ライティングでストーリーを演出する。イラストレーターRosuuriが理想とする「宝探しのような感覚」で楽しめる絵とは
インタビュー/原田イチボ
フィリピン出身のイラストレーター・Rosuuriさんの初個展「Looking Glass」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2023年11月23日(木)まで開催中です。これまで手がけたゲームやライトノベルなどのイラストに加え、『鏡の国のアリス』をテーマに本展にあわせて描きおろしたキービジュアルなども展示されます。
日本からの依頼が仕事の大半を占めるというRosuuriさん。母国語と違う言語でビジネスのやり取りをする上での注意や、VTuberとしての活動を始めた理由などについて聞かせてもらいました。

- Rosuuri
イラストレーター。
ゲーム、ライトノベル、画集などのキャラクターデザインやイラストを得意としている。繊細で温かみのある表現が持ち味。
種村有菜のイラストを模写した子ども時代
── Rosuuriさんは、フィリピンの出身だそうですね。美少女イラストを描かれていますが、日本のアニメやマンガに気軽にアクセスできる環境で育ったのでしょうか?

フィリピンの本屋では日本のマンガが売られ、テレビでも日本のアニメが放送されています。私は現在アメリカで暮らしていますが、アメリカよりもフィリピンのほうが日本の作品に気軽にアクセスできた印象です。フィリピンと日本は距離が近いので、古い作品でも手に入りやすいんです。
── 子どもの頃は、『神風怪盗ジャンヌ』や『満月をさがして』で知られるマンガ家の種村有菜さんのイラストを真似していたそうですね。

こちらの動画では、Rosuuriさんのメイキングと合わせて、イラストが上達していった過程をお話いただいています
── 確かに種村さんの華やかで繊細な絵柄は、現在のRosuuriさんの作風ともつながる気がします。ほかに影響を受けた作品やクリエイターを教えてください。

憧れのクリエイターはたくさんいますが、ぱっと頭に浮かぶのは、Mika Pikazo先生、Anmi先生、米山舞先生です。京都アニメーションの作品や初音ミクにも影響を受けました。
── 日本では、美少女キャラのイラストが街中にあふれ、アートシーンでもそういった作品が普通に発表されています。フィリピンで美少女イラストはどれほど受け入れられているんでしょうか?

正直なところ、あまり好かれていない印象です。私は美術やデザインを学ぶ大学に通っていましたが、先生たちから絵柄を否定されることもありました。でも「こういうイラストが好きだ!」という自分の気持ちは抑えられません。どうせ時間をかけて制作をするなら、本当に自分が好きなものを作りたいですからね。
── 大学ではデザインを学ばれたんですね。

── イラストはどのように練習されましたか?

2009年頃から本格的にイラストの勉強を始めましたが、当時は、ハウツー動画やpixivで公開されているメイキングを参考にしていました。あとは、気に入ったイラストの模写ですね。そういったことを毎日地道に続けていたら、だんだん自分の思い通りのイラストが描けるようになっていきました。
日本のファンとの繋がりを大事にしたい
── 2020年にアメリカに移住されたとのことですが、住む国が変わったことで、創作活動に何か影響はありましたか?

良くも悪くも影響は出ました。フィリピンにいた頃は、年に2回ほど日本に行って、いろんな本やグッズを手に入れることができました。でもアメリカに住んでからは、フィリピンにいたときほど気軽には日本に行けなくなりましたね。その代わり仕事などのチャンスがいろいろあります。
── 英語と日本語の二言語でホームページを展開していますよね。日本とそれ以外の国と、どれくらいの割合で仕事の依頼が来ていますか?

── メールや契約書など日本語でのやりとりも多いと思いますが、どう対応されていますか?

スランプのときこそ、手を動かす
── 作業環境を教えてください。

── イラストを1枚描くのに大体どのくらいの時間がかかりますか?

キャラのバストアップなどシンプルな構図のときは、最短で6時間程度です。でも3日ほどかかるときもあります。スランプで時間がかかる場合もありますね。描いている途中で課題が見つかって、なかなか解決できなかったりするんです。
── どうやってスランプを抜け出していますか?

絵から離れて少し休みます。でも休んでいる余裕がないときは、あえて絵の勉強に取り組みます。スランプの最中に何かを始めるのは難しいことですが、いったん手を動かしてみると、意外と最後までやれるものなんです。ちょっとしたらくがきをしてみたり、イラストの勉強をしてみたりすると、やっているうちにスランプだったことを忘れていきます。
── 特にこだわって描いている部分はどこでしょうか?

キャラの顔ですね。ほかが全部キレイに描けていても、顔の出来栄えに満足できていない限り、その絵は完成していません。特に瞳は、いろんな色を組み合わせたり、グラデーションを入れたりして、宝石のようにキラキラに仕上げています。また、目と目の間の距離、目と鼻のバランスも細かく調整します。あとは髪の毛ですね。顔自体のかわいさとは一見関係ないパーツのように感じるかもしれませんが、ヘアスタイルによって顔の印象は大きく変わります。
ライティングによってストーリーを演出する
── Rosuuriさんのイラストは、女の子のかわいさを引き出すポーズや衣装も魅力的です。普段どのようにインプットをしているのでしょうか?

