今話題の「Pawoo」を絵描きさんはどのようにして楽しんでるの? 和遥キナ先生に聞いてみた

取材・文/長谷憲
今ネット上で話題になっている分散型SNS「mastodon」。
このサービスはインスタンスと呼ばれる「サーバー」を自由に選択して、TwitterのようなSNSを楽しむことができるのが大きな特徴です。
例えば、ゲーム好き専用インスタンスや、オタク女子専用インスタンス、『アイカツ!』ファンがあつまる「kirakiratter」など、たくさんのインスタンスが既に存在しています。
pixivでは「クリエイターの創作活動とコミュニケーションを支援できる場」として、Pawooをいち早く設立。現在Pawooの利用者は7万人を超え、世界でも最大規模のインスタンスに成長しました。
利用者のなかには絵描きさんも多数登録しており、自分たちの創作物をPawooに掲載し楽しんでいる様子を見かけることができました。そんな中、Pawooにて美しい黒髪美少女を描くことで有名な和遥キナ先生を発見。
投稿を見ていると、かなりPawooを楽しんでいる様子でしたので、和遥キナ先生に「Pawoo」の魅力について聞いてみました。
このサービスに乗り遅れるわけにはいかない
── Pawooをかなり早い段階から使用してくれていますよね。きっかけを教えてもらえますか?

16日の0時くらいかな…、mastodonってサービスがあることを他の絵描きさん経由で知ってすぐにPawooの登録をしたんです。
ほとんど直感ですが、このサービスに乗り遅れるわけにはいかないと思って。
── では単純におもしろそうだから登録してみた的な感じなんですか?

なんというか…サービス開始の空気感を味わいたかったんです。
Twitterは日本で流行り始めた頃に登録をしたんですが、すでにいろんな作家さんやIT系のコミュニティができていた状態だったんです。
他にはInstagramなども登録はしていたんですが、あまり積極的に参加しなかったせいで自分の中で出遅れてしまった感があったんですよ。でも今のPawooなら、産まれたばかりの空気感を味わえると思ったんです。
それにpixivが運営してるから2,3日で沈んでしまうようなものではないだろうと思ってすぐに登録しましたね。
── 他の絵描きさんからPawooを教えてもらったと言っていましたが、「自分の仕事が絵描きだから」などは関係なしにこのサービスに触れてみたい気持ちが大きかったんですね。

あー…でも仕事は関係ありますね。アンテナが高い大物のイラストレーターさんなどが既に登録しているのを見たときに、こんな早い段階で大物作家が登録するってことはPawooを何かに活用しようという意欲を感じたんです。
なので自分のイラストの活動とも無関係じゃないなと感じました。
── 実際にPawooを使ってみてどうでしたか?

ネット黎明期みたいで、みんながお祭りみたいに騒いでいてて、一緒にワイワイやるのが楽しかったです。あと自分たちで文化を作っていくって空気感があったので、そこにいるのも楽しかったですね。
pixivでよくある「10点じゃ足りない」が生まれる瞬間とか、そういうのに立ち会える空気感ですね。
例えばPawooだと2日目の段階ではまだなかったのに、いつの間にか18禁を取り扱う作家さんは名前に18禁のマークをつけたり、絵を描く人は絵の具のマークをつけたりして遊んでるじゃないですか。
1日ごとに文化が形成され、世界が作られていく様子は見ていて本当に楽しかったです。
すごく開放感があって、みんな素っ裸でお風呂に入ってるような気分
── 常に小さな変化が起きていますよね、Pawooって。

なんかできないことができてる感じがします。他のSNSでは人がたくさんいる状態なので、下手なこというとファンから心配されるんです。
もしくはSNSで作品の告知したら、5秒後くらいにスカイプで編集さんから「告知ありがとうございます!」 って連絡くるんですよ。悪いことじゃないんですけどね。
── つまり…監視されてる…?

そう、すごい監視されてるんです。
SNSで少し間違えたことを投稿するとすぐに炎上して、お仕事しにくい状態になる可能性もあって、そうすると、下手な投稿はやめようって流れになるんですよ。
色んな人に見てもらうために、しっかりキャプションの設定したり、投稿一つするにしてもしっかり考えて投稿するんです。その成熟された空気感に疲れてきている人っていると思うんです。前のような自由は効かなくなったなぁって。
── 良くも悪くも、ルールが完成してしまったと…。

先程も言いましたが、悪いことではないと思うんです。でも今のSNSは告知用みたいになっちゃってるところあるじゃないですか、そういうのにどこか疲れちゃってたんだと思います。
そんなときにPawooが登場して、試しに覗いてみたら今のSNSで得られない、なんというか開放感みたいなものを感じたんです。みんな素っ裸でお風呂に入ってる感じというか(笑)
リミッターが外れて「お前そんなキャラだったのか!」っ思っちゃうほど騒いでる絵描きさんの投稿がみれたんですよ。これがめちゃくちゃ面白くて。
既存のSNSでは「大御所だから絡みに行けないなぁ」とか、挨拶もきちんとしないまま終わっちゃった人とかいるんですけど、思い切ってPawoo上でフォローしてみると速攻フォローが帰ってきて、「実はイラスト見てましたよ!」って返事がきて、新しい交流が生まれたんです。
“象語”がおもしろい!?

── しばらくはPawooの新しい文化を楽しんでいけそうですね。

そうですね。あの新しい空気感に浸かっているだけで楽しいです。後は他のSNSでふれあってなかった人たちとふれあいたいですね。まずはとにかく楽しもうっていう気持ちです。
あとPawooでよく「ぱうぱう」と投稿するようにしてるんですけど、そうするとすぐみんな乗っかってくるんですよ。
── あ、見ました。自由に楽しんでますよね、えっとあの「オフ……」

「オフパウ!」ですよね! あれってどういう意味なんだろうって考えるじゃないですか。考えてもわかんないけど、なんかわからないけどエッチな感じがするじゃないですか。
誰も正解がわからないけど、意味を想像しながら言葉を使って遊ぶのが楽しいんですよ! パウニケーションってやつです!
── 造語が生まれて盛り上がる感じが、SNSの始まりっぽくていいですよね。

僕がよく使うのは「オフパウ」と「パウニケーション」と「パウみがある」って言葉です。あと「パウ力(りょく)」とか。
── これが象語…ですね。

そうそう。あと「草生えるw」の代わりに使われている「牙生えるw」って言葉には笑いました。
── 最後に…Pawooの魅力を教えていただいてもよろしいですか?

すでにあるSNSはルールとか、コミュニティが作られちゃってて、その輪に入るのは大変なんだけど、Pawooはローカルタイムラインのお陰でフォロー0 フォロワー0の状態でもすぐに輪に入っていけるのはすごく良いですよね。大きな魅力の一つだと思います。
今はこのPawooの流れを一緒に楽しみたいと思います! すごく今後もどうなっていくか楽しみですね!
── ありがとうございました!
普段は見れないクリエーターの顔や、文化が今まさに生まれていく様子など、他にはないおもしろさがPawooには詰まっているということが伝わってきました。
みなさんもその魅力に触れてみてはいかがでしょうか。「ぱうぱう!」とつぶやくだけでリアクションがすぐに返ってくるかもしれませんよ。

- 和遥キナ
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フリーイラストレーター。ADVゲーム『祝姫』やライトノベル『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』などでイラストを手がける。黒髪ロングの少女の絵を得意としている