フェチ談義 vol.2 「手」の描き方で男の色気を自在に操る、イラストレーター・志島とひろ

取材・文/近藤世菜
志島さんはずばり「手フェチ」! 追求するのは「さりげない色気」
── 志島さんはいろいろなタイプのイケメンキャラを描いていらっしゃいますが、ご自身は男性キャラのどんなところに惹かれますか?

つい目で追ってしまうのは「手」ですね。男性キャラはもちろん、女性キャラでもじっと見ちゃいます。自分で描くときも手にはとてもこだわっていて。pixivに手の描き分けイラストを投稿したこともあります。
── この描き分け、すごく参考になります! ちなみに、志島さん自身が思わず惹かれてしまう手にはどんなポイントがあるんですか?


▲ 服に指先が隠れていることで、色っぽい雰囲気がプラスされている気がします!
── 「SOARA」や「Growth」には個性の違うキャラクターが所属していますが、手の特徴も描き分けているんですか?

はい。そのキャラクターの体格に合わせて描き分けるようにしています。身長が高いキャラは手も大きく男性的に描きますが、小柄なキャラはあまり骨ばらせずにあえて女性的な手にしているんです。
── なるほど。体格に合わせると全身で見たときもバランスがよさそうですね! 手を描くとき参考にしている資料や写真はありますか?

どうしてもうまく骨組みが取れないときは、自分の手を見て骨格だけ参考にすることはあります。ただ三次元での美しさと二次元での美しさは別物なので、納得できる美しさが表現できるまで、全体のラインや凹凸感を少しずつ調整しながら、描き込んでいくのが基本です。
── 志島さんが「手フェチ」に目覚めたきっかけは何だったんでしょう?

デジタル環境でイラストを描きはじめた中学2、3年生のころにはすでに、手の美しさにはかなりこだわっていたと思います。昔から「さりげない色気」のある絵が好きなんですが、手ってそれを表現するのに最適なパーツなんです。肌の露出とかわかりやすい色気だと、直接的すぎて個人的にはあまりぐっと来ないんですよね。
▲ 志島さんが描いた『鬼灯の冷徹』鬼灯のイラスト。全体的な雰囲気はもちろん、手から醸し出される色気がすごい!
── たしかに手から色気がただよっているのを感じます! ほかに「さりげない色気」を出すためのポイントはありますか?

── 志島さんの「手フェチ」と「さりげない色気」へのこだわりが発覚しましたが、これまで描いた作品のなかで自分のフェティシズムを一番発揮できたものを教えてください!

pixivに投稿した『ユーリ!!! on ICE』のヴィクトルのイラストですね。手元の美しさはもちろん、自分の好きな要素を存分につめこんで描くことができました。
▲ 志島さんが描いた『ユーリ!!! on ICE』のヴィクトル・ニキフォロフのイラスト。思わず赤面してしまいそうな色っぽさ……!
── たしかに手のラインや動きがすごく美しいです……! それに、イラスト全体からもさりげない色気が漂っています。

ほかにも、鎖骨部分の陰影を濃いめに入れていたり、やせている人特有の浮き出た胸の骨を描き込んだり、色気を醸し出すための工夫を随所に施しています。それから、目尻と鼻先、耳元にほのかに赤みを差すことでじわじわと色香を漂わせているんです。
── なんだかつい引き込まれてしまうような雰囲気ですね……!

仕事で描くのはアイドル系のキャラクターが多いので、元気でハツラツな雰囲気にしているのですが、個人的には耽美な雰囲気も大好きなんです。だから趣味で描くときには、どこまでも自分のフェチに忠実に描いたりしています。

ずばり「粘膜」です。普段は見えないところが見えているっていうのにぐっとくるんですよ。だから、アップのイラストのときは、下まぶたの内側の粘膜までしっかり描き込んでいます。それから涙袋や下まつげもそうです。表情も明るい笑顔より、ぼーっとした顔やふくみ笑いを描くことが多いですね。
ハマったキャラクターは神棚に上げて拝んでしまう……!

声優の石田彰さんや塩沢兼人さんが演じているような、どこか陰があって切なさを感じるキャラクターが好きなんです。闇を抱えている感じが「さりげない色気」につながっているというか。石田さんや塩沢さんの声も相まって、とても魅力的に感じます。
── たしかに、陰のあるキャラクターに石田さんや塩沢さんの艶っぽい声が当てられると、ものすごく色っぽいですよね……!

