SNSの活用方法や仕事の受け方は?ニュージーランド出身のイラストレーターYuekoが「専業イラストレーター」になるまで
ニュージーランド出身のイラストレーター・Yuekoさん。7歳でSNSにイラスト投稿を始め、大学生のころにはイラストレーター1本で活動していくことを決めたといいます。そんなYuekoさんに、専業イラストレーターとして活躍するためにSNSをどう活用してきたか、仕事の依頼をどのように受け始めたかなど、これまでの道のりを教えていただきました。
画風が変わっても変わらない「自分らしさ」
── 普段どんなお仕事をしていますか?

自分の作品を販売したり、企業からの依頼でイラストを描いたりしています。オリジナル作品以外に、アニメやゲームのファンアートを描くこともあります。
── オリジナルではどのような作品を描くことが多いですか? よくイラストに取り入れるテーマがあれば教えてください。

オリジナル作品では、例えば実際に訪れたことのある場所や、絵で表現したい感情など、日常からインスピレーションを受けることが多いですね。
── 得意な画法や磨きをかけている画法はありますか?

色をたくさん使ったシーンや柔らかいタッチの情景を描くのが得意だと自負しています。あとは人物や表情にフォーカスしたキャラクターを描くのも得意かなと思います。
── Yuekoさんの作品を振り返ると、色の使い方が独特で、ご自身のスタイルを確立していらっしゃると感じます。どのようにして現在のスタイルに至りましたか?

画風は時間が経つとともに変化してきました。その時どきの興味の対象や、刺激を受けたイラストレーターやメディアによって変わることが多いです。初めのころは『リーグ・オブ・レジェンド』などのゲームから刺激を受けることが多かったので、ファンタジー世界や西洋を彷彿とさせるリアルなテイストのイラストがメインでしたが、時間が経つにつれてアニメに興味を抱くようになったため、現在はよりアニメっぽい画風に変化している気がします。
色の使い方も時間とともに変わってきました。初めのころは当時使っていた技法もあり、やわらかく温かみのある色合いが主でしたが、最近はビビッドな色を好むことが多いです。その方がイラストもよりはっきりしますしね。とはいえ、根本的に落ち着いた色合いが好きなのは変わらない気がします。ざっくり言ってしまえば、自分のスタイルって興味を抱いているものや表現したい雰囲気の集大成みたいなものなんです。
── その時どきの興味の対象によって画風が変化してきたんですね。その中で、「Yuekoさんらしさ」はどう培われてきたのでしょうか?

自分のスタイルは常に自分が刺激を受けたものや元来の好みから成り立っているから、自分の作品にも反映されがちです。だけど友達に「どうしよう? 私って画風に統一感なくない?」と聞くたびに、「そんなことない。これもこれもYuekoが描いたものだってすぐにわかるよ。Yuekoが描いたイラストはどれもすごくYuekoらしさが出てる」と言ってもらえて。そのときはどこが自分らしいのかわからなかったのですが、根本にある好みみたいなもの、特に絵の構成や表情の描き方などがイラストに表れているんだと思います。とても小さなことかもしれませんが、他の要素が変わってもその要素は変わらず一貫性があるんだと思いますね。
── それは自然に表れるものですか? それともイラストに統一感を持たせるために意識していることがあるのでしょうか?

作業をしているうちに自然と表れますね。自分の作品はむしろ一貫性がないとずっと思っていたので、意識的に統一感を持たせようと思ったことはないです。ただ、根本的な好みなどは意識せずとも絵に自然と表れるようですね。
7歳からイラスト投稿!SNSの活用方法は?
── SNSにイラストを投稿し始めたのはいつですか?

7歳のときです。偶然イラストレーターのオンラインコミュニティを見つけたのがきっかけです。インターネットを利用する機会が多かったので、自分の描いた絵をネット上に投稿する行為がとても魅力的に思えたんです。
── そのころはどんなイラストを投稿していましたか?

動物を描くのが大好きで、動物のイラストをよく投稿していました。特にオオカミの絵をよく描いていました。当時一番好きだった動物で、すごくかっこいいと思ったんです。なぜかはわからないのですが、とにかくオオカミに固執していて。自分と同じくらいオオカミに対する愛が強い、ニッチなネット上のコミュニティがあったのも理由の一つだと思います。
── アニメ風のイラストを描き始めたのはいつごろか覚えていますか?

