女性に共感されるヒロインは一緒に働きたい人?『聖女の魔力は万能です』インタビュー

構成/原田イチボ@HEW
“異世界系”は、男性だけのジャンルではありません。
KADOKAWAがおくる「FLOSコミック」は、女性主人公が異世界へ転生・召喚されるWEB小説のコミカライズを集めたコミックレーベルで、2020年2月に創刊2周年を迎えました。
現代の女性たちは、異世界系に何を求めているのでしょうか? 同レーベルでもコミカライズされている人気作『聖女の魔力は万能です』の原作者・橘由華さん、コミカライズ担当・藤小豆さん、それぞれの担当編集の方々にお話を聞くうちに、男性/女性の好みの傾向の違いなどが見えてきました。
「聖女」は男女問わず人気な要素

── まず「FLOSコミック」は、どのように誕生したレーベルなのでしょうか?
コミカライズ担当編集・K(以下、K):立ち上げを担当したのは、僕と一緒に担当しているNくんです。まず「少女マンガレーベルを作りたい」という希望があったんですが、何か今っぽいフックがひとつほしいということで、「異世界系」をコンセプトにすることに決めました。
── 失礼ですが、男性編集者が少女マンガレーベルを動かすことに苦労はなかったのでしょうか?
K:もともと僕たちは、少女マンガ好きなんです。とくに僕はファンジー色の強い少女マンガが好きでしたので、むしろ楽しみのほうが大きかったです。
また少女マンガの中でも、「異世界系」を含むファンタジー作品は男性も読まれている印象があり、不安もありませんでした。
── なるほど……。「FLOSコミック」のコンセプトに「異世界系」ということは、やはり女性向けの異世界系にニーズを感じていたんですね。
コミカライズ担当編集・N:そうですね。「小説家になろう」には女性向けの異世界系が多数投稿されているので、これだけ男性向けが人気を集めているなら、女性向けも動かしていいんじゃないかと判断しました。「FLOSコミック」は、「KADOKAWAの女性向け『なろう』は、ここから動かす」という場所なんです。あとはKの言った通り、過去の作品を振り返ってみても、少女マンガと異世界系との親和性は高いと判断しました。
── とはいえ創刊時は、女性向け「なろう」、しかもコミカライズとなると、ごく限られた出版社しか扱っていませんでしたよね。コミカライズを依頼された藤小豆先生は、少し戸惑ったんじゃないでしょうか……?
藤小豆(以下、藤):自分にとって未知のジャンルで、不安しかなかったのが本音です(笑)。しかも新レーベルの立ち上げ段階なので、参考にできるものもない。ですが、当時なろう系のコミカライズのオファーが複数あった中で、FLOSさんだけ少女マンガというのは、不安でもあるけど面白そうだと感じました。

── 橘先生が『聖女の魔力は万能です』を書いたきっかけは、どんなものでしょうか?
橘:「小説家になろう」のトップページに賞の案内が出ているのを見て、自分も投稿してみようと軽い気持ちで書き始めました。参考にしようと人気ランキングをチェックしてみたら、男性向けでも女性向けでも「聖女」がタイトルに入った作品が多かったんです。「聖女はウケる要素なんだ」と思い、そこからプロットを組み立てていきました。もともと「なろう」読者なので、どういうものが人気を得るのかといった感覚をつかみやすかったのは大きいです。
── 聖女は男女関係なく人気要素なんですね。
橘:男性向けの場合は、「主人公は聖女よりもすごい」みたいな扱われ方が多いですけどね(笑)。
女性向けはお相手がある程度決まっている?
── 同じ異世界系でも、男性向けと女性向けで違いを感じる部分はありますか?
── コマ割り?
K:少女マンガでは、コマ同士の区切りをあえて曖昧にした装飾的なコマ割りをすることがありますよね。あれは、少女マンガを読み慣れていない人だと、どの順番で読んでいいか戸惑いかねません。
── たしかに、あの流れるようなコマ割りは少女マンガならではの文化ですね。
── ファンにも違いがあるんですか?
女性に共感されるヒロイン像は「一緒に働きたい」が鍵!?

── 橘先生は、もともと「小説家になろう」読者だったそうですが、なろう小説のどのあたりにおもしろさを感じていたのでしょうか?
橘:とにかく日々の生活が大変だったんですよね……。だから主人公に自分を投影して、「ここではないどこかへ行ける」気分を味わっていました。当時は残業の多い職場にいて、『聖女の~』の主人公・セイが異世界に転移する前のような生活をリアルに送っていたんですよ(笑)。夜遅く帰宅してコンビニ弁当食べて、朝早く起きて……みたいな生活の中で、「この生活からいきなり解放されたら絶対気分いいだろうな」と想像していました(笑)。
── セイが異世界の人々に元の生活について説明して驚かれるシーンがありましたが、あれは実体験が混ざった部分だったんですね……!
橘:だから、『聖女の~』もストレスフリーな作品であるように心がけています。「気持ちを上げたい」というのは、エンタメに触れる大きな理由ですよね。自分もそのひとりでしたし、大体20代~30代の働いている方々を想定読者にしています。日々頑張っている読者の皆さんがなるべく嫌な気持ちにならないような作品づくりを意識しています。
── 10代ではなく、もう少し上の年齢の方々を想定読者にしているんですね。
── 『聖女の~』は、登場人物が基本的に全員良い人ですよね。フィクションならではの人物造形というより、「もし現実に存在したとしても、この人は良い人だろうな」と感じさせられます。
橘:「同じ職場で働きたい人」というのをベースにキャラクターを組み立てています。こんな同僚がほしかった、こんな上司がほしかった、とか。昔の職場で、本当に面倒見の良い上司がいたんですよ。薬用植物研究所のヨハン所長は、その方をちょっと参考にしています。セイもみんなから「あの子は頑張っている」とか「感じがいい」と愛されていた元同僚を参考にして、女性目線で可愛がられる後輩、もしくは同僚という人物像を意識しています。

