響を呼びました。

(ワンピースに身を包んだ真宵ちゃんを見て)案の定、プロデューサーには最初「真宵ちゃんぽくない」と言われました(笑)。ですが、個人的に気に入っていたので、なんとか説得しまして。実現できてよかったです。

──貴重なラフをお見せいただきありがとうございます!描き下ろした2枚のイラストの魅せ方の違いは何でしょうか。

看板イラストは「歩み」というコンセプトなのもあり、時間の流れを感じられるような瞬間を切り取れたらいいなと思って描いたので、ポーズや表情、位置関係などはたくさん微調整をしました。
正装イラストは、記念写真風にいつもとは違う空気感を出したかったので、普段よりコントラストを強くしたり、服装のシワなどの情報も多くして少しリアル寄りにしました。──最後に、「逆転裁判」シリーズのファンの方々へメッセージをいただけますでしょうか。

いかがでしたか?
販売物や会場特別特典の詳細情報が気になった方は「逆転裁判画廊」公式サイトをチェックしてみてくださいね。※会場販売物は売り切れの場合もございますので、ご了承ください。
本展は4月25日(火)まで! このチャンスを見逃さないように、中野ブロードウェイへ行ってみてくださいね。
■ 逆転裁判15周年記念「逆転裁判画廊」
日程:2017年4月6日(木)~ 4月25日(火) 12:00~19:00 ※水曜定休日
入場:無料
運営:Kaikai Kiki
【布施拓郎さんのサイン入り!会場限定ポストカードセットをプレゼント】
会場でしか手に入らないポストカードセット(12枚入り/ケース付き)に、布施拓郎さんの直筆サインを入れた特別版を限定3名様にプレゼントします。
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