アニメをよく観るようになってからアニメ風のイラストに移行し始めた気がします。幼いころはアニメを観ていたのですが、動物にハマったころにアニメを観なくなりました。その後、高校生になって『キルラキル』を観たのをきっかけに再びアニメをたくさん観るようになり、それから次第に画風がアニメ風に変わっていきました。初めのころはファンアートをよく描いていましたね。自分が観た作品のストーリーやかっこいいキャラクターたちに感銘を受けて、とにかくそれを上手く絵で表現したかったんです。
── 子供のころからSNSをイラスト投稿に活用しているとおっしゃいましたが、フォロワーが増え始めたのはいつ頃でしょうか? 自分の作品がイラストコミュニティに浸透しつつあるという実感はありましたか?

自分の作品が人の目に留まるようになったのは、2018年ごろだったと思います。当時、将来どうするか真剣に悩んでいて......。イラストレーターの道に進むならフォロワー数も一つの判断材料になると思い、フォロワー数を気にしていたのをよく覚えています。その年は程よいペースでフォロワー数が伸びたため、そのままイラストを続ける自信が持てました。その年の終わりには個人、つまりフリーのイラストレーターとして活動する道を選びました。
── フォロワー数を将来を決める判断基準にしたのはなぜですか?

当時はまだ自分の絵にそこまで自信がなかったので、自分を評価してくれている人がちゃんといることを自分自身に証明したかったんです。何せイラストを描きながら生活すること、イラストの道一本で生計を立てることが本当に可能かまだわからなかったので。
── フォロワーを増やすために特別に何かしましたか?

自分の作品を見てもらったり、フォロワーを増やすため「だけ」に何かをしたことはありません。アニメやゲームが大好きなので、自分が好きな対象を選んで描いたりしていました。幸いなことにそうした作品を同じように好きな人がたくさんいたので、自然とファンアートを描くようになったんです。そのおかげで、フォロワー数も一気に伸びましたね。
── フォロワー数に関して、壁にぶちあたったことはありますか?

「壁」といえば初めのころ、フォロワー数が1000人以下だったころが一番大変でしたね。まだいいねや作品のシェアをあまりしてもらえず、どうやったら自分の作品を見てもらえるのかもわからないころはしんどいですよね。
── そうした時期をどうやって乗り越えたのでしょうか?

── 動画配信もされていますね。配信を始めたきっかけはなんですか?

2015年か2016年ごろに配信を始めましたが、視聴者は3人くらいしかいませんでした。他のイラストレーターの方々が配信をしているのを見て、自分もやってみたいと思ったのがきっかけですね。
── どんな内容の配信をしていますか?

現在は主にアートの配信をしています。最近は忙しかったのでしばらく配信できていないのですが、また定期的に配信したいなと思っています。配信のジャンルはわりと幅広くて、イラストを描く過程やゲームの実況、雑談などさまざまです。
── pixivを使うようになったきっかけを教えてください。

pixivはかなり昔に友達から「上手いアニメ風のイラストを描く人がいっぱいいるから見てみなよ」とすすめられて使い始めました。それまで使っていたDeviantArt(※)は西洋風のイラストが主流だったので、pixivを見つけたときはとても新鮮で、多くのアーティストから影響を受けました。
※アート作品に関するオンラインコミュニティ
── 他のSNSと比べて、pixivならではの使い方はありますか?

pixivは自分の作品をギャラリーみたいに展示できる場所だと思っています。主に自分のアートを共有するためだけに使っていますね。
── pixivには厳選された、人に見られて安心な作品を載せているということでしょうか?

はい、そうです。例えばXだともう少し雑な絵を投稿することもありますが、pixivではそういうことはしません。今はあまり落書きをしないのですが、昔はしていて、そのときはInstagramのストーリーやXに描いたものを上げていました。一方で、pixivには今も昔も完成された作品を投稿しています。
イラストレーター1本でいくと決めた理由
── 続いてお仕事について聞かせてください。自分のキャリアやイラスト人生の中で、イラストが趣味から仕事に変わった瞬間や転機はありますか?

間違いなく大学最後の年ですね。そのときはまだ他の道を進むこともできたのですが、職業としてイラストレーターに専念する道を選びました。
── イラストを仕事にする決め手となった出来事があったのでしょうか?