ほわほわ感のあるかわいらしいコンテンツが好きで、アニメはよく参考にしています。最近だと『ぼっち・ざ・ろっく!』など日常を描いた作品が好みですね。
── 普段から「この服かわいいな」や「この風景はイラストの背景に活かせそうだな」など、気になったものをメモしたりなどしまますか?

自然、特に花からインスピレーションを受けることはあります。「見たことのない花だ」とか「この色の組み合わせをイラストでやってみたら映えるだろうな」といった感じです。その場でメモをとることはありませんが、「忘れないように写真で残す」「家に帰ったらすぐにイラストを描き始める」といったことはしています。
── 素敵ですね。これまでの作品で特に気に入っているものはありますか?

スマホ向けRPG『Fate/Grand Order』に登場するネロというキャラクターのファンアートは、われながら愛がこもっているんじゃないでしょうか。特にライティングが気に入っています。画面の右側が明るく、左側は暗いんだけど物体が見えないほどではなくて……という複雑なバランスを上手く表現できました。
── Rosuuriさんは、ライティングの凝った絵をよく描かれますよね。

ライティングによって、注目してほしいポイントに視線を誘導できるし、絵の裏側にあるストーリーを演出できますからね。
── 完成したイラストを複数のデバイスで保存し、スマホのような小さな画面での見え方をチェックしていると聞きました。

はい。ただ、私自身は細かい部分を書き込むのも好きなんです。だから「スマホの小さい画面でキレイに見える絵に仕上がっているか」というのは意識しつつ、同じ作品を大きいサイズで見たときに「こんなものも描かれていたんだ!」と新たな発見があるというのが理想ですね。ちょっとした宝探しのような感覚で絵を見てもらえたらいいなぁと思っています。
VTuberの経験が「Drawfest」で役立った
── VTuberとしても活動されていますが、始めたきっかけはなんでしょうか?

もともと英語の練習も兼ねて、ずっとライブストリーミングをしていました。そんなとき、ほかのイラストレーターさんがVTuberとしても活躍しているのを見て、「私もやってみたい!」と始めてみました。顔を出さなくてもファンの方々と交流できますし、自分の個性を打ち出せるのがうれしいです。
── 始めたものの続かない人も少なくないと思いますが、Rosuuriさんは何が配信のモチベーションになっていますか?

あくまで趣味で始めたので、気楽に続けられているんだと思います。今は週末だけの配信ですが、ファンの方々が優しいので、週に一度すごく仲の良い友達と話しているような感覚です。
── VTuberであることがイラストレーターとして役立つ場面はありましたか?

直接的な影響はそんなにありませんが、VTuberとしての活動は、自分の考えを言葉にする訓練になっていますね。2021年に行われたオンライン作画フェス「Drawfest 2」に講師として登壇したとき、動画配信で培ったスキルを活かすことができました。配信の経験がなければ、「Drawfest 2」のオファーは断っていたと思います。
個展は「絶対に実現させたい目標」だった
── 初めての個展を開催する気持ちを教えてください。

── 個展のタイトルは、鏡を意味する「Looking Glass」です。『不思議の国のアリス』の続編である『鏡の国のアリス』をテーマにしているそうですが、このタイトルとテーマに決めた理由を教えてください。

キービジュアルは、昔描いたスケッチをもとにしています。個展のテーマをどうしようか考えているとき、そのスケッチを目にして、水や鏡のむこうに女の子がいるイメージに惹かれました。もともと好きだった『鏡の国のアリス』の世界観にぴったりだと感じて、このキービジュアルが生まれました。
── キービジュアルで特に注目してほしいポイントはどこですか?

──展示の見どころを教えてください。

大きなサイズで展示された作品をぜひ見てほしいです。私は過去にAnmi先生の個展に行ったとき、画面で見ていたイラストを大きなサイズでじっくり見られて感動したので、みなさんにもそんなふうに楽しんでもらえたらうれしいですね。あとは会場に展示されたフィギュアも気に入っています。

── 大きなイラストは、まさに先ほどおっしゃっていた「宝探しをするような感覚」で楽しんでもらいたいですね! グッズも鋭意製作中だそうですが、お気に入りはありますか?

── 個人的には、このパンのようなウサギのキャラクターが気になっています。


── 今後挑戦したいことや目標はありますか?

── イラストをほぼ独学で学ばれたというRosuuriさんがつくる教本、ぜひ見てみたいです。ありがとうございました!
11月23日(木・祝)まで! Rosuuri初個展「Looking Glass」
pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、Rosuuriさんの初個展「Looking Glass」が10月29日(日)まで開催中です。
「ホロライブ」のキービジュアルなど、Rosuuriさんの手がけた版権作品や、オリジナル作品など約80点のイラストを展示します。Rosuuriさんが配信活動で用いているバーチャルYouTuber「ROSU」に関連したイラストもぜひご覧ください。「鏡の国のアリス」をモチーフにした、ガーリーな雰囲気の展示で皆さまをお待ちしております。
開催期間:2023年11月2日(木)~11月23日(木・祝)
定休日:なし
入場無料
所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
営業時間:12:00~19:00
一部グッズはWEB販売も!
BOOTHにて個展販売グッズの一部をご購入いただけます。Rosuuriさん初のアパレルグッズや、キャラクターの魅力引き立つアクリルスタンドなど、ここだけのアイテムが揃っていますので、ぜひ覗いてみください!