── 橘先生から見て、女性が素直に応援できるヒロイン像とはどんなものでしょうか?
橘:真面目で明るいことがいちばんですかね。何か仕事を任されたときは、真面目にやってくれそうな雰囲気というか。セイを動かす上で、「他人を悪く言わせない」ということは決めています。
── Yさんから見て、「一緒に働きたいと思える主人公」とはどんなキャラクターでしょうか?
Y:まずは文句を言わないこと。あとは、「成長したい」という気持ちがあるとか、人のせいにしないとか、前向きな姿勢とかですね。そういった要素をセイちゃんは全部持っているので、橘さんが考える「共感できるヒロイン像」が私たちと合致しているんでしょうね。
原作者も感動した、コミカライズの「あのシーン」
── 藤先生は初めて『聖女の~』の原作小説を読んだとき、どのような感想でしたか?
藤:こういうストレスフリーな読み心地の作品を読んだのは初めてだったので、新鮮でした。もちろん物語上の盛り上がりは存在するんですが、読者の感情を揺さぶりすぎないように絶妙に調整されているんですよね。「こういうジャンルがあるのか」とおもしろく感じたんですが、それをマンガに起こすとなると大変そうだなと……。
── マンガ版のほうがセイが明るく、少女マンガのヒロインらしい雰囲気になっていますよね。それはコミカライズにあたって、打ち合わせした部分でしょうか?
橘:いえ、基本お任せスタイルです。やはりメディアミックスとなると、そのメディアに合わせた書き方にしていただくのがいちばんなので。だから、「マンガ版のセイさんは可愛いなぁ」と毎回いち読者のような気持ちで楽しませてもらっています(笑)。原作のセイさんは、もっと淡々とした感じですからね。
── ほかにコミカライズ担当として意識していることはありますか?
── 『聖女の~』の原作小説は、読みやすさのために最低限の描写しかされていない場合もありますよね。そういったシーンを作画するとき、どのようにイメージをふくらませるのでしょうか?
藤:自分で想像したり、橘先生に質問させていただいたりですが、そういう意味でいちばん印象に残っているのは、ポーションを作る場面です。原作小説だと、ポーションの作り方って、「鍋に薬草と水を入れ、魔力を注ぎながら煮込む」くらいの結構さらっとした説明で終わっているんですよね。でも何かを作る描写というのはマンガ的におもしろい部分だと思ったので、「きっと、こうなんじゃないか」というアイデアを絵に落とし込んでいきました。

── その「きっと、こうなんじゃないか」というアイデアは、どこから生まれたのでしょうか?
藤:資料の中に『ハリー・ポッター』でハーマイオニーが薬を作るときの鍋の写真があったんですよ。そこから、いろんなものを入れて煮込んでこして……というイメージをふくらませていきました。
橘:原作小説では読者さんの想像力にお任せしていた部分だったので、コミカライズで絵になったのを見たときは、原作者である私も「ポーションの作り方って、こういうことだったのか!」と感動しました(笑)。
藤:もともとの原作ファンの方から「小説を読んだ後、そのままコミカライズを読んでも全然違和感がない」と言っていただいて、それは本当にコミカライズ冥利に尽きる感想でした。
── ポーションの作り方のように作画で補完した部分もあった上で、原作ファンから「違和感がない」と受け止められるのはすごいですね。
「ピカイチかっこいい」団長に原作者も作画も苦労?
── 橘先生と藤先生、それぞれお気に入りのキャラは誰ですか?
橘:動かしやすいのは、師団長さんと所長さんですね。だから登場の割合がつい増えてしまうんです(笑)。

動かしやすい、描きやすい師団長
── 逆に動かしづらいキャラは誰でしょうか?
橘:ホーク団長は寡黙だから、セリフを考えるのが難しいんですよ。でも読者の皆さんからは団長さんとのイチャイチャが求められているので……、どうしましょう(笑)? だから行動で語るというか、不言実行みたいな男になっています。
── 最後に、これから『聖女の~』を読む人たちに向けてメッセージをお願いします。
橘:1日の終わりにこの作品を読んで一息ついて、少しでもほっこりしていただけたら本望です。
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