「神アニメの見つけ方」をアナウンサー・吉田尚記さんとタレント・結さんに聞いてみた

インタビュー・文:いしじまえいわ / 写真:中山英樹 / 編集:長谷憲
「ゼロ話切り」が許せない!

吉田尚記さん(以下:吉田アナ):ここ最近気になっていることは何かって、アニメの「ゼロ話切り」ですよ。
ーアニメのゼロ話切りですか…詳しく話を聞かせてください!
吉田アナ:インターネットを眺めていると「これは神アニメ」、「これは流行ってない」なんて記事がありますよね。あれでアニメの面白さを判断されている人も多いようですが、そのような記事での評価が誰にとっても全て正しいかというと、そんなことはないだろう、と。
あまつさえ「〇〇(作品タイトル)は1話で(視聴を打ち)切ったわ」、「俺はゼロ話切りしてやったぜ」なんてコメントも見たりします。
クリエイターさんが一生懸命作った作品なんだから「忙しくて見られなかった、ゼロ話切りしてしまった……」ということはあっても「ゼロ話切りしてやった」なんて、すごくモヤモヤしますよね。
―確かにせっかく作ったコンテンツが見られないのは悲しいことですよね。
吉田アナ:そこで、「ゼロ話切りマン」を撲滅すると同時に、「ゼロ話切りになってしまったマン」にならないようにするというダブルミーニングで、昨年から「ゼロ話切り撲滅委員会」を発足して、ゼロ話切り撲滅を働きかけています。
―どうすればゼロ話切りを撲滅できるんですか?
吉田アナ:新作アニメのPVをシーズン毎にまとめて全部見るんです。
―なるほど…最近は多くの作品が放送開始前にPVをネットで公開していますよね。
吉田アナ:せめてPVだけでも見て自分で面白いかどうか判断すれば、1話には満たないかもしれないけど、「ゼロ話」で見もせずに切った、ということは避けられるじゃないですか。
ネットの評判ではなく、自分で一通り作品を見ることが、実は「神アニメ」を見つけることに大きく関係しているんです。
栁瀬一樹さん(以下:栁瀬):ネットを介してみんなでアニメPVを見るイベント「つづきみ」がまさにそのためのもので、今日はちょうどそのミーティング中でした。
作品の魅力が詰め込まれた「アニメPV」の魅力とは?
―アニメPVの面白さや魅力はどんなところにあるのでしょうか。
結さん(以下:敬称略):PVというと音楽系のもや映画のものなどいろいろありますけど、多くの場合、本当に届けたい人たちよりも、もっと広い層を対象に作られてると感じるんですよね。
―ミュージックビデオが妙にアート的だったり、恋愛が主軸の映画じゃないのにPVで恋愛ものっぽく見せようとしたり、とかでしょうか。
結:そうすると、本来その作品のファンだった人が見た時「なんか違うんだよな」ってなりますよね。でもアニメのPVはアニメファンにダイレクトに訴えかけようとしているところがすごく好きなんです。

結:カット編集のスピードとか、曲がかかって盛り上がるタイミングとか、全部お約束じゃないですか。ここでBGMが入ってここでキャラのカッコイイセリフとアップが入って、ドーン!! みたいな(笑)
テンプレかもしれないけど、やっぱりそういう映像がアニメファンとして
「気持ちいい!」「ワクワクしちゃう!」と感じます。
「このアニメ面白いよ!」ってことをベタに伝えることを、カッコ悪いこと
とされない世界なのが、すごく好きなんです。
吉田アナ:型があるからこそ逆に面白いような。短歌に近いかもですね。
結さん:テンプレ通りの映像にワクワクさせられて、なんか悔しい! とさえ思っちゃうんですよね(笑)。でもワクワクしちゃうんだからしょうがない。
吉田アナ:悔しいからこそ、本編見ちゃうんですよね。
―皆さんがオススメするアニメPVはありますか?
吉田アナ:これまで「つづきみ」イベントは3回やっていて、僕と結さんは司会として参加しているのですが、その第1回で上映された「信長の忍び」のPVは圧倒的でしたね。
結:あれは圧倒的でしたね!
吉田アナ:見た瞬間「PV単体で作品として面白い!」って思っちゃった。本編も5分アニメだし、大地丙太郎監督のスピーディーな演出がPVという形にぴったり合ってて。
正直見る予定はない作品だったんですが「これは本編も見なきゃ!」って思わされました。
栁瀬:イベント参加者アンケートによると、事前調査では「信長の忍び」を見る予定だった人は18パーセントしかいなかったんですが、出口調査では82パーセントの人が「見たい」と回答したんですね。これこそPVの力ですね。
吉田アナ:アニメのPVって、こういうことがあるから面白いんですよね。
神アニメとの出会い方とは?

吉田アナ:アニメオタクは本来、胃袋が強い、何でも楽しもうとする人たちだと思うんですが、だからこそ自分の好きな傾向の作品ばかりネットで検索して探しても、ハマれる作品には逆に出会えないんですよ。
検索結果やネットの評判で判断して一部の作品を見るのではなく、食わず嫌いをせずPVでいいのでシーズン毎の作品を全部自分の目で見る、これが重要です。
すると、その中にたまたま「面白いかも」と思える作品があります。そのあなたのセンスに引っかかった作品こそが、あなたにとっての神アニメなんです。
栁瀬:セレンディピティってやつですね。
結: TV放送でアニメを見てて、その合間のCMで見る別のアニメってたまらなく面白そうに見えますもんね。出会っちゃった感じがある(笑)。
吉田アナ:偶然出会った気になる作品は「自分だけは好き!」と言える作品になるので、ぜひそれを見つけてほしいですね。

インタビューを終えて
ネットの記事を頼りに神アニメを探す行為そのものが、自分をハマれるアニメから遠ざけている原因だった、という指摘にはっとさせられるインタビューでした。
最近ハマれるアニメが少ないなあと思っていた方は、ぜひ偶然の出会いを求めて、来期アニメPV視聴コンプリートを目指してみてください。
【つづきみ・イベント情報】
名称:第4回『僕たちは新作アニメのプロモーション映像を3時間かけて一気観したらど のくらいつづきをみたくなるのだろうか?』 (略称『つづきみ』)
開催日時:2017年6月27日(火) 18時30分〜21時30分
配信プラットフォーム:ニコニコ生放送 / YouTubeLive
【インタビュイー】
■吉田尚記(よしだ・ひさのり)
1975年12月12日、東京生まれ。ニッポン放送アナウンサー。「マンガ大賞」発起人。『ミュ~コミ+プラス』(月~木曜日24時より放送中)のパーソナリティとして「第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」受賞。
著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計13万部(電子書籍を含む)を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど、多彩なジャンルに精通しており、年間100本におよぶアニメ・アイドルのイベントの司会を担当している。
自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」が展開中。
>吉田尚記オフィシャルTwitter( @yoshidahisanori )
■結(ゆい)
女優・タレント。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。フリーランスで活動中。幼少期からのアニメ、ゲーム好きが高じ、番組MCやコラム連載など活躍の幅を広げている。
>オフィシャルTwitter( @xxxjyururixxx )
■栁瀬一樹(やなせ・かずき)
株式会社KADOKAWA 映像事業局。2012年「dアニメストア」(企画)、2016年「つづきみ」(企画、プロデュース)、2017年「アニュータ」(企画)