もしも違う道を選んだとしても、絵を描きたい気持ちはきっと変わらないと気づいたからです。他の仕事とアートを両立するとなると、どちらも全力で取り組めずに中途半端になる気がして嫌でした。アートの道に専念すれば、それだけに全力を注ぐことができる。結果がどうであれ、最終的にはその方がいいと思ったんです。
── 多くの人はクリエイターとしての道を歩むか決める際、ちゃんと自分の作品を評価してもらえるか、継続的に仕事がもらえるかなど、不安があると思います。そうした点はいかがでしたか?

私が一番不安だったのはお金の問題ですね。アーティストはお金があまり儲からなくて常にお腹を空かせているというイメージで育ったので、自分もそうなるかもしれないと思っていました。なので、フリーランスになりたてのころは自分のキャパを見極めるために、どのくらいの時間でどの程度の仕事量をこなすことができるかを計算して、収入の想定をしていました。その額をもとに、「なんだ、本当はこれぐらい稼げるんだ!」と自分を奮い立たせていましたね。
仕事の依頼はどうやって届く?
── フリーランスとして活動し始めて、初めのころはどのようにして仕事の依頼を受注しましたか?

最初は個人からの制作依頼のみ受けていました。ただ「〇〇を描いてほしい」といった内容の依頼で、私のSNSを見つけて依頼してくれたのだと思います。
── 最初の仕事を受けるのに時間はかかりましたか?

個人の方からの制作依頼でいえば、実をいうと最初の依頼をいただくのにそこまで苦労しませんでした。DeviantArt時代に破格で個人の制作依頼を受けていたことがあったので、当時まだフォロワー数が少ないながらイラストを描いてほしいという声はそれなりにいただいていました。
── 企業からの依頼はどのように届きますか?

企業からはメールでお問い合わせをいただくことが多いですね。おそらくSNSで私のメールアドレスを見つけて連絡してくださるのだと思います。もしかすると私の二次創作イラストを見て「こんな感じのイラストを描いてほしい」と思ってご依頼されるのかもしれません。
── SNSの活用が仕事につながっているんですね。

はい、間違いなくSNSのおかげで生計を立てられていると思います。
プロになるために、一番大切なこと
── 絵を描き始めたころの自分に何かアドバイスをするとしたら?

基礎をもっとしっかり学んでおけと伝えたいです。聞く耳を持たないと思いますけど(笑)。でも真面目な話、もっと基礎を勉強しておけばよかったなと思います。自分はただ好きで上手くなりたいという一心で描いてきたので、絵を本格的に勉強したことはないんです。
── 具体的にはどんなことを学ぶように伝えたいですか?

絵の構成と、あとはひたすら絵を上手く描けるように頑張れと伝えますね。自分は色塗りや細かい要素を描くのは得意なのですが、全体的にもっと速く、そして上手く描けるようになりたいです。デジタルイラストの利点であると同時に欠点なのですが、イラストを修正するのに変形とやり直しの機能に頼ってしまう悪い癖があります。絵がもっと上手ければ、きっと最初から修正はいらなかったのにな......とよく悩みます。
── 将来の目標や今後挑戦してみたいことはありますか?

幼いころからの夢で、いつかストーリーを作ってみたいなと常々思っていました。アニメやマンガで見るような、かっこよくて刺激的な物語が好きで、そんなストーリーを思いつける人をいつも尊敬していました。自分もいつかそういう物語を描いてみたいです。
── Yuekoさんのようなプロのイラストレーターになりたい方に向けて、メッセージをお願いします。

一番大切なのはアートやクリエイティビティへの愛を持ち続けることだと思います。お金を稼いだり、SNSで人気者になったりと、他のことに夢中になるのは簡単ですが、アートそのものとの関係を大切にし、創作を始めたころの気持ちを忘れずにいることが大事です。
── 最後に、ファンに伝えたいことはありますか?

ファンの方々の応援なしにはここまでやって来られなかったので、本当に感謝しています。ファンの皆さんがいなければ、私が創作を続けることも作品を投稿し続けることもできなかったでしょう。とにかく感謝の気持ちでいっぱいです! また、ここまで読んでくださってありがとうございます。もし私の作品に興味があれば、ぜひpixivでチェックしてみてください!
Yuekoさんの作品をもっと見たい方は、オフィシャルサイトもご覧ください!