なかでも、衣装をしっかり着込んでいるのに色気を感じるような、ミステリアスな雰囲気を持っているキャラクターにとくに惹かれます。露出以外のところで「さりげない色気」を出したいと思うのは、そういったキャラクターの影響があるのかもしれません。
── 「さりげない色気」を放っているキャラクターは志島さんにとって理想の人なんですか?

うーん、実は私、自分とキャラクターとの恋愛を妄想する"夢志向"がなくて。好きなキャラは神棚に上げてしまうので、恋の相手にはできないんですよ。「生まれてきてくれてありがとうございます!」って拝み続ける対象なんです(笑)

▲ 話をしながら思わず拝むポーズを取ってしまう志島さん。
── その気持ち、わかります! ほかに誰かハマったキャラクターはいますか?

『モノノ怪』の薬売りも大好きでした。私、人間よりも人外に惹かれるんですよ。多分、曖昧な存在が好きなんだと思います。作品だと『蟲師』や『夏目友人帳』にもハマっていましたね。「不可思議さ」や「切なさ」を感じる世界観の話に魅力を感じます。
── これまでのお話に出てきたキャラクターや作品って、志島さんがお仕事で描かれているものとはまたちょっと違う雰囲気ですね。

たしかに、そうかもしれませんね。今、メインで描かせていただいているのがアイドル系のキャラクターデザインなんですが、自分がこれまで親しんできた世界観とは少し系統が違う気もします。実は、はじめて仕事の依頼をいただいたとき、私にイキイキしたキャラクターが描けるかどうか、ちょっと不安だったんです。でも実際に取り組んでみると、普段描かないような雰囲気だからこそ、楽しんで描くことができました。
── 今後、ご自身のフェティシズムを発揮した仕事にもチャレンジしたいと思いますか?

チャンスがあればぜひやりたいです。アイドル系のキャラクターっていい子が多いんですよ。だからめちゃくちゃ性格が悪いキャラを描いてみたいですね。
「SOARA」と「Growth」の活躍はファンのひとりのような気持ちで見守っている
── キャラクターデザインの仕事を手がけるとき、とくに意識している部分はどこですか?

仕事のときも手へのこだわりはかなり意識しています。あとは「顔」ですね。やっぱりアイドル系のキャラクターは顔が命なので。
── 顔のなかでとくにこだわっているパーツはありますか?

「瞳」ですね。瞳で語りかけることができるキャラクターってとても魅力的だと思うんですよ。だから目に"きらめき"を与えるために、特殊な塗り方をしています。小さい「◯」をたくさん描き込むように塗るんです。

▲ インタビュー当時、志島さんが制作中だったイラストの一部。制作過程はpixivFANBOXに掲載予定!
── おお、これは本当にキレイですね! たしかに「SOARA」や「Growth」のキャラクターを見ると、目元にぱっと目がいきます。テレビアニメの放映も始まって、彼らの活躍の幅もどんどん広まっていますね。

「SOARA」や「Growth」のキャラクターに対しては、もはやファンのひとりのような気持ちになっています。彼らが少しずつ成長していく設定なので、ファン活動をしながら一緒に前に進んでいるような感覚なんです。活躍しているのを見ると「大きくなったな」としみじみ感じます(笑)

一番大きなニュースは「SOARA」と「Growth」が放映中のアニメ『TSUKIPRO THE ANIMATION(ツキプロ・ジ・アニメーション)』に出演していること。自分の描いたキャラクターたちがこんなに大きなコンテンツに関わらせてもらえるなんて、本当にうれしいです。テレビのなかで動いているのを見て思わず泣いてしまいました……。これからも、彼らの活躍を応援してください!
オリジナルテクニックは創意工夫の賜物
自分の「好き」を追求するために、ひとつのイラストのなかに数え切れないほどのこだわりをつめこんでいる志島とひろさん。あえて指先を隠したり、瞳に「◯」を描き込んだり、オリジナルのテクニックが生み出せたことも、創意工夫の賜物なのでしょう。また、趣味と仕事でイラストの雰囲気がガラッと変わることには、プロ意識の高さを感じました。
ほかには一体どんなフェティシズムがあるのか。また次回の「フェチ談義」をお楽しみに!
志島とひろさんのpixivFANBOXが開設!
今回お話を伺った志島とひろさんのpixivFANBOXが開設しています。ファン限定のイラストやメイキングなどを続々公開予定! ぜひ定期購読してみてくださいね。